これより先怪物領域

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何の変哲もない道路。 そのザラザラのアスファルトの上に、真上に昇った太陽と相対する様な真っ黒な環がある。 カタコトカラカラ……カトコトカラカラと鳴くそれは、正体を明かしてみれば只のマンホール。地下への入り口。 勿論、濁り溜まった腐臭のする闇への扉は、同時に染み一つない青空のキャンバスへの覗き穴でもある。 ――カタコトカラカラ……カタコトカラカラ……ゴン、コロン、コロコロ……。○い口が鳴くのを止める。 開きっぱなしになった歯の無い口から這い出てくるのは黒い小人の行列――ではなく、一柱の魔王。 それは――混沌の仕掛け人にして、万能の代名詞。 最も慈悲深き悪魔にして、最も罪深き天使。短気にして寛大。鷹揚でありながら卑屈。学者の目聡さと怠慢さを併せ持つ男。 彼の名前は……、彼を呼ぶ際に必要とする言葉の組み合わせは……、その音の連なりが織り成す言霊は……、 ――速筆魔王LX。それが、彼の、此処での、名前、だ。  ◆ ◆ ◆ 「――うーん。やっぱりお日様は偉大だなぁ。僕をこんなにも安心させてくれる」 道路の真ん中。マンホールの隣り。そこに立った速筆魔王は大きく伸びをしながらそんなことを言う。 それにしてもこの男。どうして、マンホールの中から飛び出すなどという意味不明を実行したのか? 「変わったシチュエーションに飛び込めば、イベントの一つも起きると思ったけど……」 そう。殺戮競争開始の合図より一日の四半分を過ぎても、一向に死神は自分の首を刈り取りにやってこない。 見つけたのは後姿の少女だけで、得られたのは彼女がぬくもりを残した縞々の絶対防衛線のみ。後、首輪。 だったら、自ら死地に飛び込んでやろうと、奈落の底。吸血鬼の首を刈る断頭台の上へと頭を乗せに往ったのだ。 だが無人。無風。……彷徨えど狂王の迷路の内には誰も居らず、どの扉の向こう側にも驚きはなかった。 指を咥えて地上のパレードの喧騒を頭上に聞くだけ。そこで魔王一人の冒険は終わってしまったのである。 「……でも、トンネルの向こう側としては、ここは悪くないかな?」 彼が踏みつける道路。黒いのはアスファルトだからという訳ではない。炭の様に黒いのは言葉通り炭が積もっているからだ。 目の前にあるのは、天まで届きそうな漆黒のジャングルジム。今まさに落ちかけんとするバベルの塔。 正解は――F-3のホテル。無責任な首領が残していった死者の為のキャンプファイヤーである。 「もう大きなイベントは終わったっぽいけど、まぁさすがに話の一つぐらいはできるでしょう」 未だ火勢の衰えない危険な其処。未だ燻り続ける危険な底へと、魔王は喇叭を吹きたった一人の軍勢を進める。 五月の雨の様に降りかかる火の粉をなんともとせず、地面に散らばった炭の塊をタップで鳴らす楽器にして歩を刻む。 肌に感じるのは熱気。そして熱気から熱病。熱病から死病を連想し、足踏みを連ねる。ザッザッザッザッ……ザ。SE.by DQ. 「さっそく発見-♪」 でも、やはり無人。何故ならそれは『ヒトノカタチヲシテイナカッタ』のだから。無形のそれは人とは数えられない。 頭が一つ。頭が二つ――だ。計二つ。それ以外はもう数えられる様な形を訴えていなかった。故に魔王は無視する。 とりあえずは拾い上げて検分。鑑識に回す。三日掛かったが、その日の内に解ったことにした。改竄は得意である。 「モトロフ……ってことは、多分トウカリョウさんかな? こっちのルイズは……僕?」 胴体の代わりにぶら下っていた銀色の名札を確認して、魔王はそれを知り、そして苦笑する。おねーさんもびっくりだ。 もう一人の自分。ドッペンゲルガーではなく、遠い日から呼び起こされたペルソナ。それが、るるる……とは。 しかも! とてもとても素敵な笑顔を浮かべて終わっている。こちらは全く碌なこともなかったと言うのに。 「羨ましいね。僕の兄さん。――いや、この場合は姉さん? いやまてよ。妹になるのかな?」 まぁどっちでもよい。文字で綴られている分には意味は無い。それよりも、それならば――合体だ。 ♂と♀と言うのならば丁度都合がよい。あなたの凸とわたしの凹。丁度よいところを組み合わせましょう。 なぁに、やり方は解っている。プラモデルと一緒だ。穴に差し込むだけだ。さぁ、諸君。合体を望むか? >回答欄「    」 「ぱいるだ~……、オン!」 るるるの目玉を片方奪い彼女をゲゲゲにしてしまう。しかし間違えてしまった。取ったのは右目だ。だが手遅れだ。 ともかくとして、掌の上で転がる目玉を今度は自身の右目へと移植する。無許可の医療行為だが咎める者はいない。 いやそもそも医療行為ですらなかった。只の無理矢理だ。ならば、今後も裁判の心配はしなくてよいだろう。ホッ。 「――痛っ! さすがに痛いね。でも、これはちょっと面白いぞ」 俄かに持ち上がった右目消失ミステリー。彼の眼窩にあった元々の右目はどこに? 答えは次の行↓ アンサー。答えは簡単。るるるの右目を入れる前に、自ら抜き取ったのだ。ものすごく痛いが理論上は間違っていない。Q.E.D。 疑問が氷解したところで次のシーンへと移ろう。その右目には何が映るのか? これから何が写るのか? 「これが、姉さんの……るるるのルイズが見ていた世界なのか?」 姉さん。それが彼の妥協点であったらしい。まさしく妥協としか言えない着地点ではあるが、仕方が無い我々も妥協しよう。 それはさておき、今彼の脳内には二つの世界が送信されている。全くブレきった世界。立体映像にもならない世界。 生来の左目が見るのは今まで通りの普通?の世界。るるるの右目が見るのはるるるの世界。説明はできない。 「……おや? 何か見えるね。綻びが、取っ掛かりが……面白そうだ」 真っ赤な炎を舌の代わりにベロベロと振り回しているホテルの入り口。そのお歯黒の中に何か別のものが見える。 真っ青な水に満たされたアルカリ性っぽい25メートルプール。波は無し。ただ誘うようにツンと澄ましている。 これに対する選択肢は3つある。A:「飛び込む」 B:「飛び込む」 C:「飛び込む」 ――つまり、選択の余地はない。 「はたして、鬼が出るか蛇が出るか……?」 魔王は水も浴びずに炎の中へと飛び込んだ。尤も、水はこれから被りにいくのだから問題は無い。結果論ではあるが。 傍から見れば自殺行為に見えたかもしれない。そんなに大事な物が火事場にあるのかと泥棒に期待させるかもしれない。 でもまぁ、私は思う。速筆魔王LX氏を知っている私はこう思うよ。――『彼ならやりきるだろう』と。些か無責任ではあるが。  ◆ ◆ ◆ ※)これより、当SSはステレオ放送でお送りします。一緒に読んだ方が愉快なのでオススメ♪ ※)←が魔王視点。→がるるる視点。↑が神視点(嘘)。↓が紙視点(嘘)です。 「――……これは、閉鎖空間? まいったな完全に罠だ」                /『わあ、なんておいしそうなんでしょう。でも名前はどこに記せばよいのかしら?』 そこは真っ白な空間だった。サイコロの内側……と言えば解り易いだろうか? どうだろうか? 出たとこ勝負な点では合っていると思う。転がれば進むと言う点においても……。 しかし、潔癖な空間ではあったが清潔ではなかった。腐った何かがそこに立っていたからだ。                /真っ赤なビロードの包みを開くと、そこはとっても可笑しいお菓子のお家でした。                /屋主が亡くなったので、記帳しなければいけないんだけど。不可思議なことに文字が読めません。                /仕方が無いので黄緑色のコオロギに詩の意味を聞いてみました。 「クハハハ――! 閉じ込めておいても餌は出るのか! 安心したぞっ! ムカツクがなっ!」                /『特売セールは午後5時からだよ。でもお嬢ちゃんは特別サ! この金の卵をあげよう』 立方体の一面を垂れる汚物でペイントしていた男は、飛び込んできた生餌に舌鼓を打つ。 ぐるるぅ……と凶暴な音を立てる腹を持っているからには、それはそれは腹ペコだったのであろう。 そう言えば、今更ながらに思い出した。魔王はコンビニを探していたんだ。