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第2話「頼んだぞ、ガロード」

ユニウスセブンが地球に向け落下し始めている。
それを聞いたガロードはその意味をユウナから聞かされて愕然とする。
そう、ガロード達の世界が荒廃した最たる原因であるコロニー落としと同じようなことが起きようとしていたのである。

「もちろん、あんな物が落ちて来たら地球は大変なことになる。まだ世界全体が前の大戦から完全に立ち直っているわけじゃないんだ。
今は宇宙にいるザフト軍がユニウスセブンの破砕作業に当たろうとしているらしいから、
 僕達の行動はそれ次第、ということになるだろうけど、ひとまず僕は行政府に戻るよ」
そういって足早にフリーデンを去るユウナの後ろ姿を見ているガロードの脳裏には、
ある男の、ダブルエックスを彼に託した男の死に際の願い、

過ちは繰り返すな…

という言葉がはっきりと蘇っていた。

「ガロード…」
ティファが苦しそうに何かを考えるガロードに声を掛ける。
「・・・・・・・」
ガロードは、拳を握り締め、震えながら考えていた。

異世界からの来訪者である自分達が、この世界に深く関わるべきではない、その理屈は分かるつもりだ。
しかも自分達が持っている力は、下手をすれば世界を大きく動かすことができるほどのものである。

だが他方で、このままユニウスセブンが地球に落ちたらどうなるか。
ガロードはそれを誰よりも分かっている人間の1人である。
罪のない人達が、それもたくさんの人達がその命を奪われる。
さらに世界は混乱の渦に包まれ、その混乱した世界でさらに多くの人達が命を落とす。
今、ガロードの中では、それら2つの考えが複雑に絡み合っていた。

するとそこへジャミル、テクス、キッドがやってくる。
「今、ユウナ氏から連絡があった。事情は大体のことは把握した」
「ジャミル…俺、どうしたら…」
ガロードはかつて、ガロード達の世界を荒廃させる原因の1つとなった引鉄を引き、
そして心に深い傷を負った男にすがるように問いかける。
「・・・・・・ガロード、引鉄を引くのはお前だ。お前が好きなようにすればいい。
 ただ……この世界にもニュータイプはいるかもしれないからな。
 だからこの世界に関わることは、私にとって間違いだとは言い切れない」
「私はどこに行っても、コーヒーを飲みながら患者を治すだけだ。
 後悔、というのは後から悔やんでも今からではどうしようもない、ということだ。それだけはわかっていてくれ」
「どーせ何言ったって自分じゃ結論出てんだろ、ガンダム坊や。
 おいらも、やることはお前らが壊してきたMSを治してやるってことだけだしな」

「みんな・・・・・・」
ガロードは、自分の中でつっかえていた何かが流されていくような感じを受けていた。
「それにあいつ見つけないと、あの趣味の悪い熊の置物を撤去しずらいもんね~」
「ビリヤード台もです」
そこにトニヤ、サラも加わる。
そしてティファが
「大丈夫です。きっと上手くいきます」
と最後の一押しをする。
「あれティファ、それも予知?」
トニヤが尋ねるが、ティファは首を振る。
「おめーがどうにかすんだよ!わかってんのかこのヤロー!?」
そう言ってキッドがガロードの後頭部をはたく。

ガロードは仲間の気持ちに思わず涙がでそうになってしまった。そのためみんなから背を向け、
「いってーな、この野郎…
 なあジャミル、マイクロウェーブがなくてもエネルギーを集めさえすれば、いけるんだよな?」
と問う。
「ああ」
ジャミルの答えを聞いて、ガロードは
「俺、ちょっとユウナさんのところに行って来る」
とだけいい、フリーデンを飛び出していった。

バンっ!!
行政府の会議室の扉が大きな音を立てて開く。
閣僚らが今は会議中だぞ、とどなりつけるが今のガロードの耳には入らない。
「どうしたんだい、ガロード。すまないが今は緊急…」
ユウナがそこの間に入ってくる。

