《シーン1》 「母乳が見たいんだ」 新聞部部長で将来は国際ジャーナリストを目指す友人Aこと『友仁 栄』は言った。 「は?」 聞き返すと、詳しい話をしてくれた。 現在、彼の所属する新聞部は、廃部の危機にあるらしい。 何か一つでもトクダネをスクープして新入部員を集めたいのだそうだ。 そこで彼が目に付けたのが、この学園のプリンセスで生徒会長でお嬢様の『御上 佐間子』の、搾乳シーンというわけだ。 確かに、佐間子の母乳は未だかつて誰も見たことが無いと言われている。 搾乳室での姿はもちろん、服に母乳が染みているのすら、男子はおろか、女子ですら見たことがないのだ。 そのため、佐間子には『幻乳の姫』の二つ名が冠されていたりする。 「頼むよ、協力してくれよ。搾乳シーンが無理でも、ほんのちょっと、一滴でも母乳が撮れたらいいんだ。」 無理矢理頭数合わせに入れられた幽霊部員の俺まで頼ってくるとは。よほど切羽つまってるらしい。 だが正直、俺は面倒なのは嫌いなんだ。 断ろうとする俺に、友仁は魅力的な提案をした。 学食を卒業までの間奢る。 その日の午後、俺は佐間子を尾行ていた。 [佐間子を尾行する氏掘(主人公)。だが母乳は見れず。代わりに見れたものは、彼女の可愛らしい一面と、時折見せる、どこか寂しげな表情だけだった。] それを二日ほど繰り返す。 《シーン2》 「待ってるだけじゃ無理だ。」 そう結論された、友仁との作戦会議。 とにかく、佐間子のガードは鉄壁。普通に尾行したくらいじゃ、絶対に見れっこない。 「待って駄目なら、搾ってみよう!」 彼女の乳を搾れる機会を考えてみた。そして浮かんだアイデア。 ズバリ、満員電車に乗せる、だ! 朝のラッシュ時の満員電車は、別名母乳電車と呼ばれるぐらい悲惨な状況になるという。 さすがの佐間子も、あの中では母乳を出さずにはいられまい。 問題は、どうやって車通学の佐間子を電車に乗せるかだ… 「どこか遊びにさそうってのはどう?」 でも俺達、佐間子と何の接点もない、赤の他人だし… 「それじゃあ、また放課後、ね」 話題の人の声が聞こえて、ばっと振り向いた教室の入り口。 委員長と佐間子が仲良さ気に手を振って別れたところではないか! どういう関係か問いただすと、なんでも生徒会の書記も務める委員長は、生徒会長である佐間子と、非常に親しい付き合いをしているのだとか。 まさに灯台元暗し。 さっそく今度の日曜、佐間子と遊びに行く約束を取り付けるように頼む。 最初はしぶる委員長だったが、友仁がなにやら耳打ちすると、顔を真っ赤にして母乳を噴出しながら言った。 「そ、そういう事ならしょうがないわね…。か、勘違いしないでよ!別にアンタ(主人公)とデー…ト、トしたいわけじゃないんだからね!!」 友仁よ…何を言った… 《シーン3》 日曜。4人で遊園地へ行くことに。 最初自家用車でやってきた佐間子だが、皆で電車で一緒に行った方が楽しいと説得した。 しぶるSPは佐間子が制した。 こうして見事、満員電車に連れ込むことに成功。 …作戦は失敗だった。 佐間子のブラは鋼鉄製だった。押してもへしてもビクともしない。 だが、一つだけラッキー?な事もあった。 途中、佐間子が痴漢にあったので、俺が助けた。 その時の佐間子の様子がちょっと変だったけど…まぁ、痴漢にあったんだ、女の子にしたら、とても怖い事だったに違いない。 ともかく、そのお陰で俺と佐間子の距離がちょっと縮んだのは確かなのだ。 遊園地では、念のため、重力がかかる絶叫系をメインに乗ったのだが、結局佐間子の母乳を見ることは叶わなかった。 代わりに、委員長の母乳は散々あびる事になったのだが… 母乳の臭いとGのせいで、帰る頃にはすっかり俺はグロッキーになっていた。 佐間子はピンピン。手強い… 《シーン4》 その日の帰り、皆で別れた後、ふとした事から佐間子の忘れ物を見つけた俺は、それを届けに行く事にした。 幸い、別れてから間も無かったので、すぐに佐間子の後ろ姿が見えた。 …が、声はかけなかった。ある考えがよぎったからだ。 そう、それは、このまま彼女の家まで尾行できないか?というものだった。 今まで、彼女の家まで尾行したことはなかった。 