まだ冷たい風が吹く季節に
小さな大陸の
とある国の
とある場所に一人路頭にさ迷う少年がいた
「ここじゃない・・・か・・・」
何度も読み返しているはずの地図をまた広げて、彼は再び現在地を探す
田舎からこの国へ来るのに5時間
国についてから歩いて3時間
友人を訪ねにはるばる来たものの、彼はとっくに疲れきっていた
『ギブアップ』
脳裏に浮かんだ言葉――
それも仕方ないだろう
この都市はそれほど大きくはないのだが、方向音痴の彼にはあまりにも広すぎた
(あと一枚だが、あれを使うしかなさそうだ・・・・)
鞄からペンと、一枚しか無い冊子を取り出し
書き殴る
「これでよし」
書き終えてサインをすると
みるみるうちに紙は真っ白な鳩になり、大空へ飛び立った
突然の訪問で驚かせてやろうと思っていたが
まさか友人に『迷子になりました』なんて送るハメになるとは
夢にも思わなかった彼である
先ほどの紙は書き終えると、鳩の姿になり相手に届けてくれるという代物で
今ではどこの郵便局でも売っている魔術品
数少ない伝達手段なのだ