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「私たちの行方(前編)」(2008/05/12 (月) 21:14:04) の最新版変更点
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真夜中の森の中をコロンビーヌは急いでいた。
向かう先はE-8の病院だ。
バトルマスター一行を襲撃するように言われた彼女がなぜそのような場所を目指しているのだろうか。
そこには彼女なりの考えがあった。
なんと言っても相手はあのバトルマスターだ。
まともなバトルを仕掛けたらまずこちらに勝ちはあり得ない。
だからと言ってここで引き下がる事は絶対にできない。
666に捕らえられている我が子のためにも絶対に引く訳にはいかない。
ではバトルマスターに勝つにはどうするか。
コロンビーヌは答えをもう導き出していた。
ずばり側面からの奇襲である。
『柿テロ猥・R2‐ND』には【闘争制覇者-Battle Master】について次のように書かれていた。
『真っ向からのバトルに限定されるため、不意打ちや毒殺などにはとても弱い←ここ注目』
これを利用しない手はない。
そういう訳でコロンビーヌは目的の場所に急いでいるが、心中は複雑だった。
(私が……私が、言いなりになるなんて……でも、子供を見捨てる訳にはいかない!)
彼女は悩んでいた。
このまま素直に666の言う事を聞いていいものか。
本心を言えば、自分と子供をいいように扱ってくれた666に今すぐにでも殺したい。
だが彼女にその選択肢はなかった。
彼女とてこの書き手ロワ2ndをここまで生き残ってきたのだ。
自分の一挙一動が我が子の明日をも左右する事ぐらい嫌というほど理解しているつもりだ。
それにコロンビーヌは気づいていないが、彼女の体内には666によって植えつけられた闇が潜んでいた。
オリジナルより劣ると言えども、驚きの黒さの威力は伊達ではない。
彼女の思考は徐々に侵され始めていた。
(でも、バトルマスター達を倒したら、孔明が残した絆も、蟹座氏に捧げられている愛も終わってしまう。
愛に生きる者として、そんな事したくないわん!
……でも、しょうがないのかもね。許してちょうだい)
そんな事を考えているうちに目の前に見慣れた建物が現れた。
それはコロンビーヌと鬼軍曹にとって最も思い出深い場所。
「……教会……」
◆
そこは少し前に出ていってから全く変わっていなかった。
厳かなステンドグラス。
整然とした内装。
そして愛する伴侶、猫子頭の鬼軍曹。
何もかもが出て行く前のままだった。
あの頃のまま二人で幸せな結婚生活を送れたらどれほど良かっただろう。
ふとこの場に似合わないと思い、ボン太くんスーツを脱いだ。
着たままでは愛する人に触れられないからだ。
彼の頬は既に冷たくなっているが、生前の温かさはいつまでも胸の奥に残っている。
「貴方が生きていたら……言っても詮無き事ね。
貴方は自分の誇りにかけて逝ってしまったし、私が言うべき事はないわ。
だけど……せめて……子供の顔ぐらいは見て欲しかったわ」
『ああ、俺もできる事なら見たかったさ』
「せっかく会いに来たけど、もう行かなくちゃいけないの。ごめんなさい」
『気にするな。俺はいつもお前の事を見守っている』
「……今から言う事は独り言だから気にしないでほしいの」
『なんだ?』
「私迷っているの。このまま666の言う通りにしていいのかって」
『…………』
「私は今まで皆の愛を手助けしてきたのに、今回はそれを壊す側。
そんなの私の誇りが許さないわ。
でも……でも……私達の子供は人質にされて……
それになんだが自分の思考がどんどん何かに染まっていくような気がするの。
黒い染みみたいに段々私を侵していく……怖いのよ」
『……コロンビーヌ』
「私って、変よね。誰もいない教会で独り言なんて……」
『すまない。本当ならお前に何か言葉をかけたり、抱きしめたりできたらよかったんだが……死んだ身ではそれも叶わない――』
鬼軍曹の声は届かない。
生者と死者――本来なら言葉を交わすには特別な事情がなければできない。
それこそ夢の中とか奇跡が起こるとかがないと無理だ。
だから……
「え? ……デイパックの中が、光っ――――?」
それは愛する人からのホワイトデーに贈られた贈り物。
バレンタインデーに対するささやかなお返し。
キャンディー。
『俺ができるのはこれくらいだ。情けないよな』
「貴方……私を、励ましてくれているのね。ありがとう」
