40話

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                                         視点変更~アリウス視点~ 「何だったんだ、あれは・・・・・・」 それは数分前のことだった。 俺はクリスタルの力の場所に向かっていた。しかし、進んでいる途中でレオンが急に何かに反応し、 全く違う方向へと走っていってしまった。俺はそれを追いかける。 「レオン、どこだ~!?」 どれくらい走っただろうか。レオンを追いかけるために走るうち、いつの間にか木々が鬱蒼と茂る森の中に来てしまっていた。 「・・・・・・しまった」 どうやらレオンを追っているうちに迷ってしまったようだ。レオンも既に見失ってしまっている。 俺は一休みしようと思い、少し先のほうに見えた大きな木の木陰に向かった。 「おっと、お客さんかい?」 その声を聞いた俺は顔を上げた。木陰には男の先客がいた。少し憂いを帯びた雰囲気と長い髪が 印象的に見える。 「・・・・・・」 「そう怖い顔しなさんなって。この木で休もうと思ったんだろ?お前さんも来いよ」 「・・・・・・あんたは?」 そう聞きながら、ゆっくりと俺も木陰に向かって歩きだす。 「おっと。人に物を尋ねるにはまず自分からってな。そうしたら俺も答える」 「俺はアリウス。俺の犬がどこかに行ったから追いかけたらここで迷った」 「ここには滅多に人は来ないんだが・・・・・・珍しいこともあるもんだ」 「俺はちゃんと言ったぞ、あんたも答えてくれ」 「わかったよ・・・・・・。俺はレイドハイム、ただの詩人さ」 「さっき『滅多に』って言ってたけど、あんたはここによく来るのか?」 「ああ、俺のお気に入りの場所だからな。アリウス、あんたは初めての客人だ。歓迎するぜ」 「遠慮しとく。俺はあくまで休憩したかっただけだ、長居するつもりはない」 そう言うと俺は木陰で腰を下ろす。 「まあそう言いなさんな。少しくらいなら付き合ってくれても構わんだろう?」 「おっさんの話に付き合うつもりは無い」 「おっさ・・・・・・。おいおい、俺はまだ28だぞ。まだまだ若い」 「マジか!?そんな喋り方してるからつい・・・・・・」 「まあ、構わんさ。喋り方は昔からずっとこれなもんでな。もう治りゃせんよ」 「・・・・・・で、付き合うってのは何の話だ」 「なあに、他愛も無い作り話さ・・・・・・。ある所に一組の男女がいた。彼らは共に愛し合っていた。だが、その愛はすぐ引き裂かれることになる。男は罪を犯したんだ。その罪は重かった。彼らの国の王は彼をこの世ではない『どこか』に送るよう指示した。もちろん女は悲しんだ。涙が枯れるくらいになるまで毎日毎日泣き続けた。そして女は決断をした。彼のいないまま1人で生きていくなんて嫌だ。それなら彼と一緒にその『どこか』で暮らしたい。彼女は自分の歳と同じだけ暮らした地を愛していた。しかし、彼への想いはそれより遥かに大きかったのだ。・・・・・・とまあ、こんな話だ」 「へえ。いい話じゃないか」 「だろう?それはそうとアリウス、あんたに聞きたいことがある」 「ん・・・・・・何だ?」 「『有』と『無』の関係について、だ」 「有と無の関係・・・・・・?『無は有を生み、そして生まれた有はまた無へと帰す』だろ?  それがこの世界の絶対輪廻の象徴となってる」 「惜しい、惜しいがそれは違うな。まだ少し足りない」 「バカな、それが間違ってるはず・・・・・・」 俺はそこである事に気づく。 「・・・・・・あんた・・・・・・何者だ!!」 「おいおい、いきなり何を言い出すんだい?」 「答えな!!有と無の関係を知っているのは俺とアルル、そしてミーティアさんの3人だけだ・・・・・・。  なんであんたがそれを知ってる、レイドハイム!!!」 「あーあ、気づいちまったかぁ・・・・・・」 「それに、なんであんたが知ってる・・・・・・俺とアルルのことを!」 レイドハイムがさっき言っていた作り話、あれは作り話なんかじゃない。多少の訂正がされているものの、明らかにあの話は俺とアルルの間にあった出来事だった。有と無の関係もあいつは本来知らないはず、その定理は主に魔力の循環を示すからだ。 「俺はただの詩人さ。ただ、それと同じく『見守る者』でもある」 「見守るだと・・・・・・?」 「ワウッ!!」 突然の泣き声に俺は後ろを振り返る。レオンが俺の後ろにいた。 「本当の有と無の関係はお前の考えている定理とは少しだけ違う。ゆっくり考えることだ。」 その台詞を聞き、俺は振り返る。すると木陰にはあいつの姿は既になかった。 「元いたところにはここから北に行けば戻れる。また会おう」 そう言ったきり、レイドハイムの言葉は聞こえなくなった・・・・・・。 #comment [[39話]]へ戻る   [[41話]]に進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る
