4話

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翌日、俺とルークは旅の準備を終え、サレッドの表門の前にいた。 「よし・・・・・・これで全部だな」 「アリウス・・・・・・何か忘れてないか?」 「ん?何か忘れてるっけ?」 「防具無しで行く気かよ、お前・・・・・・;」 そうだった、外には魔物がいる。まだこの世界に来て1日しか経っていないため、そのことをすっかり忘れてしまっていた。 「あ・・・・・・;ごめん;」 「気にすんなって。買いに行こうぜ。」  幸い昨日の魔物退治のときにもらったお金があるので、2人で防具を買いに行くことにした。 相変わらずにぎわいを見せる中央部。人々が活気に満ち溢れているようだ。俺達はその元気な声を聞きながら防具屋に入る。 物々しい数の防具がずらりと並ぶ。皮製の鎧から鋼鉄の鎧、ガントレットやレギンスと元の世界では到底ありえない物ばかり。 「ルークはその服で行くのか?少し重そうだな・・・・・・」 「なぁに、ガキの頃からしょっちゅう着けてるからな。すっかり慣れたよ」 ルークは軽装備の鎧を着ていた。軽装備とはいえ、それなりの重さがありそうだった。 大きな剣、それに鎧なんて格好をしてるから、これが重装備の鎧ならまるで騎士だ。 「さて、アリウスはどんな装備で行く?」 店に着いた俺達は、俺に丁度いい装備を探していた。 「うーん。これ・・・・・・かな?」 「なんかずいぶんと軽そうな装備だな」 「ああ、これで大丈夫さ」 俺の選んだ防具は主に上半身のみを守るような軽い装備だった。しかし、こんな軽い防具を選んだのには理由があった。 「んじゃ、これ下さ・・・・・・」  選んだ防具を買うまさにその時だった。また、どこからともなく声が聞こえてくる。 「・・・・・・ウス。アリウス。聞こえていますか?」 「!・・・・・・ミーティアさん?」 「な、なんだ!?なんだ、この声!?」 「あ、そうか。ルークは初めて聞くんだっけ」 「今から人の少ない場所に移動して下さい」 「?いいですけど・・・・・・」 防具を買うのをやめ、ルークと人の少ない場所へと向かう。しかし、俺はある違和感に気づいた。 俺とルークの方を、国中の人が変な目で見ている。まるで何かに驚いているように。  俺達が人気の少ない木陰にたどりつくと、また声が聞こえてきた。 「わざわざ移動してもらってごめんなさい、アリウス」 「いえいえ。で、一体何の用ですか?」 「・・・・・・アリウスまさか貴方、まだ気づいていなかったのですか?」 「・・・・・・・・・?」 首をかしげる。ミーティアさんの質問の意図が全くわからないからだ。 「・・・・・・アリウス、この声一体どこから聞こえて来るんだ?」 「ああ、ルークにはミーティアさんのこと話してなかったっけ。ミーティアさん、ちょっと待って下さい。」  俺はルークにミーティアさんのことを簡潔に話した。俺をここへ送った張本人であることも。 すると、ルークは納得してくれたようだった。 「ふーん・・・・・。なるほどねえ。で、その張本人さんがアリウスに何の用なんだ?」 「そうだった。ミーティアさん、俺が気づいていないことって何ですか?」 「『力』を使ってみて下さい」 「?・・・はい。」 「・・・・・・あれ?・・・・・・あれ!?なんで出ないんだ!?」 「やはり気づいていませんでしたね・・・・・・」 ふう、と小さくため息をつく声が聞こえた。ルークは現状が理解できずに困惑した表情をしている。 「何だ?どうした、アリウス?」 「『力』が・・・・・使えない!!」 「『力』?力って何の?」 「魔力・・・・・・いわば、魔法を使うための力ですよ。ルークさん。  それが今のアリウスからは抜けてしまっているのです。」 「魔法ってことは・・・・・・アリウスは魔導士なのか・・・・・・!」 「そんな・・・・・・何で使えないんだよ・・・・・・・・・」 「貴方の体から魔力が消えてしまっているからです」 「風も、光も全部!?」 「はい。