42話

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扉を開けた瞬間、広い部屋に出た。城の大広間にも似た広さの空間だが、床にも壁にもクリスタルしかない。 この前の氷の洞窟のときを思い出させるような透明感。そして、その奥にそれはいた。 「おいおい・・・・・・容赦ねえなあ・・・・・・」 全身水色のクリスタルで構築されている巨人。俺が一呼吸置くと、それを戦いの合図のように俺と巨人は戦闘体勢を取った。 「さあて・・・・・・行くぞ!!」 足にグッと勢いと力を込め、俺はダッシュする。巨人は大きく振りかぶり、右腕でパンチを繰り出した。 「甘いっての!そんなんじゃ当たらねえぜ!」 その右腕の下をスライディングで避ける。やはり大きいだけあって、単調な上に無駄な動きが多い。 体勢が崩れた巨人の足元から体を登り、脇腹を切りつけた。しかし、嫌な予想は当たっていた。 全くの無傷。やはり消耗させるしか方法が無い。巨人の体から飛び降りて着地し、俺はため息をついた。 「消耗戦か・・・・・・あんま得意じゃないんだけどなあ」  そう一言つぶやいてから、俺は短剣を鞘に戻す。風の洞窟のときと同じように、風の流れを体で感じるために。 それをチャンスだと思い込んだのだろう、巨人がこちらに向かってきた。 「風よ・・・・・・我を包め・・・・・・風の道を・・・・・・我に伝えよ」 以前は風の力を取り戻していなかったため多少の傷を負ったが、力を使ったこの状態ならば ほとんどの攻撃は避けきれる。移動のことだけに意識を集中しなければならないのが難点だが。 「グォォォォォォォォォ!!」 全く攻撃が命中しないことに腹を立てたのか、はたまた焦りが生じたのか。巨人はさらに闇雲な攻撃をしかけてくる。ただでさえ乱雑だった攻撃がさらにメチャクチャになってしまっていた。 (よし、消耗してきたな。このまま行けば・・・・・・) そう思ったときだった。急に巨人の攻撃が止まったかと思えば、巨人の体が崩れていくではないか。 「なっ!?もう残っていた魔力が尽きたのか・・・・・・?」 しかしその予想は大きく外れることになった。崩壊した巨人の破片が動き出し、新たな姿を作る。 「この姿は・・・・・・蠍(さそり)か?」 蠍と言ってもその大きさは俺の数倍はある。さすがにさっきの巨人と比べればかなり小さくなったが。 そして俺の姿を再確認すると、こちらを目掛けて奇声を発して襲い掛かってきた。 「んな!?は・・・・・・速い!!さっきの巨人と本当に同じやつなのかよこいつ!!」 蠍と言えば普通、尻尾の針と毒が恐怖だが、こいつの体は完全なクリスタル製なので毒はない。 しかし、その尻尾を振る速度が異常だった。その上、両方の爪を使っての3重攻撃を仕掛けてくる。 今はなんとか避けることができているが、このままでは危険だ。だが、向こうもかなりの魔力を消費 してしまったのだろう。攻撃の速度が少しだけ遅くなる。 このままならきっと勝てる。そう思った。そう・・・・・・思ってしまった。蠍がふいに大きく右手の爪を大きく 振りかぶった。ただし、この軌道だと俺には当たらない。そう思い、そちらに注意を払わなかったのがいけなかった。 勢いよく振り下ろされた爪は床を貫き、地面を割ったのだ。 「なっ、足が踏ん張れない・・・・・・!?しまった、床が・・・・・!!」 俺の意識は床に向く。そのチャンスを向こうは逃さなかった。俺の一瞬の隙を突き、回転しながら 尻尾を叩きつけられる。針は直撃しなかったものの、大きく飛んだ俺の体は背中から壁に叩きつけられた。 「が・・・・・・は・・・・・・っ!!痛っ・・・・・・て・・・・・・え」 幸いにも先端の針は命中しなかったが、それでも俺の動きを封じるには十分過ぎる一撃。 立つことさえできなくなり、俺は壁にもたれる。ああ、口ん中切ったかなあ。鉄の味がする・・・・・・。 蠍は俺が動けないのを確認するとゆっくりと近づき、尻尾の針を俺に構えた。 (ここで終わり・・・・・・か。ザマぁねえな、俺・・・・・・。こんなことなら最初から・・・・・・意地なんて張らなきゃ よかったな・・・・・・。3人いれば・・・・・・きっと勝てたのに) 知らずのうちに俺の目には涙が貯まっていた。これはきっと、自分自身に対する怒りと悲しみの感情。 そしてゆっくりと蠍の尻尾が俺めがけて真っ直ぐに動く。まるでスローモーションのように。 「ごめんな・・・・・・2人とも」 「言うのが遅いんだよ、このバカ野朗・・・・・・」                                          ギィン!! #comment [[41話]]へ戻る   [[43話]]に進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る