                                         視点変更~アリウス視点~ 「何だったんだ、あれは・・・・・・」 それは数分前のことだった。 俺はクリスタルの力の場所に向かっていた。しかし、進んでいる途中でレオンが急に何かに反応し、 全く違う方向へと走っていってしまった。俺はそれを追いかける。 「レオン、どこだ~!?」 どれくらい走っただろうか。レオンを追いかけるために走るうち、いつの間にか木々が鬱蒼と茂る森の中に来てしまっていた。 「・・・・・・しまった」 どうやらレオンを追っているうちに迷ってしまったようだ。レオンも既に見失ってしまっている。 俺は一休みしようと思い、少し先のほうに見えた大きな木の木陰に向かった。 「おっと、お客さんかい?」 その声を聞いた俺は顔を上げた。木陰には男の先客がいた。少し憂いを帯びた雰囲気と長い髪が 印象的に見える。 「・・・・・・」 「そう怖い顔しなさんなって。この木で休もうと思ったんだろ?お前さんも来いよ」 「・・・・・・あんたは?」 そう聞きながら、ゆっくりと俺も木陰に向かって歩きだす。 「おっと。人に物を尋ねるにはまず自分からってな。そうしたら俺も答える」 「俺はアリウス。俺の犬がどこかに行ったから追いかけたらここで迷った」 「ここには滅多に人は来ないんだが・・・・・・珍しいこともあるもんだ」 「俺はちゃんと言ったぞ、あんたも答えてくれ」 「わかったよ・・・・・・。俺はレイドハイム、ただの詩人さ」 「さっき『滅多に』って言ってたけど、あんたはここによく来るのか?」 「ああ、俺のお気に入りの場所だからな。アリウス、あんたは初めての客人だ。歓迎するぜ」 「遠慮しとく。俺はあくまで休憩したかっただけだ、長居するつもりはない」 そう言うと俺は木陰で腰を下ろす。 「まあそう言いなさんな。少しくらいなら付き合ってくれても構わんだろう?」 「おっさんの話に付き合うつもりは無い」 「おっさ・・・・・・。おいおい、俺はまだ28だぞ。まだまだ若い」 「マジか!?そんな喋り方してるからつい・・・・・・」 「まあ、構わんさ。喋り方は昔からずっとこれなもんでな。もう治りゃせんよ」 「・・・・・・で、付き合うってのは何の話だ」 「なあに、他愛も無い作り話さ・・・・・・。ある所に一組の男女がいた。彼らは共に愛し合っていた。だが、その愛はすぐ引き裂かれることになる。男は罪を犯したんだ。その罪は重かった。彼らの国の王は彼をこの世ではない『どこか』に送るよう指示した。もちろん女は悲しんだ。涙が枯れるくらいになるまで毎日毎日泣き続けた。そして女は決断をした。彼のいないまま1人で生きていくなんて嫌だ。それなら彼と一緒にその『どこか』で暮らしたい。彼女は自分の歳と同じだけ暮らした地を愛していた。しかし、彼への想いはそれより遥かに大きかったのだ。・・・・・・とまあ、こんな話だ」 「へえ。いい話じゃないか」 「だろう?それはそうとアリウス、あんたに聞きたいことがある」 「ん・・・・・・何だ?」 「『有』と『無』の関係について、だ」 「有と無の関係・・・・・・?『無は有を生み、そして生まれた有はまた無へと帰す』だろ?それがこの世界の絶対輪廻の象徴となってる」 「惜しい、惜しいがそれは違うな。まだ少し足りない」 「バカな、それが間違ってるはず・・・・・・」 俺はそこである事に気づく。 「・・・・・・あんた・・・・・・何者だ!!」 「おいおい、いきなり何を言い出すんだい?」 「答えな!!有と無の関係を知っているのは俺とアルル、そしてミーティアさんの3人だけだ・・・・・・。  なんであんたがそれを知ってる、レイドハイム!!!」 「あーあ、気づいちまったかぁ・・・・・・」 「それに、なんであんたが知ってる・・・・・・俺とアルルのことを!」 レイドハイムがさっき言っていた作り話、あれは作り話なんかじゃない。多少の訂正がされているものの、明らかにあの話は俺とアルルの間にあった出来事だった。有と無の関係もあいつは本来知らないはず、その定理は主に魔力の循環を示すからだ。 「俺はただの詩人さ。ただ、それと同じく『見守る者』でもある」 「見守るだと・・・・・・?」 「ワウッ!!」 突然の泣き声に俺は後ろを振り返る。レオンが俺の後ろにいた。 「本当の有と無の関係はお前の考えている定理とは少しだけ違う。ゆっくり考えることだ。」 その台詞を聞き、俺は振り返る。すると木陰にはあいつの姿は既になかった。 「元いたところにはここから北に行けば戻れる。また会おう」 そう言ったきり、レイドハイムの言葉は聞こえなくなった・・・・・・。 #comment [[39話]]へ戻る   [[41話]]に進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る

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