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なのはクロスSEED_第09話後編」(2007/12/23 (日) 18:17:55) の最新版変更点

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深夜。 アスランはベッドに入って目を瞑っていた。 寝ているのではない、実際本人に意識はある。 ベッドに入るまでは眠気があったはずなのに、何故か今ではまったくといっていいほど眠くない。 目を瞑っていればその内寝るだろうと思っていたのだが、この状態ですでに二時間ほど経過している。 (……参ったな) 観念し、目を開けるアスラン。頭上に広がる天井。 つい一月ほど前からこの部屋に住んでいるアスランにとって、それはすでに見慣れない天井ではなくなっていた。 (……まさか、戦争の途中で異世界に迷い込んで、さながら魔法使いになってましたなんて、な) 一体誰が信じるだろうか。 イザークがこの話を聞いたら「はぁ?貴様何を寝言を言っている?」とか言いそうだ。 だが、今自分はこの世界で魔法を使っている。 自分を助けてくれた魔法使いの少女と使い魔と共にジュエルシードを集めている。 全ては、少女の母親の願いを叶える為に。 その為に、この世界でまた親友と刃を交える事となった。 キラ・ヤマト。 幼少時の自分の親友。父親の都合でプラントに渡る事になり離別したが、 再会は、二人が想像しなかった形で邂逅した。 ――倒すべき、敵として。 そして、彼とは幾度となく刃を交えた。 その中、自分の同僚がキラに殺された。 アスランは悔やんだ。キラを討てない自分の甘さが、彼を死なせてしまったと。 次に会った時は、お互い本気で殺す気で戦った。 その時の二人は、悔しさと悲しさ、そして、憎しみが支配していた。 その最中、爆発の影響でアスランはこの異世界に迷い込んだ。 そして魔法使いの少女に助けてもらい、そのお礼として手伝いをすることになった。 そうしてジュエルシードを集めている最中、キラと再会した。 ――また、敵として。 だが、今の俺はザフトのアスラン・ザラじゃない。 軍の命令も何もない。あるのは、ただ己の意思。 やると決めたのは自分の言葉。助けたいと思ったのは自分の気持ち。 そして……キラを殺したくはないのも、また事実。 ――俺は甘すぎるのかな、ニコル。 今は亡き友へと言葉を送るように外を見る。 ――だけど、俺は……負ける訳にはいかない。 この身に託された思いと、絆を結ぶ為に……。 思考を巡らしていたが、いつしかアスランの意識は深い闇の中へと消えていた。 同刻。 時空航行船・アースラ内。 現在は航行を停止しており、クルーの皆は現在ブリッジの中央テーブルに集まっている。 そして中央の一番奥に、艦長であるリンディが座っており口を開く。 「……という訳で、本日零時を持って本艦全クルーの任務はロストロギア、ジュエルシードの捜索と回収に変更になります。  また本件においては特例として、問題のロストロギアの発見者であり、結界魔導師でもあるこちら」 ガタ。と椅子から立ち上がるユーノ。 「はい、ユーノ・スクライアです」 「それから、彼の協力者でもある現地の魔導師の」 はっと自分が呼ばれた事に気付き立ち上がるなのは。 「た、高町なのはです」 「そして、異世界より迷い込んだ魔導師の」 カタ。と席を立つキラ。 「キラ・ヤマトです」 ペコと小さく頭を下げる。 「以上三名が臨時局員の扱いで事態に当たってくれます」 「「「よろしくお願いします」」」 三人が同時に頭を下げる。 「こちらこそ、よろしく」 「よろしく」 局員の皆が三人へと返事を送る。 その様子を見て微笑むリンディ。 アースラ・ブリッジ。 それぞれの持ち場へと戻った局員。そして三人はリンディの後ろへと控えていた。 「じゃあここからはジュエルシードの位置特定はこちらでするわ。場所が分かったら現地に向かってもらいます」 自分達の事だと理解した三人は少し姿勢を正し、 「「「はい」」」と返事をする。 「艦長、お茶です」 エイミィがお茶とその他を乗せたお盆を持ってくる。 「ありがとう」 そしてリンディはスプーンを持ち、砂糖をかなり多めにすくい、『湯』と書かれた陶器へと入れる。 それも二杯。しかもその後にミルクと思わしき液体を混入した。 "それ"をリンディは何事も無かったかのように陶器に口をつけ飲む。 「はぁ……」 おまけに飲んでいる本人はかなりご満悦のようだった。 その光景を見ていたなのはは、 (うわぁ……)と言葉には出さないが、言葉通りの表情を浮かべていた。 キラに関しては口を抑えて「うぷ……」と見ているだけで胸焼けを起こす勢いだ。 「そういえばなのはさん、学校の方は大丈夫なの?」 「あ、はい。家族と友達には説明してありますので……」 学校に関しては家庭の事情という事でしばらくお休みすることになっていた。 そして学校ではなのはの代わりのノート等はアリサが自分から進んで引き受けていた。 その様子をみて微笑むすずか。