trigger

「trigger」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

trigger」(2008/04/08 (火) 12:25:05) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「それじゃあかがみん、次の衣裳はねー」 それは、地球破壊爆弾がロリスキーと共に新たな衣裳を選んでいる時の事だった。 徐々に吸血鬼の時間は近づいてきている、だがまだ明るめの時間。 「できればあんまり恥ずかしくないのがいいんだけど……」 「判ってるよー、かがみん。じゃあこれはやめとして」 「ちょっと待って判ってなかったでしょ今やめたのナニよ!?」 「あはは、それは大人の秘密ってやつだよ」 和気藹々と衣裳を選ぶ全裸の少女達。 地球破壊爆弾は少し考えた末に――一瞬だけ、鋭い目をした。 「……どうしたの、こなた?」 「ん? なんでもないよー、かがみん。じゃあかがみんの衣裳はこれだー!」 そう答える地球破壊爆弾の笑顔は満面のこなた顔。他に言いようの無い平和な表情である。 「ちょっ、なによそれ!? スケスケじゃない!」 「ネグリジェっていうのはそういうものだよ、かがみん」 「いやだから、なんでネグリジェなのよ」 「何を言うのかなかがみさん、夜はパジャマに着替えるのがお約束ってもんでしょ」 そういう地球破壊爆弾は既に、頭に三角帽子を乗せた子供物パジャマに着替えていた。 「で、でもわたし達、吸血鬼よ? 夜は逆に活動的になるんじゃ……」 「別にパジャマのまま活動的になったっていいじゃない。枕投げのノリでさ~」 (う、そう言われると筋が通ってない筈なのに理解できそう……って、ちょっと待て) 意味不明なのに納得してしまいそうになったが、すぐに冷静になる。 「それならあんたがネグリジェを着なさい。わたしがそれ着るから。  ていうかネグリジェ一枚で派手に動いたら色々見えすぎるでしょーが!」 「ちぃっ、気付いたかかがみん」 「気付くに決まってんでしょ!」 怒るロリスキーに地球破壊爆弾は潤んだ目を向ける。 「でも、お・ね・が・い・だよかがみ~ん。  それにわたしはもう眠くて眠くて、また脱ぐなんてめんどくさーい」 「いやだから吸血鬼がなんで夜に眠くなるわけ!?」 地球破壊爆弾はその問いに、ポッと顔を赤らめた。 「だって、かがみんが激しかったんだもん」 「ちょ!? 何を言い出すのよこな……あっ」 ロリスキーはハッと『ランチタイム』の事に思い当たった。 地球破壊爆弾がアーカードで無ければ確実に死んでいた、獰猛で欲望に任せた食事。 「あのさっきの、やっぱりダメージ有ったの……?」 「いやあ、大した事はないよ? 『さくやはおたのしみでしたね』ぐらい疲れただけー」 「だ、だからそんなのに喩えるなー!」 赤くなるロリスキーを地球破壊爆弾はくすくすと笑った。 「そういうわけだから、おやすみなさーい」 「あ、こら! 待ちなさいこなた!」 ロリスキーは慌てて止めたが、地球破壊爆弾は既にわざとらしい寝息を立てていた。 狸寝入りだろうが、色々とどうしようもない。 ロリスキーはがっくりと項垂れると、言った。 「……判ったわよ。隣の部屋で着替えるから」 「えー、かがみんのイケズー……むにゃむにゃ……」 「寝言はもう少し自然に言いなさい!」      * * * (ほんと、妙なことになっちゃったなあ) ロリスキーは言った通り隣の病室で、体に纏っていたバスタオルをはだけた。 これだけの事など今更だが、それでも同じ部屋で堂々とというのは気が引ける。 そして地球破壊爆弾の選んだ殆どシースルーのネグリジェとショーツを手に取った。 着替えはすぐだ。ショーツに脚を通し、ネグリジェに首を突っ込んだ。 ただそれだけ、一瞬で終わった。 「…………いや、これは人前に出られる格好じゃないでしょう」 胸の膨らみが明らかなどころか、その頂点まで殆ど透けている。 地球破壊爆弾のみならず、ウッカリデス、マダオ、DIE/SOULにまで見られるには ちょっぴり刺激的すぎる格好だと言わざるを得ない。 「や、やっぱりこなたには悪いけど上から別な服を……」 「こなた、こなた、こなたか。随分と愛されているようだね、彼女は」 「誰!?」 突如聞こえた囁きに周囲を見回す。 ――僅か数歩後ろに、彼女は立っていた。 (ウソ、こんな距離に近づかれるまで気付けなかったなんて!?  ううん違う、こいついきなり気配が現れたんだ!) 彼女はうっすらと笑みを浮かべて見せる。 「最も判らないではないがね。彼女のあの姿は世界で最も美しい形の一つ、  ロリショタの一員なのだから君が惹かれるのは当然の事だよ、ロリスキー」 「何者なの、あなたはっ」 声をあらげるロリスキーに向けて、彼女はしぃっと口に指を当てた。 黒いリボンの塊のような奇妙な服がふわりと揺れている 「私の名は、まあ黒猫とでも呼んでくれれば良い。黒い天使でもいいがね。  ああ、静かに話そう。ロリである彼女の休息を妨げるのは気が引けるからね」 黒猫は閑かにそう言って話を切りだした。 「ところで君は対主催なのかな? それともマーダーなのかな?」 何を聞くのかとロリスキーは思った。答えは考えるまでもない。 「対主催よ。わたしもこなたも、わたしの仲間達はみんな対主催だわ」 「なるほど、そうか。では聞こう。何故君は彼女を信頼している?」 「……え?」 黒猫は声を漏らさず、口元だけで笑みを浮かべた。 「知っているだろう? 彼女の凶暴な生き様をね。  なら判るはずだ。彼女は決して、皆で力を合わせる穏便な存在ではない。  むしろマーダーに近い」 「……こなたは、対主催よ。マーダーになんてわたしがさせない」 ロリスキーは毅然と答える。それが答えだ。 自分がいる限り、もう地球破壊爆弾をマーダーになんてさせない。 「なるほど、改心したマーダーだというのだね。  では聞こう。君は本当にそれを判って言っているのかな?」 「それってどういう……」 困惑するロリスキーに黒猫は問い掛けを投げた。 「君は地球破壊爆弾がこの会場で何をしてきたかも知らずに言っているのだろう?」 「ぐっ」 ロリスキーは歯噛みした。確かに、知らない。 地球破壊爆弾がロリスキーに出会う前、何をしてきたのかを。 DIE/SOULなどは地球破壊爆弾を敵視していたのに、そこに何が有ったのかを聞いていない。 「でも、もうそれは半分も無いわ。わたしがこなたに会ってからの時間の方が長いじゃない」 「それでも過去が消えるわけではない」 ロリスキーの反論を黒猫は容易く断ち切る。 「彼女への憎しみが君を侵すかも知れない。彼女への怒りが君を焼くかもしれない。  あるいは彼女に傷つけられた者の怯えや恐怖が君に向けられるかもしれない。  何も知らずに接していた相手が、彼女に全てを奪われた犠牲者かもしれない」 「それ……は……」 その言葉を聞き流すにはロリスキーは善良すぎた。 「君は彼女の過去を知らなければならないのだよ、クールなロリスキー。  彼女と共に歩もうと言うのならばね」 黒猫はそう言って懐から奇妙な鏡を取りだした。 ――その鏡は、全ての罪を映し出す。 「だから、私がその手段を与えてあげよう」      * * * 「くそ、あの二人またおせえな」 呟いたのはダイソウ。神行太保のDIE/SOUL。 ベルセルクのガッツ姿をした男だ。 服を着てくるからといって出ていった、地球破壊爆弾とロリスキーの帰りが、遅い。 「ふん、また着せ替え合いでもしているのだろう。微笑ましいじゃないか」 応えたのは地球破壊爆弾と双璧を為すもう一人のアーカードだ。 ただし漫画ロワから出展の彼女はロリカードの姿をしていた。 何故かブルマタイプの体操服姿で、太股が目に眩しい。 「それとも艶めかしいかな。あるいは妖しい。そう、妖艶の方の妖しいかもしれないなあ?」 「………………」 その言葉に悶々とした想いを抱え込むのが、忘却のウッカリデス。 ゼロの仮面を付けたルルーシュというルルーシュそのものでありながら、その色がどうも薄い。 その心はルルーシュの特性よりも、微妙な空気加減と、そして恋慕と嫉妬に煮えられていた。 (ロリスキーさん……また、あいつと?) 叶うわけがない恋。競争相手が強大であり、偉大な故の苦しみ。 彼にとって地球破壊爆弾は恋敵であり、更に善良な恩人かもしれない存在だった。 「だからって何時も何時もこれじゃ襲撃が有った時に危険すぎるだろうが。  次は早く帰るように言っておくぞ」 ダイソウがそうぼやく。 ――マダオが、目を細めた。 「そうだな、その方が良い。私達も何らかの対処をしなければならない事態だ」 「なんだと?」 椅子で脚をぶらぶらさせていたマダオは急に立ち上がると、鋭い目で言った。 「魔法的な知覚手段にジャミングが掛かった。