これは失念☆(※大嘘である)                /奥の壁に立てかけられていた柱時計がボーンボーンと鐘を鳴らし開始の知らせを告げます。                /たいへんです。はやくバイキングに参加しないと、お菓子が全て食べられてしまう。                /チョコレートの床の上に金の卵を転がし、私は一生懸命走りました。記帳は後にします。 「えっと……、どういう展開だろう? と言うかあなたは誰ですか?」                /『待って下さい! 私もその列車に乗ります。どうか置いてゆかないでっ!』 アリス・イン・ザ・ワンダーランド・オン・ザ・ホワイトジャングルとは意味不明にも程がある。 四角いマットの上でモンスターとタイマンさせられるなんて、パロロワの常識には無い。 パロロワ最強が、世界最強なのか? 別に興味はないが、男の子だったら妄想ぐらいはしただろう。                /蜂蜜色の練り飴でできたレールの上を行くビスケットの列車へとわたしは飛び乗ります。                /ああなんとか間に合った。綿菓子の煙突雲が入り込んでくるので窓は閉めておきましょう。                /後は白パンのソファの上でまどろみに揺られていれば……と、ノックの音がします。 「名前は無い。名乗る意味も無い。だが、まぁ、便宜上ここではnanasinnと呼ばれている」                /『お嬢さん。君はこの列車でどこまでゆくんだい? ところで、切符を拝見……』 餌に向ってはバカ丁寧すぎるかと、無名はバカ受け。△を折り、■を打って馬鹿笑いする。 この男。人の形をしてはいるものの、どこがどこだか解らない。ちっとも描写できない。 名前まで無いとはどういう了見だろうか? しかしまぁ、よい。フォローは簡単よ。                /赤い蝶ネクタイの箒は、車掌さんでした。しかし、なんということでしょう!                /わたしが切符を持ってないと知ると、片手に下げたバケツからベリージュースを撒き散らします。                /見る見る間に赤い液体は部屋を満たしてゆき、わたしは溺れそうになりました。 「名も無き怪物……ですか? 全く持って、ますます罠ですねコレは」                /『その名はレイルトレイサー! 嘘つく子供は食べちゃうゾ!』 名状しがたきソレに魔王は自分が嵌められたのだと勘違いする。選択肢はあったのだ。 と言っても表情は余裕のソレ。いやむしろ、嬉々としている。決して危機とはしていない。 ゴングの音は聴き逃したらしい。気付いた次の瞬間には化物の手が目の前にあった。                /わたしは逃げます柊の生い茂る道を――ああ、なんてツンツン! デレはどこかしら?                /銀色のカタツムリの上を跳び越し、煉瓦の上に敷かれた兎の皮を踏みつけ走ります。                /でもそれは追いかけてきます。赤と白の糸で縫い合わされた金管楽器の群れ。 「さぁっ! お前の苦し紛れを見せてみろ。それが最高の調味料になる――!」                /『カンラ――カンラ♪ 誰だ誰だ。私の歌にケチをつけたのは、もう一度聞いてもらおうじゃないか』 挨拶代わりの一撃を避けた生贄に、グチャグチャの塊はソースを要求する。かなりの横暴だ。 入ってきた客にもてなしを強いるとは、つくづく我侭な料理人である。でもまぁ、都合がよい。 つまりは、味付けは自由だと言ってくれているのだから。せっかくだからハバネロ味にしてやろう。                /金の管と銀の管。金の歯車と銀の歯車。金の鍵盤と銀の鍵盤。金の弦に銀の弦。                /煌びやかなそれは、ガチャラン、ガチャラン――♪ と、わたしを追いかけてきます。                /水色の蓮の上を走り、紫色の蔦を滑り、どこまでもわたしは逃げます。 「――フ。成る程。ボクの実力を見せ付けるには丁度都合がよさそうだ」                /『ああ。