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イッコトナリノセカイ」(2006/05/19 (金) 07:00:15) の最新版変更点

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ハッ、と気がつくと、そこは自室。 お気に入りの姿見の前にボーッっと立っているだけの自分。 榊原由貴子は首を傾げた。あの一瞬の立ちくらみはなんだったのだろう。そして、一瞬だけ見えたもうひとりの自分は……。 夢だったのだろうか、と思う。 最近の過密なスケジュールが見せた白昼夢だろうか。 ベッドに倒れるように飛び込む。うつぶせで、枕に顔を埋める。 息苦しい。しかし、それが心地いい。 でも、まだ足りない。由貴子は起き上がり、白色の洒落たキャビネットから、お気に入りのモノを取り出そうとした。 が、しかし。 「ない」 由貴子は自分が声を発したことに気づいていなかった。 普段からここに置いてあるモノがない。 部屋を見回す。 すると、普段あるはずのモノがない。ひとつやふたつではない。見慣れたモノがごっそりとなくなっていた。 まるで、間取りは同じなのにも関わらず、赤の他人──しかし、インテリア等の趣味は同じだ──の部屋に間違えて入っているようだ。 壁に貼ってあるポスター。その中でこちらに向けて微笑んでいるのは、確かに自分。 本棚の写真集。水着で健康的かつ少量のエロスを交えた女性は紛れもない自分。 部屋にあるモノは、全て自分のモノ。 家中のモノは、全て自分のモノ。 ドアを開けて表札を確認する。携帯電話のメモリをチェックする。部屋の間取りを思い浮かべ、どこに何があったかを確認する。 自分の記憶と違うモノは、その失われたモノだった。 部屋にあるモノで、おかしなモノは──自分の存在だった。 (私は、誰かに誘拐されたのだろうか?) (いや、それではあっさりと開いた玄関はおかしい) (私は、知らず知らずのうちにこんな仕事を請けたのだろうか?) (記憶にない。水着の仕事はあったし、この写真集も覚えているけど──) 微笑む自分に対して、由貴子は問いかけた。 (どうして私は、縛られていないの?) -[[次へ>イッコトナリノセカイ 2]]

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