まんたんウェブ 巧舟氏インタビュー1

まんたんウェブ 巧舟氏インタビュー1


キシャがゆく!:逆転裁判 あるクリエーターの“逆転劇”
http://mainichi.jp/enta/mantan/archive/news/2007/05/05/20070505org00m300006000c.html

Web archive/2007年05月05日
消えつつあるネット上の貴重な資料を公開。


逆転裁判 あるクリエーターの“逆転劇”

ニンテンドーDSソフト「逆転裁判4」(カプコン)がシリーズ過去最高の50万本を出荷するなど好調だ。弁護士となって、絶体絶命の被告人を逆転無罪へと導く独特の法廷ゲーム。誕生の裏には、ミステリーが大好きな1人のゲームクリエーターの存在があった。 【河村成浩】

■7人から始まった…

逆転裁判のシリーズ企画、ストーリー作りを手掛けたのはカプコン企画室の巧舟(たくみ・しゅう)さんだ。中学生時代からミステリーの大ファンという読書家で、作家を志望したこともあるという。「いつかはミステリーを自分の仕事に出来たら」と思い、巧さんは企画職でカプコンに入社。その後、プレイステーションの作品にかかわり、恐竜と戦う人気ゲーム「ディノクライシス」シリーズを手掛けた。そんな巧さんに「1年だけ時間をあげるから好きなゲームを作っていい」と声がかかったのがきっかけで、逆転裁判のプロジェクトがスタートした。

開発メンバーは7人で、RPGのような大規模なゲームは無理。大好きなミステリーをテーマにしようと決定。最初は、「相手のうそを見抜く」を作品の軸にすることを思いつき、そして「うそを見抜くには弁護士」「弁護士ならば法廷のドラマ」「法廷なら証人のうそを見抜いていく作品に」と、連想ゲームのように作品の設定を練っていった。

ゲームは、裁判がたった3日で決着し、裁判長が木づちを使って判決を下すなど、現実ではありえない設定となっている。裁判所へと足を運んだとき、巧さんは裁判官の服をスケッチしながら、裁判官が木づちを使わないことに気づいた。だが演出を優先し、西部劇のミステリーを参考にして、あえて木づちを持たせた。ゲームで大事なのはリアリティーでなく、面白さを抽出すること」という“ゲーム哲学”だ。

巧さんは、キャラクターのやり取りに随所にボケとツッコミを詰め込んで、ユーザーを飽きさせない工夫をし、スピーディーな展開やキャラクターのくせ、しゃべり方までにも気を使った。仕上がったゲームは、現実の法廷の雰囲気を持ちながら、「証人」のウソをズバズバと見抜くそう快感にあふれていた。

■ファンの願いで“逆転” 続編決定

当時は、据え置き型ゲーム機の全盛期で、グラフィックが美しく、壮大なストーリーが展開される「重厚長大型」のゲームがもてはやされていた。開発中に「裁判ゲームが受けるはずがない」と言われたこともあったという。それでも巧さんは「自分の作りたいゲームを作る」と意思を曲げなかった。

ゲーム名は当初、「裁判」の重いイメージを壊そうと「サバイバン(サバイバル・サイバン)」という名前が付けられたが、最終的にはストレートに「逆転裁判」と名付けられ、01年10月に発売された。派手な広告展開もなかったため、売り上げは7万本(エンターブレイン調べ)程度と並の売れ行きだった。

ところがゲームユーザー熱心な声援が寄せられ、「『1』で打ち切り」とされていたゲームの続編決定につながった。巧さんは「本当にうれしかった」と振り返る。「2」は、「1は簡単だった」と言われたことを受けて、人の心のウソを見抜く「サイコロック」というシステムを導入し、謎解きに刺激を与えて14万本を販売。「3」は、逆に「2は難しかった」という声を取り入れ、システムを変えず、ネタとストーリー勝負に徹し、シリーズ三部作は完結した。

ところが05年秋、ニンテンドーDSで「逆転裁判4」の開発が公表された。巧さんは、「なるほど君」を主人公にするのは無理があると考え、「なるほど君」を外して最新作を作り上げようとした。ところが会社から付いた条件は、「『なるほど君』を出すこと」。また、「逆転裁判」シリーズを後押ししてくれたファンも「なるほど君」の登場を望んでいた。そこで、主人公は“新人”を起用するが、「なるほど君」を脇役として起用。なるほど君が新しい主人公をフォローし、過去の登場人物も姿を見せるなどファンにはうれしい設定となった。こうしたファンを大事にする姿勢、地道な携帯電話向けの配信などが奏効し、「逆転裁判4」はシリーズ初の50万本出荷を達成した。

巧さんは「シリーズを知らない人もそのまま物語が楽しめます。ちなみに初めてプレーした人が、ゲームをクリアしたら、絶対に過去の作品もやりたくなると思います。何より多くの人に楽しんでほしい」と自信を見せる。“逆転”の連続で復活した逆転裁判シリーズ。次は、どんな逆転劇を見せてくれるのだろう。