白界様は僕の頬に人差し指の先をぐりぐり、ぐりぐりと突き刺して遊んでいた。
「六歌さ」
呼びかけながら、今度は親指と人差し指で僕の顎の骨を力いっぱいつまむ。
「あはは、変な顔」
「なんですか」
「んーん、なんでもないの」
彼女は僕の口内に指を侵入させると、今度は僕の舌を全力でつまんだ。そして引っ張る。
「え゛え゛」
「うっさいなぁ」
そのまま親指と人差し指をすり合わせるように動かす。爪を立てて舌に食い込ませる。
僕は口の端から涎を垂れ流した。
「よだれたれてるよ?」
僕は発声能力を奪われているのでなんとも返事をできなかった。

彼女は僕の口内から指を抜き取ると、首の方まで垂れている僕の涎を指ですくい取り、
僕の頬に塗り始めた。
頬から、粘液を鼻の方にも延ばす。
ケーキのデコレーションをするように、彼女は僕の顔を汚して遊ぶ。
「あはは」
彼女はにこにこしながら、再び指を僕の口内に入れてかきまわし、二本の指に僕の涎をしっかりと絡めた。
その指を、V字に開いて、そのまま僕の口内から出す。
僕の唇と彼女の指の間に、透明な橋がかかった。
彼女はそれを、納豆の糸を箸を回して絡め取るようにして、自分の指に纏う。

「どこまで?」
そのV字の指が、僕の両の眼球に漸近した。
最終更新:2008年01月31日 15:44