一応書いてみた。  その後、一旦保険医に保健室にミシェルを寝かせた旨を伝え、教室に戻った後にクラスに山積していた精力を持て余している友人と言う名の下僕に散々反乱を喰らった後、 放課になるのを待った上で太郎はミシェルの様子を見に再び保健室へと赴いた。  既に反乱により負った傷で、自身が保健室で治療を受けたくもあったが。 それにしても真っ先に自分にボディーブローをかませてきた数学教師、一応校舎の桜の木下に埋めてきたが、某ゾンビゲームのごとく復活してはいないだろうか。来年の春にはあの桜は綺麗に咲き乱れるだろうなぁとかぼんやりと太郎が考えているうちに、保健室に到着した。  とりあえず先ほどの発作(?)は一応自分が原因ではあるので、不用意にミシェルを驚かせるマネをしてはまずい。軽くノックをした後に、名を名乗ると帰ってきたのは保険医の声だった。  とりあえず入室すると、正面の椅子に腰掛けた保険医以外、誰の姿も見えない。ベッドの上にもミシェルの姿は既になく、空になったベッドのみが姿を見せていた。 「あの、ミシェルは何処に行っちゃいましたか?」 「・・・・・・ミシェル?」  まだ若く、男子生徒から飢えた獣の視線を良くぶつけられる保険教師(太郎は興味が何故か沸かなかった)は、短いショートヘアーをガリガリとかきながら応える。 「・・・・・・誰?」 「・・・・・・名前は教えなかったかもしれませんでしたが、さっきまでそこのベッドで寝ていた金髪の女の子っつーかぶっちゃけ幼女ですが。もしかして例の数学教師がさらっちゃいましたか?」  名前、確か言ったはずだけどな。っつか言わなくても大体分かるだろと思いながら太郎は根気強く聞き続ける。が、 「・・・・・・いたっけ?」  間の抜けた顔で返答を返す保険医(推定21)。記憶力とかそういうものが根本から欠如しているのだろうか。 「いましたけど。」 「そうかなぁー・・・」  その後、ミシェルの外観を5分ほど使って説明し、ようやく思い出したように、両手を合わせた。 「いたなぁ、そういえば。あの白い人。何人?」 「そんなこた知りません。何人かどうかは後日改めてじっくりとアナタのその穴の開きまくってレンコンさえ真っ青なその脳髄にじっくりと叩き込んで差し上げますので、とりあえずその『白い子』の行方を教えてください。もしや食べちゃいましたか?私もまだ味見していないというのに?」  微妙に顔を引きつらせ、太郎から距離をとる保険教師。 「・・・・・・あー、そういえば彼女から伝言あったっけ。何だったかな。この部屋に来次第、校門に出て来いだったかな。荷物まとめて。」  何でそんな重大なことを今の今まで忘れていられるんだと、とりあえずネクタイを締めて3分間ホールドした後、指定された通りに動く太郎。  次の授業が既に始まってしまってはいるが、このままミシェルをつれて帰ってこなかったとなると幼児誘拐の嫌疑がかけられる。私の華々しい将来を傷つけてたまるかとばかりに、太郎は荷物さえまとめずに革靴に履き替えて校門へとかけだした。  校門へと駆け出した彼は、速攻で監禁された。  気がついたら、何か亀甲縛りで縛られ、口にガムテープを付けられてトランクの中に押し込められていたような気がする。 何か校門に近づいた時に、校門からマサイの戦士みたいな野性まっしぐらのお方が飛び出てきて、 「父上の方きぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」とか言って私に熱いおでんをぶちまけてきたので、記憶は定かではない。っつーか多分脳が意図的に消去したんだと彼は思う。 口にガムテープと言うお約束過ぎる展開のため、何も喋ることが出来ない。 それ以前に亀甲縛りで微妙に感じている自分とじっくり向き合う太郎は、ある意味悟りを開くために座禅を行っている修行僧の姿に酷似していた。 10分後。 「ついたぞ。降りろ。」  某アクション超大作に出てくる黒服のSPがトランクを開けるが、太郎に立つすべも何もない。 仕方がなく起こしてもらったら、その先に建っていた建物に、太郎は目を奪われた。 「・・・・・・コンテナじゃん。」 