例え世界を救ったとしても、二人が探検家なのに変わりはない。
そんな彼らが、何時ものようにおうごんの間の探検に出かけていた時だ。
ポッチャマになってしまった元人間、ソラリスは、階段近くで待ち伏せていたキレイハナを見つけた。


「あ、キレイハナだ。ショウ、僕水タイプだから、やっつけるのは任せ・・・あれ?」
「相棒、依頼主は俺に任せて存分に逝って来い!」
「瀕死推奨!?じゃなくてだから僕草タイプはッ・・・ぎゃーー!!」


キレイハナの「はなびらのまい」で擦り傷だらけになりつつも、相手を行動不能にする技「シャワーリング」で足止めし、距離を取る。
電気タイプなら、先手必勝で押し切れない事もないけれど、草タイプには得意な水タイプの技がほとんど効かないのに!
ショウにはノーマルタイプの技「メガトンパンチ」があるのだから、手伝ってくれたっていいのに・・・ッ。ああ面倒臭い!依頼主が居なければ絶対相手になんてしないのに!
二歩離れた所からハイドロポンプを放って、漸く気絶させる事が出来た。
異変は収まっても、野生に帰ってしまったポケモン達はそうそう元には戻らない。


「はぁ・・・っ。し、死ぬかと思った・・・」
「ご苦労、相棒」


ぽん。ショウがソラリスの肩に手を置く。ソラリスは恨めしげにピカチュウの相棒を睨んだ。


「いだだっ。ってかショウ!何で助けてくれなかったのさ!」
「俺、相棒なら出来るって信じてた・・・」
「信じないで。寧ろ助けて」
「大丈夫だって。もしもの時は、」


ショウは鞄の中を漁って、ふっかつのタネを取り出した。
そして得意げに、ふんぞり返って言う。


「コレがあるから!」
「見殺しにする気満々だったんじゃないかー!!」
「相棒怒るなよー。ジョークだってジョーク」
「いやいやいや!目がマジだった!本気だったよ!」
「あのう・・・」
「「何?」」
「そろそろ行きませんか・・・?ぼく、おうごんのまを見たいです・・・」
「あ」
「ほら相棒!依頼主を困らせちゃだめじゃんー」
「僕のせい!?僕なの!?ねぇ!?」


女の子なのに「俺」だなんて言うし、時々こうやって平気で仲間を見殺しにするから、
皆にはあまり好かれていなかった「ピカチュウ」の相棒、ショウ。
でも今は、ショウを慕うトレジャータウンの住人は多い。
・・・ショウの本性に目を瞑っているからなんだけど。
そりゃもう、ショウったら酷いんだ。
二人のときはなりふり構わず「ほうでん」するし、僕はそのとばっちりを受けて何個貴重なふっかつのタネを無駄にしてしまったか・・・。
でも、そんな彼女と、なりゆきではあっても、世界を救うような大業を成し遂げてしまったんだから、人生って本当にわからない。


「わぁ!此処が『おうごんのま』なんですね!感激です!」
「どーもどーも。ほら相棒、何してんの。ほらお宝取ってきてよ水ポケ」
「んなっ・・・ショ、ショウなんて嫌いだー!」
「はいはい。どぉも」


でもやっぱり、僕はショウと一緒なんだ。
ショウが「相棒」って呼んでくれるうちはね。
人間の時の記憶は相変わらず曖昧なままだけど、今自分が帰る場所は、サメハダ岩の家じゃなくて、ショウのところだ。


「・・・はい、お宝」
「うむ。ご苦労だった水ポケ」
「・・・・・・」


でもやっぱり、ショウって時々ムカつくなぁ。
ああ神様、もし居るのなら、どうしてもっと彼女を女の子らしく創ってくれなかったんだ。


++++++++++

主人公サイドその1。
相棒はむかつく子です。
そりゃもう、相手が怒るとわかってても酷い事言います、します。
俺様何様魔王様。
そんな彼女に辛抱強くついていけるあたり、主人公はある意味大物の器なんだと思います。
我慢した結果、世界を救った!
世界を救うまでにどのくらいショウのいい加減さとひどさに悩まされたかは別のお話・・・。
最終更新:2008年02月06日 20:25