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第8話「カガリを助けていただきたい」

シンはただただ一心にフリーダムを見つめていた。
家族を、仲間を傷つけた憎むべき敵フリーダム。
心に満ち溢れる怒りと、それと相反するかのようにクリアになっていく頭の中。
そして、体中から今まで感じたことがない力が滾々と湧き上がってくる。
「フリーダム…よくもミネルバを!」

インパルスはサーベルを引き抜きフリーダムに斬りかかった。
片腕を失っているフリーダムもライフルを腰にマウントさせてサーベルを引き抜き、それを受け止める。
「うぉぉぉぉぉ!」
シンが腹の底から咆哮を上げる。
まるでパワーが足りない分は気合で補うかのようであった。
サーベルが交差してエネルギーが迸る中、フリーダムは片腕を補うかのようにバラエーナを発射しようとする。
「なんでもかんでも突っ込んでくるから…」
インパルスの顔のまん前に突如として現れるプラズマエネルギーを発射せんとする砲塔は、
シンにとってはまるで相撲の猫騙しのように思えた。
「なめんじゃねぇぇ!」
だが、インパルスが空いている腕が手にしたシールドで思いっきりバラエーナの砲塔を殴りつける。
そして、その衝撃により捻じ曲がった砲塔に貯まったエネルギーが行き場をなくして爆発する。

「くそ!どうして僕の邪魔をするんだ!力の差があることくらいわかるだろ、命を無駄にするな!」
キラが苦々しい顔をして吐き捨てる。
今現在で、両者ともSEEDの力を発動しているシンとキラであったが、
どうしてもそのパイロットとしての腕はキラに軍配が上がる。
今、戦いを互角にしているのは両者の戦意の違いだけであった。

ただひたすらにコックピットを狙い攻撃を続けるインパルスに、フリーダムはときに手にしたサーベルで、
ときに蹴りを放って応戦しながら、徐々に後退を続けていた。

そのとき、静かに海面で動きを止めていたアークエンジェルから突如として煙が上がり、十数機のムラサメが、紅い色のストライク、ストライクルージュを筆頭に離脱して行った。
「何だと!?」
突然のことに思わず驚きの声を上げてしまったジャミルであったが、今は、アークエンジェルと同じく、
海面に浮かぶミネルバの消化活動から手を離すことができず、これを追撃することは出来なかった。

そんなとき、フリーダムにバルトフェルドから再び通信が入る。
「キラ!アークエンジェルは放棄する!お前も急いで離脱しろ!」
「アークエンジェルが!?くっ…こんなに護衛の数が多かったなんて!」
フリーダムがサーベルを手にしたインパルスの腕を切裂く。
「まだまだぁ!」
インパルスの腕を切裂き、一瞬動きを止めたフリーダムのコックピット部分をインパルスが力いっぱい殴りつける。
そしてインパルスは衝撃で後ろに下がるフリーダムのコックピット部分のみを狙ってなおも殴りつける。
それは正にパイロットを殺すためだけの攻撃であった。
直撃こそ最初の一発だけでその後の攻撃をなんとかガードしていたキラであったが、
コックピット内にはカガリがいるため、むやみにコックピット部分への直撃を避けるべく、防戦一方となってしまう。
その光景を見て驚いたのが、ようやく戦闘が行なわれているこの場所に到着したガロードであった。
「まずい!あのままじゃ!」

インパルスが機体に装着されたナイフを手にし、フリーダムのコックピットめがけて突撃する。
「ちょおっと待ったぁ!」
そこにダブルエックスがディフェンスプレートを前面に突き出し、インパルスに体当たりを仕掛け、吹き飛ばす。
「くそ、邪魔をするなぁ!」
だがインパルスも負けじとダブルエックスを体当たりで吹き飛ばし、海に叩き落す。
そして、その勢いで再びフリーダムに突撃を仕掛けようとしたときであった。

(待ってください)
シンの頭の中に少女の声が響く。
(貴方の艦はまだ大丈夫です。今は貴方の仲間を助けてください)
「ミネルバが!?」
シンは現在の状況がよくわからなくなっていたが、止まっているインパルスの隙をついて、
フリーダムは離脱していった。
ようやく海面から上がってきたガロードは、小さくなっていくフリーダムを見ていた。
「くそっ!カガリさんが…」

フリーダム離脱の報告を受け、ユウナは頭を抱えていた。
まさか、アークエンジェルまで持ち出し、護衛を依頼したミネルバが航行不能に陥らされるとは思っていなかったのである。
さらに悪いことにカガリは誘拐されてしまった。
今、連合との同盟締結白紙撤回を発表して世論を1つにする強い必要性があるにも関わらず。
だが、翌日の報告で、ユウナはさらに驚きの事実を知ることになる。

