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第11話「この人なら大丈夫です」

ファントムペインの指揮官、ネオ・ロアノークは、カーペンタリア攻略のために密かに建設中の基地の責任者に通信をつながせていた。

「ウィンダムを全機回せだなんて無茶です!こちらの防衛はどうすればいいのですか!?」
「だから、ガイアをそっちに回すって言ってるだろ?」
「だからと言って、そちらにも相当の戦力はあるでしょうに」
「おいおい、お前さん、相手が誰だか分かってる?元連合の脱走艦、不沈艦の異名を取るアークエンジェルだぜ?
 しかもそれを使ってるのはザフトのコーディネーター達と来た。それじゃあ戦力はあるに超したことはねぇよ。
 それに俺達がこうやってお願いしてるうちに手ぇ貸してくれたほうがあんたの老後のためにもなるんじゃないの?」

ファントムペインは地球連合軍の独立部隊という形式になっているが、その実体は
ブルーコスモスの母体であるロゴスの私兵である。
彼らはアーモリーワンでカオス、ガイア、アビスを強奪後、ミネルバの追撃を受けながらも地球に降下したが、
そこで受けた命令は、ザフトが接収したアークエンジェルを撃沈せよ、というものであった。
連合としては、自分達の艦が、自分達に歯向かってくるというのは体面が悪過ぎる上に、
ミネルバの艦載機がアークエンジェルに移されたという情報があったため、連合の中でも
有数の戦力を保有しているファントムペインに攻撃命令が下されたのである。

「お~い、ネオ、呼んだか~?」
建設中の基地の現地指揮官との交渉を終えたネオの下に水色の髪の少年が、金色の髪の少女を連れてやってくる。
「おー、来たかお前達。次の相手が見つかったぞ。なんと噂に名高い大天使様だ」
「大天使?」

水色の髪の少年、アウル・ニーダがハァ?という感じで尋ねると、そこに緑色の髪をした男、
スティング・オークレーがやってきて口を挟む。
「昔、連合にいたっていうアークエンジェルのことだ」
「ふ~ん、でもなんでそんな船をザフトが使ってんだ?」
「そんなこと俺が知るかよ。潰せと言われりゃ潰すのが俺達の役割だろうが」
「ケッ!優等生ぶりやがって」

「はいはい、喧嘩はその辺にしておけ、お前達。さっさと機体の準備を済ませて出撃するぞ」
「へ~い」
「ちっ、わかったよ」

悪態をつきながらネオの指示に従い、格納庫へ向かおうとする2人であったが、そこに金色の髪の少女、
ステラ・ルーシェが今度はネオの下にやってくる。

「ねぇ、ネオ、アークエンジェルってどんな艦なの?やっぱり輪っかと白い羽ついてる?」
「いや、戦艦だからさすがにそんなメルヘンチックじゃないだろうなぁ。それにステラはここでお留守番だ」
「え~、なんで~」
「だってガイアは泳げないだろ、洋上で攻撃をしかけるんだからガイアは使えないさ」
「犬掻きならできるもん…」
「それじゃ戦えないだろう?お土産持ってきてやるからな、留守番頼むよ」
「・・・はーい」

ちなみに紫色のウィンダムに乗り込みながらネオはふとステラの言葉を思い出していた。
(天使の輪っかに白い羽ねぇ…なんだかたくましい太ももなら付いているといえるような気はするんだがなぁ)
そんなことを思いながら、どういうわけか、彼の頭の中には大きな胸が揺れる映像が浮かぶ。
(なんだ、今見えた巨乳は?)