何者かは知らないが、姿を見せろ」 空気が、張りつめた。 カツカツと、廊下から足音が響いた。やがて姿を見せたのは一人の少女。 無数の黒いリボンがはためいている。 「そんなに緊張する必要は無いよ。今のところ、私に戦うつもりはないのだからね」 黒猫が、そう言った。 「私はただ、君達に一つ見せ物をしに来ただけだとも。  ああそうだ、ロリカード。漫画ロワの君には特に重要な見せ物だろうね」 「……なんだと?」 突然の闖入に眉を顰めるロリカードへ、666は言葉を向ける。 「漫画ロワの、完全完璧に真っ当な対主催の一人が殺された時の話を見せておこうと思ってね」 666は背に隠していた左手を前に出した。 その左手は途中から奇妙な空間の裂け目に呑み込まれて消えている。 空間に魔法の映像モニターが浮かび上がった。 ジャミングをかけている当人にとってジャミングに波長を合わせた魔法通信など容易な事だ。 そこに映し出されたのは空間の先らしい手鏡を掴んだ左腕と、 その腕に手を添えて手鏡を眠る地球破壊爆弾に向ける――クールなロリスキーの姿だった。 「君達にこれを見せておきたいんだ。私の目的はただそれだけさ」 映像モニターに、彼女の見る情景が映し出された。 クールなロリスキーの持った浄玻璃の鏡が、このロワが始まってから地球破壊爆弾No.V-7の全てを映し出す。 そのある程度を彼ら、彼女達は知っていた。 だが全員が見聞きしたわけではない光景も、有った。 それらは地球破壊爆弾の七変化と共に語られる。 例えばニコロワのジョーカーとの戦い。ニコロワのジョーカーの振るう恐るべき力。 それと戦い抜き逆に圧倒した地球破壊爆弾『キングゲイナー』の脅威。 あるいは主催に地図を作り、その一方でウッカリデスに空に見える何かについて話す光景。 これは『長門有希』の姿で為された事だ。 今取っている『泉こなた』の姿だって大暴れだ。ロリスキーを吸血鬼にしたし、 その時に気にせず跳ね飛ばしたウッカリデスと最速の人は仮面が無ければ死んでいたかもしれない。 ホテルで見せた『地球破壊爆弾』そのものの姿も怖ろしい。 その後の光景でロリスキーに語った所によれば、この姿の時に殺すと起爆してしまうという。 ホテルでの戦いと言えば『銃撃女・ラジカルレヴィ』形態も強烈な物だった。 スーパーキョン・タイムで時間遅滞とか反則にも程がある。 その前には投影なんて技も見せる多芸さだ。 鎖鎌と鳳凰寺風の剣を使って、長門の姿でもDIE/SOULと渡り合って見せた。 「あれはホテルで俺と戦った時の……」 そう、DIE/SOULと戦っていた。何の理由もなくただ闘争の為だけにDIE/SOULと戦っていた。 その前に見せた、一番最初の光景はもっともっと明白で判りやすかった。 『良い月だと思わないか? ◆10fcvoEbko氏……いや、衝撃のネコミミスト。  こんな良い月の日に殺し合いをしろと命じるなど、主催者は分かっているとは思わないか?  さあ闘争を始めよう、フリークス! さあ、支給品を確認しろ! まだか!?  HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY!』 それが始まりだったのだ。 『ならば仲良く殺してやろう、ヒューマン』 『アーカード』として地球破壊爆弾は血と闘争に嗤っていた。 『ではな、スクライド。私の糧として砕け散れ』 それは簡潔に、純粋無比でシンプルな無差別マーダーの姿だった。 上映を見終えてロリスキーが地球破壊爆弾に何か話しかけようとした所で、モニターが消える。 黒猫の腕は旅の扉から引き抜かれ、その手の中にあった浄玻璃の鏡も懐にしまわれた。 「以上で私の上映は終わりだ。なに、たったこれだけの事だよ」 黒猫はそう言うとうっすら笑って見せる。 「これらの情報を元にどう動くかは君達の問題なのだからね」 彼女の目は、地球破壊爆弾の仲間である3人に向けられていた。 「……結局、あいつはアーカードだったって事だな」 DIE/SOULは自分でも不思議なほど冷静に、事実を噛み締めた。 判っていた事だ。彼はホテルで彼女――こなた、長門、レヴィ形態――と激闘を繰り広げたのだから。 「待ってください、DIE/SOULさん! それでもジョーカーに抵抗する為には……」 「元から俺は一時的に休戦しただけだ。休戦を続行してやってもいいが、奴を倒すなら喜んで加わるさ。  だが、この件について大事なのは俺じゃねえ。  問題は奴に殺された漫画ロワの書き手……その同じロワで書いていた、仲間だ」 ぎらりと睨め付ける。もう一人のアーカードを。 漫画ロワのミスターマダオ。ロリカードの方のアーカード。 同じ原作ロワの書き手、それも明らかに真っ当な対主催を殺された対主催の書き手だ。 「テメエはどうする? マダオ」 マダオは嗤った。 「なに、考えるまでもないだろう」 しゅばっと敏捷な音を立てて腕を伸ばす。その肉体は吸血鬼の回復力によりほぼ万全。 武器はトライガンにおいて最強の個人兵装と呼ばれる巨大十字架型兵器、パニッシャーが有る。 ザ・ワールドも使えるし、漫画ロワ書き手としての自力も有る。 そう、闘争の準備は既に万全なのだ。 「ちょっと地図氏と殺し合ってくる」 「だめです!」 その前にウッカリデスが立ち塞がる。 「ほう。どうした、ウッカリデス。映像が現在に繋がった以上、あれは真実だろう。  ホテルでダイソウと戦った事も間違いない。それでも奴を、おまえが庇う理由があるのか?」 ダイソウが無言で頷く。ウッカリデスは即座に反論した。 「ありません。でも、殺し合いを止めるには十分な理由と、根拠が有ります。  地図氏はロリスキーさんに止められる形で、マーダーを止めた」 「だがやった事は変わるまい。あの過去にはどう落とし前を付けさせる?  そもそもロリスキーは本当に奴を抑えられているのか?」 ウッカリデスは言った。 「判っています。だから、話し合ってきます」 ほう、とマダオが息を吐く。ウッカリデスが続ける。 「僕が、理由を聞いてきます。話を聞いて、理由を聞いて、話し合ってきます。  過去がどうあれ、危険であれ、地図氏は僕達の仲間でいてくれました。  そこにはきっと彼女がそうあれた理由がある。分かり合えないはずがないんです。  だからマダオさん。今は怒りを堪えて、待ってもらえませんか?」 「…………ふん、判った」 思いの外アッサリとマダオは引き下がる。 「言ってくるがいい、ウッカリデス。おまえが時折見せるその熱さは嫌いではないからな」 「……ありがとうございます」 ウッカリデスはぺこりと一礼をすると、部屋を飛び出していった。 「思ったよりあっさり引き下がったな」 DIE/SOULが意外そうな様子で問い掛ける。マダオは頷いた。 「ああ、元より私も、今現在マーダーで無いなら地図氏とは仲間でありたいからな。  同じロワの仲間を殺した事はそう簡単には許せんが、今や地図氏も仲間の一人だ。  仲間を殺した仲間を殺して誰も残らないなんぞ悲しいじゃないか」 「なんだと? じゃあどうして、殺し合ってくるなんて言ったんだ」 マダオはフンと鼻をならした。 「おまえは私や地図氏が何者であるかを忘れたのか?  アーカードにとって一度や二度の死は完全な滅びに繋がらない。  スクライドで出来ている書き手を殺した落とし前として何回か殺してやるつもりでは有ったが、  対主催として前に進む意志さえ有れば、少なくともこのロワを破壊するまでは共闘するつもりだったさ」 それが彼女の望む熱血展開。鬱展開を受け止め、その上で跳ね返し吹き飛ばす熱き血潮。 「……本当に反則だな、アーカードって奴はよ」 DIE/SOULは呆れたような、僅かに感嘆したような様子でそれを受け止めた。 ぱちぱちと拍手が響く。 「なるほど、それが漫画ロワの熱血展開か。素晴らしいな、君は。  その上にロリカードだなんて完璧な存在にも程がある」 「……まだ居たのか」 声の主は地図氏の忌まわしい真実を持って現れた少女、黒猫。 黒いリボンで飾られた全身はどこか不吉で、正に凶兆を告げに来たようだ 「だけど本当に良いのかい? ウッカリデスの信念は確かに貴いかも知れない。  だけど本当に……ウッカリデスは地図氏を説得できるのかな?  地図氏はそこまで信用できる人物なのか?」 マダオとダイソウは顔を見合わせ……歯を噛み締めた。 「行くぞ!」 「おう!」 二人は部屋から飛び出して、ウッカリデスの後を追った。 しかし。 全てはもう、遅かったのだろう。 地図氏とロリスキーが居る部屋に続く廊下の途中。 ほんの数十mの距離。 『その場所』の向こうには、『彼女』を追って部屋から出てきたロリスキーの姿が有った。 『彼』を追って部屋から出たマダオとダイソウと、『その場所』で視線が絡み合った。 そして『その場所』には。 “鳳凰寺風の剣で壁に串刺しされた”忘却のウッカリデスの姿と。 