44話


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「・・・・・・ん」
ふと俺は目を覚ます。あれ・・・・・・ここはどこだろう。ぼやけた頭で記憶を辿る。
ああ、そうか・・・・・・昨日あれからまたウォーティルへ戻って、それから食事とかを終えてすぐ寝ちまった
んだっけか・・・・・・。今は宿屋のベッドの中だな・・・・・・。
 そう納得し、俺はまどろみに身を任せ、再び目を瞑る。
そのまま横にごろりと寝返ると、少し甘いようないい香りがした。
「・・・・・・ん?」
俺は閉じていた目を開く。ぼんやりとした視界に飛び込んできたのは・・・・・・。
「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」
「っ!?」
心臓がドクンと跳ねた。ちょっと待て、いったん落ち着こう。なぜアルルが俺と同じベッドで寝てるんだ?
確か昨日の夜は・・・・・・そう、ちゃんと1人1個のベッドで眠りについたはずだ。
 それなのになぜ今はアルルが隣にいるんだ。
寝相で転がった?いや違う。こんな超絶的に悪い寝相があるなら見てみたい。それにアルルは
かなり寝相はいいほうだ。
ルークがやったのか?いや、それも違うだろう。こんな過度なイタズラはさすがにしないだろうし。
俺の脳内はもうオーバーヒート寸前だった。すでに眠気など吹き飛んでしまっている。
とりあえずこの状態ではマズい。ルークに誤解される可能性が非常に高いだろう。俺は空いているアルルの
ベッドへと向かおうとした。
 しかしそれは阻まれた。アルルが俺の手首を握っていた、本当に寝ているのかというほどの力で。
これはほどこうとすれば起きてしまうだろうか。そう悩んでアルルの寝顔を覗く。
「あれ・・・・・・?」
すでに視界がはっきりとしていた俺にはそれがはっきりと見えた。薄く目の近くを通った水の跡。涙。
クールダウンしてきた頭で再び考える。ああ・・・・・・そういうことか。
                     ―視点変更 アルル視点―
「やっとウォーティルに戻ってきたな~。これからどうする?アリウス、アルル」
「私は特にこれがしたいっていうのはないけど・・・・・・。アリウスは?」
私は上目使いにアリウスの顔を覗き込む。アリウスは私の目を見てから恥ずかしがって顔を背ける。
「とりあえず今日はもう『力』を取り戻しに行くには無理だろうな。時間が時間だし」
クリスタルの神殿を出てからウォーティルへ戻ってくるまでにはかなりの時間がかかってしまった。だから
もう時刻は夕日が見えるほどに遅くなっていた。
「んじゃまあ、ちょっと早いけど宿を取るか。行こうぜ、2人とも」
 宿で部屋を借り、食事やお風呂を済ませて、時刻は夜。
「ふあ~ぁ・・・・・・。ちょっと早いけど俺は寝ることにするよ。おやすみ~・・・・・・」
と言い、アリウスはすぐに寝息を立て始めた。
「ずいぶんと疲れていたんだろうな・・・・・・。たぶん寝たとしても野宿だったんだろうし・・・・・・」
「うん、そうみたい。レオンもあれだけ神殿で寝てたのにもう眠っちゃってる」
「本当にもう、レオンに触れても大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思う。『怖い』っていうイメージがほとんど消えちゃったから。あの優しいワンちゃんのおかげかな」
「それなら安心だな。俺達もそろそろ寝ようか」
「そだね。そろそろ眠くなってきちゃった。おやすみなさい、ルーク」
「ああ、おやすみ」
そう言って明かりを消した。
 数十分後・・・・・・眠れない。
どう表現したらいいんだろう。不安で、心配で――――――胸が押しつぶされそうに苦しくなる。
布団から体を起こす。ふと、月明かりでアリウスの寝顔が見えた。そしてまたさっきの圧迫感。
「もう・・・・・・黙ってどこかへ行っちゃったりしないよね・・・・・・?」
自分で言った言葉にハッとする。不安の原因はこれだった。怖いんだ。
アリウスがまたいきなりどこかへ行っちゃうんじゃないか。また命の危機に晒されるんじゃないか。
そう思うと胸が痛いよ。苦しいよ。どうすればこの苦しみを和らげられるの?ねえ―――――――アリウス。
 私は自分のいたベッドを降り、アリウスに近づく。するとアリウスの口から寝言が漏れた。
「うーん・・・・・・アルル・・・・・・どこ・・・・・・だ?」
うなされながら右手を空に掲げ、左右に振る。でも空に私はいない。アリウスの手は虚しく空を切る。
 そっと、私はその手を握る。
「ここにいるよ・・・・・・。私はここにずっと・・・・・・あなたのそばにいる」
するとアリウスは苦しげな表情からすっと笑顔を浮かべて、
「俺とアルルは・・・・・・ずっと一緒だよな・・・・・・」
嬉しかった。たとえ寝言だとしても。ううん、寝言だからかもしれない。寝言だったら多分、嘘はつけない。
そのままアリウスのベッドへと潜り込む。少し恥ずかしいけど。
 こんなに近い位置にアリウスを感じるのは久しぶりのような気がする。
とは言っても、定期船の襲撃事件のあとに近いどころか抱きしめられたわけだけど。
それでもずいぶんと長いような感覚がした。それだけ、アリウスと離れているのは辛かった。
ふと気が付くと、胸の苦しみがすっかり引いていた。今ならその理由がはっきり分かる。
だんだん眠くなってきた。もう自分のベッドに戻るのもおっくうだった。朝に驚かれるかもしれないけど・・・・・・いいよね?
この右手は・・・・・・離さないでおこう。もしアリウスがどこかへ行こうとしても逃がさないように。
あんな言葉聞いちゃったから、もう逃げないって確信しているんだけどね。
私は目を瞑る。眠気は私をすぐに眠りへと誘った。
おやすみ―――――――アリウス。
                       ―視点変更 アリウス視点―
多分だが・・・・・・アルルが『俺がまたどこかへ行ってしまわないよう』に握っていたんだろうな。
にしても、朝は少し冷えるな。水の大陸っていうのも関係しているんだろう。俺は布団に再び戻る。
「もう俺だって・・・・・・アルルと離れたくはないよ」
そう言って俺は眠ったアルルの額に唇で触れる。ふわっと漂ういい香り。シャンプーの匂いだろうか?
完全に飛んでいたはずの眠気が戻ってくる。ルークにはあとでちゃんと事情を説明しよう・・・・・・。
俺は再びまどろみに身を委ね、意識は眠りへと落ちていった。





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