だが今は口実がある。 見つかったら、忘れ物を届けに来たと言えばいい。 そして俺は彼女を尾行けた… そして御上邸。 見ると、物凄い豪邸。噂には聞いていたが、想像以上だ… 佐間子が入っていったのを確認した後、自分も中へ。 守衛には忘れ物を見せて、これを届けに来たと言った。 渡しておくという守衛に、直接伝えないといけない事もあるからと、無理に入れてもらった。 そして佐間子を探して邸内を歩いていると… 巫女服を着て老人と一緒に何処かへ向かっている佐間子を発見。 老人は、どうも血縁者ではないようだ。 気になって尾行する。 二人は、庭の隅にある社へ入っていく。 鍵穴から中を覗くと… そこは母乳信仰の神社だった。 おっぱいを搾っている女神様の像が中心にそびえ立っている。 そのふもとで、先程の老人と佐間子が何かを… 俺は目を疑った。 なんと、老人が佐間子の乳を飲んでいるのだ。 直接ではないが、佐間子が自分の乳を器に搾り、それを老人が飲んでいる。 目の前の光景が信じらず、俺は友仁から預かったカメラのシャッターを押すのも忘れていた。 と、その時、さらに信じられない事が起こった。 老人が、ほんの僅かだが若返ったのだ。 目の錯覚かと思ったが、確かに、シワがズズっと引いていき、血色も良くなった。 その光景に目を奪われていて、背後の気配に気付かなかった。 「そこで何をしている!」 振り向くと、そこには社会科教師、通称ゴルゴがいた。 「なんでゴルゴ…いや、先生がここに…」 「何事です?」 中から佐間子が出てきた。 俺は、多数のSPに囲まれていた。 《シーン5》 取調室。 ゴルゴに尋問される俺。 「吐け。吐けば楽になるぞ。」 忘れ物を届けに来たという口実は通用しない。 友仁を守る為、頑なに口を閉じる俺。 その時、腹が鳴った。 そして、刑事ドラマでよくあるシーンになった。 食欲には勝てなかった俺は、友仁に頼まれた事などを、包み隠さず話した。 「じゃあお前はただの学生が好奇心でやっただけで、誰かに雇われたというんじゃないんだな?」 「当たり前だろ。なんだよ、そのスケールのデカイ話は。たかが学園のプリンセスのスクープくらいで」 そうだ、たかがそれだけのことで、何でこんな騒ぎになるのだ。第一、何故ここにゴルゴがいるのだ。 カツ丼を食いながら、問い詰めると、佐間子が現れた。 そして、佐間子の口から信じられない事実が語られた。 かつて、この地方に実在したオヤチチサマ。 乳が8つもあるその女神さまは、その聖なる母乳で人々の空腹を癒したばかりか、万病をも癒し、さらには不老長寿をもたらしたという。 この時点では、まだよくある母乳信仰の伝説だ。 このような母乳信仰は、大変メジャーな宗教であり、世界各地で見られる。 マリア様・お釈迦様・イザナミ様… 聖なる母乳に関する伝説は、枚挙にいとま無い。 だが、それらとは一線を画すのがこれからだ。 御上家は、そのオヤチチサマの末裔で、一族の処女の女性から出る母乳には本当に不老長寿の力があり、 古よりその乳を売る事で、これほどの大金持ちへと発展したのだと。 ただ、最近はオヤチチサマの血も薄れた為、その効果は不老長寿とは程遠く、ほんの少しばかり肉体を活性化させるだけだという。 それでも、その乳を求める者は跡を絶たないという。 その為、御上家の女性の乳は国宝級、いや、それ以上の価値のあるものなのだそうだ。 その乳を狙って、母乳を奪おうとする者も多く、その為、佐間子は学校でも徹底的に母乳を隠されていたのだ。 学校にSPであるゴルゴを教師として雇わせていたのもその為。他にも数名入り込んで警護しているらしい。 実は電車でも遊園地でも常に監視されていたのだそうだ。 ただ、友と普通に遊びたいとの佐間子のたっての願いから、直接危害が及ぶまでは傍観に徹していたとの事。 痴漢騒ぎの時、単に痴漢に対する恐怖心だけとは思えなかった佐間子の表情も、それで納得がいった。 また、この邸内に入ってからは搾乳の儀式(さっき老人としていた事だ)の為、SPらは退かしていたとの事。 なんでも、わずかでも集中力が欠けると、うまくいかないのだとか。 