ユウナの手元には信じられないことが記載されていた。
それはアークエンジェルから十数機ものムラサメが脱出していったという事実である。
MSの管理というのは当然、MSが極めて大きな危険を持つものであり、かつ機密の塊であることから、
厳重に管理されていることになっている。
だが、その管理を掻い潜り、十数機ものMSをキラ・ヤマトたちが持っていたのである。
ここでユウナの頭にとある集団が浮かぶ。クライン派と呼ばれる集団である。

クライン派はかつてのプラント議長シーゲル・クラインを支持するハト派の集まりであった。
だが、シーゲル亡き後、クライン派は
デュランダルやアイリーン・カナーバ等に代表されるプラントのハト派としてのクライン派、
シーゲルの娘としてのラクス・クラインを支持する集団としてのクライン派、
「平和の歌姫」「救国の歌姫」としてのラクス・クラインを信奉する集団としてのクライン派という
大まかに分類すると3つの種類に分裂している状態であった。
そして、プラントのタカ派や連合、オーブの主だった政治家達は、
後者の2つを陰でこう呼んでいた。「ラクス信者」と。

彼らの数はかなりのものがあり、地球上で暮らすコーディネーターの中にもかなりの数がいる、と言われている。
その力も、ヤキン・デューエでの決戦後の事後処理において、
アイリーン・カナーバを通じて、フリーダム、エターナル強奪の罪を、死人に口なしとばかりに
ラウ・ル・クルーゼ1人に擦り付け、今日まで強奪されたエターナルやフリーダムが
プラントに返還されていないことが、プラントの世論として大きな問題になっていないことから、相当大きなものであるといえよう。

そんな連中がオーブにもいる。
なるほど、ユウナにとってはすこぶる気持ちが悪いものがあった。
唯一の救いと言えば、クライン派がムラサメ十数機を用意するということは、
連合との同盟締結の白紙撤回の情報が漏れていなかったことを示しており、
閣僚内にやっかいな爆弾を抱えていないことがわかったことであったといえよう。

とはいえ、ユウナも本来なら今すぐにでもキラ・ヤマト達を始めとする一味を
凶悪極悪犯罪者として指名手配してやりたいくらいであったが、
そうしたクライン派が数多くオーブ国内に存在するため、大々的に動けない状況であった。

他方で大々的に動いていたのは世界中のマスコミであったといえる。
特に、世界中の注目を集めたのは、ユニウスセブンを消し飛ばしたMS、
ガンダムダブルエックスが世界の前に姿を現し、かつての大戦で最強と謳われた
フリーダムの腕を斬り落とした、というニュースは瞬く間に世界へ配信された。
ネットやニュースでもダブルエックスとフリーダムがぶつかり合い、
ダブルエックスがフリーダムの腕を切り裂く場面の映像は人々の視線を釘付けにした。
「ついに姿を現したオーブの秘密兵器」
「フリーダムを切り裂くオーブの剣」
「炎に焼かれるフリーダム(自由)」

とはいえ、オーブの別の媒体にある「自由を切り裂く暴虐な力」等という見出しを目にすると、
国内におけるクライン派の存在が明らかになってしまう。
国内でも6,7割はフリーダムを非難する論調であったが、3割ほどはフリーダムの行動に親和的である。
つくずく、人の意見というのは様々なものがあるものだと、
ユウナが複雑そうな顔をしながら新聞に目を通していると、部屋の電話が鳴った。
「ユウナ様、ミネルバ艦長のタリア・グラディス様がお越しです」
「わかった。お通ししてくれ」
部屋の扉が開き、白服の女性が入ってきた。

「このたびのアスハ代表の拉致、お察しいたします」
「いえ、こちらこそ、フリーダムが我が国の国内に潜伏していたことは事実です。
 ミネルバがそのせいで大きな被害を受けてしまったようで申し訳ない。本日もその件でしょう?」
「えぇ、隠しても仕方ありません。先ほど、カーペンタリアへ航行可能となり次第、向かうよう命令があったのですが…」
「修理の仕様がない、ということでありますね?」
「はい」
「・・・・・・・・・・今回の件は我が国にも非があります。今、我が国としてはプラントとの関係悪化は
 絶対に避けたいところです。連合との同盟の白紙撤回を決めている我が国にとっては特にです」
「えぇ……ってえええ!?」
「聞いての通りです。オーブはその理念に従い、連合との同盟を結ぶことはしない。
 今度はそれを通す力が我々にはあるのです」
「ダブルエックス…ですか?」
「そうです」