扉を開けた瞬間、広い部屋に出た。城の大広間にも似た広さの空間だが、床にも壁にもクリスタルしかない。 この前の氷の洞窟のときを思い出させるような透明感。そして、その奥にそれはいた。 「おいおい・・・・・・容赦ねえなあ・・・・・・」 全身水色のクリスタルで構築されている巨人。俺が一呼吸置くと、それを戦いの合図のように俺と巨人は戦闘体勢を取った。                                     ~ENEMY クリスタルの巨人~ 「さあて・・・・・・行くぞ!!」 足にグッと勢いと力を込め、俺はダッシュする。巨人は大きく振りかぶり、右腕でパンチを繰り出した。 「甘いっての!そんなんじゃ当たらねえぜ!」 その右腕の下をスライディングで避ける。やはり大きいだけあって、単調な上に無駄な動きが多い。 体勢が崩れた巨人の足元から体を登り、脇腹を切りつけた。しかし、嫌な予想は当たっていた。 全くの無傷。やはり消耗させるしか方法が無い。巨人の体から飛び降りて着地し、俺はため息をついた。 「消耗戦か・・・・・・あんま得意じゃないんだけどなあ」  そう一言つぶやいてから、俺は短剣を鞘に戻す。風の洞窟のときと同じように、風の流れを体で感じるために。 それをチャンスだと思い込んだのだろう、巨人がこちらに向かってきた。 「風よ・・・・・・我を包め・・・・・・風の道を・・・・・・我に伝えよ」 以前は風の力を取り戻していなかったため多少の傷を負ったが、力を使ったこの状態ならば ほとんどの攻撃は避けきれる。移動のことだけに意識を集中しなければならないのが難点だが。 「グォォォォォォォォォ!!」 全く攻撃が命中しないことに腹を立てたのか、はたまた焦りが生じたのか。巨人はさらに闇雲な攻撃をしかけてくる。ただでさえ乱雑だった攻撃がさらにメチャクチャになってしまっていた。 (よし、消耗してきたな。このまま行けば・・・・・・) そう思ったときだった。急に巨人の攻撃が止まったかと思えば、巨人の体が崩れていくではないか。 「なっ!?もう残っていた魔力が尽きたのか・・・・・・?」 しかしその予想は大きく外れることになった。崩壊した巨人の破片が動き出し、新たな姿を作る。 「この姿は・・・・・・蠍(さそり)か?」 蠍と言ってもその大きさは俺の数倍はある。さすがにさっきの巨人と比べればかなり小さくなったが。 そして俺の姿を再確認すると、こちらを目掛けて奇声を発して襲い掛かってきた。 「んな!?は・・・・・・速い!!さっきの巨人と本当に同じやつなのかよこいつ!!」 蠍と言えば普通、尻尾の針と毒が恐怖だが、こいつの体は完全なクリスタル製なので毒はない。 しかし、その尻尾を振る速度が異常だった。その上、両方の爪を使っての3重攻撃を仕掛けてくる。 今はなんとか避けることができているが、このままでは危険だ。だが、向こうもかなりの魔力を消費 してしまったのだろう。攻撃の速度が少しだけ遅くなる。 このままならきっと勝てる。そう思った。そう・・・・・・思ってしまった。蠍がふいに大きく右手の爪を大きく 振りかぶった。ただし、この軌道だと俺には当たらない。そう思い、そちらに注意を払わなかったのがいけなかった。 勢いよく振り下ろされた爪は床を貫き、地面を割ったのだ。 「なっ、足が踏ん張れない・・・・・・!?しまった、床が・・・・・!!」 俺の意識は床に向く。そのチャンスを向こうは逃さなかった。俺の一瞬の隙を突き、回転しながら 尻尾を叩きつけられる。針は直撃しなかったものの、大きく飛んだ俺の体は背中から壁に叩きつけられた。 「が・・・・・・は・・・・・・っ!!痛っ・・・・・・て・・・・・・え」 幸いにも先端の針は命中しなかったが、それでも俺の動きを封じるには十分過ぎる一撃。 立つことさえできなくなり、俺は壁にもたれる。ああ、口ん中切ったかなあ。鉄の味がする・・・・・・。 蠍は俺が動けないのを確認するとゆっくりと近づき、尻尾の針を俺に構えた。 (ここで終わり・・・・・・か。ザマぁねえな、俺・・・・・・。こんなことなら最初から・・・・・・意地なんて張らなきゃ よかったな・・・・・・。3人いれば・・・・・・きっと勝てたのに) 知らずのうちに俺の目には涙が貯まっていた。これはきっと、自分自身に対する怒りと悲しみの感情。 そしてゆっくりと蠍の尻尾が俺めがけて真っ直ぐに動く。まるでスローモーションのように。 「ごめんな・・・・・・2人とも」 「言うのが遅いんだよ、このバカ野朗・・・・・・」                                          ギィン!! #comment [[41話]]へ戻る   [[43話]]に進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る

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