それも私が命令を受けて、あなたの力を外へ開放しました」 「っ!!・・・・・・それだけ罰が厳しいってことかよ・・・・・・」  俺は元の世界では世界で3人しかいないと言われる魔導士の1人だった。 魔導士とは、いわば魔法使いだ。しかし、その能力は魔法使いを軽々と超える。 さらに、魔法使いとは違い呪文の詠唱などがないので、すばやく魔法を繰り出せる。俺がさっき店で軽い防具を選んだのも そのためだった。魔法さえ使えれば魔物なんか簡単に倒せる、そう思ったから。しかし、俺は「決まり」を破ってしまった。 それは絶対に限られた場所以外では魔法を使わないこと。 でもそれはしょうがなかった。小さな子が事故に会いそうになったため、助けるために力を使った。 しかし、「決まり」は絶対だった。俺は千年後の世界に飛ばされ、あげく力も奪われてしまったのだ。 「このまま・・・俺、元に戻れないのか・・・・・・?」 「・・・・・方法はありますよ」 「え!?ミーティアさん、教えて下さい!!!」 「貴方の力は、この世界のどこかに力ごとに分散されているのです。  しかし、ただ集めればいい・・・というわけではありません」 「・・・・意味がわからないんですが・・・。」 「分散された者は、ほとんどがあなたと敵対するのです。  つまり、倒して力たちの記憶を取り返さなければならない、ということです」 「倒せば、また俺のところへ戻って来てくれるんですね?」 「はい。そういうことです」 「よし、それなら俺でも大丈夫だ。ルーク、早速行こうぜ!早く力を取り戻さないと」 「おいおい、また防具買わずに行く気かよ」 「あ・・・・・・」 ルークは呆れ顔だ。そりゃまあ2度も忘れていれば当たり前と言えば当たり前か・・・・・・。  しかし、ここで1つの疑問が浮かぶ。 「ミーティアさん、なんでこんな人がいない場所に呼んだんですか?別にさっきの店のところでもよかったんじゃ?」 「ああ、言い忘れていましたね。私の声は、貴方にしか聞こえないんです。  だから他人に不信感を抱かれないように、ここまで来て頂いたのです」 「え、じゃあ俺はなんで聞こえるんだ?確かに今聞こえるぞ?」 「それはあなたがアリウスと深く関わった人間だからですよ、ルーク。それ以外の人には私の声は聞こえません」 「なるほど、偶然じゃなかったってわけか」 「そういうことです。ではアリウス、最後に情報を1つ。『風の力』はサレッドからすぐ近くの洞窟にいます。  頑張って下さいね」 そう言い終わると、彼女の声はもう聞こえなくなった。 「不思議な感じの人だったな・・・・・・。んじゃ防具買いに行くか、アリウス?」 「ああ、行こうぜ。」  俺達はさっきの店に戻り、防具を買って店を出た。力が使えないので、さっきより少し丈夫な防具を選んだ。 「あ~・・・・・しまった。そういえば俺武器も持ってないぞ;」 「ああ、そうだったっけ。それならこれ使えよ。」 そう行ってルークに手渡されたのは、魔物退治に使ったあの2本の短剣だった。 「いいのか?これ使っても・・・・・・」 「構わないよ。どうせ予備に持ってただけだったしな」 俺は力が使えたころはほとんど軽装備だったので、軽く使いやすい短剣はありがたい。鞘のベルトを腰に巻きつけ、堅く縛る。 「すまないな。俺のせいで時間食っちゃって」 「構わないって。おかげでアリウスのこと大体は分かってきたからな。それに、行き先も決まったしな」 「ああ。まず、力を取り戻して行かないと俺は役に立てないからな。風の力のいる洞窟に行こう」 こうして準備が済んだ俺達は、サレッドを出て風の力の洞窟に向かうことにした。 #comment [[3話]]へ戻る  [[5話]]へ進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る
