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第3話「平和の国、ねぇ・・・」

「これで・・・よかったんだよな」
ガロードは誰に話しかけるわけでもなく呟いた。そこにユウナから通信が入る。
「ガロード、作戦は成功だ。ユニウスセブンは欠片もほとんど残らず消滅した。
 何はともあれ、ひとまず礼を言わせてくれ。ありがとう。君達のおかげでこの危機を乗り切ることが出来た」
「そっか・・・」
「お互い大変なのはこれからかもしれないね。
 だけど、今回、君がいたからこそ失われずに済んだ命がたくさんあるということは事実だよ」
「・・・・・・・」
ガロードは考えていた。確かに今回、サテライトキャノンを使ったことで救われた命はある。
しかし、撃ったことによってどのようなことが起こるのか、それにどう対処していくべきなのか、
その答えを15歳の少年が即座に出すことはできなかった。
「とりあえず今日はゆっくり休んでくれ。これから先、しばらくは政治家の仕事だからね」
「あぁ、わかった」
「あともしよければもう1つだけ頼みがあるんだけど・・・・・・」

カガリを乗せたミネルバは、今、まさにオーブに入港しようとしていた。
そのブリッジの艦長席でタリアは考え込んでいた。
ユニウスセブンを消し去った光、あれはまるで前大戦末期に使われたジェネシスのようであると。
しかも、オーブ代表のカガリ・ユラ・アスハはそれを全く知らない様子だった。
さらに、カガリがあの「秘密兵器」とやらを知っていながら、あのような行動を取れる政治家だと考えることもできない。
そうなると、おのずとオーブという国への疑念が強くなってくる。
「平和の国、ねぇ・・・・・・・」

そこに副官のアーサーがやって来る。
「艦長、オーブへの入港完了致しました」
「わかったわ。艦の修理、よろしくね。
私はとりあえずアスハ代表を送りがてら関係各所に挨拶周りしなくちゃならないだろうから」
「了解しました」
「はぁ・・・」
タリアはアーサーが離れて行くなり大きな溜め息をつく。
正直これからのことを考えると頭が痛い。新型機の強奪犯を追ってプラントから出撃した矢先、
ユニウスセブンの落下を知り、挙句に地球に下りてきてしまった。
さらには、連合との同盟締結が近いと噂されるオーブに入港する羽目になってしまった。
「白髪、きっと増えてるわね…」

一方、オーブの側ではウナトやユウナがカガリの到着を待っていた。
しかし、ウナトは内心、それどころではなかった。
タリア同様、世界の今後、しかも大西洋連邦との同盟締結やダブルエックスの説明。
頭痛の種は尽きない。それに、例え飾りのような代表であっても、代表には変わりない。
そんな代表がこれからどのような行動をとるのかは手に取るようにわかっている。
故にそれを諌める方法を考えなくてはならない。
(まったく、余計なところばかりウズミに似おって…)

さらに、ウナトの隣にいるユウナとしては、ユニウスセブンの代わりに降りかかってくるであろう災厄を
どのように回避すべきか、脳内でシュミレーションを繰り返していた。
(いきなり胸倉を掴んでくるか、それとも鉄拳を入れてくるか…)
カガリが「秘密兵器」だなどと言って納得するような人間ではないことはわかっている。
だから、出迎えに来た自分にどのようなことをしてくるのかは容易に想定できた。

そんなことを考えていると、ミネルバのゲートが開き、
カガリと随行のアレックス・ディノの姿が目に入る。
その目は怒りに燃え盛り、そのいでたちは何者をも恐れぬ堂々としたものであり、
歯を食いしばり、力強く肩で風を切りながら歩いてくる様は、評するなら金色の破壊神とでもいうべきところだ。