「でも、なんでそんな事を俺に…?」 「…カツ……いえ、単なる気紛れですわ。」 そして俺に、この事は内緒にするよう、頼む佐間子。 「いいけど、条件がある。」 あの佐間子の寂しげな表情、そしてその真相。何より、万人を惹きつけるあの笑顔。 俺は、佐間子から寂しげな表情を消してやりたいと思った。 だって、あんなにいい笑顔をするんだもん。だから言った。 「俺と、付き合ってくれ。」 ふざけるなと食って掛かるゴルゴを佐間子が制して言った。 「いいじゃないですか。付き合うぐらい。…そう、ただの遊びですよ。そう、…この方と、結婚できるワケじゃなし…」 そうして俺と佐間子は付き合うことになった。 でも、佐間子はまだ何かを隠している。 どこか自分自身を諦めた感のあるその表情がそれを確信させた。 《シーン6》 佐間子と付き合い始めてから、何やら嫌がらせにあう毎日である。 やはり、学園のプリンセスの人気はダテじゃなかったのか… 何故か委員長まで嫌がらせをする。そんなに佐間子を俺に取られたのが悔しかったのか? 《シーン7》 最初はどこか一線を引いた感のあった佐間子だが、日が経つにつれ徐々に打ち解けていき、 最近ではどこからどう見てもカップルである。 そのせいか、嫌がらせはさらに度を増した。 中には、一歩間違えれば大事にいたるような、悪質な悪戯も何度かあった。 そして、いよいよ命の危険を感じはじめた頃、その事件は起こった。 《シーン8》 委員長と友仁が揃って欠席した。 友仁はともかく、今まで無遅刻無欠席だった委員長まで休んでいるのには驚いたが、大して気にも留めなった。 担任の話では、風邪だそうだし。 佐間子と甘いひと時を過ごし、毎度の嫌がらせをやり過ごし家路に着く。 途中、黒塗りの高級車とすれ違った時に、妹の姿を見かけた気がしたが、気のせいだと思った。 家に帰ると、妹の書置きが。 『わたし、えっこ(友人名)とやっぴ(同じく友人名)と、(改行) かいすいよくに行って来るね。いきなりでゴメン。晩御飯は冷蔵庫にあるから、(改行) レンジでチンしてね。(改行) ロブスターのグラタンだよ。(改行)』 いくら両親が長期海外旅行中だからといって、学校もあるというのに、なんとゆう不真面目な妹か。 とりあえず冷蔵庫から晩飯のロブスターグラタンを取り出し、食すことにした。 《シーン9》 今日も委員長と友仁が欠席した。 二日続いてとは。後でお見舞いにでも行こうかな。 昼休み。 二日連続委員長が休みである事を佐間子に聞かれた。 何やら沈んだ表情をしていたが、放課後、お見舞いに行くからと励ました。 放課後。 委員長と友人の家へ行った。二人は近くに住んでるので、効率いい。 しかし…どちらも留守だった。 普通、家の人とかいるだろう? それとも、風邪を抉らせたので病院にでも連れて行ってもらってるのか? 多分そうだろう。 でも、二人ともまったく同じタイミングで? そう低い確率じゃないさ。 だが、何か胸騒ぎがした。 だが、どうしようもないので今日のところは帰ることにした。 帰路の途中、どこかで見た覚えのある人影を見た。 よっちだ。妹の友達の。 彼女は旅行に行かなかったのか。書置きにも名前書いてなかったし。 やっぱり学校があるから?可哀相にねぇ。 そう声をかけると怪訝な表情をされた。 「え?妹さん、風邪で休みって聞きましたけど…?」 ちょっとまて。その情報はどこから? てか普通、欠席の時は、家の人が学校に電話とかするし、学校も電話をかけてくるよな? 俺、そんな電話かけた覚えも受けた覚えもないぞ? 連絡がつかなかったら、無断欠席になるはずだし… それとも、あいつが旅行先から電話したのか…?風邪だとウソをついて… えーと、どこへ遊びに行くって行ってたっけ… 書置きを思い出す。 その時俺は、書置きが妙な箇所で改行されていた事に気付いた。 直後、俺は自宅へ走り出した。 《シーン10》 自宅に着き、ゴミ箱をあさり、書置きを発見した。 縦に読むと…「わかレロ」 その時、携帯電話から、メール着信音が鳴った。妹の番号だ。 添付ファイル付き。 そこには、妹と委員長と友仁の姿があった。 《後半へ続く》