どうしてこんなことになったのかしら? どうしてあの人は怒っているのかしら?』 子安の声で魔王はそんなことを言う。子安と書いても母の様な声ではない。むしろ子供は泣く。 背負った鞄から抜き出したのは一本のバンブーブレイド。簡単に言えば竹刀。しかも虎柄の。 それを右手からぶら下げ子安――ではなく魔王は思案する。調理法は焼くか煮るか……?                /どこからともなく子守唄が聞こえてきました。耳を澄ませば、すぐ近くの様です。                /ああいけない。右足にはいた赤い長靴が居眠りを始めました。彼はここにおいていきましょう。                /左足にはいたオレンジのサンダルは頑張り者。でもやっぱり少しは眠いみたい。 「ゲハハッ! そんな玩具で俺と立ち向かう!? いや、いいぞ。『ソレ』がいい」                /『道場では靴を脱がんか! さぁ、パンを焼くぞ。小麦粉をまな板の上に広げろ!』 名前で呼んでもらえないソイツは下品に喜ぶ。相手がこれから足掻くその様を想像して。 だが、残念なことに君には想像力が全然足りなさ過ぎると忠告してやらねばならないだろう。 ほうら。竹を束ねただけの刀で◎が落ちた。◆も落ちた。次はどこだ? ▼か? ○か?                /粗相を怒られてしまいました。知らない国の知らない規律。正義は立場によるのね。                /ピカピカのレインコートを羽織って、わたしは一生懸命小麦の袋を引き摺ります。                /これをあの水玉毛皮の虎の口に入れれば、晴れて私の罪は許されます。 「ボクは別に特殊な能力は持っていないけど、それは弱いって意味じゃあない……」                /『さぁ、芽を出してのびてゆけ! 天まで届け、ジャックの豆の木!』 竹を振るうだけで肉の包みが破れ、骨の籠が砕ける。膿の血が零れて、鬼の泣声が轟く。 打ち鳴らされ箱の中に響く音は、あくまでパシンパシンという威力に相応しくない竹刀の音。 魔王は無造作に竹刀を振っているだけだ。剣道の真似事さえしていない。                /金平糖の畑に蒔かれた白い種が芽を吹き出し、萌え萌えと金管楽器に絡んでゆきます。                /豆色のそれはあっというまに意地悪者の姿をかき消してしまいました。                /さぁ、逃げよう。まだ練り飴のレールが溶けきるまでには時間があるから。 「ギッ! ……ざああッ――ま”ああ”あ”ああぁぁっ!」                /『柿の木の占拠は独占禁止法違反なので、栗の木の蜂が当たりますよ!』 勿論手足がバラバラになったぐらいでは化物にとってダメージにならない。それが化物だ。 落ちたあれの代わりになるこれを突き出して怪奇な存在は魔王に反撃する。 だが再びそれは回避される。技術があるわけでも、幻惑されているわけでもない。                /蟹の泡が落ちた黄金の踏み石をわたしは時計を片手に必死に走ります。                /S字カーブをアウトインアウト――で、コースアウト。ガードの外はまっ黄色の薔薇園でした。                /トゲトゲの棘がとっても痛いけど、わたしの零した赤色で薔薇さんが喜んだので結果オーライ。 「速筆魔王――自己紹介が遅れたけれど、ボクの名前は速筆魔王LXだ」                /『あぁ、なんということでしょう。薔薇の棘に名前を奪われてしまったわ!』 これこそ不要だったと魔王は笑う。そして動く――速く――速く――速く――速く! 速さを取り得にしている書き手は他にもいる。なので、ただ早いだけでは個性にならない。 彼の場合は速いだけでなく――強い――強い――強い――デタラメに強い!                /道程は振り出しに巻き戻ってしまいました。じゃあ今度は強くてニューゲーム。                /サイコロ振って――振って――振って――振って――振って――振って――振って!                /大丈夫。