その前に立つ、地球破壊爆弾No.V-7の姿が有った。 鳳凰寺風の剣に視線が集中する。 そう、それは先程上映された地球破壊爆弾の過去の中で、 ホテルの戦いにおいてDIE/SOULに向けて使った地球破壊爆弾の武器に他ならない。 「ほら、やっぱり遅かった。私は巻き込まれないように消えるとしよう」 黒猫はそう言ってその場から姿を消した。 残されたのは、混沌だ。 動揺し揺れ動く視線が。 字体に混迷する思考が。 吐き出すはずの言葉が。 交錯し絡み合う、混沌の場だった。     + + + ほんの少しだけ、せいぜい一分かそこら前の事だ。 ウッカリデスは部屋から飛び出して、ロリスキーと地球破壊爆弾の居る部屋に走った。 だが丁度その中間で足を止めていた。 「君は実に不遇だ。報われないな、忘却のウッカリデス」 ウッカリデスは息を呑む。 「そんな……どうして、あなたが!?」 それは、嗤って話しだした。 「話す時間は殆ど無い。といっても実際に話す時間は考える必要は無いのだがね。  今からの僅か数秒は会話だけに使えば数十秒、いや数百秒にも匹敵する。  ああ、これは別に私の能力とかそういうわけじゃあない。バトルロワイアルではよくある事だ」 そして唐突な話題を上げた。 「ヘタレ化や空気化による自己の確立は、当人のキャラクター性によってキャラクターの侵触に  対抗するという意味において、侵触を防ぐ二つ目の方法に該当する。  君は空気化により『積み重ねの無い零の時期』におけるキャラクターの侵触を防ぎ、  その後に起きたイベントの結果、ロリスキーへの叶わぬ横恋慕によって自己を確立した。  更にその後も考察と、自らへのフラグ定義により生存確立を確かな物にしていった。  君の努力は尊敬に値する。別に意識してやった事では無いのだろうがね」 「一体何を言って……」 困惑するウッカリデスに向けて一方的に話し続ける。 「だが君は報われない。何よりロリスキーへの横恋慕が悲しいまでに届かない。  ロリスキーはギャルゲロワ最速の人に恋していたのだろう。  幸運にも、そして不幸にも彼は死んだ。  だが今度は地球破壊爆弾がロリスキーを吸血鬼化し、逆にその血を与え、支配ではない絆へと昇華した。  完璧だ。付け入る隙がない。  君がいくらロリスキーに恋しても、彼女の愛が君に向く日は来ないだろう。このままでは」 「……何が言いたいんだ」 そいつはくすりと嗤った。 「地球破壊爆弾からロリスキーを引き離し、そして上手くすれば君に靡かせてあげようと思うのだよ」 「……失礼します」 ウッカリデスは、答えもせずに再び歩き出した。地図氏とロリスキーに向けて。 「おや、聞かないのかい?」 「要りません。たとえ叶わなくても、僕はこの想いを汚したくない!」 そいつの前を素通りして目的の病室へと。 「もちろんだとも。君がそうだからこそ、意味がある」 『Lightning Bind』 向かおうとしたウッカリデスの体が、光り輝く輪に捕らえられた。 「な、何を――」 ライトニングバインド。魔法少女リリカルなのはの、設置型捕獲魔法。 指定区域内に侵入した対象を拘束するトラップ型の魔法。 「それにしても君は本当に報われない。  空に見える主催の居城。それが見える数少ない存在。地図氏の口止め。  それらを統括し『脱出に役立つ情報を握り込む事による生存フラグ』として定義し直した。  君はフラグによって身を守っていたのだ」 ウッカリデスは息を呑む。そして気付く。 (そうか、先程の地図氏の上映で情報が皆に――) 「いや、それではないさ」 そいつは、言った。 「あの程度ではまだ君の情報には価値がある。居城そのものはまだ見えないのだから。  だが、もうしばらくするとそのフラグは意味の無い物になる事が決定してしまった」 (え…………?) 「そう、それは時間的にまだの話さ。本来なら知り得ない話。だがね、そういう物なんだ。  君しか見えないというアドバンテージは既に失われてしまった」 そいつの背後の空間が揺らいだ。 次の瞬間、そこから射出された“鳳凰寺風の剣”が一瞬でウッカリデスの体を貫き、壁に串刺していた。 「本当に報われないな、君は。  あそこまで身を張って熱血し恋敵の為に走ったというのに、君の死は争いのために使われるのだから。  だからね、私は思うのさ。せめて君の死がロリスキーの心に疑惑を抱かせ、地図氏から引き剥がす事を。  君が死した事により、ロリスキーの心の比重が少しでも君の方に傾く事をね。  そうだ、今ならまだマダオも悔やんでくれるだろう。彼女も君に想うところがあったようだ。  それでも報われないのかも知れないが……おっと、もう聞こえてはいないか」 ――ウッカリデスは既に事切れていた。 異変を感じたのかいち早く部屋から飛び出した地球破壊爆弾が駆け付ける。 その直後にマダオとダイソウが、ロリスキーが部屋から飛び出した。 しかしその場には、既に地球破壊爆弾以外の誰かが居た痕跡など何も残っては居なかった。 ライトニングバインドは切れ、地球破壊爆弾が投影する事の出来る鳳凰寺風の剣がウッカリデスを串刺している。 ただそれだけだった。    / / / 「さて、引き金は引かれた」 ウッカリデスを殺した真犯人は離れた場所から病院の様子を見守っていた。 にやりと笑みを浮かべる。 「これから銃を構えるのは君達だ。照準も君達が定める。  弾を弾倉に入れ遊底を引き安全装置を外すのも君達だ。  だが。  殺すのは私の殺意だ」 黒猫こと派手好き地獄紳士『666』は、愉しげに嗤っていた。 「終わった後で教えてあげよう。あの場所で私という悪が踊っていた事を。  そして憎んでくれ。私がした事をね」 更なる悪行を重ねた事を誇っていた。 『しかし今のはどうやったのです?』 紙状態の、漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人ことフランシーヌが666に問い掛ける。 666は答えた。 「これを使っただけだよ」 その手の中にはヒビの入ったカシオペヤが有った。 「使用回数に制限が出来てしまったが、原作通りまだ使えそうだ。  原作でもっともよく使われた使用法、時間逆行もね」 それが種明かし。 ウッカリデスが殺された時、マダオとDIE/SOULに同行していたはずの666が、 廊下でウッカリデスと会話をした末に殺害を実行できた理由。 「そう、あの時間に私は二人居た。実に身も蓋もない種明かしだろう?  世界のルール上、既に話として定まってしまった内容を変える事は不可能だけどね」 666はウッカリデス達の前で地図氏の過去を上映し、ウッカリデスが別行動したのを見て、 これ幸いと時間逆行してアリバイの有る時間に殺害に走ったのだ。 戦闘力自体が上がるわけではないが、便利なことこの上無い荒技である。 『それも気になりますが、他にも気になりますね』 「ほう。なにかな、フランシーヌ様」 紙切れのフランシーヌが666に問い掛ける。 『ウッカリデスのフラグが意味を為さなくなる、とはどういう事ですか?  まだ未来に行ってはいないはずですが』 「ああ、それか」 666は躊躇い無く答えた。 「キャラクターの侵触を受けなければ、私達はこのロワを同時に外からも認識する事が出来る。  外からロワを認識する手段を用意する事でキャラクターの侵触を防ぐ効果も有る。その逆だ」 それこそが書き手としてのメタ視点能力。 「これこそがこのロワにおいて制限された、書き手としての性質の一つだ」 『成る程。では……』 ニコニコロワのジョーカー達は、キャラの侵触を防ぐ方法を三つに分類した。 一つ目は複数のキャラを使い分け、侵食の方向性を分散させて速度を緩めること。 地図氏やギャグ将軍などがこれに分類された。 二つ目はキャラに頼らなくても十分通じる圧倒的な個性で、侵食を跳ね除けること。 速筆魔王氏、蟹座氏などがこれに分類された。 更に666はウッカリデスもこれに分類していた。ヘタレや空気、平凡もキャラ性の一つだったのだと。 この理屈で言えばtu4の言う『空気化による侵触防止』もこれに分類される事になる。 同時に三つ目の分類にも掛かる手段だろう。 三つ目はそもそも侵触自体を無くす事。 例えばキャラの個性を一時的に隠し誰でもない者になる等だ。 ニコニコロワのジョーカー達は全身を覆い隠す事でそれを為した。 だが、あるいは。 『666さん。あなたは誰ですか?』 「誰、とは?」 『闇の書を使わない、このロワの過程で得た要素を全て抜いたあなたの素体。その原型は誰ですか?』 あるいは……原型の存在しないオリジナルキャラクターとして在ればどうなる? オリジナルキャラクターの侵触など有りはしない。 その存在は書き手ロワ2ndという環境を内包して形作られていく。 例えばそう、猫子頭の鬼軍曹、その初期形態のように。 それは一つ間違えば薄すぎる個性により空気化する危険な行為。 