43話


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一言の台詞の後に聞こえた金属音。俺の体は・・・・・・貫かれていなかった。
「え・・・・・・?」
俺は顔を上げた。大きな剣、大きな体、金髪の短い髪・・・・・・。
「ルーク・・・・・・?ハハ、幻かな・・・・・・ルークがここにいるわけ・・・・・・」
「おいおい、つれないこと言ってくれんじゃないの。俺が防がなかったら死んでたんだぞ、アリウス?」
「ルーク、避けて!!」
「おっと、危ない危ない・・・・・・ってな」
次に聞こえたのは女の子の声。ルークと一緒に来たってことは・・・・・・。俺は扉のほうに顔を向けた。
「アルル・・・・・・」
「アリウス、もう大丈夫だから!私達に任せて!!」
そう言うとルークは蠍を部屋の奥へと誘導し、アルルは俺のところへ駆け寄った。
「猛(たけ)る炎よ・・・・・・不死鳥となりて彼のものを癒さんことを・・・・・・・」
そう唱えると、アルルの右手から火の玉が生成され鳥の形となり、俺を包んだ。
「これは・・・・・・炎の塔のときと同じ・・・・・・」
「うん。まだ取り戻したばかりで力は弱いからそんなに回復できないけど・・・・・・」
じんわりと暖かいものが染み込んでくる。ひょっとしたら、これはアルルの心そのものなのかもしれない。
「よし、動けるな。俺もまだ戦えるぜ」
そう言ってルークの援護に行こうとする。が、ふと思い出して
「アルル」
「ん?何、アリウス?」
なんとなく照れくさくなって俺はアルルに背を向ける。
「・・・・・・ありがとう」
「・・・・・・うんっ!」
2人でルークの元へと走る。ルークはまだまだ余裕の表情を浮かべていた。俺はルークの隣に立つ。
「ルーク、これからどうする?打撃攻撃はあんまり効きそうにないけど・・・・・・」
「なあに、もういい案は出てる。そこでだ、アリウスに頼みがある」
そうルークは言うと、俺に何かを放り投げる。棒に丸い鉄板がくっついて・・・・・・って、これは・・・・・・。
「・・・・・・何だよこれは」
「見て分かるだろ、フライパンだ。『例のヤツ』を一発頼む」
「・・・・・・ああ、アレか。別にフライパンでなくても風を大きく受ける物ならなんでも構わないんだけど・・・・・・まあいいか」
「まあ、そこんとこは気にするな。頼んだぜ」
そう言いながら爪の攻撃を避けたルークが蠍の爪を踏み、高くジャンプした。
「全てを吹き飛ばす神の息吹よ巻き起これ!爆風烈波!!」
俺が起こした爆風はルークの体をさらに高くへと舞い上げ、ルークは空中で体勢を整える。
「クリスタルだかなんだか知らないが、そういった装甲を持つやつには必ず弱点がある。それをちゃんと考えて姿を選ぶべきだったな・・・・・・虎爪旋撃!!」
ルークが放った3本の斬撃は勢いを増して鋭くなり、蠍に命中した。するとさっきまでまるでダメージを受けていなかった蠍が苦しんでいるではないか。
「すげえ・・・・・・どうやったんだ、ルーク?」
「なに、継ぎ目を狙ったのさ。ああいう物は共通してあそこが脆い」
「そうか、ルークも鎧を着けてるもんな。それとあの技・・・・・・虎爪旋撃だっけ?なるほど、両側の2本 は剣圧の刃だったのか」
「そういうこと。さあて、動きが鈍ってるうちに仕上げと行きますか!アルル、行くぞ!!」
「うん!炎の力よ、彼の者の剣に宿れ・・・・・・!」
「こいつに当たればヤケドじゃ済まないぜ。もっとも、避けさせる気はさらさらねえけどな・・・・・・!