「ネオ、こっちは準備できたぞ」

スティングからさっさと行かせろという催促が来たので、訳の分からない妄想を振り払い、ネオは思考を止める。
「ネオ・ロアノーク、ウィンダムでるぞ!」
「スティング・オークレー、カオス発進する!」
「アウル・ニーダ、アビスでるよ!」

JPジョーンズから紫色のウィンダムとカオス、そして近くの森の中から30機のウィンダムが空へと飛び立って行き、
アビスが海中に飛び込み、MA形態へと姿を変えてアークエンジェルへと向かっていった。

一方のアークエンジェルでも接近する部隊の存在を確認していた。
「艦長、我が艦に接近するが機体あります!ウィンダムが31に…カオスです!、
 さらにソナーに反応あり、これはアビスです」
チャンドラが驚きを含んだ声を上げた。

「か、艦長、もしかしてアーモリーワンの強奪部隊ですか!?」
カオス、アビスの名にアーサーが即座に反応を示す。
「そうでしょうね、他に強奪したカオスを使うような部隊があるとは思えないし…
 コンディションレッド発令、パイロットは出撃準備を」
「了解。コンディションレッド発令、コンディションレッド発令、パイロットは出撃準備を急げ!」
通信士席に座ったアーサーが、艦内に戦闘態勢をしくよう指令を出す。

一方、格納庫では艦内に響き渡るアーサーの声を聞いて、ヨウラン、ヴィーノが驚いていた。
「なんでトライン副長がCICやってんだ?」
「この前の攻撃でメイリンが負傷したからその穴埋めだろ。副長なんだからそんくらいできるだろ」
「でも、野郎の声ってのもなぁ・・・」
そんなことを喋っていると、彼らの後頭部に衝撃が走る。

「てめーら、無駄口叩いてねーで仕事しろ、仕事!」
戦闘態勢だというのに緊張感を欠く2人にキッドの鉄拳が炸裂する。
女性の声でのアナウンスがお気に入りであった2人にはアーサーの声によるアナウンスは心地よいものではなかったらしい。

「艦長、私もでます」
セイバーに乗り込んだアスランから通信が入る。
「頼みます。MS隊の指揮をよろしくね」
「了解です。アスラン・ザラ、セイバー発進する」

出撃準備を終えたガロードがGXに乗り込むと、アスランとの通信を終えたタリアからの通信が入る。
「出てもらえるようね?」
「おお!今はこの艦を沈めちまうわけにはいかねえからな!」
「フリーダムと互角に戦った腕、当てにしてるわよ」
「おっけー、任せとけ艦長さん!」
軍というものに所属していたことがないガロードにしてみれば、身に降りかかる火の粉を払うことには
抵抗感がなかったが、そんなことより、アークエンジェルにティファが乗っている以上、彼に戦わない理由はないとも言えよう。
もっとも彼ならば、傭兵家業に精を出しながらこの世界で生きることに困難は多くなかろうが。
「GX、行くぜ!」

「シン、敵はウィンダムが31に、カオスとアビスだ。近くにガイアもいるかもしれん」
「了解」
「どうしたやけに物分りがいいじゃないか」
「いえ、副長のCIC、中々似合ってるなーと思って」
「な、ちょっと待てシン!」

元々、最新鋭艦のミネルバの副長として任命されたアーサー・トラインは優秀な能力を持つ人材であった。
彼に欠けていたのは実践という経験値だけであったということができよう。
それ故、メイリン・ホークの穴埋めをすることは容易であった。

「シン・アスカ、インパルス行きます!」

アークエンジェルの両舷からセイバー、GXディバイダー、インパルス、そして紅白のザクが出撃する。
ちなみにインパルスの運用を前提としているミネルバと異なり、
アークエンジェルではインパルスに合体した上で出撃するという運用がなされている。
とはいえ、発進の度に一々合体を繰り返す時間がかからなくて済む分、機動的な稼動開始ができるようになったことは事実であろう。

水中へ飛び込んだ紅白のザクに乗ったレイはルナマリアへ通信を入れる。

「ルナマリア、相手は水中戦に特化したアビスだ。油断するなよ、沈んでも助けてやらんからな」
「もう、意地悪ね」
「それと、足元には気を付けろ、色々とな」
「わかってるわよ、宇宙と同じで下からも攻撃が来るってことでしょ」
「・・・・・・・・・・・・そうか、ならいい」

