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(8)エ改
問題文を置換し直すことで活用するべきでしょう。
置換例
「取締役会の決議により定めることができる」 を
1.『取締役会の決議により定めることができない』
2.『取締役会の決議により定めることができる場合がある』
3.『取締役会の決議により定めなければならない』
▼根拠 及び それぞれの置換例における解答
まず、原問について整理しておきます。
原問は、
「株主割当てをする場合において、取締役会で募集事項を決定することができる」は
「公開会社と公開会社でない会社のいずれにも当てはまるか」
というものです。
原問の解答は、
- 公開会社 → 当てはまる
- 公開会社でない株式会社 → 当てはまらない
となります。
公開会社でない会社は、定款の定めなくして取締役会に募集事項の決定の委任ができないからです。
本肢は、第28問の前に書かれた注釈の
「問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めの無いものとして解答する」
という、問題文から離れた場所にある不親切なルールを根拠に、『明らかに誤りである!』と判断することを期待された問題です。
そもそも本肢の会社が『取締役会設置会社なのかどうか』さえ不明です。
本試験においてはアイが明らかに誤りで、オが正しいので、もやもやしたウエ(特にウ)の判断は回避するべきでしょう。
以上を踏まえての、エ改です。
エ改では、『第三者割当ての場合はどうか?』とする問題です。
エ改の解答は、
- 公開会社 → 当てはまる
- 公開会社でない株式会社 → 当てはまるときもあるし、当てはまらないときもある
となります。
公開会社でない株式会社では、
- 原則、株主総会の特別決議で募集事項の決定をする(会社法199条2項)
- 株主総会の特別決議で、募集事項の決定を取締役又は取締役会に委任できる(会社法200条1項)
(・譲渡制限株式の第三者割当てなので、種類株式発行会社であるときは、この委任について当該種類株主総会の特別決議も要する。ただし、この決議を要しない定款の定めがある場合と、この種類株主総会において議決権を行使できる種類株主が存しない場合を除く。)(会社法200条4項)
のでありますから、
第三者割当ての場合、公開会社でない株式会社が取締役会で募集事項を決定することは
『できるかどうか』でいえば、『できる』
という結論になります。
(この考えでいくと、正誤は○となります)
※原問と異なり、委任は株主総会の特別決議で行うので、定款の定めの有無は、募集事項の決定を『委任できるかどうか』について、問題となりません。
ただし、『公開会社でない会社が、取締役会の決議で決定できる』とハッキリ言えるためには
- この会社が取締役会設置会社であること
- 株主総会の特別決議で募集事項の決定の委任があること
- 種類株式発行会社であるときは、当該種類株主総会の特別決議があること(ただし、この決議を要しない定款の定めがある場合と、この種類株主総会において議決権を行使できる種類株主が存しない場合を除く。)
が条件です。
この点において、このままでは出題自体が不安定です。
明確に答えの出せる問題に置換し直して、この問題を活用することを提案します。
置換例 1.『取締役会の決議により定めることができない』
いずれにも当てはまりません。
解答は、
- 公開会社 → 当てはまらない
- 公開会社でない株式会社 → 当てはまらない (できないことはない)
となります。
置換例 2.『取締役会の決議により定めることができる場合がある』
いずれにも当てはまります。
解答は、
- 公開会社 → 当てはまる
- 公開会社でない株式会社 → 当てはまる
となります。
置換例 3.『取締役会の決議により定めなければならない』
公開会社に当てはまりますが、公開会社でない株式会社には当てはまりません。
解答は、
- 公開会社 → 当てはまる (エ改の1行目の置換で有利発行の場合を除いているため)
- 公開会社でない株式会社 → 当てはまらない
となります。
※ なお、取締役会の決議の権限に属する事項について、定款の別段の定めにより、
株主総会の決議事項とすることができるとされています(会社法295条2項)。
よって、『定款の別段の定めのある公開会社』には当てはまらないことがあります。
最終更新:2009年07月21日 21:30