7話

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「ルーク、しっかりしろ!!ルーク!!」 しかしルークは返事をしない。俺は知らないうちに涙を流していた。そして憎しみと恨みの目で、風の龍のほうを向いた。 「絶対に許さねえ・・・・・・必ずお前を倒す!!」 『できるものならやってみるがいい・・・・・・。仲間一人助けられなかった貴様にできるものならな』 風の龍はいかにも余裕のあるような言葉を言った。しかし体は傷だらけ、それに息も荒かった。体の傷はルークの降石岩雷によるものだが、 息が荒いのは恐らく力を使いすぎたせいだろう。魔力の供給がないのにあんなに強力な技を使えば息が上がるのも当然だ。  今しかないと思った俺は、短剣を捨てて風の龍の方へと歩き出した。 『武器を捨てるとはどういうことだ?・・・・・・そうか、私に勝つのを諦めて潔く死を選ぶか・・・・・・ならば望み通り、すぐに友の元へ送ってやろう』 俺は何も言わず、一直線に風の龍の元へと歩いて行く。 『さらばだ。哀れなる強き者よ・・・・・・』 風の龍は真空の刃を飛ばしてきた。俺はそれを受けるどころか、寸前のところで避けた。 『ほう・・・・・・偶然とはいえ、よくかわせるものだな。だが、いつまで持つかな?』  今度は一つや二つではない。何枚もの風の刃が俺めがけて飛んでくる。しかし、俺はそれをかわしていく。 だが、全てかわせるというわけではなく、刃の端が体をかすめて腕や足が血だらけになった。 『なぜだ・・・・・・なぜ我が刃をかわせる!?』 「・・・・・・風の力を使いこなすには、まず風の流れを知ること。そして自身も風の流れに乗り、風と一体化することだ。やっと思い出したよ・・・・・・」 『まさか・・・・・・短剣を捨てたのは・・・・・・・・・!!』 「そう、風の流れに乱れを作ってしまうからだ。お前を倒すにはもう、これしかないと思ったからな」 『くっ・・・・・・貴様などに倒されてたまるものか!!』  風の龍は扉のほうへと向かっていく。しかし、扉までの距離は俺のほうが近い。俺は走って扉の前に立ち、両手を広げる。 走る度に手足から血が出て、既に腕は血で真っ赤になっていた。 「逃がさねえよ!!お前を通すわけには行かないんだ!!」 『邪魔だ!!そこをどけえぇぇぇ!!』  「終わりだよ・・・・・・!『連撃功破(レンゲキコウハ)』!!」 右手、左手のパンチ、右足で相手の体を蹴り左回転をしながら左手裏拳、そして右手アッパーの俺の連続攻撃技だ。 風の龍はこれをかわすことができず喰らい、倒れる。もう起き上がる気配はない。 『ぐ・・・・・・ここで・・・・・・私は死ぬのだな・・・・・・・・・』 「・・・・・・勝手に死ぬんじゃねえよ。俺のところに帰ってくるだけだ」 『そうか・・・・・・ならば、私を使ってみせ・・・・・・ろ・・・・・・』 そう言うと風の龍は消え、緑色の光が俺に降り注いだ。何かが俺の中に入ってくるような感じがする。 「やっと戻って来たか・・・・・遅いぜ、風の力よ・・・・・・」 『・・・・・・』 「ん?どうした?」 『私は・・・・・・何という事をしてしまったのだ。主人を傷つけてしまった上、人一人を殺めてしまった・・・・・・!!』 「・・・・・・思い出したか」 どうやら風の力は記憶を取り戻したらしい。俺に敵意がないのが何よりの証拠だ。  俺はルークの方へと歩み寄り、そっとルークの腕を握った。まだ暖かい・・・・・・そんなくだらない事を考えた。 『すまない、強き勇敢な心ある剣士よ・・・・・・。私は・・・・・・罪なき者を殺めてしまった』 「お前は悪くない。俺が・・・・・・俺が力不足だったせいでルークが犠牲になってしまったんだ!!ごめん・・・・・・ごめんな、ルーク・・・・・・・・・」 再び涙が目から零れ落ちる。その瞬間、俺の指に違和感を感じた。 「なんだ・・・・・・?」 右手から一定のリズムで伝わる小さな振動・・・・・・はっきりと分かった。 「!!脈が動いてる・・・・・・まだ生きてる!!!」 『何!?アリウス、私の力を使え!!』 「わかってる!今治してやるからな、ルーク・・・・・・!!」  俺は手に緑色の光を出し、詠唱を始めた。本来俺の力は詠唱無しで使えるが、詠唱を加えることでより強力な魔法になる。 「風よ、我を救いし勇敢なる者に癒しの力をあたえよ・・・・・・今ここに来たれ、癒しの風!!!」 力を使うと、洞窟の中なのに風が吹いて来た。まるでここに入ってきた時のように。すると、ルークの肩の傷は出血の心配はないくらいまでにふさがった。 しかし、癒しの風はあくまで低級の回復呪文だ。肩以外の傷はほとんど治っていないが、全て浅いため、これで大丈夫だろう。 「これで命の危険はない・・・・・・。よかった、本当によかった・・・・・・」 『ああ・・・・・・私は彼が目覚めたら謝らなければならない。謝っても許してもらえないかもしれないがな』 「・・・・・・きっと許してくれるさ、ルークな・・・・・・ら・・・・・・」 その瞬間、視界がぼうっと湾曲しながら急に落下する。頭が重力に身を任せ、落ちる・・・・・。俺はその次の瞬間、意識を失っていた。 #comment [[6話]]へ戻る [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る
