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第九章外伝 少女と謎と少年たち



大地が目を覚ましたのは風呂場での惨劇から1時間後だった。
一瞬だけ記憶が繋がらずボーっとする。
そういや、おれっちが色々ちょっかいだして……。
そうだ、たしか自分は兄貴と姐さんをからこうとしてたのだ。
が、そこでまさかの2人に反撃をくらい意識を失ってしまったのだった。
あの後どうなったさ~?
イヤ、でも逆におれっちがいないから2人きりさ!?
姐さんががんばってる可能性があるさ……。
あ、でも……、兄貴鈍いんさ……。



大地が目を開ける四十分前

「なにか飲みたいものとかありますか!?」
城の廊下を歩きながら、シュシュがカイルに聞いてくる。
今、2人は大浴場から部屋に戻るところである。
「んー、今はいらないや」
特にのどが渇いていないカイルはそう答えた。
「そうですか…」
少ししょんぼりした様子にシュシュはなる。
そんな様子に気付かない、というよりか自分の感情処理に忙しいカイルは
それに気付くことができなかった。
何故忙しいのか。
それはシュシュの格好だった。
今シュシュは就寝用のワンピースを着ていた。
もちろんフリルなどの装飾品が大量についている。
だが、それはシュシュに少々大きいようで、袖をひきずりながら歩いている。
困ったのはそれからで、シュシュのその服装が
一言でいえばとてもかわいかったのだ。
そのせいか元々奥手で恥ずかしがり屋なカイルはあまりシュシュの方が
見れずに、そっけない口調で話すこととなってしまったのだった。
「?」
歩いている最中カイルは気になるものを見つけ、立ち止まる。
「これって……?」


「これって……?」
カイルが歩みを止めて指さしたのは部屋だった。
「そういえば…ここって…、最初に城に忍び込んだ時の部屋…だよね?」
シュシュはカイルに尋ねられた。
こ、この…展開はマズイ…。
シュシュはそう思いつつ、
「そ、それより私の部屋へ来ませんか!?」
しどろもどろにあわてて話をそらす。
自分の部屋に誘うなどとなにを言ってるんだ、とはこの時は思わなかった。
――後でエイリーに話したら、笑われながらお嫁にいけなくなりますよ?
とたしなめられた。
「大地がここに来た時、ぬいぐる……って言ってたけどなんだったのかなぁ?」
カイルはシュシュの言葉を聞いていなかったかのように話す。
「入ってみてもいい?」
「ダメです」
思わず間髪を入れないで断ってしまった。
逆に怪しまれたらどうしよう、という思いがわいてくる。
「どうして、シュシュー?」
カイルがなおも聞いてくる。
「どうしても…、です」
「……シュシュ、この世界来てから少し可笑しくない?」
シュシュが気にしていた核心をカイルにつかれた。
カイルがシュシュの両肩に手を置いて重い口調でしゃべる。
え、ええぇ!?カイル!
肩に手をを置かれたことで、シュシュは自分の顔が染まっていくのが分かった。
「どうしても言いたくないならいいけどせめて事情だけでも教えてよ
おれとシュシュと大地は仲間でしょ!?」
それを聞いてシュシュは喜ばしくも悲しくもなった。
カイルもそう思ってくれてるんだぁ、という思いと
それでも、仲間までなのかな、と。
が、カイルにこんな真剣な面持ちでお願いされては、断れるはずがない。
シュシュは見事に惚れた弱みにつけ込まれてしまったのだった。
「……分かりました」
それがばれていないことを祈りながら、静かに了承した。


ギィという音がして扉が開く。
シュシュの後について部屋に入ったのだが、そこは真っ暗だった。
「明かりをつけますよ」
シュシュが言ってから数秒後、部屋が少しずつ明るくなっていった。
部屋に明かりが灯された。
「………」
カイルは部屋の内部を見て口を開けるしかなかった。
何故なら、その部屋の至るところにぬいぐるみなど女の子が小さいころに
使うものが大量に置いてあったのだ。
「私の…小さいころの遊び部屋…なんです」
シュシュがか細い声で言った。
「小さい子のものなので……なんとなく恥ずかしくて…」
シュシュが顔を赤らめ恥ずかしそうに答えた。
その顔は普段は白い彼女の顔からはとても想像できない程だった。
しかし、
「ありがとう、シュシュ!話してくれて」
カイルは底抜けに明るい声で言った。
これは本心だった。
シュシュが恥ずかしい、と思っていることを自分から話してくれたこともそうだし、
シュシュの新しい面も見れたことが純粋にうれしかったのだ。
「ん?じゃあ、お城に忍び込んだのはなんで?」
カイルは一つの謎が解けると他のが気になった。
「あ…、それは…、こっそり行かないと城下町の人たちに騒がれてカイルたちが
迷惑かなぁ、と」
シュシュが答えにくそうに話す。
あれにはそういう経緯があったらしい。
「じゃあじゃあ……」
カイルは浮かんだ疑問を次々に出していく。


満月が2人の少年少女の影を色濃く映し出していた。