「お前がザラ隊長のセイバーのコックピットを見せろとコックピットに顔を突っ込んでいる間、
 下からスカートの中身が丸見えで、皆、大喜びだった上、トライン副長なんて大喜びのあまりバック転していたぞ」
とは口が裂けても言えないレイであった。

ウィンダム部隊を迎撃すべく飛び立ったインパルスであったが、その腕を同じく発進してきたセイバーが掴む。
「シン、発進後の戦闘指揮はオレがとる」
「指揮ったって相手の指揮官を落とせばそれで終わりじゃないですか!」

そう言って、シンはセイバーを引き離す。
「シン!ったく…ガロード、カオスの相手は俺がやる。お前はシンのフォローを…」
「こいつを喰らいやがれぇ!」

アスランがガロードに指示を出そうとした矢先、GXは手にしたディバイダーから
ビームの雨をウィンダムの部隊に放つ。

「何ぃ!?各機散開しろ!」
ネオはそれを見た瞬間、部下に指示を出すが、降り注ぐ19門の砲から放たれるビームは次々とウィンダムを撃墜していく。
「ちっ!いきなり8機もやられたか!確かありゃ報告にあった、アークエンジェルをオーブで沈めた奴か!
 各機、固まったら餌食になるぞ、散開して攻撃しろ!」
だがここでネオは指示を誤ったことをまだ気付いていない。

「あの、ガロード、カオスの相手は俺がやるからシンのフォローを頼む…」
ハモニカ砲を撃ち終え、散開したウィンダム部隊にビームマシンガンを放っているGXに、
アスランが力なく指示を出す。

「よっしゃ、任しとけ!じゃあカオスってのは頼むぜ!」
「一体あいつは何者なんだ…いや、今はそれよりもカオスだ!」
そう自分を納得させてアスランはユニウスセブンで戦った相手、カオスの方へ向かっていった。

ウィンダム部隊を迎撃すべく飛び立ったインパルスであったが、その腕を同じく発進してきたセイバーが掴む。
「シン、発進後の戦闘指揮はオレがとる」
「指揮ったって相手の指揮官を落とせばそれで終わりじゃないですか!」

そう言って、シンはセイバーを引き離す。
「シン!ったく…ガロード、カオスの相手は俺がやる。お前はシンのフォローを…」
「こいつを喰らいやがれぇ!」

アスランがガロードに指示を出そうとした矢先、GXは手にしたディバイダーから
ビームの雨をウィンダムの部隊に放つ。

「何ぃ!?各機散開しろ!」
ネオはそれを見た瞬間、部下に指示を出すが、降り注ぐ19門の砲から放たれるビームは次々とウィンダムを撃墜していく。
「ちっ!いきなり8機もやられたか!確かありゃ報告にあった、アークエンジェルをオーブで沈めた奴か!
 各機、固まったら餌食になるぞ、散開して攻撃しろ!」
だがここでネオは指示を誤ったことをまだ気付いていない。

「あの、ガロード、カオスの相手は俺がやるからシンのフォローを頼む…」
ハモニカ砲を撃ち終え、散開したウィンダム部隊にビームマシンガンを放っているGXに、
アスランが力なく指示を出す。

「よっしゃ、任しとけ!じゃあカオスってのは頼むぜ!」
「一体あいつは何者なんだ…いや、今はそれよりもカオスだ!」
そう自分を納得させてアスランはユニウスセブンで戦った相手、カオスの方へ向かっていった。

インパルスのレーダーがGXの接近を知らせる。
「へっ!やるじゃないかガロード!」
「あったぼうよ!俺がフォローするからお前は散らばった敵を各個に潰してくれ!」
「了解だ!」