あるいはロワ内におけるより強固な自己を求め、キャラの形を必要とする。 だが強烈な特性、例えばロリコンショタコンステルスいじめっこのド変態属性(多分、誉め言葉)で内面を定義し、 特殊な支給品で自らの個性を定義し、他キャラクターとの繋がりを盲目的な想いで定義し、 ロワ内での有用性を貴重だったマーダーになる事で定義し、更にロワ内の過程で自身の特色を定義する事に成功すれば? それは全て仮定に過ぎない。 その様な効果が有るのかも、そもそもそれを目的に誰かが行動したのかも一切が不明だ。 もしそうだとしても、それを知っているのはロワ内の当人だけだろう。 だがもし仮にそういう存在が居たとすれば。 派手好き地獄紳士『666』は笑みを、どこか邪悪な細い笑いへと変えて言った。 「私は、私だとも」 もしかすると、このような存在になるのではないだろうか。 &color(red){【忘却のウッカリデス@アニロワ2nd 死亡】} ゼロの仮面(蝶高性能)はまだ被ったままです。 【夕方/E-8/病院内】 【アーカードとかは行く】 【地球破壊爆弾No.V-7@アニロワ1st】 【状態】:健康 【装備】:裸にバスタオル 【道具】:支給品一式、着替え用の衣装(複数)、アダルトグッズ(大量)、未定支給品×1(本人確認) 【思考】:??????  基本:『こな×かが』を死守。けど……  0:??????  1:次に何をするか考える  2:ごめんね、ウッカリデス。やっぱりかがみんはこなたの嫁です  ※基本的に中身はアーカードで、CVは平野綾です  ※変化する姿に7つのバリエーションがあるらしいです。  【1:地球破壊爆弾】【2:アーカード】【3:長門有希】【4:泉こなた】  【5:銃撃女ラジカル・レヴィさん】【6:キングゲイナー】【7:1~6とか目じゃないよ?びびるよ、まじで】  ※クーガーの早口台詞が言えます!  ※鎖鎌、鳳凰寺風の剣、ソード・カトラス、ノートPCの投影が可能です。  【スーパーキョンタイム】  地図氏以外の者はゆっくりとしか動けなくなります。一度使うとそれなりの時間使用不可能です。  【地図氏の地図】  参加者の位置、生死を含めた地図を投影できます。※長門有希の状態でのみ可能。  使いすぎるとアレなので、毎晩0時にのみ使うことにします。 【クールなロリスキー@漫画ロワ】 【状態】:不死者、吸血姫、 【装備】:すけすけのネグリジェとショール 【道具】:支給品一式、着替え用の衣装(複数)、『村雨健二』の衣装、裸エプロン(キュートなシルク仕様)、      日焼け止めクリーム(大量)、未定支給品×?(本人確認) 【思考】:??????  基本:こ、こなたと一緒に……脱出か対主催  0:??????  1:みんなと今後について考えないと  ※容姿は柊かがみ@らき☆すたです。  ※何故か不死身です。  ※地球破壊爆弾No.V-7の血を吸い、独立した吸血姫となりました。 【ミスターマダオ@漫画ロワ】 【状態】:疲労(小)、強い決意、強い仲間意識 【装備】:パニッシャー@トライガン(機関銃:残り弾数100%、ロケットランチャー:残り10発)、運動服(ブルマ) 【道具】:支給品一式、未定支給品×1(本人確認済み) 【思考】:??????  基本:対主催! 殺し合いには乗らないが、マーダーは犬の餌。しかし……?  0:??????  1:友情! もっと仲間を探すぞ!  2:努力! 首輪をどうにかするぞ!  3:勝利! 見ていろよ主催者!  ※容姿はアーカード(ロリ状態)@ヘルシングです  ※地図氏(地球破壊爆弾No.V-7)がジョーカーではないかと思っています。    ジョーカーに襲われた事と合わせての考察はまだしていません。  ※自分が本物の書き手なのか疑問が生まれました。他の書き手を殺すのにわずかな躊躇いが生まれました。  【世界(スタンド)】  世界を使用でき、時止めも可能です(3秒まで)。  制限は漫画ロワに準拠――『体力の消耗』『時止めの再使用には10秒必要』『スタンドは見れるし触れる』 【神行太保のDIE/SOUL@アニロワ1st】 【状態】:疲労(小)、全身火傷(処置済み)、右指炭化(処置済み)、核鉄による治癒中 【装備】:竜殺し@ベルセルク、ガッツの装備一式@ベルセルク、核鉄『ブレイズオブグローリー』@武装錬金 【道具】:支給品一式、拡声器 【思考】:??????  基本:アーカード(地図氏、マダオ)は殺すつもり。(だったのだが……)  0:??????  1:対主催を集め、機を見計らって『孤城の主』を実現させ、アーカードを打倒する  2:それまでは、Wアーカードとも協力してゆく  3:どこかで義手が見つかれば助かるのだが……  4:ナナシと出会ったら、決着をつける!  ※容姿はガッツ@ベルセルクです。  ※神行太保・戴宗の神行法(高速移動)が使えます。  ※ラディカルグッドスピード腕部限定は、腕だけが速く動きます。  ※地図氏(地球破壊爆弾No.V-7)がジョーカーではないかと思っています。    ジョーカーに襲われた事と合わせての考察はまだしていません。  ※自分が本物の書き手なのか疑問が生まれました。他の書き手を殺すのにわずかな躊躇いが生まれました。 【夕方/E-8/病院から離れた場所】 【派手好き地獄紳士666@LSロワ】 【装備】:ゲート・オブ・バビロン@アニロワ2nd(※特殊仕様)、闇の書@アニロワ1st、      クラールヴィント@アニロワ1st(ネコミミストと同じ物)、バリアジャケット 【所持品】:支給品一式、エリクシール瓶に入ったシャリダムのイケナイ触手汁、       エニグマの紙「漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人」 【状態】:闇の書発動、不死者化?、大量の精気(エロパワー)吸収 【外見】:黒いリボンドレス、背中から黒い六翼。長い髪は白く染まり後ろに降ろしている。眼鏡外し。 【思考・行動】 基本:極悪外道になった後、ネコミミストの前に敵として再会。ネコミミスト心から愛してる。 1:マーダーとして悪行を積む。 2:戦力強化を図る。 3:ネコミミストの前に敵として現れ、最終的に喰われる。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せるアイテムをどれも『一応は何とか使いこなせ』ます。  エリクシールと爆薬は使い切りました。 鳳凰寺風の剣は病院に起き捨て。  浄玻璃の鏡の回数制限は残り1回。凛の宝石は残り7個。風の矢は残量不明。  懐中時計型航時機『カシオベア』に(原作のように)ヒビが入りました。動作などへの影響は不明です。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せる新たに判明した物及び追加された物。  アニロワ1stからディーヴァの剣、ルルゥの斧、マイクロ補聴器、  鳳凰寺風の弓と矢、鳳凰寺風の剣、凛の宝石×10、闇の書。  加えて――マテリアルブレード@テイルズロワ@XXX、クラールヴィント@アニロワ1st@XXX、  不死の酒@アニロワ2nd(既に使用済み?)@XXX。 ※闇の書と融合しているため、その内に言うまでもなく―― ※エロスの鐘の煩悩寺と、エロ師匠の(ついでに大暴れ鉄槌の)精気を吸収しました。  影丸の魔力を吸収したため、8割がた使いこなせるようになりました。 ※「漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人」は一度だけ秘められた力を使う事が可能です。詳細は不明。自身に関係する事? ※書き手としてのメタ視点能力を使える様子。別に全知ではない。 |237:[[―――&Black Joker]]|投下順に読む|239:[[そのチートに賭ける!!]]| |239:[[そのチートに賭ける!!]]|時系列順に読む|240:[[集まるヒダネ]]| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|&color(red){忘却のウッカリデス}|| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|ミスターマダオ|| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|神行太保のDIE/SOUL|| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|地球破壊爆弾No.V-7|| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|クールなロリスキー|| |239:[[そのチートに賭ける!!]]|派手好き地獄紳士666|240:[[集まるヒダネ]]|