カガリが、出迎えのユウナ達のそばにやってきた次の瞬間、
その右手が自分の胸元へ伸びてきた。
(やはり胸倉に来たか)
そう思ったユウナは、ガロードに教えてもらった通り、掴みかかってきた瞬間、足を一歩下げる。
すると、掴むべき胸倉を失った右手が空を切り、
カガリは一瞬何が起きたか分からないような表情をしてバランスを崩す。
その瞬間、ユウナは延びてきていた右腕を掴み、抱き寄せ、
「おかえりカガリ~無事で何よりだよ!もう、こっちは心配したんだよ~」
とわざとらしく大声を上げて、そのまま抱きしめる。
ユニウスセブンを迎撃し終えたガロードから徹夜で教わった護身術が役に立ったらしい。
「ちょ!ユウナ…」
公衆の面前で突如として抱きしめられたことに赤面したカガリが抗議の1つでも言おうとするが、
ユウナは立て板に水が如く喋り続けてカガリの言葉を遮り続ける。

すると明らかに不愉快な表情を浮かべたアレックスが口を挟む。
「代表、皆の前です」
とっさにユウナを振り払い、自由を回復したカガリは赤面した顔を引き締め、
「ウナト、このようなときに国を空けてすまなかった。今後の対策をどうするかを検討したい。緊急閣議の招集を頼みたい」
と言い、代表としての顔を取り戻す。
だが、カガリは、ユウナに先制パンチを食らわすはずが思わぬカウンターを喰らってしまったため、
その後は始終、ウナトやユウナのペースでことが運んでしまうこととなった。

「じゃあアレックス、ご苦労だった。今後君には、ミネルバの方々との仲介を頼むかもしれないがよろしく頼むよ」
とユウナはアスランに告げると、カガリの肩を抱いて、公用車へと乗り込んでいった。
半ば無理やり車内に引き摺りこまれたカガリは、再び怒りを露わにしながらユウナを詰問する。
「あれは一体何なんだ!?
確かに今回はあれのおかげで地球は救われたが、どうしてあんなものがオーブにある?
強すぎる力はまた新たな争いを生む、といつも言ってるじゃないか!!」
それに対してウナトがなだめる様に間に入る。
「まぁまぁ、落ち着いてください代表。事情は閣議の折にきちんと説明致します。
 今はお疲れでしょうから少しお休みください」
ちなみに、その後に始まった閣議でユウナから事情の説明を受けたカガリが、
三度、怒りに震えることとなったのはいうまでもない。

「つまり、あのMSは異世界から来た連中のもので、それがユニウスセブンを消し去った、そういうことか?」
「はい、その通りです、代表」
ウナトが感情なく答える。
「私を馬鹿にしてるのか!?そんな説明を受けてはい、そうですか、と言われて納得する奴がどこにいる!
 いくら私でもそんなものを信じるほど無能ではない!」
カガリが目の前のテーブルに両拳を叩きつける。
カガリ自身、現在の自分が完全無欠な統治者でないことはわかっているつもりであったが、
話された内容があまりに突飛すぎてついていくことができないでいた。
しかし、そんなカガリに今度はユウナが口を開く。
「ですが、彼らの使っているMSを調査した結果、明らかに我々の世界のMSとは、
 装甲材質、基本構造、それに技術系統が大きく異なっております。
 解析に当たった専門家達の共通した意見は、彼らの機体は幾分かの共通点はあるものの、
 未知の技術で作られた、この世界のものとは考え難い、というものです」

結局、カガリはそれ以上食い下がることはできず、閣議は、
ファントムペインが撮影し、世界中に配信された、
犯人が黒いジンを使って、ユニウスセブンを落下させようとした映像に関する件、
そして連合との同盟締結の件へと移っていった。

閣議を終えたカガリは、廊下でユウナを再び問いただす。
「それでお前達は今後、どうするつもりなんだ!?連合との同盟等絶対に認めるつもりはないぞ」
しかし、ユウナはやれやれ、といった表情で答える。
「なら、君は再びこの国を焼くつもりなのかい?君は二言目にはいつも理念、理念だね。
 そう言ったウズミ様が国を焼いた結果がどんなものなのか君は本当にわかっているのかい?
 戦後、オーブが独立を取り戻した後も止まることがない人材の流出を君はどうかんがえるんだ。
 彼らが何故住み慣れた土地を捨てるのか、それはこの国が安全だとは思えないからだ。
 確かに国を治めるのは僕達かもしれない。しかし、国を根底から支えるのは国民1人1人なんだよ」

