76話

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そこからはまるでスローモーションのように流れる風景。目の前で起こることが何もかも夢のように見えた。 緩んだロープでバランスを崩すアルル。それを見ていたみんなが慌ててソデに出てくる。命綱など・・・・・・付けてはいない。                              嫌だっ!! このまま落ちたら無事で済むはずがない!僕は今日ここに来てたくさんのことを学んだんだ。一人でいることの虚しさや無意味さ、 大勢で笑いあえることの素晴らしさ。そして、人の強さと温かさそのきっかけくれたのは他でもない彼女なんだ。 それを指をくわえて見てられるか!!絶対に、絶対に助けてみせる!! 「風の力よ、頼む!!」 『了解した!!』 風の力はあっという間に彼女の下に回り込み、アルルを支えようとする。 「・・・・・・っ!?」 だが完全に浮かせることはできず、せいぜい落下速度を若干弱めることしかできない。 「まずい、これじゃまだ危ないままだ!」 僕が諦めかけたその時、アルルは空中でくるりと身を翻(ひるがえ)し、                              タンッ と、静かに床に着地してみせた。一瞬静まり返った観客席の人達からはこれまでで一番大きな拍手が向けられる。 鳴りやまぬ拍手の中、ゆっくりと暗幕が下ろされると僕はステージのアルルの元へと駆け寄る。 「アルルっ!大丈夫!?ケガは!?」 「あ、アリウス。私は大丈夫、痛みも何も・・・・・・っ!?」 アルルは急に苦悶の表情を浮かべ、右足を押さえてうずくまる。他の団員もアルルに駆け寄って様子を見る。 「アルル、どうした?足が痛むのか!?」 「どきなさいってばあんたたち!!アルル、しっかりして!リディ、医者を呼んできて。レイリー、アルルをベッドに運んで!」 「わかってる!おらお前ら、道を開けろ!!」 「なんでよりによって一番危険な綱渡りでこんなトラブルが起こるのよ!せっかくあの子の初舞台だったのに・・・・・・!!」 アイリィのその発言は僕に何か嫌な予感をさせた。頭の中を何かが通り抜けるような嫌な感じだ。僕の身体は自然とあの場所へと向かう。 「ちょっとアリウス、どうしたの?ねえ、ちょっと待ちなさいってば!」 行かなきゃいけない。確かめなきゃならない。僕は急な階段を上り、綱渡りの足場・・・・・・ロープが外れた足場へとたどり着く。 金具が2つともひしゃげてしまっており、そのうち片方は折れてしまっている。その下にはロープが擦れた跡が残っている。 (綱渡りのロープを固定する作業。いい?1回しか言わないから覚えてね。ロープを下から3番目のしるしの位置で4回巻きつけて、  少し上のところについてある2つの金具のうち『2』の番号が書いてる金具でそれを固定。そして今度は反対向きに3回巻いて、最後に  『1』の金具で固定するの) 「っ!?」 思い出せば嫌な予感の理由がはっきりと理解できる。なんでこんなことにも気付かなかったんだろう。 「アリウス、一体どうしたのよ・・・・・・ああ、そこが問題の場所ね。これは修理しないと使えそうにないわ」 「、がえた・・・・・・」 「?何か言ったアリウス?」 「金具の順番、間違えた・・・・・・僕が、僕がアルルをあんな目に合わせたんだ!!僕のせいで!!」 「落ち着いてアリウス、こんなところで暴れたら危ないから!」 「僕がちゃんと正しい順番で金具を固定しておけばアルルは、アルルはっ!!」                              パシイッ! 両方の頬にアイリィの少し冷たい手が触れている。どうやら両手で軽くビンタを喰らったらしい。 「落ち着きなさい。アルルは死んじゃいないんだから謝れるのよ。ここじゃ危ないから、下に降りてから詳しい話を聞かせて」 「う、うん・・・・・・」 アイリィに諭され、僕たちは下に降りる。そこで僕がロープの固定の金具の順番を間違えたこと、アルルを危険な目に合わせたことを話した。 #comment [[75話]]へ戻る [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る
