「生きづらい」理由を探って


誰でも多かれ少なかれ「生きづらいなあ」と思うことがあると思います。けれども、その種類や程度はさまざまで、時々、側から見ていても「すごく生きづらいだろうなあ」と思う人がいます。

ある人は、精神的にとても不安定で、ストーカーまがいの行動をとったりするかと思うと、自傷を繰り返します。ある人は、プライドが高すぎて周りをほとんど敵に回し、対人関係をどんどん狭めつつ、誰にも自分のことが理解されないという思いを抱いて孤独感に苛まれます。またある人は、過剰に出世願望を持ち、他人を信用できなくなり、孤立していきます。別の人は、何をするにもまったく自信がなく、自分にはどうせ何もできないのだと思い込み、失敗を極度に恐れて何もできなくなってしまいます。。。

こういう人たちが周りにいたり、もしかしたら「これって、私のことかも??」と思う人もいるかもしれません。こういう人たちは、自分の困った性格をコントロールできなかったり、そもそも気づいていないことがあります。そんな場合、もしかしたらその人たちの何人かは「パーソナリティ障碍(障害)」というものにに当てはまる可能性があります。

「パーソナリティ障碍」の人が身近にいると、本人がつらいだけでなく、周りの人たちに大変な負担をかけることが多いのですが、これは「障碍」なので、本人にはほとんど責任はありません。障碍になりたくてなったのではないのです。

これはたとえば、足が不自由な人や目の見えないなどの「物理的な障碍を持っている人」と同じかもしれません。

また、この障碍は、「乳児期・幼少期の生活環境」が大きな原因になっていることが多いのですが、だからと言って養育者が悪い、とも言い切れません。実は養育者も同じ障碍を抱えていることが極めて多く、それが大きな原因で子供の養育環境が障碍を生むような状態になってしまうのです。これによって、親が苦しんでいたことと同じ理由で子供も苦しむ、という事態を生みます。

親から子に伝わる、というと生物学的な「遺伝」を思い浮かべますが、その可能性はほとんど否定されていて、いわば「行動パターンの受け継ぎ」といったほうが適切だと思います。

しかし、一方でこの障碍は、時として大きな才能を育むこともあるのです。

たとえば、何人かの有名芸術家は、パーソナリティ障碍的な資質のおかげでその卓越した能力が出せたと思われる例がたくさんありますし、一代で大きなグループ会社を作り上げた事業家なども、他人から見るととても極端な性格であったからこそ、たくさんの雇用を生み出すような大きな会社を作り上げることができたのかもしれません。

管理人は以前、音楽業界に10年あまりいたことがあります。すばらしい歌を何曲も作る優れたアーティストや、時にはプロデューサーやアートディレクターといわれるクリエイティブな人たちの中には、こういった傾向を持つ人がとても多いのです。ほとんど、と言っても良いかもしれません。
先日亡くなったマイケル・ジャクソンさんも、もしかしたら当てはまるかもしれないとひそかに思っています(実際に会ったことは無いですが・・・)。

ただ、そんなに恵まれた状況に自分を導ける人は多くありません。「なんか生きにくいなあ・・・」「どうしていつもこんなことに・・・」と悲しい思いをしている人のほうが大半だと思います。また、障碍の種類によっては、自傷行為を繰り返してしまったり、うつ病になってしまったりすることも多い障碍です。

日本で「パーソナリティ障碍」という言葉が正式に使われだしたのは、実は2008年5月からです。それまでは「人格障碍」という少し否定的なニュアンスの名前だったそうで、診断基準が明確になってきたのも近年のことです。また、極端な性格は「強烈な個性」ととられがちで、障碍として認知されにくいものでもあります。

ただ、本人と周りの人はとても困っていることが多く、ちゃんと「治療が必要なもの」として、社会の中で認識することが必要な時代になってきたということだと思います。

まずはこのサイトで、パーソナリティ障碍のことを知って、少しでも気が楽になってもらえたらと思います。




最終更新:2009年07月18日 13:28