「はぁ・・はぁ・・・あのユニウスセブンってのが落ちてきたらとんでもねぇことになんだろ!?」
「あぁ、そうだ。さっきも言ったとは思うが、プラントのザフト軍が破砕作業に当たるらしいが、
 どうなるかは未だにわからない。避難勧告は出すが、具体的にどうなるかはまだ…」
「俺なら、あの落ちてくるやつをなんとか出来る!ただエネルギーが必要なんだ。
 だから頼む、俺を信じて、手を貸してくんねぇか?」
ガロードの世界の話を聞いていたユウナは何かを感じた。おそらくは直感以外の何物でもなかっただろう。
ただ、何か、異世界の力があればこの状況を何とかできるのではないか、そう思ったのだ。
「詳しく聞かせてくれるかい?」
こうしてガロードはダブルエックスの力を使った対応策を説明し始めた。

「にわかには信じられないな…」
ウナトが呟くように言い、閣僚達も首を縦に振り、発言を行なう。
「それに大西洋連合やプラントへの説明はどうする?」
「そうだ、我々が、仮に、彼が説明したような力を持っているとしてもその後が問題だ」
「いや、それならそれで同盟を結ぶ必要はなくなるんじゃないのか?」
「そんなことになったらまた奴らが攻めて来るかもしれんぞ?」
様々な意見が出るものの、ガロードの話を現実的なものではないとしたことが前提のようでもあった。

そこでユウナも重く閉じていた口を開く。
「君たちはその後、どうするんだい?もし君がいう力が本当にあるとして、
 そんなことをしようものなら、君らは一気に全世界の注目の的だよ?」
「俺達の世界は何基ものコロニーが落とされて荒れ果てちまった…
 俺、言われたんだよ、『過ちは繰り返すな』って。
だからさ、この世界が俺達の世界みたいになっちまうのは嫌なんだよ」
「ガロード…」
「それにさ、元々俺達はジャンク屋か傭兵みたいなことしてたわけだし、
 いざとなったらこの国から出て行ってもなんとかなるぜ」
「…父上、僕は彼の言うことに賭けてみてもいいと思います。
彼らの機体を調査した結果、彼らのMSは我々の世界のものとは構造、材質、技術系統等が
大きく異なるとの報告を受けています。それにプラントが破砕に失敗したとしてもそれなりに効果は挙げるでしょう。
その成果を横からいわば、すべて掻っ攫うことができればオーブの利益も小さくはありますまい」

結局、ユウナの強い後押しにより、ガロードはオーブ軍の全面協力を得られることになった。
そして、ダブルエックスにつながれたケーブルを通じて、オーブ中のエネルギーが注ぎ込まれてゆく。
そして、小高い丘の上に陣取ったダブルエックスの下に、
ジャミルが乗ったジープがティファを乗せてやってきた。
「頼んだぞ、ガロード」
ガロードは黙って力強く頷く。
「大丈夫です…私が導きます」
「ティファ…」
エスタルドでの激戦の中で少しずつ距離が離れてしまっていたガロードとティファは
今回の一件で、無意識のうちに互いの存在の大きさを認識し合うことができた。
ティファは差し伸べられたダブルエックスの手の上に乗り、コックピットへと入る。

(カトックのおっさん、見ててくれよ…)

そう思いながら震えるガロードの拳にティファの小さな手が重なり、震えが止まった。

そこにユウナから通信が入る。
「ふふふ、邪魔して悪いね。こちらは作業完了だ。とはいえ、結局、80%ちょっとしかチャージできなかったみたいだ。
 何が起こるかわからない以上、シェルター等へ回す非常用エネルギーを減らすわけにはいかないからね」
「いや、ありがとよ、ユウナさん。
 あんたがいなきゃダブルエックスにエネルギーをここまでチャージできなかっただろうしな」
「タイミングと地球の運命、任せるよ。もし上手くいったらまたパーっとやろう」
そう言って通信は切れた。
(出来事を運命だなんて一言で片付けることはしたくないけど、もし上手くいったら僕ももう少し頑張ってみよう…)