そこからはまるでスローモーションのように流れる風景。目の前で起こることが何もかも夢のように見えた。 緩んだロープでバランスを崩すアルル。それを見ていたみんなが慌ててソデに出てくる。命綱など・・・・・・付けてはいない。                                   嫌だっ!! このまま落ちたら無事で済むはずがない!僕は今日ここに来てたくさんのことを学んだんだ。一人でいることの虚しさや無意味さ、 大勢で笑いあえることの素晴らしさ。そして、人の強さと温かさそのきっかけくれたのは他でもない彼女なんだ。 それを指をくわえて見てられるか!!絶対に、絶対に助けてみせる!! 「風の力よ、頼む!!」 『了解した!!』 風の力はあっという間に彼女の下に回り込み、アルルを支えようとする。 「・・・・・・っ!?」 だが完全に浮かせることはできず、せいぜい落下速度を若干弱めることしかできない。 「まずい、これじゃまだ危ないままだ!」 僕が諦めかけたその時、アルルは空中でくるりと身を翻(ひるがえ)し、                                   タンッ と、静かに床に着地してみせた。一瞬静まり返った観客席の人達からはこれまでで一番大きな拍手が向けられる。 鳴りやまぬ拍手の中、ゆっくりと暗幕が下ろされると僕はステージのアルルの元へと駆け寄る。 「アルルっ!大丈夫!?ケガは!?」 「あ、アリウス。私は大丈夫、痛みも何も・・・・・・っ!?」 アルルは急に苦悶の表情を浮かべ、右足を押さえてうずくまる。他の団員もアルルに駆け寄って様子を見る。 「アルル、どうした?足が痛むのか!?」 「どきなさいってばあんたたち!!アルル、しっかりして!リディ、医者を呼んできて。レイリー、アルルをベッドに運んで!」 「わかってる!おらお前ら、道を開けろ!!」 「なんでよりによって一番危険な綱渡りでこんなトラブルが起こるのよ!せっかくあの子の初舞台だったのに・・・・・・!!」 アイリィのその発言は僕に何か嫌な予感をさせた。頭の中を何かが通り抜けるような嫌な感じだ。僕の身体は自然とあの場所へと向かう。 「ちょっとアリウス、どうしたの?ねえ、ちょっと待ちなさいってば!」 行かなきゃいけない。確かめなきゃならない。僕は急な階段を上り、綱渡りの足場・・・・・・ロープが外れた足場へとたどり着く。 金具が2つともひしゃげてしまっており、そのうち片方は折れてしまっている。その下にはロープが擦れた跡が残っている。 (綱渡りのロープを固定する作業。いい?1回しか言わないから覚えてね。ロープを下から3番目のしるしの位置で4回巻きつけて、  少し上のところについてある2つの金具のうち『2』の番号が書いてる金具でそれを固定。そして今度は反対向きに3回巻いて、最後に  『1』の金具で固定するの) 「っ!?」 思い出せば嫌な予感の理由がはっきりと理解できる。なんでこんなことにも気付かなかったんだろう。 「アリウス、一体どうしたのよ・・・・・・ああ、そこが問題の場所ね。これは修理しないと使えそうにないわ」 「、がえた・・・・・・」 「?何か言ったアリウス?」 「金具の順番、間違えた・・・・・・僕が、僕がアルルをあんな目に合わせたんだ!!僕のせいで!!」 「落ち着いてアリウス、こんなところで暴れたら危ないから!」 「僕がちゃんと正しい順番で金具を固定しておけばアルルは、アルルはっ!!」                                   パシイッ! 両方の頬にアイリィの少し冷たい手が触れている。どうやら両手で軽くビンタを喰らったらしい。 「落ち着きなさい。アルルは死んじゃいないんだから謝れるのよ。ここじゃ危ないから、下に降りてから詳しい話を聞かせて」 「う、うん・・・・・・」 アイリィに諭され、僕たちは下に降りる。そこで僕がロープの固定の金具の順番を間違えたこと、アルルを危険な目に合わせたことを話した。 #comment [[75話]]へ戻る   [[77話]]に進む [[小説]]ページへ戻る [[トップページ]]へ戻る

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