この調子なら、すぐに元のところまで戻れる。 「……ッズア”ぁ! ジュア――ィィイイエア”アアァァァア――!!!!」                /『パンパカパーン! パ、パ、パ、パンパカパーン♪ パパーン!』 言葉を忘れた怪奇の反撃を魔王は宙に舞い避ける。無防備な宙。追い詰められたかと思えたが、彼は走った。 真っ白だったために気付かなかっただけでそこに壁があった。そこを彼は走る。 尤も、壁の上を走るというのも尋常ではない。初めてやったのだとしたら拍手喝采ものだ。                /ゲートを潜って、わたしは螺旋階段を駆け足で上ります。一等賞は苺のタルト♪                /牢塔の頂上で眠り姫を押しのけベッドから白い空へとダイビング。                /レモンイエローの蝙蝠傘を落下傘代わりに100メートルを自由落下。ゴールは近い! 「――後ろだよ。耳が聞こえないのか? ――後ろだって。耳がないのか?」                /『シャンパンを用意して! 表彰台の一番上はわたしの指定席よっ!』 壁を蹴って跳躍。左手を添えたシュートの様に丁寧に魔王は汚物の死角へとインする。 そして、汚物がぐるりと半周するに合わせて自身も半周。勿論、声をかける度に一撃をくれている。 後ろ。後ろ。後ろ。後ろ……と、亀をいじめる漁村の子供の様に、魔王は竹刀を振るう。                /最終コーナーを曲がり――ああ、やっと追いついた! まだ列車は走ってる!                /苺マシュマロの崖を上り、一足先に先回り。そこから綿菓子の煙に飛び降りれば……、                /やった。わたしはお客様よ♪ 「!!! ――ッ! !!?! ――――――ァ”!?!! !!! ――!?」                /『何か大きな音がしとるようだけど、このまま列車を走らせてもよいんかい?』 残っていた目に映った魔王の姿にグロテスクなそれは目を見張った。 手前と遥か後方に二人の魔王? 見間違いだということは次の瞬間に解った――アレは残像だ。 目から消える前に魔王は動く。考えれば、一番新しい像が本物だ。しかし解っても間に合わない。                /半分半分の身体でできた二人の老人が氷砂糖の石炭を火にくべている。                /答えはもちろんイエス、イエス、イエス、イエス、イエス、イエス、イエス、……オーマイゴッド。                /氷砂糖だけじゃ足りないわ。ラムネも一緒にくべましょう♪ 「……フフ。面白い。これは実に面白い」                /『ああ。間に合った。さぁ、みんでお菓子を食べましょう☆』 サディストという訳ではないが、魔王はこの状況に歓喜していた。 やはり腕を振るってこその料理人である。食材をメッタメタにしてこそ料理人だ。 しかし食材も黙って調理はされない。食材としての最低限のプライドがある。                /一番大きなテーブルの上にのっているのは砂糖で作られた不夜城。                /虹色のねばねばを吐く蟻も、千代紙で折られた蜜蜂もこぞって頂上を目指している。                /わたしももちろんそれに参加するわ。ああ、蜂蜜の匂いがもう我慢できない♪ 「ズギャアアァァァアァァアアアァァアアアァァァァァアアァァ――ッ!!」                /『さあひょうしょうしきだ! なにぃっ リュウがいない――?』 抑えられないグロ描写衝動――そんな名前をつけられた必殺技。それを化物はぶちまけた。 魔王を狙ってか? いや、当てられるはずもない。だから真上に。絶頂するかのようにそれを天井に叩きつけた。 若さ溢れるその粘液は最悪の雨となって部屋中に降り注ぎ、事後の匂いを充満させてゆく。 こうすれば本人とて無事には済まないが、元々誰も無事には済ます気はないのだからそれは一緒だ。                /彼はどこにいったのかしらね? でもいいわ。