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21

4時。
生徒会メンバーは、今のところ6人が集まっている。
今日は珍しく花継さんが参加。水元先輩がまだ来ない。
あまり広くはない私の部屋。7人ではいっぱいいっぱいという感じだ。
「水元は、あと12分ほどで到着すると予想される」
「報告ありがとう。…………もう始めてしまいますか?」
「会長、ちょっとそわそわしてません?体調悪いですか?」
「いえ、大丈夫。ごめんなさい、心配かけて」
なんて鋭い副会長か。動揺を悟られてはまずい。
最初からこんなんで、あと数時間持ちこたえられるのか。
「では、水元先輩が来てからにしましょうか」
適当に談笑しながら、12分が過ぎるのを待つ。
この部屋だけ時間の流れが違うんじゃないだろうか、と思うくらい長い時間だった。
川上先輩が予報してから10分ちょっとで水元先輩が到着した。
川上先輩は残念そうな顔をしたが、私にとっては彼の早めの到着はありがたかった。
彼の姿を見るやいなや、私はメールの送信ボタンを押す。
"全員私の部屋に入りました。"
「それでは、第3回 生徒会非公式会議を始めます。お忙しい中、集まって頂いたことに感謝します。
では、川上先輩、お願いします」
すでに開かれているノートパソコンのキィボードを叩き、いつもと同じように川上先輩は答える。
「昨日のデータをレジュームする。
サブジェクト、今週末に開催される織々谷神宮大祭典における飲酒等非行について、またその防止策。
議事録に拠ると、『地域の全ての酒類販売店に対し、未成年者への販売を決して行わないように働きかける』こと、
また『生徒会による巡回を実施すること』が既定している。
今日討議すべきなのは、巡回の内容、分担、および飲酒等非行を発見した場合の対応について」

22

4時20分。メールが着てから数分経った。
俺はトイレから出ると、とっくにハンバーガーを食べ終え、だらだらしている坂上たちに声をかけた。
「やー、わりぃわりぃ。待たせたな。行くべ」
「おせーよ、長グソ野郎」
「おめーら、便所はいいか?」
「うっせ、行くぞ」
いいや、俺としてはお前らに是非トイレに行って欲しい。
家に着いてから不用意に部屋から出られると困るからな。
「いや、うちよ、今便所故障中だから」
「ったく、いいっつってんだろ」
彼らが固辞するので、俺は諦めた。
俺達はハンバーガーショップから出、俺の家に直行する。
俺、坂上、荻谷に加え、今日は飛田もいる。こいつは声がでかいから要注意だ。ただ、飛田より大声の能登山は今日はバイトで不参加だから好都合だ。↑ゲームをしながら奇声を発するので

俺は少し緊張しながらドアを開けた。
大丈夫。「靴は靴箱に」は、大体守られたようだ。
もっとも、靴があっても、俺には姉が居ることになっているので誰も気にはとめないだろう。
名前が書いてあるわけでもあるまいし。
靴を脱ぐのにもたついている振りをして彼らに先に部屋に行かせる。
誰もこっちを見ていない隙に俺は全員の靴を靴箱の下にまとめて蹴りこむ。
そして急いで彼らに追いついた。