GXは再び、ハモニカ砲を放つ。今度は3機ほどしか撃墜できなかったが、ウィンダムの部隊はさらにばらけることとなる。
そこにインパルスがライフルを手にして突撃して行った。
ディバイダーのビームで浮き足立ったパイロットは、各個に戦ったのではシンの相手にはならない。
インパルスのライフルに撃ち抜かれて正面のウィンダムが爆発し、
それを横から撃とうとしたウィンダムはビームマシンガンに貫かれる。
今度は別のウィンダムがサーベルで切りかかってくるがその攻撃をシールドで受け止めて、
引き抜いたサーベルで頭から真っ二つに切り裂く。
だが、切り裂いたウィンダムが頭上で爆発する音を聞いたシンの死角となった下後方から
さらに別のウィンダムがサーベルを突き立てて突っ込んでくる。

「くそ!避けきれない!」
コックピットへの直撃は避けられても、完全には回避し切れない。
そうシンが思った瞬間、インパルスの背中スレスレのところをビームサーベルが通り過ぎ、ウィンダムに突き刺さる。
「大丈夫か!?」
「あ、あぁ済まない」
シンは思わず侘びを入れてしまう。それほど危険な状況であったことが無意識のうちに分かっているからである。

GXは、突き刺さったサーベルを引き抜くとインパルスと背中を合わせる。
「相手の数が多い、指揮官機を早く探さないと!」
「だったらあの紫色のじゃねーか?」
GXの指差す方向に、アーモリーワンを襲撃してきた部隊にいた紫のMAと同じ色をしたウィンダムがいる。
「あいつは俺がやる、他の奴の相手を頼めるか!?」
「いいけど、今みたいなヘマすんじゃねーぞ?」
「そう何度も同じ失敗を繰り返すかよ!」

そう言ってシンはライフルを手にしてネオの乗るウィンダムへと仕掛けていく。
しかし、ネオも軽く放たれたビームを回避して反撃のビームを放つ。
「まだまだ射撃訓練が足らんな、ザフトの坊主君!」
そう言ってウィンダムのビームをインパルスに向けて放つが
インパルスもそれをシールドで防御して、サーベルを引き抜く。

「うぉぉぉぉ!」
叩きつけるように振り下ろされたサーベルをウィンダムはサーベルとシールドで受け止めるが、
両機体には明らかなパワーの差があった。
戦闘における技術の差を感じざるを得なかったシンは、
勝てる見込みがあるとすればサーベルを使っての接近戦しかないと考え、スラスターを全開にしてウィンダムを押し込む。
「く、さすがにパワーじゃ敵わんか!?」
ウィンダムは徐々に押し込まれていくが、ネオにとっては幸か不幸か、戦場が建設中の基地近くに移動しつつあったため、
ネオが押されているのを見たステラがガイアを発進させた。
変形したガイアは浅瀬と飛び越え、ウィンダムを正に叩き潰さんとするインパルスに体当たりを仕掛ける。
「ガイア!?」
コックピットに響くアラートに気付き、とっさにインパルスはシールドを構えるが、
それでもガイアの体当たり攻撃により吹き飛ばされてしまった。
その隙にネオのウィンダムが離脱していく。

「くそ!あと少しだったのに!?」
シンは吐き捨てながらインパルスをガイアと対峙させた。
「シン、出すぎだぞ、何をやっている!」
そこにアスランから通信が入る。
「ヘン!文句言うだけだったら、誰だって」
そう言ってシンはガイアへと斬りかかっていく。ガイアはそれをシールドで受け止めると、
空いた手に構えたサーベルで首を横なぎにしようとするが、シンはそれを、機体を屈めて避ける。

その頃、アークエンジェルの近くの海中ではアビスと2機のザクが戦闘を繰り広げていた。
しかし、基本的には宇宙での運用が前提となっているザクでは分が悪い。
「なめんなよ、こらぁ!」
「きゃぁ!」
MA形態のアビスから魚雷が放たれ、紅いザクの足を吹き飛ばすと、アビスはその機動力を生かして、
2機を抜いてアークエンジェルへと迫っていく。
「しまった!?」
レイが慌ててアークエンジェルの方へと向かう。

「ごめんねぇ!強くてさあ!」
アビスは両肩のシールドに内臓した魚雷をアークエンジェルに向けて放つ。
「艦長!アビスが急速接近!高速魚雷が発射されました!」
「艦を緊急浮上させて!」
「やってます!」
ノイマンが舵を思いっきり引き、船体が上を向き浮上を始める。
なんとか船底ギリギリのところを魚雷が通過していくがそれはアビスの罠であった。