「ルーク、しっかりしろ!!ルーク!!」 しかしルークは返事をしない。俺は知らないうちに涙を流していた。そして憎しみと恨みの目で、風の龍のほうを向いた。 「絶対に許さねえ・・・・・・必ずお前を倒す!!」 『できるものならやってみるがいい・・・・・・。仲間一人助けられなかった貴様にできるものならな』 風の龍はいかにも余裕のあるような言葉を言った。しかし体は傷だらけ、それに息も荒かった。体の傷はルークの降石岩雷によるものだが、 息が荒いのは恐らく力を使いすぎたせいだろう。魔力の供給がないのにあんなに強力な技を使えば息が上がるのも当然だ。  今しかないと思った俺は、短剣を捨てて風の龍の方へと歩き出した。 『武器を捨てるとはどういうことだ?・・・・・・そうか、私に勝つのを諦めて潔く死を選ぶか・・・・・・ならば望み通り、すぐに友の元へ送ってやろう』 俺は何も言わず、一直線に風の龍の元へと歩いて行く。 『さらばだ。哀れなる強き者よ・・・・・・』 風の龍は真空の刃を飛ばしてきた。俺はそれを受けるどころか、寸前のところで避けた。 『ほう・・・・・・偶然とはいえ、よくかわせるものだな。だが、いつまで持つかな?』  今度は一つや二つではない。何枚もの風の刃が俺めがけて飛んでくる。しかし、俺はそれをかわしていく。 だが、全てかわせるというわけではなく、刃の端が体をかすめて腕や足が血だらけになった。 『なぜだ・・・・・・なぜ我が刃をかわせる!?』 「・・・・・・風の力を使いこなすには、まず風の流れを知ること。そして自身も風の流れに乗り、風と一体化することだ。やっと思い出したよ・・・・・・」 『まさか・・・・・・短剣を捨てたのは・・・・・・・・・!!』 「そう、風の流れに乱れを作ってしまうからだ。お前を倒すにはもう、これしかないと思ったからな」 『くっ・・・・・・貴様などに倒されてたまるものか!!』  風の龍は扉のほうへと向かっていく。しかし、扉までの距離は俺のほうが近い。俺は走って扉の前に立ち、両手を広げる。 走る度に手足から血が出て、既に腕は血で真っ赤になっていた。 「逃がさねえよ!!お前を通すわけには行かないんだ!!」 『邪魔だ!!そこをどけえぇぇぇ!!』  「終わりだよ・・・・・・!『連撃功破(レンゲキコウハ)』!!」 右手、左手のパンチ、右足で相手の体を蹴り左回転をしながら左手裏拳、そして右手アッパーの俺の連続攻撃技だ。 風の龍はこれをかわすことができず喰らい、倒れる。もう起き上がる気配はない。 『ぐ・・・・・・ここで・・・・・・私は死ぬのだな・・・・・・・・・』 「・・・・・・勝手に死ぬんじゃねえよ。俺のところに帰ってくるだけだ」 『そうか・・・・・・ならば、私を使ってみせ・・・・・・ろ・・・・・・』 そう言うと風の龍は消え、緑色の光が俺に降り注いだ。何かが俺の中に入ってくるような感じがする。 「やっと戻って来たか・・・・・遅いぜ、風の力よ・・・・・・」 『・・・・・・』 「ん?どうした?」 『私は・・・・・・何という事をしてしまったのだ。主人を傷つけてしまった上、人一人を殺めてしまった・・・・・・!!』 「・・・・・・思い出したか」 どうやら風の力は記憶を取り戻したらしい。俺に敵意がないのが何よりの証拠だ。  俺はルークの方へと歩み寄り、そっとルークの腕を握った。まだ暖かい・・・・・・そんなくだらない事を考えた。 『すまない、強き勇敢な心ある剣士よ・・・・・・。私は・・・・・・罪なき者を殺めてしまった』 「お前は悪くない。俺が・・・・・・俺が力不足だったせいでルークが犠牲になってしまったんだ!!ごめん・・・・・・ごめんな、ルーク・・・・・・・・・」 再び涙が目から零れ落ちる。その瞬間、俺の指に違和感を感じた。 「なんだ・・・・・・?」 右手から一定のリズムで伝わる小さな振動・・・・・・はっきりと分かった。 「!!脈が動いてる・・・・・・まだ生きてる!!!」 『何!?アリウス、私の力を使え!!』 「わかってる!今治してやるからな、ルーク・・・・・・!!」  俺は手に緑色の光を出し、詠唱を始めた。本来俺の力は詠唱無しで使えるが、詠唱を加えることでより強力な魔法になる。 「風よ、我を救いし勇敢なる者に癒しの力をあたえよ・・・・・・今ここに来たれ、癒しの風!!!」 力を使うと、洞窟の中なのに風が吹いて来た。まるでここに入ってきた時のように。すると、ルークの肩の傷は出血の心配はないくらいまでにふさがった。 しかし、癒しの風はあくまで低級の回復呪文だ。肩以外の傷はほとんど治っていないが、全て浅いため、これで大丈夫だろう。 「これで命の危険はない・・・・・・。よかった、本当によかった・・・・・・」 『ああ・・・・・・私は彼が目覚めたら謝らなければならない。謝っても許してもらえないかもしれないがな』 「・・・・・・きっと許してくれるさ、ルークな・・・・・・ら・・・・・・」 その瞬間、視界がぼうっと湾曲しながら急に落下する。頭が重力に身を任せ、落ちる・・・・・。俺はその次の瞬間、意識を失っていた。 #comment [[6話]]へ戻る   [[8話]]へ進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る

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