「逆境裁判」
“チームのメンバーが、1人が抜ける”‥‥こう書いても、その圧倒的パワーは伝わらないかもしれません。“なんだ、あと6人もいるじゃん”と思われる方もいるでしょう。
しかし!‥‥これは、まさに致命的な大災害なのです。
ゲームは、いろんなパーツで構成されています。
「シナリオ」
「キャラクターのアニメーション」
「背景グラフィック」
「システム用グラフィック」
「音楽」
「効果音」
「プログラム」
‥‥これだけで、7つあります。1人やめるということは、これらのパーツが1つ、ゴッソリなくなるということなのです。これはもう、ゲッソリという他ありません。
1月不吉日。
ついに我々は小部屋に呼び出され、サイアクの宣告を受けました。
「開発中止」
‥‥当時、というか今も、第四開発部にヒマな人材はいません。
メンバーがいなければ当然、チームは続かない‥‥。
規模の小さいチームでなければ、なかなか気づくことのない大きな落とし穴。
それはもう、目もくらむようなチャブ台がえしでした。
ゲームの方向性も見えないまま空中分解。その、救いようのない脱力感。
‥‥どん底にあったチームに、なんとか救済の道を見つけてくれたのは、プロデューサーと部長でした。
あろうことか、“biohazard”チームの人間が“かけもち”という形でネジ込まれたのです。彼がどんな因果を含まれたのかは‥‥コワくて聞けません。
‥‥1月。これが『逆転裁判』のターニングポイントでした。
メンバー1人ひとりの“重さ”を思い知らされたこの事件をキッカケに、みんなの意識は1点に集中したのです。
「‥‥ゼッタイ、完成させる!」
ここからゲームは、一気に再構築への道を突き進むことになります。