 全てを焼き尽くす赤き斬りを受けてみろ、紅(クレナイ)の斬撃!!」
ルークは渾身の力でクリスタルの蠍を斬った。これはかなりのダメージを与えたようで、悲鳴を大きな声で上げている。
かなりの熱さなのだろう、体の色が赤くなってきた。
「行くよ。アリウスを怪我させた罪は・・・・・・大きいからね」
そう言ったアルルの声は至って冷静だったが、明らかに怒気が込められていた。
「水よ・・・・・・全ての光を惑わす冷たき空間を生み出せ・・・・・『クラッジュミスト』!!」
アルルが構えた両手から霧が生まれる。それらが部屋全体を包み込むと、再び蠍が奇声を発する。空気の動く気配がする。
おそらく闇雲に攻撃しているのだろう。だが視界の効かないこの中、攻撃が当たるはずなどなかった。
「フリーズ」
そう聞こえたかと思うと、霧がみるみるうちに消えて視界が晴れる。
「やっと前が見え・・・・・・うぉっ!?蠍が・・・・・・凍ってる・・・・・・」
「こいつは驚いたな・・・・・・。霧の水分を一箇所に移して急激に冷凍するとは・・・・・・。魔導士ってのは本当、頼もしくも恐ろしくもあるぜ・・・・・・」
「ブレイク・・・・・・」
その瞬間、凍っていた蠍を包んでいた氷に亀裂が発し、ものの見事に砕け散った。
「お疲れさん。しかし驚いたな、正直アルルがここまで強いとは思っていなかった」
「それは明らかな誤解だぜルーク。アルルの魔導士としての素質は俺以上って言われてるのに」
「わ、私そんなに強くないよぉ。アリウスのほうが私より上でしょ?」
「今のところは、な。いずれ俺よりアルルの方が強くなる日が来るかもしれない」
そんな他愛ない会話をしていると、蠍の破片から水色の光の玉が浮かび上がり、俺の中へと入っていった。
「よし、これで俺も2つ目の力を取り戻したことになるんだな」
「よかったな、アリウス。これでまた強くなれたってわけだ」
「違うよルーク、またアリウスが元の力に一歩戻れた、だよ」
「ハハ・・・・・・。まあ、どっちでも構わない・・・・・・よ?」
ちょっと待て、俺は何かを忘れていないか?思い出せ!この神殿に来て、レオンが捕まって、それを助けるためにクリスタルの力と戦って、その後・・・・・・!!
「どうしたのアリウス・・・・・・?急に後ろなんか向いて・・・・・・」
「お前達・・・・・・なんでここに来た!!」
思い出したのだ。この2人とは絶交したはずだと。普通なら助けに来るはずがないと。
2人はその言葉を聞くと、何も言えないかのように押し黙ってしまった。それでも俺は言葉を続ける。
「言ったはずだぞ!お別れだって・・・・・・もう2人とは会わないって!!」
来てくれて嬉しかったはずなのに。俺の後悔と喜びが逆流するかのように、口からは拒絶する言葉しか出てこない。
本当は違うのに、ずっと一緒にいたかったのに・・・・・・。
俺もそれきり口をつぐむ。長いようで短い沈黙の後、口を開いたのはアルルだった。
「ずっとアリウスと一緒にいたい・・・・・・それじゃあ・・・・・・理由にならないかな・・・・・・?」
「・・・・・・!!」
「私・・・・・・あれからすごく後悔した。なんであんなこと言っちゃったんだろうって。なんでアリウスを嫌いなんて言っちゃったんだろうって。
 私、前にも言ったよね。『もう待つのは嫌だ』って。待つのは今でも嫌だよ?だけど・・・・・・もう会えなくなるのはもっと嫌だよ!!
 私、ワガママだから・・・・・・!!ずっとアリウスが側にいてくれなきゃ嫌なの・・・・・・!!」
「・・・・・・アルル、俺は・・・・・・」
「アリウスはたしかにもう会わないって言ったけど・・・・・・・『会いたくない』なんて・・・・・・言ってないもんね?」
我慢できるはずがなかった。俺は声を隠しきれずに泣く。アルルも声から察するに泣いているようだった。
だけど、今振り返るわけにもいかない。こんな情けない顔、見せたくない。
ふいに背中に感じる暖かい感覚。下ろしていた両腕を外側から包み込む手。振り返らなくても俺にはわかった。アルルが背中から抱きついてきたのだ。
「捕まえたよ・・・・・・。もう絶対に・・・・・・離さないんだから・・・・・・!」
「そこまでされたらもう逃げられないよな、アリウス?当然のことだが、俺もここからお前を逃がすつもりは無い」
「ああ・・・・・・お手上げさ。ここでずっと立っているわけにもいかない。街に戻ろうぜ・・・・・・2人とも」
「ああ!」
「うん!」
こうして俺達は神殿を出て街へと向かった。ちなみに大広間から出たとき、レオンは檻が消えたあとの床で
ぐうぐうと高いびきをかきながらのんきに眠っていた。その姿を見て俺たちは3人で顔を見合わせて笑った。
やっぱり俺はみんなと一緒がいい。そう思った。





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