翌日、俺とルークは旅の準備を終え、サレッドの表門の前にいた。 「よし・・・・・・これで全部だな」 「アリウス・・・・・・何か忘れてないか?」 「ん?何か忘れてるっけ?」 「防具無しで行く気かよ、お前・・・・・・」 そうだった、外には魔物がいる。まだこの世界に来て1日しか経っていないため、そのことをすっかり忘れてしまっていた。 「あ・・・・・・ごめん」 「気にすんなって。買いに行こうぜ」  幸い昨日の魔物退治のときにもらったお金があるので、2人で防具を買いに行くことにした。 相変わらずにぎわいを見せる中央部。人々が活気に満ち溢れているようだ。俺達はその元気な声を聞きながら防具屋に入る。 物々しい数の防具がずらりと並ぶ。皮製の鎧から鋼鉄の鎧、ガントレットやレギンスと元の世界では到底ありえない物ばかり。 「ルークはその服・・・・・・というか鎧で行くのか?少し重そうだな・・・・・・」 「なぁに、ガキの頃からしょっちゅう着けてるからな。すっかり慣れたよ」 ルークは軽装備の鎧を着ていた。とはいえ、それなりの重さがありそうだった。 大きな剣、それに鎧なんて格好をしてるから、これが全身用の鎧ならまるで騎士だ。 「さて、アリウスはどんな装備で行く?」 店に着いた俺達は、俺に丁度いい装備を探していた。 「うーん。これ・・・・・・かな?」 「なんかずいぶんと軽そうな装備だな。それじゃああんまり防御には期待できないぜ?」 「いや、これで大丈夫さ」 俺の選んだ防具は主に上半身のみを守るような軽い装備だった。しかし、こんな軽い防具を選んだのには理由があった。 「んじゃ、これ下さ・・・・・・」  選んだ防具を買うまさにその時だった。また、どこからともなく声が聞こえてくる。 「・・・・・・ウス、アリウス。聞こえていますか?」 「!・・・・・・ミーティアさん?」 「な、なんだ!?なんだ、この声!?」 「あ、そうか。ルークは初めて聞くんだっけ」 「今から人の少ない場所に移動して下さい。できれば彼も連れて」 「?いいですけど・・・・・・」 防具を買うのをやめ、ルークと人の少ない場所へと向かう。しかし、俺はある違和感に気づいた。 俺とルークの方を、周りの人が変な目で見ている。まるで何かに驚いているように。  俺達が人気の少ない木陰にたどりつくと、また声が聞こえてきた。 「わざわざ移動してもらってごめんなさい、アリウス」 「いえいえ。で、一体何の用ですか?」 「・・・・・・アリウスまさか貴方、まだ気づいていなかったのですか?」 「・・・・・・・・・?」 首をかしげる。ミーティアさんの質問の意図が全くわからないからだ。 「・・・・・・アリウス、この声一体どこから聞こえて来るんだ?」 「ああ、ルークにはミーティアさんのこと話してなかったっけ。ミーティアさん、ちょっと待って下さい。」  俺はルークにミーティアさんのことを簡潔に話した。俺をここへ送った張本人であることも。 すると、ルークは納得してくれたようだった。 「ふーん・・・・・・。なるほどねえ。で、その張本人さんがアリウスに何の用なんだ?」 「そうだった。ミーティアさん、俺が気づいていないことって何ですか?」 「『力』を使ってみて下さい」 「?・・・・・・はい」 俺は集中し、右手に力を込める。が、しかし・・・・・・ 「・・・・・・あれ?・・・・・・あれ!?なんで出ないんだ!?」 「やはり気づいていませんでしたね・・・・・・」 ふう、と小さくため息をつく声が聞こえた。ルークは現状が理解できずに困惑した表情をしている。 「何だ?どうした、アリウス?」 「『力』が・・・・・・使えない!!」 「『力』?力って何の?」 「魔力・・・・・・いわば、魔法を使うための力ですよ。ルークさん。  それが今のアリウスからは抜けてしまっているのです。」 「何だって!?魔法ってことは、アリウスは魔導士なのか・・・・・・!」 「そんな・・・・・・何で使えないんだよ・・・・・・!!」 「貴方の体から魔力が消えてしまっているからです」 「風も、光も全部!?」 「はい。それも私が命令を受けて、あなたの力を外へ開放しました」 「っ!!それだけ罰が厳しいってことかよ・・・・・・くそっ!!」  