昼の陽射しが燦々と照りつける幻想郷。
今日も特にこれと言った異変もなく、博麗神社に集まる者達は盛り上がりながら過ごしていた。
“博麗 霊夢”が主催する祭りが今夜という事で神社には珍しい顔も集まっている。
当然ながら数の面でも相当多い。

「これが信仰ある神社のあるべき姿よね」

感慨深げに呟いたのは博麗 霊夢その人。
石段の上から神社の境内を眺めな、お茶を啜っている。
信仰が云々よりもまず集まっているのが人間ではなく妖怪達という事が問題だと思うが気にしない。

「いや? 神社としてはこれは異常だぜ?」

隣で足をぶらぶらさせながら突っ込みを入れたのは“霧雨 魔理沙”
この二人は幻想卿に異変が現れた際に共に解決に向かう事が多く、親しい仲である。
案外幻想郷の住民とは皆こんなものなのかもしれないが……。

「そうかしら? まあ、お賽銭が入らないのは異常と言えばそうね」

「そこかよ……」

境内は鬼が走りまわったり幽霊が飛んでみたり吸血鬼とメイドが木陰で休んでいたりと様々。
妖怪達の観光スポットか何かのような光景である。
これでもまだ完全に全員が集まった訳では無いので賑やかさはこれ以上に増していくだろう。
騒霊三姉妹が現れたのなら忽ちに独占ライブでも始まりそうである。
それは困った物だが。


ふと、幻想郷を取り囲む空気が微妙な変化を見せる。
陽気な容姿の割に能力の高い者が集まっている境内では、殆どの者が異変を悟り、辺りを見回し始める。
直感的に異変を感じ取った霊夢と魔理沙は、心の中で「面倒な事になりそう……」と思う。

「なんだ!? あれ!?」

鬼である萃香が上空の大気を指さしながら叫ぶ。
他の物が指先を辿ると、空間の裂け目のような部分から人影のような物が降って来ているのが見えた。

負の気質を撒き散らしながら境内に降り立ったそれは、不気味な呻きを上げながら妖怪達に歩み寄っていった。

「また面倒な事になりそうね……」

特に焦った様子もなく、寧ろ呆れの溜息を吐きながら霊夢が立ち上がる。
幻想卿と言う場所ではあの程度の異変は良くあるとまで言わないが驚くような事でもないのだ。
あの程度の魔物ならば境内に居る妖怪だけでも軽く処理できそうなものである。

「祭り前なのにな……まあ、いつもの事か」

頭の帽子を深く被り直しながら魔理沙も立ち上がる。
特に手出しをする必要は無いのだが、念のため……である。
幻想郷の異変はこうして始まった。