アークエンジェルの横っ腹の辺りの海面から飛び出したアビスは両肩の6門のビーム砲とカリドゥスを構える。
「もらったぁ!」
アウルが叫ぶ。

「回避して!」
「フォンドゥヴァオウ!?!!?!?!!?」
タリアの怒声とアーサーの声にならない声が響き渡る。

しかし、次の瞬間艦を襲ったのは重力に引かれる落下感と突然の下からの衝撃であった。
砲門を開かんとするアビスを見たノイマンが艦の推進システムを切り、
アークエンジェルを水面に向けて落下させたのである。
そして、全長400mにも及ぶ巨大構造物の自然落下による着水はその周囲に大きな水しぶきを上げた。

「な、何なんだよ!?」
アウルの驚きの声とは裏腹に発射されたビームは、水しぶきによって跳ねられるか、
その威力を著しく減退させられてアークエンジェルへと届く。しかし、その程度の威力では
アークエンジェルに備わっているラミネート装甲を抜くことはできない。
アビスは驚きのあまり動きを止めてしまっていたが、それがアウルの油断となった。

「足元には気を付けろと言っただろう!」
アビスの背後に、水中から迫っていたレイのザクより連続して放たれたバズーカが直撃する。

「ぐわぁあ!」
アビスに大きな衝撃が伝わり、アウル自身の体にも強い痛みが走る。
ヴァリアブルフェイズシフト装甲であっても機体への衝撃は緩和できない。
なんとか体制を整えつつ、アウルは忌々しげにレイのザクの方を向く。
「この野郎ぉぉぉ!」
アビスは再び肩のビーム砲を展開して、火力だけならフリーダムにも劣らないフルバースト攻撃をレイに仕掛けようとする。

「言い忘れた、背後にも気をつけた方がいい」
レイはそう言うとザクを水中へと沈める。
「どういう意味だこの野郎!?」

「ヴァリアント照準取れました!」
「よし、撃てぇ!」

今度はレイが背後から攻撃をしかけているうちに、体制を整えたアークエンジェルが、
両舷に搭載したヴァリアントの発射準備を整えていた。

「え?」
アウルの少し間の抜けた声が発せられたと同時に、アビスの右腕はごっそりとえぐり取られた。
目の前で起きた信じられない出来事にアウルは呆然とする。
アウルはあまりの衝撃的な事態に動きを止めてしまい、そこを再びレイに狙われた。
「気にするな、誰だってそれは驚く」
そう言って、バズーカの引鉄を引こうとした瞬間、目の前に白い光が走る。
「な!?」
そして上空から放たれたビームによってバズーカは破壊されてしまう。
「この感じ…アーモリーワンの奴か!」
「ふぅ、危なかったぜ。アウル!しっかりしろ!撤退するぞ!」
ネオのウィンダムがアビスを抱えて、急速に戦場を離脱していく。
嫌な予感がしてインパルスをガイアに任せてアウルが向かった方向に向かったのが、
ネオにとっては幸いであったといえよう。

「くそ、あいつら!」
「落ち着けアウル!ここは一旦引くぞ、借りてきたウィンダムがみ~んなやられちまった!」
アビスを抱えたウィンダムはガイア、カオスにも同様の命令を出す。

放った攻撃をくるくる回りながら回避され続け、ロクに戦った実感がないスティングであったが、
アウルが手ひどくやられたことを聞いて渋々撤退した。
「てめぇ、次こそは俺に力を見せやがれよ!」

浅瀬から戦場を森の中に移していたインパルスはガイアが撤退していくのを見て少し息をついていたが、
ふと見た視線の先に宿舎や倉庫と思しき建造物を発見する。
「基地? こんなところに? 建設中か?」