このときユウナは決意した。
逆境に、正面から立ち向かい、乗り越えてきた、という異界の少年。
今回、彼がどのように現在の状況を乗り切るのか、実際に目にする機会を得られた。
もし、本当にこの状況を乗り切ることが出来たのなら、自分も変われるのではないか。そう思えてきたのだ。
屋敷の庭で、丘にそびえるダブルエックスの姿を目に映しながらユウナは考えていた。

その頃、宇宙ではジュール隊とミネルバの破砕作業が、謎の武装集団と、
カオス・ガイア・アビスを強奪した部隊の妨害に遭いながらも懸命に続けられていた。
セットされたメテオブレイカーがそこに眠る者たちごとユニウスセブンを砕いてゆく。
そして大きな破片が分離し、地球落下軌道から1つ、また1つと逸れてゆく。

「グゥレイトォ!」

破砕作業にあたっていたディアッカ・エルスマンが、コックピットの中でガッツポーズを取る。
その時、一瞬動きを止めたディアッカのザクへ黒いジンが今だ、とばかりに攻撃をしかけるが、
ディアッカのザクはそれを余裕で回避し、背負ったオルトロスを逆にお見舞いすべく発射する。
そして、オルトロスを回避した先で、緑の光の一閃が、ジンを両断する。
「な…!」
ジンのパイロットは何が起こったのかを認識することもなく絶命する。
「まだだ、これでは大気圏の摩擦熱で燃え尽きん!急ぐぞ、ディアッカぁ!」
ジンを切裂いた白いザクを駆るイザークはそう怒鳴ると次の標的を探す。

戦場で赤い瞳が、かつての大戦を生き延びたパイロット達の実力を目の当たりにしていた。
自分の機体より性能が低いはずのザクで、自分がてこずっている敵を、
ああもあっさりと撃墜していく様はその男、いや少年には屈辱であった。

力がないのが悔しかった。守りたかった大切な物を一瞬で奪われた。両親と妹を殺した奴を憎んだ。
悔しくて、憎くて、そんな思いをもうしたくなかった。だから力を欲した。
だから憎んだ、オーブという国を、理念に固執し、現実にいる人々から目を背けた祖国やアスハ家を、
大切な家族の命を一撃の下に奪い去っていった黒い翼のMSを。
そして、血反吐を吐いた。その末に力を得た。
ザフトのトップエリートの証たる赤服を、インパルスという力を得たのだ、
だから悔しい思いをすることはない、しなくて済む、そのはずだった。

だが現実には、新型の機体は奪われ、追撃戦では出撃してまもなく同僚が命を落とし、
今は襲い掛かってくる旧型の機体を相手に手を焼いている。
「くそっ!なんでこんな…」
吐き捨てるようにインパルスのパイロット、シン・アスカは言った。

そしてMS各機に撤退命令が下され、撤退を余儀なくされる。

ミネルバでは、艦長のタリア・グラディスが、破砕作業を諦め、艦首砲での破砕を行なうべく命令を下そうとしていた。
そんな時であった。
「艦長、国際救難チャンネルを通じて本艦に通信です!」
「もう!一体何なの!?こんな時に?じゃあ早く映して!」
タリアは脳内の血管がはちきれんばかりの怒りを込めて言った。

「じゃんじゃじゃ~ん!フリーデンの守護神、そして炎のMS乗り、ガロード・ラン様、ただいま参上だぜぇ!」
ユニウスセブンではなく、現場の緊迫した空気をぶち壊す声がブリッジに響き渡る。

ブチッ!

