「ファミリー (1)」
『逆転裁判』の世界には、さまざまなキャラクターが生活しています。
もう、みんな大好きです。
「ウソつけ! あんなフザけた名前つけてるクセに」
と言われようとも、とにかくみんなを愛しています。
その中でもやはり、レギュラーの5人には特別の思い入れがあります。
彼らについて、少しお話ししてみましょう。
特に、みなさんからの異議が多い“ネーミング”を中心に、書いてみたいと思います。
●成歩堂龍一
主人公にして、その名前に異議が集中している男でもあります。
“カッコ悪い!”とかなんとか。
‥‥でも、考えてみてください。
主人公に必要なのは、インパクトのある名前なのです。
さらに、『逆転裁判』の少しコミカルなイメージを端的に表現していれば、なおよろしい。
“成歩堂”。その条件に、まさにピッタリではないでしょうか。
‥‥後づけで、そんなことを考えてみました。
やっぱり、ダメですか。そうですか。
とにかく、“なるほど”という響きに魅せられてしまったのです。
ユーモラスな語感。ほのかに漂うばかばかしさ。そして何よりも、意味のなさ。
“龍一”の方は、ぼくの好きなミュージシャンの名前から取っています。
彼のセリフは、非常に書きやすい。基本的に、ぼくの“素”のコトバを並べるだけで、なるほどくんのできあがり。
それだけに、一番身近に感じる、お気に入りのキャラクターです。
(ただし、残念ながらぼく自身は、あれほど友情にアツかったり単純だったりはしません)
ちなみに、成歩堂の『異議あり!』『待った!』『くらえ!』の声は、ワタクシ巧が担当しております。ディレクター命令で、なかばムリヤリねじ込みました。
●綾里姉妹
名前をつけるとき、音の響きから考える場合と、字づらや意味から考える場合があります。なるほどくんは前者で、真宵ちゃんの場合は後者でした。
ヒロインの名前は、なんとなく左右対称にしたかった。
シンメトリックな図形が好きなのです。
そこで、まずそういう漢字を思いつくままリストアップ。
‥‥美・真・幸・亜・善・朋・喜・貴・宵・凶・器・凹・凸・月・火・水・木・金・土・日‥‥等。
そのリストから、名前を作りました。
“真の宵”‥‥“逆転姉妹”に登場するときの、謎めいたイメージにもピッタリ。
“マヨイ”という響きにも味があって、とても気に入っています。
彼女については、特にくわしい設定は作っていません。
ごくふつうの、どこにでもいる霊媒師の卵。そんなイメージです。
書いているうちに、みそラーメンが好きで、トノサマンが好きで、好奇心が強くて‥‥と、自然にふくらんでいきました。
シナリオを書いていて一番楽しかったのは、なんと言っても、なるほどくんと真宵ちゃんのムダ話。次に何を言いだすか、書いていて見当がつかない。
2人のおしゃべり、もう少し聞きたかったですね。
千尋さんの扱いについては、思った以上に大きな反響があって驚きました。
姉妹を設定した瞬間から運命は決まっていたので、それほどヒドいことをしたという自覚がなかったのです。‥‥反省。
ぼくにとっては、彼女は“生きている”つもりなのですが‥‥。
千尋さんのイメージも、とてもシンプルです。
ぼくの理想の“お姉さん”像を、そのまま表現しました。
ちなみに彼女の名前には、弁護士という職業がら『千回でも尋ねましょう』という意味がこめられています。
‥‥以上、弁護側でした。検察側については、また次回。