完膚なきまでに、見事なまでに、むしろ既に感動的なまでに聳え立つ3つのコンテナ。 確か1個20万円くらいだったと思う。  すると、その中の一つからローブで全身を覆った、大小2人の人間が出てきた。 二人とも太郎の前に立つと、小さい方が告げる。 「Are you a desire Lolita complex in my daughter??」  低く、それでいてよく通る男性の声だった。 しかし、太郎には全く意味が分からない。何とか英語で返そうと必死で考えていたら、瀬の高い方が低い方に告げる。 「The Japanese will understand English.」 そして、高い方は太郎に向き直り、今度は流暢な日本語で告げる。 「初めまして。突然のご無礼、大変申し訳ございません。私、ミシェルの母、芳江でございます。」 「あ、どうも初めまして。ミシェルさんの隣の席の太郎と申します。」  ミシェル、と言う単語が出て来た所に若干驚きながらも、誘拐されたのに頭を下げる太郎。 すると、小さい方がまたも口を開く。 「Provide..for the time being..the..Lolita complex..fellow..talk..wife.Is it English and though it is trivial? Nandaka dandan jibunga eigowo hanasiteirunoka douka fuanni nattekitazo. Somosomo ore amerika jin jyanakute furansujinnandakedo. Eigo nante wakatte tamaruka!」 「あの、すみません、そちらの方、あからさまに日本語はなしてません?」 「気のせいですよ。」  背の高いほうがすぐさまフォローに入る。 とりあえず心のそこからどうでもよくなり、質問を始める。 「あの、とりあえずどういうことなんですか?ミシェルさんは?」 「あらやだ、お父さん。この子、もうミシェルとそこまで進んでるんですって♪」 「Kono roricon yarouga! Keisatsu yobuzo!」  とりあえず虚空を仰ぎ、今日もいい天気だとつくづく感じ、一言告げる。 「帰ります。」 「待ちなさい。」 後ろから芳江に首をつかまれる。 「男でしょ。責任くらい取りなさい。」 「何のですか・・・」  ぐったりした太郎がSPに担ぎ上げられ、コンテナの一つに放り込まれたのは数秒後のことであった。 「ど・・・どなたですか?」  薄暗いコンテナの中に響く声は、紛れも無くミシェルのものだと太郎は確信し、返答する。 「おじゃまします。太郎です。隣の席の。」 「あ・・・・・・すみません、私の母やSP達が・・・」 「何でもいいけどなんでSPいるのに、こんなコンテナライフ満喫中なんだ。別に個人の自由だから何やらかそうが構わないけどさ。」  コンテナの中は暗い。その上先ほど恥ずかしい場面を見られた事を考えても、無理にミシェルの居場所を探すのは得策ではないだろう。 「とりあえず呼び出した理由、聞かせてくれる?教室戻らないと何か授業日数だとか単位だとか色々まずそうだから。主に俺。」 「いえ、あの、今日はもう学校休みますので、それをお伝えに・・・」 「普通に保険医に伝えればよかったことじゃないのか?」 「一応、お父さんのコネで日本で5本の指に入る内科医を呼んだので、先ほどの失神の原因を突き止めるためにも、とりあえず原因?のアナタがいた方が良いと思いまして・・・」 「・・・・・・多分関係ないと思うけど。」 「後は、話の都合上と言うのが理由の大半を占めているんですが。」 「君みたいな子供が大人の事情を知ってはいけないよ。」  最近変な人間とばかり遭遇する自分の環境を恨めしく思いつつ、とりあえずこのまま放って帰ったら、明日学校でミシェルがもしこのことを報告しようものならば、来年桜の花を綺麗に咲かせるのが自分の仕事になる。それは嫌だ。 「・・・・・・わかった。そういうことなら・・・」  10分後。 遠慮がちにノックの音が聞こえ、すぐに扉が開けられる。 