自分がデュランダルに噛み付いていた内容を思い出す。
オーブを離れてプラントに移り住んだ人達がもたらした技術は確実にプラントの技術力を高めていた。
そしてそれを望んだのは移り住んだ人達自身であると言われたのだ。

「国が焼かれたとき最も大きな被害を受けるのは国民なんだよ、君は国民に理念のために死ね、というのかい?」
そして、ユウナの言葉にカガリはミネルバで自分に突っかかってきた、赤い瞳の少年を思い出す。

「俺の家族はアスハに殺された!」

自分の父が理念を貫き、国を戦場にした結果、多くの命が失われたことは紛れもない事実だ。
しかし、自分達は護らなければならないオーブの理念がある、だからそれは仕方なかったことだ。
カガリはそう思っていた。それで正しいと思っていた。

だが、現実には、あの少年のように家族や大切な人を失った人達は大勢いる。
そして再び連合の要請を断り、国を焼くことになったら、また多くの人達が犠牲になる。
憎しみの果てに、殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は平和になるのか、
かつて自分が大切な人間に言った言葉であるが、殺そうとしなかったことによって、
新たな憎しみが生まれることに気付いていなかった。
いや、気付いていたが、それに気付かないようにしていただけなのかもしれない。

だとしたら再びオーブを戦場にして、新たな犠牲を出すよりは同盟を結んだ上で出来る道を探すべきか。
しかし、そうなっては父が命を掛けてまで護ろうとした理念は完全に失われてしまう。

カガリは最早、自分ではどうすることもできなくなってしまっていた。

「なら、やはり連合との同盟を結ぶしかないのか?」
カガリは珍しく弱々しく言葉を発する。
「・・・・・・・」
「ユウナ?」
ユウナは少し黙ったままでいる。カガリは少し違和感を覚えた。
今までの彼ならば、黙ることなく連合との同盟を薦めていたはずだ。

窓から眩しい夕日が入ってくる。目に映る太陽の色はまるで血の色のような赤い色をしていた。
まるであの少年が太陽を通じて自分を睨み付けているようだとカガリは感じていた。

そしてユウナが重い口を開く。
「今から話すことは誰にも言わないと約束できるかい?」
「・・・?あぁ」
ユウナの少し意外なリアクションに対して思わず返事をしてしまう。
「もちろん、アレックス、いやアスラン・ザラや君の弟君達にもだよ?」
「わかった、約束する」
アスランはともかくこの国で静かに暮らしているキラ・ヤマトのことが出てきたことに驚いたが、
今はユウナの話を聞いてみたい、という気持ちのほうが強かった。
それほどまでにカガリはどうするべきなのかわからなくなっていたのだ。

「父上はオーブが生き延びるためには連合との同盟しかないと思っている。僕もつい最近まではそう思っていたよ」
「思って、いた?」
やはりいつものユウナとは様子が違う。それをカガリは確信した。
「だが、今のオーブなら…正確にはオーブ自身の力ではないが、彼らの力を借りることができれば
 オーブは今まで通り、どこに与することもなく、その理念を貫くことができるかもしれない」
「ダブルエックス…」
「そう、正解だ。そして君は言うだろうね、大きすぎる力は、と。僕はそれは違うと思っている。
 力は所詮、力でしかない。結局はそれを使う者次第さ。
 そしてその力を使う者を、僕は信用に値するものと思っている。君も一度、彼らに会ってみるといい」

そう言ってユウナはその場を後にする。そして誰もいない所で独り言を呟いた。
「そして僕はアスラン・ザラやキラ・ヤマトに勝つ。
 フリーダム、ジャスティスに乗った奴らの、
 世界最高と言われる力を以ってしてもなしえなかったオーブの理念を護りきれれば、僕の勝ちだ」
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