俺は元の世界では世界で(もちろん俺たちのいた方の世界だ)3人しかいないと言われる魔導士の1人だった。 魔導士とは、いわば魔法使いだ。しかし、その能力は魔法使いを軽々と超える。 さらに、魔法使いとは違い呪文の詠唱などがないので、すばやく魔法を繰り出せる。俺がさっき店で軽い防具を選んだのも そのためだった。魔法さえ使えれば魔物なんか簡単に倒せる、そう思ったから。しかし、俺は「決まり」を破ってしまった。 それは絶対に限られた場所以外では魔法を使わないこと。 でもそれはしょうがなかった。小さな子が事故に会いそうになったため、それを助けるために力を使った。 しかし、「決まり」は絶対だった。俺は千年後の世界に飛ばされ、あげく力も奪われてしまったのだ。 「このまま俺、元に戻れないのか・・・・・・?」 「・・・・・・方法はありますよ」 「え!?ミーティアさん、教えて下さい!!!」 「貴方の力は、この世界のどこかに力ごとに分散されているのです。  しかし、ただ集めればいい・・・・・・というわけではありません」 「意味がわからないんですが・・・・・・」 「分散された力は、ほとんどがあなたと敵対するのです。つまり、倒して力たちの記憶を取り返さなければならない、ということです」 「倒せば、また俺のところへ戻って来てくれるんですね?」 「はい。そういうことです」 「よし、それなら俺でも大丈夫だ。ルーク、早速行こうぜ!早く力を取り戻さないと」 「おいおい、慌てるなって。また防具買わずに行く気かよ」 「あ・・・・・・」 ルークは呆れ顔だ。そりゃまあ2度も忘れていれば当たり前と言えば当たり前か・・・・・・。  しかし、ここで1つの疑問が浮かぶ。 「ミーティアさん、そういえばなんでこんな人がいない場所に呼んだんですか?別にさっきの店のところでもよかったんじゃ?」 「ああ、言い忘れていましたね。私の声は、貴方にしか聞こえないんです。  だから他人に不信感を抱かれないように、ここまで来て頂いたのです」 「え、じゃあ俺はなんで聞こえるんだ?確かに今聞こえるぞ?」 「それはあなたがアリウスと深く関わった人間だからですよ、ルーク。それ以外はこの世界の住人に私の声は聞こえません」 「なるほど、偶然じゃなかったってわけか」 「そういうことです。ではアリウス、最後に情報を1つ。『風の力』はサレッドからすぐ近くの洞窟にいます。  頑張って下さいね」 そう言い終わると、彼女の声はもう聞こえなくなった。 「不思議な感じの人だったな・・・・・・。んじゃ防具買いに行くか、アリウス?」 「ああ、行こうぜ。必ず全部の力を取り戻してやる・・・・・・!」  俺達はさっきの店に戻り、防具を買って店を出た。力が使えないので、さっきより少し丈夫な防具を選んだ。 「あ~・・・・・・しまった。そういえば俺武器も持ってないぞ」 魔法が使えない以上、本来の俺の戦闘スタイルで戦い続けるのは無理がある。武器がなければ苦戦することだろう。 「ああ、そうだったっけ。それならこれ使えよ」 そう行ってルークに手渡されたのは、魔物退治に使ったあの2本の短剣だった。 「いいのか?これ使っても・・・・・・」 「構わないよ。どうせ予備に持ってただけだったしな」 俺は力が使えたころはほとんど軽装備だったので、軽く使いやすい短剣はありがたい。鞘のベルトを腰に巻きつけ、堅く縛る。 「すまないな。俺のせいで時間食っちゃって」 「構わないって。おかげでアリウスのこと大体は分かってきたからな。それに、最初の行き先も決まったしな」 「ああ。まず、力を取り戻して行かないと俺は役に立てないからな。風の力のいる洞窟に行こう」 こうして準備が済んだ俺達は、サレッドを出て風の力の洞窟に向かうことにした。 #comment [[3話]]へ戻る  [[5話]]へ進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る

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