「それじゃあかがみん、次の衣裳はねー」 それは、地球破壊爆弾がロリスキーと共に新たな衣裳を選んでいる時の事だった。 徐々に吸血鬼の時間は近づいてきている、だがまだ明るめの時間。 「できればあんまり恥ずかしくないのがいいんだけど……」 「判ってるよー、かがみん。じゃあこれはやめとして」 「ちょっと待って判ってなかったでしょ今やめたのナニよ!?」 「あはは、それは大人の秘密ってやつだよ」 和気藹々と衣裳を選ぶ全裸の少女達。 地球破壊爆弾は少し考えた末に――一瞬だけ、鋭い目をした。 「……どうしたの、こなた?」 「ん? なんでもないよー、かがみん。じゃあかがみんの衣裳はこれだー!」 そう答える地球破壊爆弾の笑顔は満面のこなた顔。他に言いようの無い平和な表情である。 「ちょっ、なによそれ!? スケスケじゃない!」 「ネグリジェっていうのはそういうものだよ、かがみん」 「いやだから、なんでネグリジェなのよ」 「何を言うのかなかがみさん、夜はパジャマに着替えるのがお約束ってもんでしょ」 そういう地球破壊爆弾は既に、頭に三角帽子を乗せた子供物パジャマに着替えていた。 「で、でもわたし達、吸血鬼よ? 夜は逆に活動的になるんじゃ……」 「別にパジャマのまま活動的になったっていいじゃない。枕投げのノリでさ~」 (う、そう言われると筋が通ってない筈なのに理解できそう……って、ちょっと待て) 意味不明なのに納得してしまいそうになったが、すぐに冷静になる。 「それならあんたがネグリジェを着なさい。わたしがそれ着るから。  ていうかネグリジェ一枚で派手に動いたら色々見えすぎるでしょーが!」 「ちぃっ、気付いたかかがみん」 「気付くに決まってんでしょ!」 怒るロリスキーに地球破壊爆弾は潤んだ目を向ける。 「でも、お・ね・が・い・だよかがみ~ん。  それにわたしはもう眠くて眠くて、また脱ぐなんてめんどくさーい」 「いやだから吸血鬼がなんで夜に眠くなるわけ!?」 地球破壊爆弾はその問いに、ポッと顔を赤らめた。 「だって、かがみんが激しかったんだもん」 「ちょ!? 何を言い出すのよこな……あっ」 ロリスキーはハッと『ランチタイム』の事に思い当たった。 地球破壊爆弾がアーカードで無ければ確実に死んでいた、獰猛で欲望に任せた食事。 「あのさっきの、やっぱりダメージ有ったの……?」 「いやあ、大した事はないよ? 『さくやはおたのしみでしたね』ぐらい疲れただけー」 「だ、だからそんなのに喩えるなー!」 赤くなるロリスキーを地球破壊爆弾はくすくすと笑った。 「そういうわけだから、おやすみなさーい」 「あ、こら! 待ちなさいこなた!」 ロリスキーは慌てて止めたが、地球破壊爆弾は既にわざとらしい寝息を立てていた。 狸寝入りだろうが、色々とどうしようもない。 ロリスキーはがっくりと項垂れると、言った。 「……判ったわよ。隣の部屋で着替えるから」 「えー、かがみんのイケズー……むにゃむにゃ……」 「寝言はもう少し自然に言いなさい!」      * * * (ほんと、妙なことになっちゃったなあ) ロリスキーは言った通り隣の病室で、体に纏っていたバスタオルをはだけた。 これだけの事など今更だが、それでも同じ部屋で堂々とというのは気が引ける。 そして地球破壊爆弾の選んだ殆どシースルーのネグリジェとショーツを手に取った。 着替えはすぐだ。ショーツに脚を通し、ネグリジェに首を突っ込んだ。 ただそれだけ、一瞬で終わった。 「…………いや、これは人前に出られる格好じゃないでしょう」 胸の膨らみが明らかなどころか、その頂点まで殆ど透けている。 地球破壊爆弾のみならず、ウッカリデス、マダオ、DIE/SOULにまで見られるには ちょっぴり刺激的すぎる格好だと言わざるを得ない。 「や、やっぱりこなたには悪いけど上から別な服を……」 「こなた、こなた、こなたか。随分と愛されているようだね、彼女は」 「誰!?」 突如聞こえた囁きに周囲を見回す。 ――僅か数歩後ろに、彼女は立っていた。 (ウソ、こんな距離に近づかれるまで気付けなかったなんて!?  ううん違う、こいついきなり気配が現れたんだ!) 彼女はうっすらと笑みを浮かべて見せる。 「最も判らないではないがね。彼女のあの姿は世界で最も美しい形の一つ、  ロリショタの一員なのだから君が惹かれるのは当然の事だよ、ロリスキー」 「何者なの、あなたはっ」 声をあらげるロリスキーに向けて、彼女はしぃっと口に指を当てた。 黒いリボンの塊のような奇妙な服がふわりと揺れている 「私の名は、まあ黒猫とでも呼んでくれれば良い。黒い天使でもいいがね。  ああ、静かに話そう。ロリである彼女の休息を妨げるのは気が引けるからね」 黒猫は閑かにそう言って話を切りだした。 「ところで君は対主催なのかな? それともマーダーなのかな?」 何を聞くのかとロリスキーは思った。答えは考えるまでもない。 「対主催よ。わたしもこなたも、わたしの仲間達はみんな対主催だわ」 「なるほど、そうか。では聞こう。何故君は彼女を信頼している?」 「……え?」 黒猫は声を漏らさず、口元だけで笑みを浮かべた。 「知っているだろう? 彼女の凶暴な生き様をね。  なら判るはずだ。彼女は決して、皆で力を合わせる穏便な存在ではない。  むしろマーダーに近い」 「……こなたは、対主催よ。マーダーになんてわたしがさせない」 ロリスキーは毅然と答える。それが答えだ。 自分がいる限り、もう地球破壊爆弾をマーダーになんてさせない。 「なるほど、改心したマーダーだというのだね。  では聞こう。君は本当にそれを判って言っているのかな?」 「それってどういう……」 困惑するロリスキーに黒猫は問い掛けを投げた。 「君は地球破壊爆弾がこの会場で何をしてきたかも知らずに言っているのだろう?」 「ぐっ」 ロリスキーは歯噛みした。確かに、知らない。 地球破壊爆弾がロリスキーに出会う前、何をしてきたのかを。 DIE/SOULなどは地球破壊爆弾を敵視していたのに、そこに何が有ったのかを聞いていない。 「でも、もうそれは半分も無いわ。わたしがこなたに会ってからの時間の方が長いじゃない」 「それでも過去が消えるわけではない」 ロリスキーの反論を黒猫は容易く断ち切る。 「彼女への憎しみが君を侵すかも知れない。彼女への怒りが君を焼くかもしれない。  あるいは彼女に傷つけられた者の怯えや恐怖が君に向けられるかもしれない。  何も知らずに接していた相手が、彼女に全てを奪われた犠牲者かもしれない」 「それ……は……」 その言葉を聞き流すにはロリスキーは善良すぎた。 「君は彼女の過去を知らなければならないのだよ、クールなロリスキー。  彼女と共に歩もうと言うのならばね」 黒猫はそう言って懐から奇妙な鏡を取りだした。 ――その鏡は、全ての罪を映し出す。 「だから、私がその手段を与えてあげよう」      * * * 「くそ、あの二人またおせえな」 呟いたのはダイソウ。神行太保のDIE/SOUL。 ベルセルクのガッツ姿をした男だ。 服を着てくるからといって出ていった、地球破壊爆弾とロリスキーの帰りが、遅い。 「ふん、また着せ替え合いでもしているのだろう。微笑ましいじゃないか」 応えたのは地球破壊爆弾と双璧を為すもう一人のアーカードだ。 ただし漫画ロワから出展の彼女はロリカードの姿をしていた。 何故かブルマタイプの体操服姿で、太股が目に眩しい。 「それとも艶めかしいかな。あるいは妖しい。そう、妖艶の方の妖しいかもしれないなあ?」 「………………」 その言葉に悶々とした想いを抱え込むのが、忘却のウッカリデス。 ゼロの仮面を付けたルルーシュというルルーシュそのものでありながら、その色がどうも薄い。 その心はルルーシュの特性よりも、微妙な空気加減と、そして恋慕と嫉妬に煮えられていた。 (ロリスキーさん……また、あいつと?) 叶うわけがない恋。競争相手が強大であり、偉大な故の苦しみ。 彼にとって地球破壊爆弾は恋敵であり、更に善良な恩人かもしれない存在だった。 「だからって何時も何時もこれじゃ襲撃が有った時に危険すぎるだろうが。  次は早く帰るように言っておくぞ」 ダイソウがそうぼやく。 ――マダオが、目を細めた。 「そうだな、その方が良い。私達も何らかの対処をしなければならない事態だ」 「なんだと?」 椅子で脚をぶらぶらさせていたマダオは急に立ち上がると、鋭い目で言った。 「魔法的な知覚手段にジャミングが掛かった。何者かは知らないが、姿を見せろ」 空気が、張りつめた。 カツカツと、廊下から足音が響いた。やがて姿を見せたのは一人の少女。 無数の黒いリボンがはためいている。 「そんなに緊張する必要は無いよ。今のところ、私に戦うつもりはないのだからね」 黒猫が、そう言った。 