『礼なんていいさ。それくらいしかできないからな。
……そろそろ戻らないといけない時間か。
最後に一つだけ、お前に言葉を残していこう。
お前の欲する事をやれ。自分の心のままに生きてくれ……そして、絶対死ぬなよ』
「う、うああ、うあああぁぁぁあああ――――ッ」
泣いた。コロンビーヌは泣いた。
愛する人が傍で励ましてくれた気がしたから。
自分の事を一番に思ってくれていると感じたから。
その愛の贈り物を口に入れる。
「飴玉は幸せの味がするのですよ。 舐めるとお口の中でお花が咲くのです」とは、どこの言葉だったか。
不思議と舐めているうちに自分が何を為すべきか分かってきた。
「ありがとう貴方。私は、もう迷わないわ」
新たな決意と共にコロンビーヌは目的の場所へ向かう。
◇
E-7に聳え立つビルの一つ。
そこにコロンビーヌはいた。
その手には一つの銃が握られていた。
一見すると何の変哲もないように見えるが、この銃はそこらへんのものとは比べ物にならないほどヤバい代物だった。
彼女はそれを標的に向けた。
外す訳にはいかないとばかりに慎重に狙いとタイミングを見計らっていく。
その威力ゆえに多少の誤差は許されるのかもしれないが、油断は禁物だ。
この一撃には自分と子供の未来がかかっているのだから。
そして機は熟した
「悪く思わないでほしいわん♪」
彼女の手から極光が爆ぜる。
◇
魔王と煩悩寺と別れたバトルマスター一行は病院へと急いでいた。
手遅れになる前に着きたいと願うが、今はただ急ぐ事しかできない。
ふとバトルマスターが急に立ち止まった。
(なんだ、この感じ? 前にもどこかで――ッ!?)
後ろを振り向いてバトルマスターは自分の直感が正しかった事を理解した。
それは以前自らが撤退を余儀なくされた光。
天使の腕――エンジェル・アームの光が目に飛び込んできた。
◇
月も星もない空の下、蹲っている人影があった。
彼女は苦しそうな声で目の前にいる人物に心中に渦巻くものをぶつけた。
「ッ!? なぜ、こんな事――」
「これが私の選んだ道だからよん」
答えるのは漆黒を身にまとったコロンビーヌ。
彼女は目の前に蹲る少女に一部の隙を見せる事なく佇んでいた。
もう彼女から迷いは感じられない。
そして眼下の相手に言葉をぶつけた。
「随分とオイタが過ぎたようね――――666ちゃん♪」
派手好き紳士『666』はそれを見上げる事しかできなかった。
◇
話はコロンビーヌが教会を出たところまで遡る。
彼女は既にある決心をしていた。
『666の言いなりにはならずに、我が子を奪還する』
一歩間違えれば、おそらくは自分も子供も無事ではないだろう。
その選択はやはり間違いではないか。
そんな不安もあったが、彼女はそれらの迷いを振り払った。
自分は愛を育み自由に生きる者。
もしここで666に屈して言いなりになれば、きっと我が子に顔向けできないだろう。
穏便に済ますなら言う通りにするほうが良いに決まっている。
だが自分が愛した鬼軍曹は書き手としての誇りを胸にその生涯を閉じた。
そんな彼に生涯尽くすと誓った自分が自身の信念を曲げてどうする。
「貴方、ごめんなさい。もしかしたら私のわがままかもしれないけど、最後まで見守っていてちょうだい」
しばらくの移動の後に、コロンビーヌは目的の場所であるE-7ビルの屋上に到着した。
ここからなら見晴らしもよく666のいる場所まで障害物はない。
だが666がいるのは暗黒空間であり、近づく事は困難である。
一応ゾナハ蟲を一個小隊ほど潜伏させているが、感知されないのはそれが限度だった。
いくらか細かな仕掛けを用意しているとはいえ、このままでは成功する確率は0に近い。
そう最後の大きなピースがどうしても足りなかった。
しかしそのピースが今ようやく揃った。
死者スレ産のキャンディーの効能かは定かではないが、彼女には新たな力が芽生えていた。
それは『あらゆる愛に関する技が使用できるようになる』というものだった。
「いくわよん」
そう言う彼女の手の中には一つの銃が握られていた。
その銃の名は「ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃」
アニロワ2ndにも出ているその銃は持ち主のヴァッシュが使用する事によってエンジェル・アームを発動させる事ができる。
その威力は既にこのロワでも発揮されている。
だが今それを持っているのはアニロワ2ndともトライガンとも関係の薄い漫画ロワの書き手であるコロンビーヌ。