インパルスが基地に迫ると、基地建設のために強制労働をさせられていた現地住民達は驚いて持ち場を逃げ出してしまう。
そして見張りの連合兵がそこに向けて躊躇なくマシンガンを放ち、次々と労働者達が倒れていった。
フェンス越しに彼らの家族から悲痛な声が上がる。
一方的な暴力により命を奪っていく連合兵達の行動はただでさえ戦闘で興奮していたシンの怒りを爆発させてしまう。
「そうやっていつも自分達の勝手な都合で人を傷つけるんだな、あんた達は!」
シンの頭の中に、オーブに侵攻してくる連合軍の姿が思い浮かぶ。

シンがアスハ家やフリーダムを憎んでいることは確かであるが、
もちろん、自分の国、自分達の平和な暮らしを武力で破壊した連合も憎しみの対象になっている。

元々、シンが力を欲した理由は、オーブが連合により侵略された結果、家族を失ったものであることから、
理由なく傷つけられる人達を守りたい、平和に暮らしている人たちは守られるべきである、
だからそのための、守るための力が欲しい、力がなくて守るべきものを失うのはもうたくさんだ、
というものである。

目の前にある光景、現地住民を強制的に労役に就かせ、挙句、その人々を殺す連合の姿は
シンの怒りを爆発させるのに十分だった。
「いい加減にしろおおおお!」

シンはインパルスを基地に向けて突っ込ませる。
だが、護衛のウィンダムをファントムペインに貸し出してしまったため、
戦車くらいしか残っていない基地には対抗する術がない。

「うぉおおおお!!!!」
インパルスは悪鬼の如く基地内の建造物を破壊し、次々と基地内では爆発が起きる。
向かってくる戦車はチェーンガンで叩き潰すか、直接蹴り飛ばし、連合兵は恐怖に陥った。

そこに爆発音を聞きつけたアスランが接近してくる。
「シン、やめろ!作戦は終了した!基地を破壊する命令は出されていない!」
「ここに人たちは連合の連中に酷い目に合わされてるんだぞ!それを放って置けるものか!」
シンはアスランの言うことに全く耳を傾けない。
シンにしてみれば、いきなりザフトに戻ってきたアスハの犬が大した戦果も上げない癖に、
奇麗事をほざいているようにしか思えなかった。
「やっぱりあんた達はそうやって奇麗事を押し付ける!」
「やめろ、これは命令だ!」

「もうやめろ、シン!連中は撤退し始めてる。それなら早くそこの人たちを助けてやれ!」
シンの下にガロードもやってくる。
シンはガロードの声にハッ、として辺りを見回すと、連合兵は次々と基地から撤退していく最中であった。
「アークエンジェルには連絡した。まだ間に合う人達がいるかもしんねぇ、負傷者をアークエンジェルに連れてくぞ!」
ガロードの言葉にシンは、基地のフェンスをそっと掴み、
周囲で見守る住民が離れたことを確認してから一気にフェンスを引き抜いた。
「まだ息がある人はもう少し待ってくれ!今、医者が来る!」
「戦争はヒーローごっこじゃない!」
アスランの平手打ちがシンの頬を打つ。
「何するんだ!俺は間違ったことはしちゃいない!」

パン!と言う音がもう一度格納庫に響き渡る。
「お前も力を持つ者なら、その力を自覚しろ!
 その力でまた新たな憎しみを生むつもりかお前は!?」
アスランの中にはかつてカガリが言った言葉が響いていた。

殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は本当に平和になるのか!

かつて血のバレンタインで母親を失ってザフトに入った自分もかつては憎しみに駆られて戦っていた。
それが何も生まないと言ったのは彼の仲間達である。
だからこそ、アスランは憎しみの連鎖を断つ、という目的のためにザフトを一度は裏切ったのである。

しかし、それは、聞こえはいいが、目の前で憎しみに駆られる人の耳には入らない。
結局、彼らが行なったのは戦場への介入であり、戦闘をやめろといいつつ、向かってくる相手を叩き潰しただけである。

