「裁判傍聴 (2)」

被告の有罪判決を見届けた我々は、その後、いくつかの法廷をハシゴしました。
覚醒剤不法所持、業務上過失致死とランクを上げて、最終的には、殺人罪。血まみれの包丁がぬっと出てきたり、実になまなましい犯行動機を聞かされたり。‥‥やっぱり、殺人はコワい。

裁判の傍聴は、とても有意義な体験でした。なにより、犯罪というものが、実は我々の日常生活と紙一重のところにあるんだ、という現実を思い知らされました。
そして‥‥実際の裁判は、イメージしていたものと、若干ズレがあることも。

●裁判長は木槌を叩かない
裁判といえば当然、木槌でカン。そして「静粛に」。
‥‥これはハズせないだろうと思っていたら、現実の裁判長はミゴトに手ぶら。そんなもの、叩きゃしません。「静粛に」もありませんでした。

●プロは「異議あり!」がキライ
「あなた、被告の住んでいる町に、恨みでもあるんでしょう」
検察側の偏見に満ちた尋問に対して、弁護士がゆっくり立ち上がります。
(そうだ! そこで“異議あり!”だ)
本場の“異議あり!”が聞けると思って、身を乗り出したのですが‥‥。
弁護士センセイ、なぜか半笑いです。そしてアタマをかきながら、
「あ。今のソレ、ちょっと。‥‥ねえ?」
すると、検事も心得たもので、照れくさそうに笑って、
「‥‥そうですね。‥‥質問は取りさげます」

ちがうだろう! なんだよ“今のソレ”って! そこはビシッと人差し指をつきつけて「異議あり!」じゃないか!
どうやら裁判の現場では、“異議あり!”なんて、はやらないみたいです。


‥‥ちなみに、これらの現実は、いっさい『逆転裁判』には反映されていません。 裁判長は、ほとんど“ハンマー”とも呼べる巨大な木槌をガンガンたたきまくり、弁護士たちは、何かにとりつかれたかのように“異議あり”と叫びたおしています。
「お前ら、裁判所にナニしに行ったんだよ!」
と、思われるかもしれませんね。
でも、そもそも裁判の傍聴は、チームの親ぼくを深めるのが目的だったわけですから‥‥。