「間に合った・・・」
――11:50分
「こんにちは 受験者の方ですか?」
受付の係り員らしき人が話しかけてきた
「はい・・・」
「こちらにどうぞ」
ニコッと営業スマイルを見せる
何か忘れてることないかな・・・
あ 家に鍵かけるの忘れた・・・
薄暗い建物の中で、どうでもいい不安は募っていく
「ここでお待ちください。お待ちになってる間に、この紙に必要事項の
記入をお願いします」
紙とペンを渡される
受付の係り員は黒い扉の向こうに消えてしまった
他に人は自分しかいない
側にあった椅子に腰掛けて、小さいテーブルの上で書き始めた
(えぇと、何々・・・)
戦闘経験は・・・ナシ
魔法は使えるか・・・いいえ
武器の支給希望か否か
当然武器なんて無いから支給希望・・・
書きおわるとすぐに扉の向こうから声が聞こえた
「次の方、どうぞ」
持ち前のポーカーフェイスで入っていく
監督官は性格のきつそうな女性だった
先ほど貰った紙と、受験票を提出して、受験者用の椅子に座る
「パレリック=シアロストさん?」
「ハイ」
不思議と緊張はしないが、
心なしか空気が重い・・・
「目を閉じてリラックスしてください」
言われるまま、目をつぶる
監督官の目が遠くを見るような目に変わった
そしていつもと違う何かを感じた
(・・・おかしいわねぇ。確かに魔法は使えないみたい。だけど、どうも引っかかる)
(何か感じるけど、霧がかかってよく見えない・・・要注意だわ)
「・・・はい。結構です。係員が次の場所に案内します」
「こちらです」
試験はあれで終わりかと思ったが、もう少し続きそうだ