さぁ、みんなでシャンパンを振りましょう。                /一等賞。二等賞。三等賞――全部わたし。大変ね、わたしの足は二本しかないのに。                /スコールがお菓子の部屋にまんべんなく降り注ぐ。まるでいっぱいの箒星。                /ああ楽しかった。さぁて、金の卵に書かれていた数字は何番だったかしら? サイコロは転がり終えた。こちらの出目は――『●』                /サイコロは転がり終えた。こちらの出目は――『●』 ――『●』『●』:スネーク・アイズでゲーム終了。親の総取りです。  ◆ ◆ ◆ 壁に背を預け、残った四肢で身体を支えながら名無しの化物は再び真っ白へと染まった部屋を見ていた。 白と言っても、青臭く咽る様な死臭を撒き散らす嫌悪すべき白である。 何もかもをも溶かしてしまうその白濁液は、彼の身体の半分も溶かしていたが、その顔に浮かぶのは安堵の笑みである。 自身を数に入れても最早この部屋の中に動くものはいない。彼を打ちのめした男の姿も見えなくなっていた。 その死に様を描写できないことだけが心残りだが、道連れなら悪くない。そう怪物が考えた時――、 「悪いけど、死んでませんよ」 ――魔王の声が壁の『後ろ』から聞こえた。  ◆ ◆ ◆ 「いやあ、まったくたまんない特技を持っていますね。毒がないとしても、さすがにアレは喰らいたくない」 魔王は、壁の中にいる名前の無い何かを見てケラケラと哂う。それは今まで死闘を演じていた者のそれではない。 翻って化物の方は信じられないといった表情である。先程までの威圧感溢れる狂相は見る影も無い。 「それだけ驚いているところを見ると、あなたは本当にそこから出られないんですね」 声だけを頼りに彼を探す怪奇に、魔王はクスリと息を零す。そう、最初から勝負などではなかったのだ。 るるるの魔眼で不可思議な眼力を手に入れた魔王には、この結界の出入り口が見えていると言う、それだけの話。 「じゃあ、ボクは一足先に戻らせてもらいます。あなたも此処から出られるとよいですね」 ――返事はない。只の屍のようだ。  ◆ ◆ ◆ 焼け落ちるホテルを背後に、魔王は至極真っ当な道路の上を闊歩する。次こそはコンビニだ。 爛々と輝く両目。しかし、右目が見せてくれる世界はあまりにも頭が痛い世界。――じゃあ、ウィンクしよう。 「いやしかし、探せば面白いこともあるもんだ」 片目を瞑り、両手を振って魔王は真昼の街を往く。 いやしかし、『面白いこと』で済ませるのかよこの男は。そうなのだ済ませるのだ。これが筆頭の貫禄である。 その普通の振る舞いが異次元。キャッチボールで魔球を全力投球。異世界から来た男。それが――、 ――速筆魔王LX。アニロワ2nd最強の存在のその有様なのである。 【nanasinn@テイルズロワ 死亡】 【昼】【F-3 市街地】 【速筆魔王LX@アニロワ2nd】 【状態】:モードゲアス・反転のるい~ず、疲労(小)、空腹 【装備】:虎竹刀with千年パズル、蟹座氏のパンティ(紺と白のストライプ) 【道具】:支給品一式、首輪×3(ボイド@漫画ロワ/美形元帥@アニロワ/激動のトウカリョウ@アニロワ2nd) 【思考】  基本:バトルロワイアルを満喫しよう  1:今度こそコンビニだな。ランチ&放送だ♪  2:誰も見つからないなら、首輪を解析して暇を潰そう  3:別に何エンドでもいいんだけどね  ※容姿は相羽シンヤ@テッカマンブレード。もちろんCVは子安。  ※特殊能力はないけど、人類最強。  ※蟹座氏の秘部を見ましたが、紳士なので公言しません。  【虎竹刀with千年パズル】  今までパロロワに参加したことのある作品の原作で登場、紹介された全てのゲームを召喚できる。  ただしこちらから選択はできない。賭ける対象は武器使用者が選ぶ。合意は不必要。  【モードゲアス・反転のるい~ず】  右目にはめ込んだるるるのるいずの眼を開くと、世の中が違って見える。  常人には見えない何かが見えることもあるらしいです。

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