少しの沈黙が場を支配するが、ユウナが静かに口を開く。
「我々が動きを止めたアークエンジェルの修理が直に終了致します。それを貴女方に接収して戴きたい」
「!?どういうことです?」
「あれは元々連合に返却しなければならなかったものです。
 それを我が国のクライン派が戦後のゴタゴタに乗じて隠匿しておりました。
 あの艦が今、オーブにあると後々面倒なことになりかねません。
 ですが、幸か不幸かフリーダムはザフトにも多大な損害を与え逃走し、
 彼らが置き去ったアークエンジェルは我が国領海のすぐ外にある。
 ですから、ザフトへの敵対行為を行なった、テロリストの使っていた武装を正式に
 ザフトが接収する、という形にして、アークエンジェルにミネルバを牽引させる、ということにして戴けませんか」
「そんな急に…それに昨日の戦闘で多くのクルーが重軽傷を負いまして人員が足りません」
「でも、ミネルバはプラントの最重要機密の塊だ。我が国が中に入って修理はできない
 足りない人員はこちらから出します。傭兵という形にせざるを得ませんが」
「それしかない、ということですか」
「もちろん、カーペンタリアからミネルバを牽引する船がくれば話は別ですが、
 おそらく今はザフトの地上軍にそんな余裕はないでしょう?」

結局、タリアがユウナの提案を呑むまでにさほどの時間はかからなかった。

タリアを説得したユウナが次に向かったのはフリーデンであった。
ブリッジには既によく知った顔が雁首そろえて待っていたので少しユウナも驚くが、
彼はここで1つの賭けに出ることにした。

「今回の一件、私達にご助力いただきありがとうございました」
「いえ、我々のほうこそアスハ代表をお守りできませんでした。大変申し訳ない」
ジャミルが艦を代表して応えた。
「……ここで1つお願いがあるのですが…カガリを助けていただきたい」
「出来ることなら力をお貸ししますが、我々が迂闊に動けば…」
「それにつきましては僕の方で方法を考えてまいりました」

ユウナの考えてきた案はおおまかに要約すると以下のようなものであった。

フリーデン一行はオーブに力を貸している傭兵であることにして、
後日、出航するアークエンジェルに乗り、ザフトに雇われた傭兵として世界を回ってもらい、
カガリの捜索を行なうことにする、雇っているのはあくまでザフトという形だが、費用はオーブが持ち、
命令拒否権等の存在の確認などを内容とするザフトとの密約は結んである、というものである。

「ですが、我々全員が行く訳にも行きますまい。この国の守りもある」
「はい、恥ずかしながら今のオーブはダブルエックスという力に依存している、というのが正直な所です。
 ですから、できればダブルエックスは手元に置いておきたいし、
ダブルエックスを使える人材がいないので、どなたか、キャプテンジャミルかガロードには残って頂きたいとは思っております」
「やはりそうなりますか・・・」
「私達の都合ばかり押し付けて大変申し訳ないとは思っております。ですが…」
ユウナはおもむろに膝を床に着けて頭を下げた。
「この通りです…」

しばし、沈黙が場を支配するが、横からユウナの苦悶に満ちた顔を見ていたガロードが口を開いた。
「ジャミル、GXを貸してくれねーか?」
「それは構わんが、ユウナ殿、あてはあるのですか?」
「これを…」
ティファが突然、口を開き、スケッチブックをジャミルに渡す。
そこには美しい街並みと海が描かれていた。
「これはディオキアかな」
それに対してティファが頷く。
「私もガロードと行きます…私の力が役に立つかもしれないし…」
「いいのか、ティファ?もしかしたら危ない目に遭うかもしれないんだぜ?」
「「だからお前が守るんだよ!」」
ガロードにシンゴとキッドのツッコミが炸裂する。
「じゃあ、ユウナさん、この炎のMS乗り、ガロード・ラン様が力を貸してやるから、
 どーんと大船に乗ったつもりでいてくれよ!」
「しょーがねー、俺もついてってやるぜ、ガンダム坊や。お前がガンダムを壊しちまったら
 直せる奴は他にいねーからな」
キッドがにやつきながら再びガロードをどつく。
「ありがとう、ガロード、キッド。君らの留守中にキャプテンジャミルがダブルエックスで
 サテライトキャノンを使うような事態にはきっとしない、ここは僕を信じてくれ」
「なーに、ユウナさんが暴走したらちゃんとジャミルが止めてくれるから安心しな?
 ただ、氷の張った湖に取り残されても風邪はひかねーよーにな?」
そして、頷いたユウナは顔を笑顔から真顔に戻してガロードに言う。
「それとガロード、ザフトの傭兵として動けば連合と戦うことになるかもしれない。
 だから、戦うか否かは君達が判断してくれて構わない。
 だが、今、連合はその支配地域で反対派の住民に対して圧制を敷いていると言われている。
 もし君達が、自分の意思で戦うことを決意したのならば、彼らを助けてやって欲しい。
 ザフトもおそらく当面はそうした活動に専念するはずだ」
ユウナの言葉にガロードは自分達の世界での新連邦を思い浮かべながら、
「オッケー!任しとけ!」
と、応じたのだった。
ちなみに、ユウナがガロードに氷の湖の意味を聞いて鳥肌が立ったことは言うまでもない。
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