「私はただ、君達に一つ見せ物をしに来ただけだとも。  ああそうだ、ロリカード。漫画ロワの君には特に重要な見せ物だろうね」 「……なんだと?」 突然の闖入に眉を顰めるロリカードへ、666は言葉を向ける。 「漫画ロワの、完全完璧に真っ当な対主催の一人が殺された時の話を見せておこうと思ってね」 666は背に隠していた左手を前に出した。 その左手は途中から奇妙な空間の裂け目に呑み込まれて消えている。 空間に魔法の映像モニターが浮かび上がった。 ジャミングをかけている当人にとってジャミングに波長を合わせた魔法通信など容易な事だ。 そこに映し出されたのは空間の先らしい手鏡を掴んだ左腕と、 その腕に手を添えて手鏡を眠る地球破壊爆弾に向ける――クールなロリスキーの姿だった。 「君達にこれを見せておきたいんだ。私の目的はただそれだけさ」 映像モニターに、彼女の見る情景が映し出された。 クールなロリスキーの持った浄玻璃の鏡が、このロワが始まってから地球破壊爆弾No.V-7の全てを映し出す。 そのある程度を彼ら、彼女達は知っていた。 だが全員が見聞きしたわけではない光景も、有った。 それらは地球破壊爆弾の七変化と共に語られる。 例えばニコロワのジョーカーとの戦い。ニコロワのジョーカーの振るう恐るべき力。 それと戦い抜き逆に圧倒した地球破壊爆弾『キングゲイナー』の脅威。 あるいは主催に地図を作り、その一方でウッカリデスに空に見える何かについて話す光景。 これは『長門有希』の姿で為された事だ。 今取っている『泉こなた』の姿だって大暴れだ。ロリスキーを吸血鬼にしたし、 その時に気にせず跳ね飛ばしたウッカリデスと最速の人は仮面が無ければ死んでいたかもしれない。 ホテルで見せた『地球破壊爆弾』そのものの姿も怖ろしい。 その後の光景でロリスキーに語った所によれば、この姿の時に殺すと起爆してしまうという。 ホテルでの戦いと言えば『銃撃女・ラジカルレヴィ』形態も強烈な物だった。 スーパーキョン・タイムで時間遅滞とか反則にも程がある。 その前には投影なんて技も見せる多芸さだ。 鎖鎌と鳳凰寺風の剣を使って、長門の姿でもDIE/SOULと渡り合って見せた。 「あれはホテルで俺と戦った時の……」 そう、DIE/SOULと戦っていた。何の理由もなくただ闘争の為だけにDIE/SOULと戦っていた。 その前に見せた、一番最初の光景はもっともっと明白で判りやすかった。 『良い月だと思わないか? ◆10fcvoEbko氏……いや、衝撃のネコミミスト。  こんな良い月の日に殺し合いをしろと命じるなど、主催者は分かっているとは思わないか?  さあ闘争を始めよう、フリークス! さあ、支給品を確認しろ! まだか!?  HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY!』 それが始まりだったのだ。 『ならば仲良く殺してやろう、ヒューマン』 『アーカード』として地球破壊爆弾は血と闘争に嗤っていた。 『ではな、スクライド。私の糧として砕け散れ』 それは簡潔に、純粋無比でシンプルな無差別マーダーの姿だった。 上映を見終えてロリスキーが地球破壊爆弾に何か話しかけようとした所で、モニターが消える。 黒猫の腕は旅の扉から引き抜かれ、その手の中にあった浄玻璃の鏡も懐にしまわれた。 「以上で私の上映は終わりだ。なに、たったこれだけの事だよ」 黒猫はそう言うとうっすら笑って見せる。 「これらの情報を元にどう動くかは君達の問題なのだからね」 彼女の目は、地球破壊爆弾の仲間である3人に向けられていた。 「……結局、あいつはアーカードだったって事だな」 DIE/SOULは自分でも不思議なほど冷静に、事実を噛み締めた。 判っていた事だ。彼はホテルで彼女――こなた、長門、レヴィ形態――と激闘を繰り広げたのだから。 「待ってください、DIE/SOULさん! それでもジョーカーに抵抗する為には……」 「元から俺は一時的に休戦しただけだ。休戦を続行してやってもいいが、奴を倒すなら喜んで加わるさ。  だが、この件について大事なのは俺じゃねえ。  問題は奴に殺された漫画ロワの書き手……その同じロワで書いていた、仲間だ」 ぎらりと睨め付ける。もう一人のアーカードを。 漫画ロワのミスターマダオ。ロリカードの方のアーカード。 同じ原作ロワの書き手、それも明らかに真っ当な対主催を殺された対主催の書き手だ。 「テメエはどうする? マダオ」 マダオは嗤った。 「なに、考えるまでもないだろう」 しゅばっと敏捷な音を立てて腕を伸ばす。その肉体は吸血鬼の回復力によりほぼ万全。 武器はトライガンにおいて最強の個人兵装と呼ばれる巨大十字架型兵器、パニッシャーが有る。 ザ・ワールドも使えるし、漫画ロワ書き手としての自力も有る。 そう、闘争の準備は既に万全なのだ。 「ちょっと地図氏と殺し合ってくる」 「だめです!」 その前にウッカリデスが立ち塞がる。 「ほう。どうした、ウッカリデス。映像が現在に繋がった以上、あれは真実だろう。  ホテルでダイソウと戦った事も間違いない。それでも奴を、おまえが庇う理由があるのか?」 ダイソウが無言で頷く。ウッカリデスは即座に反論した。 「ありません。でも、殺し合いを止めるには十分な理由と、根拠が有ります。  地図氏はロリスキーさんに止められる形で、マーダーを止めた」 「だがやった事は変わるまい。あの過去にはどう落とし前を付けさせる?  そもそもロリスキーは本当に奴を抑えられているのか?」 ウッカリデスは言った。 「判っています。だから、話し合ってきます」 ほう、とマダオが息を吐く。ウッカリデスが続ける。 「僕が、理由を聞いてきます。話を聞いて、理由を聞いて、話し合ってきます。  過去がどうあれ、危険であれ、地図氏は僕達の仲間でいてくれました。  そこにはきっと彼女がそうあれた理由がある。分かり合えないはずがないんです。  だからマダオさん。今は怒りを堪えて、待ってもらえませんか?」 「…………ふん、判った」 思いの外アッサリとマダオは引き下がる。 「言ってくるがいい、ウッカリデス。おまえが時折見せるその熱さは嫌いではないからな」 「……ありがとうございます」 ウッカリデスはぺこりと一礼をすると、部屋を飛び出していった。 「思ったよりあっさり引き下がったな」 DIE/SOULが意外そうな様子で問い掛ける。マダオは頷いた。 「ああ、元より私も、今現在マーダーで無いなら地図氏とは仲間でありたいからな。  同じロワの仲間を殺した事はそう簡単には許せんが、今や地図氏も仲間の一人だ。  仲間を殺した仲間を殺して誰も残らないなんぞ悲しいじゃないか」 「なんだと? じゃあどうして、殺し合ってくるなんて言ったんだ」 マダオはフンと鼻をならした。 「おまえは私や地図氏が何者であるかを忘れたのか?  アーカードにとって一度や二度の死は完全な滅びに繋がらない。  スクライドで出来ている書き手を殺した落とし前として何回か殺してやるつもりでは有ったが、  対主催として前に進む意志さえ有れば、少なくともこのロワを破壊するまでは共闘するつもりだったさ」 それが彼女の望む熱血展開。鬱展開を受け止め、その上で跳ね返し吹き飛ばす熱き血潮。 「……本当に反則だな、アーカードって奴はよ」 DIE/SOULは呆れたような、僅かに感嘆したような様子でそれを受け止めた。 ぱちぱちと拍手が響く。 「なるほど、それが漫画ロワの熱血展開か。素晴らしいな、君は。  その上にロリカードだなんて完璧な存在にも程がある」 「……まだ居たのか」 声の主は地図氏の忌まわしい真実を持って現れた少女、黒猫。 黒いリボンで飾られた全身はどこか不吉で、正に凶兆を告げに来たようだ 「だけど本当に良いのかい? ウッカリデスの信念は確かに貴いかも知れない。  だけど本当に……ウッカリデスは地図氏を説得できるのかな?  地図氏はそこまで信用できる人物なのか?」 マダオとダイソウは顔を見合わせ……歯を噛み締めた。 「行くぞ!」 「おう!」 二人は部屋から飛び出して、ウッカリデスの後を追った。 しかし。 全てはもう、遅かったのだろう。 地図氏とロリスキーが居る部屋に続く廊下の途中。 ほんの数十mの距離。 『その場所』の向こうには、『彼女』を追って部屋から出てきたロリスキーの姿が有った。 『彼』を追って部屋から出たマダオとダイソウと、『その場所』で視線が絡み合った。 そして『その場所』には。 “鳳凰寺風の剣で壁に串刺しされた”忘却のウッカリデスの姿と。 その前に立つ、地球破壊爆弾No.V-7の姿が有った。 鳳凰寺風の剣に視線が集中する。 そう、それは先程上映された地球破壊爆弾の過去の中で、 ホテルの戦いにおいてDIE/SOULに向けて使った地球破壊爆弾の武器に他ならない。 「ほら、やっぱり遅かった。