23

物音がした。来たか……!
ちょっと緊張。つい意識も部屋の外に向かってしまう。
「誰か来ました?弟さんですか?」
「ええ。友達を連れてきたみたい」
気づかれないのが最善だが、もし気づかれた場合は弟の友達で通す。事前に取り決められた通りだ。
「…………では、私たちはメインストリートを中心に巡回し、裏路地は男性陣が担当する、という方針で宜しいですか?」
「男性陣って言っても、俺と神君しかいねえけどな」
水元先輩が苦笑する。
「二人だけで大丈夫?樹くん…… お姉ちゃん、ちょっと心配」
「全然心配いりません。それより、僕としては、姉さんこそしっかり見回れるのか不安なんですが」
「メインストリートだから、危険はないと思われますが?」
「いえ、常盤井先輩、それよりも、ちゃんとパトロールとして機能を果たせるのかが心配なのです」
「樹くん、ひどーい」
見回るべき対象が今まさにこの家にいるなど、誰も考えはしないだろう。
どきどき。
「女性陣は、全員で行動するんだっけ?」
「うーん、5人もいると、目立ってしまうのではないでしょうか?」
「……………………あ」
「どうしました?花継さん」
「私、土日居ない」
「そうなんですか!?もう、もっと早く言ってくださいよー」
「それにしても、4人でも目立つことに変わりはないのでは?」
「せっちゃんは、誰もが振り返る美人だからなぁ」
せっちゃんと呼ばれた川上先輩の袖からプラグが飛び出し、水元先輩の頭にヒットする。
そして先輩は何事もなかったかのように再び聞き役に徹した。
「じゃあ、目立たないよう、2人ずつ2組に分けますか?会長」
「目立つことが悪いことだとは思いません」
「え?……どういうことですか?」
全員が私のほうを見る。
「うん、つまり……」
私が説明を始めようと思った瞬間、どこからか声が聞こえる。
「(殺せーー)(死ねっ ちくしょう)」
声はどう考えても高瀬の部屋からだ。
飛田君の声だとすぐにわかった私は、どきっとするが、幸い、その場には、その声を即座に我が校の男子と結びつける者はいなかった。
「…………ずいぶん盛り上がってんな、弟さんがた」
「暴力ゲームじゃないですか?R指定のゲームのような気がします」
これ以上騒がれたら、みんなの注意がそちらに向き、そうなれば誰かが気づいてしまうこともありうる。
なんとしても止めなければ。
「私、ちょっと注意してきます。すみません、少しお待ちください」

24

飛田、うるせーぞ。
これはさすがにあっちにも聞こえたんじゃないか?
と思ったら、案の定ノックが聞こえた。
「あぁ?」
「(コホン…)うるさいわよ、龍瞬!」
「ちっ、うっぜーなぁ」
姉役の嶺の声に、言葉では反抗するふりをしつつも、俺は思わず吹き出しそうになる。
ドアの向こうにいるのが嶺だとわかっている俺にとっては嶺の声にしか聞こえないのだが、
俺の姉だと思い込んでいる他の面々にはとくに違和感はないらしく、誰ひとり反応を示さない。
そう思った瞬間、荻谷が立ち上がった。
「なした?」
「おめぇの姉ちゃん、一回見てみたかったんだよな」
しまった。
俺は前々から、言い訳に「姉」を使っていた。
しかしこの荻谷は他人の姉だとか妹に目がない。
いつのまにか「美人」ということになっている俺の「姉」に興味を示すのは当然といえた。
止める間もなく、荻谷はドアを開ける。
…………
しかしそこにはもう誰もいなかった。
「ちっくしょう、お前の姉ちゃんどんだけはえーのよ」
危なかった……
おそらく、「弟」への注意をするやいなや、真っ赤になって逃げ去ったたんだろう。
美人の姉、か…………
誰も今まで俺の「姉」としての嶺の姿を見ていないはずなのに、噂というのは不思議なものだ。

25

「おまたせしました」
「どうでした?」
「一応言ってはみたけど……あの子も、反抗期だから」
樹くんが本題に戻す。
「それで、会長が『目立つのは悪いことではない』と言った所からですが…」
「そう。これはあくまで私の考えなんだけど、そもそもパトロールの存在意義は何なのか、ということ。
隠密的に行動し、非行の証拠をつかんだり、捕まえたりすることは私たちの役目ではないと思う。
私たちが見回りをしている、という事実が、非行への抑制力となり、祭りの風紀の乱れを未然に防ぐ。
そういう役割を果たすべきだと思うんです。
だから、目立つことは問題ないし、見回りをすることを前もって宣言してもいいとさえ思うんです」
「うーん、なるほど。そういう考えもあるかもな」
「そうですね…… では会長、その場合、」

言いくるめたわけじゃない……
生徒会の行うべき活動に対するスタンスは、
万が一の仮定として私が高瀬君に好意のようなものを抱いていたとして、
そのために活動に手心を加え、彼を守るなどという事は決してあってはならないからだ。