日の光とともに入ってきた人間は、スズメバチ駆除の際に用いるような重厚な衣装を着て、唖然とする太郎とミシェルの前に姿を現し、一言告げる。 「患者はどこだ!?」 「体に病を抱えているかもしれない、というのならば私の隣の少女ですが、脳に重大な障害をお持ちだといった意味ならアナタです。」 「マジで!?」  そういいながら、床に持参していたトランクを置き、中からメスを取り出す怪しい人物。 まさかこいつがさっきミシェルの言っていた『日本で5本の指に入る内科医』だとでも言うのだろうか。日本の医学会の腐敗はシステムだけに留まらないらしい。 「せ、せんせいにそんなこと、失礼ですよ・・・」  ミシェルが恐る恐る忠告するが、そんなことを意に介す太郎ではない。むしろ平常と異常の区別くらい教えてやらねば。日本は以前ほど治安の良い国ではないのだ。 「いいか。ああいうのをな、日本では『ヘンタイ』って言うんだ。喋ったりするのはもちろん、近づくどころか見ることさえも、見る人間にとって害となる、存在自体が死刑並みの存在なんだよ。だからね、ああやって適当にあしらうのが一番いいんだよ。」 「誰がヘンタイだ!」  ヘンタイさんがこちらを振り向き轟き叫ぶ。 「この格好はなー、何か患者だとか言われてるやつがコンテナに入っているから、何か伝染病かなんかで隔離されてる可能性があるからこうやったんだよ!文句あるか!ついでに、全国のハチ駆除業者さんやハチミツ業者の方々に死んで謝れ!」  言いながら、頭のメット?見たいな物を取り出す。てっきり太郎もミシェルも男だと思っていたのだが、黒髪ショートヘアの女性だった。もう少し顔が中世的だったら、本気で男だと勘違いしたかもしれない。 駆除業者のホワイトアーマーを脱いだら、かなりサイズの大きな乳房が太郎の目を奪った。推定90は確実にある。もしかしたら3桁に突入しているかもしれない。 「えーと、とりあえず患者はどっち?」  問われて、ミシェルがおずおずと挙手する。 「なるほどなるほど・・・名前は?」 「・・・ミシェル・スペンサーです。」 「なるほどねー。あ、ちなみにあたしは九十九弥生(ツクモヤヨイ)。多分今後アナタの担当医になると思うからよろしくー。」 その辺の床に胡坐を書いて、適当にカルテを書きなぐっている姿を見て、改めて太郎とミシェル両氏は本当に医者なのか訝しく思う。 「えーと・・・じゃー、何の病気?」 「・・・・・・わかりません・・・」 「わからないっと・・・」  案外あっさりと受け入れる変態医者。 「症状は?熱が出るとか、体のどっかが痛くなるとか、動悸が早くなるとか、発情期が冬になったりだとかはない?」 「え・・・と、その・・・別に苦しくなったりとかはしないんですけど・・・な、なぜか・・・おっぱいが、いえ、母乳が・・・・・・でちゃって・・・・・・」 「なるほどなるほど。母乳が、っと。性交経験は?」 「な・・・ない、です・・・」 「つまり処女?」 「・・・・・・・はい・・・」 「ふーむ。米国にいたって言うけど、向こうの医者はどんな検査を?」 「た、確か脳腫瘍が原因かもと言って、脳の検査をしたんですが、何も無かったようで・・・」 「ふむ・・・ホルモンバランスの異常は?・・・この貧乳じゃ考えられないか。」  カルテにボールペンで適当に殴り書きしてから、そのカルテとボールペンを持参してきたトランクの中に放り込んで、立ち上がり、告げる。 「ゴメン、無理♪」 「ええっ!?」  二人同時に叫び、圧倒的な爆乳もとい変態医者もとい九十九弥生を見上げる。 「いやー、はっはっは。それ、現代医学じゃ解明されてないんだわ。その病気。」  その一言に違和感を覚え、太郎は突っ込んだ意見を出してみる。 「と、言うことは既に発症者が他にも?」 「ん?あー、いい所付いたね。君の名前は?」 「ジョージ・W・ワシントンです。」 「太郎君!?」 横からミシェルがなにやら騒音を混ぜてくるが気にしない。 「ジョージ君。確かに君の言うとおり、ホルモンバランスも脳腫瘍も、無論性交も原因ではない、孕んでもいない女性が母乳を分泌する病気の患者はいる。」  先ほどの変態医師でない、1人の真面目な医師としての瞳が、太郎に答える。 