本来なら彼女がエンジェル・アームを発動させる事は無理なはずである――そう『本来』ならば。
コロンビーヌがこのたび目覚めた力は「あらゆる愛に関する技が使用できるようになる」というもの。
そしてヴァッシュを説明する上で外せない一言はご存知「ラーヴ アーンド ピース!!」である。
つまり愛と平和。
ヴァッシュを体現する二大要素の内の一つに愛があったため彼女はエンジェル・アームを使う事ができるのだ。
もちろんそれだけでは威力は半減してしまう。
そこでコロンビーヌはエンジェル・アームに自分自身の「純白の手(レ・マン・ブランシュ・ジマキュレ)」の力を上乗せした。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃と純白の手(レ・マン・ブランシュ・ジマキュレ)によって発動されたエンジェル・アーム。
愛ゆえの融合によりエンジェル・アームの性質を若干変化させていく。
愛の本質は奪う事ではないので、命を奪う事にはならない特性がついたようだ。
リリカル世界の非殺傷設定がこれに近いかもしれない。
そして変化が始まる。
コロンビーヌの右腕と銃が融合していく。
融合を果たした右腕は異形の砲台と化していた。
彼女の顔を見ると、いささか苦しそうだ。
「さすがに、無理しすぎだったかしら。でも、負けないわよ」
彼女は狙いを、そしてタイミングを見計らう。
狙いをつけるのは簡単だ。
デイパックの中だろうと愛する我が子の居場所は目を閉じていても感じ取れる。
仕掛けが完成するのは後少し。
失敗は許されない。
チャンスは一度、一度だけの大勝負。
そして、機は熟した。
「悪く思わないでほしいわん♪」
そして極光が爆ぜる。
◇
熱血王子が病院に向かってからも666は来るべき時に備えて英気を養っていた。
もちろん監視も怠らない。
古来より上手くいっている時ほど足元を疎かにしては全てが水泡に化す事が多々ある。
そのような事態にならないためにも地道な監視は必要だ。
『派手好き紳士さん、一つ尋ねたい事があります』
「なんですか、フランシーヌ様」
そんな666に声をかけてきたのはしばらく沈黙を守ってきた「漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人」フランシーヌであった。
いきなり話しかけられて意外だとも思いつつ666は意識をフランシーヌへと向ける。
『ええ、私が尋ねたい事はそこにいるコロンビーヌの子供の事です』
そう言ってフランシーヌが指差す――エニグマの紙状態なのでそんな感じがする――先には666のデイパックがあった。
もちろん話題になっているのはその中に眠るコロンビーヌと鬼軍曹の愛の結晶である子供である。
「子供、と言いますと?」
『子供を、しかもまだ生まれてもいない命を人質にするなど、あなたはなんとも思わないのですか』
「ああ、そうですね。一応良心の呵責というものなら持ち合わせていますよ。
でも、それにも増して私が追い求めるのはネコミミストへの愛。
コロンビーヌには否定されましたが、そんなもの勝手に言っておいてください。
私は私なりの方法でネコミミストを愛します。
そのために私は史上最低最悪な悪役となるのです。子供を人質にするなど悪役に相応しいでしょう」
『……あなたは……悪魔ですか』
「悪魔で……いいよ。悪魔らしいやり方で、やらしてもらうから!
666の名がまさにそれを体現しているのですからね。
いやあ、名は体を表すとはよく言ったものです」
666に迷いはなかった。
どれほど非難されようとも自分の最終目的は変わらない。
そのためになんでもするつもりだ。
『派手好き紳士さん』
「ん、珍しく良く喋りますね。意思持ち支給品が出しゃばるといい事ありませんよ」
『喋りたい気分なんです。気にしないでください』
「まあ、いいですよ。話し相手は欲しいですからね。
で、お次はどのようなご用件で?」
『歌を歌ってもよろしいですか』
「あなたの歌となるとあの子守唄ですか。いいですよ」
『ありがとうございます』
そう言ってフランシーヌは歌い上げる。
優しくて心を和ませるあの歌を……
――風に葉っぱが舞うように、ぼうやのベッドはひいらりひらり――
それは聞く者の心を捕らえる母のような歌声。
――天にまします神さまよ、この子にひとつ、みんなにひとつ、いつかは恵みをくださいますよう――
(……しかしなんで急に私と会話など。いままで私と話したのは影丸を葬り去った後し『警告』――)
分かったのは極光が迫っているという事だけだった。