私は巻き込まれないように消えるとしよう」 黒猫はそう言ってその場から姿を消した。 残されたのは、混沌だ。 動揺し揺れ動く視線が。 字体に混迷する思考が。 吐き出すはずの言葉が。 交錯し絡み合う、混沌の場だった。     + + + ほんの少しだけ、せいぜい一分かそこら前の事だ。 ウッカリデスは部屋から飛び出して、ロリスキーと地球破壊爆弾の居る部屋に走った。 だが丁度その中間で足を止めていた。 「君は実に不遇だ。報われないな、忘却のウッカリデス」 ウッカリデスは息を呑む。 「そんな……どうして、あなたが!?」 それは、嗤って話しだした。 「話す時間は殆ど無い。といっても実際に話す時間は考える必要は無いのだがね。  今からの僅か数秒は会話だけに使えば数十秒、いや数百秒にも匹敵する。  ああ、これは別に私の能力とかそういうわけじゃあない。バトルロワイアルではよくある事だ」 そして唐突な話題を上げた。 「ヘタレ化や空気化による自己の確立は、当人のキャラクター性によってキャラクターの侵触に  対抗するという意味において、侵触を防ぐ二つ目の方法に該当する。  君は空気化により『積み重ねの無い零の時期』におけるキャラクターの侵触を防ぎ、  その後に起きたイベントの結果、ロリスキーへの叶わぬ横恋慕によって自己を確立した。  更にその後も考察と、自らへのフラグ定義により生存確立を確かな物にしていった。  君の努力は尊敬に値する。別に意識してやった事では無いのだろうがね」 「一体何を言って……」 困惑するウッカリデスに向けて一方的に話し続ける。 「だが君は報われない。何よりロリスキーへの横恋慕が悲しいまでに届かない。  ロリスキーはギャルゲロワ最速の人に恋していたのだろう。  幸運にも、そして不幸にも彼は死んだ。  だが今度は地球破壊爆弾がロリスキーを吸血鬼化し、逆にその血を与え、支配ではない絆へと昇華した。  完璧だ。付け入る隙がない。  君がいくらロリスキーに恋しても、彼女の愛が君に向く日は来ないだろう。このままでは」 「……何が言いたいんだ」 そいつはくすりと嗤った。 「地球破壊爆弾からロリスキーを引き離し、そして上手くすれば君に靡かせてあげようと思うのだよ」 「……失礼します」 ウッカリデスは、答えもせずに再び歩き出した。地図氏とロリスキーに向けて。 「おや、聞かないのかい?」 「要りません。たとえ叶わなくても、僕はこの想いを汚したくない!」 そいつの前を素通りして目的の病室へと。 「もちろんだとも。君がそうだからこそ、意味がある」 『Lightning Bind』 向かおうとしたウッカリデスの体が、光り輝く輪に捕らえられた。 「な、何を――」 ライトニングバインド。魔法少女リリカルなのはの、設置型捕獲魔法。 指定区域内に侵入した対象を拘束するトラップ型の魔法。 「それにしても君は本当に報われない。  空に見える主催の居城。それが見える数少ない存在。地図氏の口止め。  それらを統括し『脱出に役立つ情報を握り込む事による生存フラグ』として定義し直した。  君はフラグによって身を守っていたのだ」 ウッカリデスは息を呑む。そして気付く。 (そうか、先程の地図氏の上映で情報が皆に――) 「いや、それではないさ」 そいつは、言った。 「あの程度ではまだ君の情報には価値がある。居城そのものはまだ見えないのだから。  だが、もうしばらくするとそのフラグは意味の無い物になる事が決定してしまった」 (え…………?) 「そう、それは時間的にまだの話さ。本来なら知り得ない話。だがね、そういう物なんだ。  君しか見えないというアドバンテージは既に失われてしまった」 そいつの背後の空間が揺らいだ。 次の瞬間、そこから射出された“鳳凰寺風の剣”が一瞬でウッカリデスの体を貫き、壁に串刺していた。 「本当に報われないな、君は。  あそこまで身を張って熱血し恋敵の為に走ったというのに、君の死は争いのために使われるのだから。  だからね、私は思うのさ。せめて君の死がロリスキーの心に疑惑を抱かせ、地図氏から引き剥がす事を。  君が死した事により、ロリスキーの心の比重が少しでも君の方に傾く事をね。  そうだ、今ならまだマダオも悔やんでくれるだろう。彼女も君に想うところがあったようだ。  それでも報われないのかも知れないが……おっと、もう聞こえてはいないか」 ――ウッカリデスは既に事切れていた。 異変を感じたのかいち早く部屋から飛び出した地球破壊爆弾が駆け付ける。 その直後にマダオとダイソウが、ロリスキーが部屋から飛び出した。 しかしその場には、既に地球破壊爆弾以外の誰かが居た痕跡など何も残っては居なかった。 ライトニングバインドは切れ、地球破壊爆弾が投影する事の出来る鳳凰寺風の剣がウッカリデスを串刺している。 ただそれだけだった。    / / / 「さて、引き金は引かれた」 ウッカリデスを殺した真犯人は離れた場所から病院の様子を見守っていた。 にやりと笑みを浮かべる。 「これから銃を構えるのは君達だ。照準も君達が定める。  弾を弾倉に入れ遊底を引き安全装置を外すのも君達だ。  だが。  殺すのは私の殺意だ」 黒猫こと派手好き地獄紳士『666』は、愉しげに嗤っていた。 「終わった後で教えてあげよう。あの場所で私という悪が踊っていた事を。  そして憎んでくれ。私がした事をね」 更なる悪行を重ねた事を誇っていた。 『しかし今のはどうやったのです?』 紙状態の、漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人ことフランシーヌが666に問い掛ける。 666は答えた。 「これを使っただけだよ」 その手の中にはヒビの入ったカシオペヤが有った。 「使用回数に制限が出来てしまったが、原作通りまだ使えそうだ。  原作でもっともよく使われた使用法、時間逆行もね」 それが種明かし。 ウッカリデスが殺された時、マダオとDIE/SOULに同行していたはずの666が、 廊下でウッカリデスと会話をした末に殺害を実行できた理由。 「そう、あの時間に私は二人居た。実に身も蓋もない種明かしだろう?  世界のルール上、既に話として定まってしまった内容を変える事は不可能だけどね」 666はウッカリデス達の前で地図氏の過去を上映し、ウッカリデスが別行動したのを見て、 これ幸いと時間逆行してアリバイの有る時間に殺害に走ったのだ。 戦闘力自体が上がるわけではないが、便利なことこの上無い荒技である。 『それも気になりますが、他にも気になりますね』 「ほう。なにかな、フランシーヌ様」 紙切れのフランシーヌが666に問い掛ける。 『ウッカリデスのフラグが意味を為さなくなる、とはどういう事ですか?  まだ未来に行ってはいないはずですが』 「ああ、それか」 666は躊躇い無く答えた。 「キャラクターの侵触を受けなければ、私達はこのロワを同時に外からも認識する事が出来る。  外からロワを認識する手段を用意する事でキャラクターの侵触を防ぐ効果も有る。その逆だ」 それこそが書き手としてのメタ視点能力。 「これこそがこのロワにおいて制限された、書き手としての性質の一つだ」 『成る程。では……』 ニコニコロワのジョーカー達は、キャラの侵触を防ぐ方法を三つに分類した。 一つ目は複数のキャラを使い分け、侵食の方向性を分散させて速度を緩めること。 地図氏やギャグ将軍などがこれに分類された。 二つ目はキャラに頼らなくても十分通じる圧倒的な個性で、侵食を跳ね除けること。 速筆魔王氏、蟹座氏などがこれに分類された。 更に666はウッカリデスもこれに分類していた。ヘタレや空気、平凡もキャラ性の一つだったのだと。 この理屈で言えばtu4の言う『空気化による侵触防止』もこれに分類される事になる。 同時に三つ目の分類にも掛かる手段だろう。 三つ目はそもそも侵触自体を無くす事。 例えばキャラの個性を一時的に隠し誰でもない者になる等だ。 ニコニコロワのジョーカー達は全身を覆い隠す事でそれを為した。 だが、あるいは。 『666さん。あなたは誰ですか?』 「誰、とは?」 『闇の書を使わない、このロワの過程で得た要素を全て抜いたあなたの素体。その原型は誰ですか?』 あるいは……原型の存在しないオリジナルキャラクターとして在ればどうなる? オリジナルキャラクターの侵触など有りはしない。 その存在は書き手ロワ2ndという環境を内包して形作られていく。 例えばそう、猫子頭の鬼軍曹、その初期形態のように。 それは一つ間違えば薄すぎる個性により空気化する危険な行為。 あるいはロワ内におけるより強固な自己を求め、キャラの形を必要とする。 