ちなみに、当時はっきりとなにかが切れる音が聞こえた、
とミネルバのブリッジクルーは後日、口をそろえて証言している。

「今からそのユニウスセブンを破壊する。周辺の部隊は3分以内にできるだけ今いる場から離れてくれ!」
「・・・・・・・」
タリアはなおも声の主への怒りに震えていたが、直後、ミネルバにユニウスセブンの破砕を命じた
ギルバード・デュランダルから通信が入った。
「グラディス艦長、実は今、オーブから『秘密兵器』を使う、との連絡が入った。
 勿論、にわかには信じ難いことだが、万が一ということもある。急いで離脱してくれ」
だが、突然そのようなことを言われても、当然、タリアは納得がいかず食い下がる。
「ですが、議長!」
「君の気持ちもわかるがミネルバに何かあってからでは遅い。
 それに、私の勘がさっきからずっと、何かが起こる、と伝えてくるんだ。頼むよ」
デュランダルが勘などという、いい加減なものに頼る人間ではないことはタリア自身が最もわかっていた。
そのデュランダルが、わざわざそんなことを言ってくるのだから何かがあるのだろう。
そう思ったタリアはミネルバを離脱させるよう命令を出した。

「どういうことだ、艦長!秘密兵器だなんて私は何も聞いてはいないぞ!」
通信が終わった瞬間、今度はヒステリックな声がブリッジに響き渡る。
(こんどはこっちか)
タリアはこのとき思った。
プラントにいる我が子は絶対こんな、空気の読めない人間にだけはしてはならない、と。
喉元まで登ってきた黙れ、という怒声を押し込めてタリアは声の主、金色の髪の女性に言う。
「代表、お気持ちはわからなくもありませんが、今はそれどころではありません!
 ただ今から当艦は離脱を開始致します!」
「あ、あぁ、すまない」
タリアの勢いに、怒気を殺がれた金色の髪の女、カガリ・ユラ・アスハは思わず引っ込んでしまった。

地上では、照準を定めたガロードが、ティファの合図を待っていた。
少し離れた所でダブルエックスの後姿を見ていたジャミルは、
複雑な思いを抱きながらも、あの惨劇が2度と起きないことを願っていた。

「ガロード、今です」
そして、ガロードは、強い想いを込めて引鉄を引いた。
「過ちは、繰り返させない!!いっけぇぇぇぇぇぇ!」
ダブルエックスは、ガロードの、ユウナの、ジャミルの、フリーデンクルーの希望を背に受けて、
かつて世界を滅ぼした光を、宇宙(そら)から地球に落ち行く悪夢へ向けて再び放った。

「「なんだ、あの光は!?」」
カガリはミネルバのブリッジで、アスランはミネルバの格納庫で同時に叫ぶ。
彼らの脳裏にはかつての大戦で多くの命を奪ったジェネシスの映像が蘇っていた。
「あんなものを何時の間に…」

ダブルエックスの両肩の巨大な砲塔、ツインサテライトキャノンから放たれた光は、
地球へ落ち行くユニウスセブンを呑み込み、その存在を欠片も残さず消し去った。

「ユニウスセブンが…一体何者なんだよ、ガロード・ランって奴は…」
着艦せんとするインパルスの中で、シンの心もまたサテライトキャノンの光に飲み込まれていた。

「これはどういうことなのだ!こんなものがあるだなどと私は聞いていないぞ!諜報部は何をしていた!?」
とある屋敷の一室で、上品な猫を膝に乗せた、顔色の悪い男は、手にしたワイングラスを投げつけながら叫んだ。

「まさか本当にどうにかできるとは思わなかったな…これからが大変だ。
 でも、やってみよう。僕だから出きることは必ずあるはずだ」
ユウナは晴れ渡った夜空に輝く月を見ながら決意した。

ガロードとダブルエックスが世界を護るため、自分が見て来た過ちを繰り返させないために
使った力は、ガロードの想いとは裏腹に、様々な野望、願い、恐怖の対象となったのだった。
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