クラールヴィントの警告とエンジェル・アームの直撃はほぼ同時だった。
◇
「ぐっ、いったい……」
太陽に近づきすぎたイカロスは報いを受け、翼を溶かされて地上へと落ちた。
ここにも一人の翼を持つ者が報いを受けて地上へと落ちた。
派手好き紳士『666』はしばらく不死者の身体が回復し終わるまで動けずにいた。
(どういう事だ? 今のはエンジェル・アームのはずだ、となると犯人はtu4氏。
……いや、それはありえない。彼女は宇宙にいるはず、しかも今のは入射角から見て地上からの砲撃だった。
tu4氏以外でエンジェル・アームを使える者など――)
そこで666は自分の目の前に誰かいる事に気づいた。
それはどこからどう見ても「ふもっほ」という掛け声が似合いそうな着ぐるみ――ボン太くんだった。
しばらく考えを巡らしていたが、その間に666の傷は不死者の力で5割ほど回復していた。
「コロンビーヌ? もう仕事は終わったんですか? 早いで――ッ!?」
666がいぶかしむ暇もなく、何の前触れもなしにいきなり茂みから量産型のボン太くんが飛び出してきた。
それは一直線に666の右腕めがけてジャンプした。
たび重なる予想外の出来事にさすがの666も僅かばかり反応が遅れてしまった。
そしてその遅れが致命的なものとなってしまった。
「ぐァ――ッ!?」
右肩に当たった瞬間、ボン太くんは凄まじい威力でもって爆発した。
その身体からは想像もできないほどの衝撃で666の右腕は見事に吹き飛んだ。
右腕だけで済んだのは咄嗟に防御魔法を発動させたためだが、爆心地の右腕を犠牲にする形となった。
さらに右腕が吹き飛ばされた事により、当然指にはめていたクラールヴィントも共に吹き飛んでしまった。
再生が間に合わないと見るや、666はすぐさまバリアジャケット生成を闇の書に委ねた。
しかしそれは無駄な行為であった。
次々と合計12匹のボン太くんが襲いかかって来ては、今の状況で全て捌くのは不可能だった。
結果、666の身体は今までにないほどダメージを負ってしまった。
右腕は最初の爆発で吹き飛び、左腕も肘から先を持っていかれてしまった。
両の足も太腿から下はなく、腹からも盛大に血が噴き出している。
さらにエンジェル・アームのダメージが思った以上に回復していない。
不死者の能力ゆえに時間と共に再生はするが、はっきり言って再生する間は無防備もいいところだ。
「……コロンビーヌ、これはどういう……」
666は目の前にいるボン太くんスーツに声をかける。
さっきのボン太くん爆弾を避けきれなかったのも、目の前のこれがどう動くか予想できずに注意力が分散された事もある。
だが分からなかった。
あれほど子供に執着していたコロンビーヌがこのような行動に出るなど信じられなかった。
もうすでに最初のボン太くん爆弾の時点で闇の揺り籠は消滅させているので子供の死は確定している。
それくらいコロンビーヌも理解しているはずだ。
「どこを見ているのかしら~」
「な!?」
声は背後から聞こえてきた。
666は後ろに立っていたコロンビーヌを見て状況を悟った。
目の前のボン太くんスーツの中身は空、いやゾナハ蟲で操っているのだろう。
自分はまんまと一杯食わされて注意力を分散させてしまったのだ。
おそらく冷静に索敵をかければ何の問題もなかったはずだが、あの切羽詰まった状況下ではそれも難しかっただろう。
「ッ!? なぜ、こんな事――」
「これが私の選んだ道だからよん」
コロンビーヌは再生していく666を眺めていた。
「随分とオイタが過ぎたようね――――666ちゃん♪」
そう言ってのけると、コロンビーヌはデイパックの中から刃物付き帽子を取り出した。
そしてその帽子を再生中の箇所に刃が折れるほどの力で思いっきり叩きつけた。
「ギャアアアァァァ――ッ」
想像を絶する痛みが666を駆け巡る。
不死者になったといえども、痛みに慣れている訳ではなかった。
「本当は麻酔銃の方が安全なんだけど、それじゃお話しできないからつまらないでしょう。
だからこうするのよん」
「……呆れたな。あんなに、大事にしていた……子供を、あっさりと捨てるなんて……ッ……
君の愛も、大した事ないね」
666は心底そう思った。
自分にはあれほど偉そうに愛を説いていたのに、みずから愛の結晶を放棄するとは本末転倒だ。
これではまだ自分の方が愛において優っていると、思ったのだが――
「きゃはははは」
笑った。
コロンビーヌは666の発言がおかしいとばかりに笑った。
その声からは後悔など全く感じられなかった。
「なにがおかしいんだ」