だが強烈な特性、例えばロリコンショタコンステルスいじめっこのド変態属性(多分、誉め言葉)で内面を定義し、 特殊な支給品で自らの個性を定義し、他キャラクターとの繋がりを盲目的な想いで定義し、 ロワ内での有用性を貴重だったマーダーになる事で定義し、更にロワ内の過程で自身の特色を定義する事に成功すれば? それは全て仮定に過ぎない。 その様な効果が有るのかも、そもそもそれを目的に誰かが行動したのかも一切が不明だ。 もしそうだとしても、それを知っているのはロワ内の当人だけだろう。 だがもし仮にそういう存在が居たとすれば。 派手好き地獄紳士『666』は笑みを、どこか邪悪な細い笑いへと変えて言った。 「私は、私だとも」 もしかすると、このような存在になるのではないだろうか。 &color(red){【忘却のウッカリデス@アニロワ2nd 死亡】} ゼロの仮面(蝶高性能)はまだ被ったままです。 【夕方/E-8/病院内】 【アーカードとかは行く】 【地球破壊爆弾No.V-7@アニロワ1st】 【状態】:健康 【装備】:裸にバスタオル 【道具】:支給品一式、着替え用の衣装(複数)、アダルトグッズ(大量)、未定支給品×1(本人確認) 【思考】:??????  基本:『こな×かが』を死守。けど……  0:??????  1:次に何をするか考える  2:ごめんね、ウッカリデス。やっぱりかがみんはこなたの嫁です  ※基本的に中身はアーカードで、CVは平野綾です  ※変化する姿に7つのバリエーションがあるらしいです。  【1:地球破壊爆弾】【2:アーカード】【3:長門有希】【4:泉こなた】  【5:銃撃女ラジカル・レヴィさん】【6:キングゲイナー】【7:1~6とか目じゃないよ?びびるよ、まじで】  ※クーガーの早口台詞が言えます!  ※鎖鎌、鳳凰寺風の剣、ソード・カトラス、ノートPCの投影が可能です。  【スーパーキョンタイム】  地図氏以外の者はゆっくりとしか動けなくなります。一度使うとそれなりの時間使用不可能です。  【地図氏の地図】  参加者の位置、生死を含めた地図を投影できます。※長門有希の状態でのみ可能。  使いすぎるとアレなので、毎晩0時にのみ使うことにします。 【クールなロリスキー@漫画ロワ】 【状態】:不死者、吸血姫、 【装備】:すけすけのネグリジェとショール 【道具】:支給品一式、着替え用の衣装(複数)、『村雨健二』の衣装、裸エプロン(キュートなシルク仕様)、      日焼け止めクリーム(大量)、未定支給品×?(本人確認) 【思考】:??????  基本:こ、こなたと一緒に……脱出か対主催  0:??????  1:みんなと今後について考えないと  ※容姿は柊かがみ@らき☆すたです。  ※何故か不死身です。  ※地球破壊爆弾No.V-7の血を吸い、独立した吸血姫となりました。 【ミスターマダオ@漫画ロワ】 【状態】:疲労(小)、強い決意、強い仲間意識 【装備】:パニッシャー@トライガン(機関銃:残り弾数100%、ロケットランチャー:残り10発)、運動服(ブルマ) 【道具】:支給品一式、未定支給品×1(本人確認済み) 【思考】:??????  基本:対主催! 殺し合いには乗らないが、マーダーは犬の餌。しかし……?  0:??????  1:友情! もっと仲間を探すぞ!  2:努力! 首輪をどうにかするぞ!  3:勝利! 見ていろよ主催者!  ※容姿はアーカード(ロリ状態)@ヘルシングです  ※地図氏(地球破壊爆弾No.V-7)がジョーカーではないかと思っています。    ジョーカーに襲われた事と合わせての考察はまだしていません。  ※自分が本物の書き手なのか疑問が生まれました。他の書き手を殺すのにわずかな躊躇いが生まれました。  【世界(スタンド)】  世界を使用でき、時止めも可能です(3秒まで)。  制限は漫画ロワに準拠――『体力の消耗』『時止めの再使用には10秒必要』『スタンドは見れるし触れる』 【神行太保のDIE/SOUL@アニロワ1st】 【状態】:疲労(小)、全身火傷(処置済み)、右指炭化(処置済み)、核鉄による治癒中 【装備】:竜殺し@ベルセルク、ガッツの装備一式@ベルセルク、核鉄『ブレイズオブグローリー』@武装錬金 【道具】:支給品一式、拡声器 【思考】:??????  基本:アーカード(地図氏、マダオ)は殺すつもり。(だったのだが……)  0:??????  1:対主催を集め、機を見計らって『孤城の主』を実現させ、アーカードを打倒する  2:それまでは、Wアーカードとも協力してゆく  3:どこかで義手が見つかれば助かるのだが……  4:ナナシと出会ったら、決着をつける!  ※容姿はガッツ@ベルセルクです。  ※神行太保・戴宗の神行法(高速移動)が使えます。  ※ラディカルグッドスピード腕部限定は、腕だけが速く動きます。  ※地図氏(地球破壊爆弾No.V-7)がジョーカーではないかと思っています。    ジョーカーに襲われた事と合わせての考察はまだしていません。  ※自分が本物の書き手なのか疑問が生まれました。他の書き手を殺すのにわずかな躊躇いが生まれました。 【夕方/E-8/病院から離れた場所】 【派手好き地獄紳士666@LSロワ】 【装備】:ゲート・オブ・バビロン@アニロワ2nd(※特殊仕様)、闇の書@アニロワ1st、      クラールヴィント@アニロワ1st(ネコミミストと同じ物)、バリアジャケット 【所持品】:支給品一式、エリクシール瓶に入ったシャリダムのイケナイ触手汁、       エニグマの紙「漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人」 【状態】:闇の書発動、不死者化?、大量の精気(エロパワー)吸収 【外見】:黒いリボンドレス、背中から黒い六翼。長い髪は白く染まり後ろに降ろしている。眼鏡外し。 【思考・行動】 基本:極悪外道になった後、ネコミミストの前に敵として再会。ネコミミスト心から愛してる。 1:マーダーとして悪行を積む。 2:戦力強化を図る。 3:ネコミミストの前に敵として現れ、最終的に喰われる。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せるアイテムをどれも『一応は何とか使いこなせ』ます。  エリクシールと爆薬は使い切りました。 鳳凰寺風の剣は病院に起き捨て。  浄玻璃の鏡の回数制限は残り1回。凛の宝石は残り7個。風の矢は残量不明。  懐中時計型航時機『カシオベア』に(原作のように)ヒビが入りました。動作などへの影響は不明です。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せる新たに判明した物及び追加された物。  アニロワ1stからディーヴァの剣、ルルゥの斧、マイクロ補聴器、  鳳凰寺風の弓と矢、鳳凰寺風の剣、凛の宝石×10、闇の書。  加えて――マテリアルブレード@テイルズロワ@XXX、クラールヴィント@アニロワ1st@XXX、  不死の酒@アニロワ2nd(既に使用済み?)@XXX。 ※闇の書と融合しているため、その内に言うまでもなく―― ※エロスの鐘の煩悩寺と、エロ師匠の(ついでに大暴れ鉄槌の)精気を吸収しました。  影丸の魔力を吸収したため、8割がた使いこなせるようになりました。 ※「漫画キャラバトルロワイアルwiki管理人」は一度だけ秘められた力を使う事が可能です。詳細は不明。自身に関係する事? ※書き手としてのメタ視点能力を使える様子。別に全知ではない。 |237:[[―――&Black Joker]]|投下順に読む|239:[[そのチートに賭ける!!]]| |239:[[そのチートに賭ける!!]]|時系列順に読む|240:[[集まるヒダネ]]| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|&color(red){忘却のウッカリデス}|| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|ミスターマダオ|249:[[惨劇『孤城への帰還』(前編)]]| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|神行太保のDIE/SOUL|249:[[惨劇『孤城への帰還』(前編)]]| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|地球破壊爆弾No.V-7|249:[[惨劇『孤城への帰還』(前編)]]| |222:[[ランチタイムの時間だよ]]|クールなロリスキー|249:[[惨劇『孤城への帰還』(前編)]]| |239:[[そのチートに賭ける!!]]|派手好き地獄紳士666|240:[[集まるヒダネ]]|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。