つまり、自分の言葉、思いをフェイストゥーフェイス、面と向かって伝えることはほとんどなかったし、
届ける努力をこれといってしたわけでもない。

現に、連合の理不尽な暴力により家族を、故郷を失った目の前にいる人間の憎しみは弱まる気配がない。
戦場を支配するある種の狂気に飲まれてしまっている。

それをどうにかする術をアスランは知らなかった。

ガロードもその光景を見ていたが、横から聞いているだけではどちらが正しいかは判別し難かった。
「ガロード、お前が思ってることをあいつにいってやれ」

ふと背後から聞きなれた声がして、振り向くと、そこにはフリーデンの医者、テクスがコーヒーカップを手にして立っていた。
「テ、テクス!?アークエンジェルに乗ってたのかよ!」
「ああ、お前とキッド、ティファだけじゃさすがに心配だからな。それにティファに何かあったとき私がいないと困るだろう?」
「それにしたって、いるんならいるって言ってくれよ。心臓が飛び出すかと思ったぜ」
「ははは、大丈夫だ。そんなことになった人間はいないよ。
 それより、これをもってシンの所に行って来い。コーヒーを飲んで気を落ち着けないとまとまる話もまとまらん。
 じゃあ私はまだ患者達が待っているから失礼するよ」
そういってテクスはガロードにコーヒーカップ2つを渡して去っていった。
シンは甲板で夕日を見ながらぼんやりしていた。
「よ、お疲れさん」
ガロードがそこに現れる。

「お前も説教しに来たのか?」
ガロードから差し出されたコーヒーカップを手にしながらシンが怒りを交えて返事をする。
「いや、別にそんなんじゃねえよ。俺だったあんなとこに出くわしたらお前みたいになっちまってたかもしんねぇ」

ガロードの思わぬ返答にシンは少し焦り、それを落ち着けるため、コーヒーを飲み干す。
少し苦い味だった。

「個人的にはお前の怒りがそんなに間違ってるとは思えねぇ。でも、あれはやりすぎな気がする。
 相手は完全に戦意を失くしちまってたからな。あれじゃあ悲しみや苦しみが広がるだけだよ」
「…お前の言ってくれてることが嬉しくないとは言わないけど随分達観した言い草だな
 ダブルエックスっていう力があることから来る余裕か?」
「そんなんじゃねえよ、ただ…」
「ただ、なんだよ。お前もあいつと同じで言うだけ言って去っていくのか?」

ガロードはこれ以上言うことはできなかった。
厳密には言うことはできるが、自分達が異世界から来たという事実、
宇宙と地球に分かれて憎しみ会うまま殺しあった挙句世界を滅ぼしてしまったという
ことをここで気付かせないようにシンに説く自信はなかった。

「じゃあ俺は行くぜ」
シンがその場を立ち去ろうとする。

「待ってください。ガロード、この人なら大丈夫です」
ガロードが声の方向を向くとそこにはティファが立っていた。
「話してあげて下さい。私たちのことを」
「わかったよ、ティファ」
「あんた達のこと?どういうことだ?」
「なあ、シン、今から言うことは絶対に他の奴に、親友とかにも言わないって約束できるか?」
突然のガロードの険しい表情にやや気圧されたシンが思わず肯く。
「あ、ああ、約束するよ」

「俺達はこの世界の人間じゃない」

シンはガロードから聞かされた話を信じることは出来なかった。
それは当然である。誰が、自分は異世界の人間だ!などと言われて信じることが出来ようか。

しかし、ティファがシンの方へ歩いてくる。
「な、なんだよ?」
少し慌てるシンの手をティファは掴むと、静かに目を閉じた。

シンの中に様々な映像らしきものが入ってくる。
浮かぶのではない、流れ込んでくるのだと感覚ではあるがはっきりわかった。
そこにはGXでティファを連れて逃げるガロードや、ガロードがカトックからダブルエックスを託されたときのことも含まれていた。

「あ、あんた達…」
「あなたは本当は優しい人です。どうか、憎しみだけにとらわれないで下さい…」
シンは目の前の状況が把握しきれていなかった。
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