「きゃはは、ごめんなさいね。
666ちゃんが勘違いしているから、ついね」
「勘違いだと?」
「ええそうよ。
だって……子供なら、ちゃーんとここにいるもの」
そう言ってコロンビーヌは自身のお腹に手を当てる。
ここからではその感触を感じる事は出来ないが、コロンビーヌの顔を見れば一目瞭然だった。
あれはまるで子を慈しむ聖母のような顔だった。
断じて狂って「ほら、ちゃんと中にいますよ」とか言っている顔ではない。
「い、いつのまに……」
「答えはこの指輪よん」
「それは……クラールヴィント!」
「そうこれで奪われた時と逆の事をしたの」
あの瞬間――エンジェル・アームで666を撃墜した瞬間、コロンビーヌは急いで墜落現場に急行した。
事前にボン太くんスーツに仕掛けを施して墜落予想ポイントに向かわせていた。
撃墜のショックから復帰する時間とボン太くんスーツを見て考える時間。
それらでコロンビーヌが現場に向かう時間は十分にできた。
そして対戦車地雷内蔵のボン太くん爆弾で666の右腕を吹き飛ばしクラールヴィントを手に入れる。
その際にクラールヴィントを破壊しないように狙いは右肩にしておいた。
後は適当にボン太くん爆弾で666を翻弄しているうちに旅の鏡で子供を無事に取り戻したのだった。
「ばかな!? 私は一発目の爆弾の時点で闇の揺り籠を解いていた。
その状態で子供が耐えられるはず――」
「『デイパックの中は保存が効く』これのおかげで少しのタイムラグなら平気なのよん。
それに私と騎士様の子供はあなたが思っているほど柔じゃないわよ」
666は自らの油断を悔やんだ。
このような強行突破を仕掛けてくるとは考えていなかった。
だがまだ自分が仕掛けた爆弾が――と、ここまで考えて666は気付いた。
コロンビーヌから驚きの黒さが全く感じられなかった。
「まさか……驚きの黒さが……」
「そんなもの、覚醒した愛の力で浄化しちゃったわよ。
ついでに持っていた荷物も浄化されたみたい」
愛の力とは斯くも偉大なものか。
666はあまりの事に言葉が出なかった。
「じゃあ私は行くわ。しばらくそこで私の子供に手を出した事を悔やんでなさい。
あ、そうそう……」
コロンビーヌは最後の一言を言うために進みかけた足を止め振り向いた。
彼女の目に映る666はいまだ再生中で、その脇には刃が全て折れた刃物付き帽子が転がっていた。
話している間、ずっと再生しかけている部分に刃を叩きつけた結果である。
「あなたの企み、ネコミミストちゃんに全部ばらすから♪」
その瞬間、場を静寂が支配した。
それは666にとって青天の霹靂ともいうべき言葉だった。
「待て! まだ早――」
「そんなの知らなーい。666ちゃんが悪いのよん。私達の子供に手を出す事は許されない事なんだから、当然の報いよん。
ああ恒例の言葉を言っておくわん。
666調子乗ってんな♪」
そう言い終わると、コロンビーヌはこの場から去って行った。
後に残るのは再生中の666と、やたら不気味なボン太くんスーツだけだった。
666は焦っていた。
いつかはネコミミストにばらすが、今ばらされては今までの苦労が全て水の泡と化す。
それでは何のためにここまでやってきたのか分からなくなる。
(冗談じゃない。やっと見つけたんだ、私の理想の相手。
停滞した書き手ロワ1stをあんな形で終焉させたのも……彼女を見つけたのが理由の一つだった、というのは言い過ぎか。
しかし、彼女の心を手に入れるためにここまでしておいて、ここで頓挫する訳にはいかない!)
早くコロンビーヌを止めなければとも思うが、再生速度が速まる事はない。
実は666は知らないが、コロンビーヌが放ったエンジェル・アームは肉体と精神に特殊なダメージを与えるという不思議な特性を持っていた。
あまり見た目は傷ついていないように見えて、身体の回復がいつもより遅いのはこのせいである。
そしてコロンビーヌの場所を特定しようと索敵をかける。
判明――それほど離れてはいない。
急いで向かおうとして無理して起き上がった瞬間、いままで沈黙を守ってきたボン太くんスーツがこちらに向かってきた。
いままでの経験から慎重を期して666はこれをバインドで止める事にした。
衝撃で爆発されては堪らないからだ。
そしてこんどこそコロンビーヌの元へ向こうとした刹那――
カチッ
なにやら金属音と共に666は再び極光に巻き込まれた。
ただし今度は紅蓮と言ったほうが正しいか。
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