「そもそもこの病気自体が1年前にオーストラリアで初めての患者がでてから、世界各地でぽつぽつと現れている程度。原因・治療法ともに不明。現在、そのオーストラリアの患者も含めて発症者での治療成功ケースはゼロ、患者は今のところ医師の診断にかかった人間だけで全世界に68人。ミシェルちゃんも多分含まれてると思うよ?」 「その病気が元で、何か別の病気にかかったり、不健康になったりとかは・・・?」 「あー、そういうケースは報告がないね。」  安堵するミシェルと太郎。とりあえずは大丈夫だということか。 「とりあえず私も鬱陶しいから何とかしようと研究はしてるんだけどね・・・」  鬱陶しい? 今の弥生の台詞に違和感を覚え、太郎は質問する。 「先生の所に、その病気で通院している方でも?」 「いや、あたしがその病気の患者本人だから。まいったね。はっはっは。」  ああ、そうか。そういうことか。 ミシェルも納得したかのように、顔を上下に動かしている。 「うーん、とりあえず・・・以前から試してみたかった治療方法あるんだけど、1人じゃどーにも無理だったのよね。日本での発祥患者は私だけだし。  言いながらトランクの中をごそごそ漁る弥生。 「どうする?ミシェルちゃん。試しにその治療、受けてみる?医学的根拠も何もないけど、とりあえず世界中の医者がいまだ治療出来ない奇病を治すためには、常任じゃ想像もできない奇抜な方法で直すしかないと思うんだけど。やってみる?痛くはないと思うよ?」  いきなりだ。保護者の同意も何もなしに治療をやろうというのか?ロクな診断もせずに? 断っておいた方が良いのは当たり前である。また日を改めて、病院でじっくり検査を重ねた後に行ったほうが良いのは自明だ。 「ミシェル、今日は断って、後日病院でちゃんと検査を・・・」  と、その時。背後から何者かに首筋を捕まれた。 「ジョージ君。アナタはどっかいってらっしゃいな。」 微妙に当たっている二つの巨大な丘の感覚。何故だ。今まで目の前にいたのに。何故瞬きをしている間に消えた? 「消えなさい。ミシェルちゃんのために。そして、祈れ。神に。」 次の瞬間、太郎はコンテナの窓から捨てられた。 大地の感触を顔面で味わい、鼻血を出しながら、太郎はコンテナの方を振り返ると、変態がカーテンを閉めていた。  若干のぞきたいという気持ちもあるが、完全に塞がれているのでそれも適わない。しかたがないので、コンテナに背を預け、空を見上げる。 「ふっふっふ。もう逃げられないわよ。インフォームド・コンセントって何?」 「い・・・いい・・・いや・・・たすけて、太郎君・・・」  背中側から何かが聞こえる。なんだろうこれは。何の雑音なんだろう。 「あー、処女膜は初めての人のために取っておくね?そこまで鬼じゃないからね?」 「こ、こんな破廉恥な格好させる時点で既に鬼です・・・!」  確か母親が今晩、高校時代の帰宅部の同窓会でいなかったんだっけ。晩飯どうしよう。 「ああ、だ、だめ、そそ、そんなあな、はいりません、そんなもの、はいりませんって、ちょ、い、位、いやぁぁぁぁぁぁーあああ!!は、はいった!?はいってる!?」 「ぐぇっへっへっへ、お譲ちゃん、ここは嫌がってないみたいだぜ?」  そういえば、数年前に流行ったおもちゃはどこへやったのだろう。ミニ四駆。たまごっち。ハイパーヨーヨー。懐かしい。帰ったら探そう。 「絵えっ!?ふ、ふぇ・・・お、おっぱい、とまらないよぉぉぉぉぉぉ!!こ、こんなところに、こんなものいれられてるのに・・・き、きもちいいよぉぉぉぉ!!」 「おー、順応早いねー。これが若さかー。っつか胸小さいなー。ジョージはロリコンか?」  学校の出席日数大丈夫だよな?1回くらい休んだところで。 「な、なにこれ、なんか、あついの、あついのくる・・・あついの、あついのぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「あー、イッちゃった。どーだろ・・・なんだ、まだ母乳出てるか。イカせりゃ止まらないかと思ったんだけどねー。失敗失敗。」  太郎は駆け出した。ビデオカメラを買うために。