そして空を見上げ、思う。 (なのはちゃん……元気でやってるかな……) 某所・結界内 「クェェェェェェェッ!!!」 悲痛の叫びを上げる橙色の鳥。その身体に巻きつく緑色の鎖。 その鎖から逃げようとして暴れるが、外れる事はない。 「捕まえた、なのは!」 「うん!」 ユーノの言葉に反応するなのは。 『Sealing mode, setup.』 鳥へと突き刺さる桜色の閃光。そして浮かび上がるジュエルシードのシリアルナンバー。 『Stand by ready.』 「リリカル・マジカル……ジュエルシード、シリアルⅧ、封印!」 『Sealing』 そして幾つもの閃光が突き刺さり、鳥はその形状を保持できなくなり消滅する。 地上に着地し、レイジングハートを構えるなのは。 鳥の跡に残ったジュエルシードがゆっくりと降下し、レイジングハートのコアへと封印される。 『Receipt number Ⅷ.』 アースラ・ブリッジ。 「状況終了です。ナンバーⅧ無事確保。お疲れ様、なのはちゃん、ユーノ君」 局員の一人がディスプレイの向こうの二人へと話す。 「ゲートを作るね、そこで待ってて」 「さて、こっちはどうなってるかな……」 クロノがディスプレイを切り替える。 某所・結界内。 「はあああああああっ!!!!」 空中から、ソードジャケットを身に纏ったキラがシュベルトゲベールを振り下ろす。 振り下ろした先にはジュエルシードの影響で具現化した馬のようなモノがいた。 だが、振り下ろしたシュベルトゲベールは空を切り、地上スレスレで止まる。 「くっ!早いっ!!」 だったら、相手の動きを止めれば!! 左肩にマウントされたブーメランを引き抜く。 『マイダスメッサー』 そして目の前の目標に向かって投げる。 弧を描くように左後方から馬へと向かっていく。 「!!」 それに気付いた馬は急遽進路を変更する。だが、 「ストライク!!」 『パンツァーアイゼン』 左手の甲のシールドから発射されるロケットアンカー、その先端のクローが馬の足へと絡みつく。 最初のマイダスメッサーは囮、本当の狙いはパンツァーアイゼンで足止めをする事だったのだ。 案の定、マイダスメッサーに気付いた馬は進路を変更せざるをえない状況になり、その一瞬の止まる隙をキラは見逃さなかった。 そしてパンツァーアイゼンのコードが収縮し、そのまま馬へと迫る。 「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」 そして両手に構えたシュベルトゲベールを振りかぶり、縦一閃。 「ヒィィィィィィィィィィィン…………!!」 断末魔の悲鳴を上げ、馬の具現が消滅していく。 そして現れたジュエルシード、その中央には『Ⅸ』のシリアルナンバーに刻まれている。 シュベルトゲベールを構えるキラ。その大剣へと吸い込まれるように消えていくジュエルシード。 『Sealing. receipt number Ⅸ.』 「ふう……」 戦闘が終わり一息つくキラ。 直後眼前の空間に現れる画面。 『お疲れ様、キラ君』 そこにはアースラの局員が映っていた。 「あ、はい」 『それじゃそっちにもゲートを開くからちょっと待ってて』 数分後、足元に魔方陣が発生し、直後に転移する。 アースラ・転移ポート前。 目を開けると、隣にはなのはとユーノがいた。 どうやら同時に転移してきたみたいだ。 「お疲れ様、キラ君」「お疲れ様です」 「うん、二人ともお疲れ様」 互いの労いの言葉を掛け合う三人。 廊下を歩いてる最中、ふとなのはが言葉を漏らす。 「……フェイトちゃん、現れないね……」 「うん、こっちとは別にジュエルシードを集めていってるみたいだけど……」 「うん……」 「……だけど、いつかはぶつかることになる……それまでは、僕達も頑張ろう」 「うん」 返事をしたなのはの表情は、どこか曇り気味であった。 湖。 「……だめだ、空振りみたいだ」 「……そう」 アルフの残念そうな言葉にフェイトは表情一つ変えずに返事をする。 流れる風が彼女の長い髪をしならせ、靡く。 「やっぱ、向こうに見つからないように隠れて探すのはなかなか難しいよ……」 「うん……でも、もう少し頑張ろう」 そして空中より現れる紅い影。 「アスラン」 「どうだった?」 「すまない、俺が行った時にはすでに……」 気配を感じたアスランが単独で向かったのだが、すでに事は終了していたようだった。 「これで、向こうにまた一つ回収されてしまった……」 アスランの表情には悔しさがにじみ出ていた。 「アスランのせいじゃないよ……だからそんなに気負わないで」 「……すまない」 その言葉で少し気が軽くなったのか、表情が微笑むアスラン。 「これで……残りはあと6つ」 「次こそは、向こうよりも先に……!」 「うん」 シュルゥッ!!とフェイトの腕に巻かれた包帯が風に乗り、空へと舞い上がっていった。 翌日。 アースラ・食堂。 「はぁ……今日も空振りだったね」 皿の上のクッキーを手に取るなのは。 「うん。もしかしたら結構長くかかるかも……なのは、ごめんね」 「へ?」 突然のユーノの謝罪に手を止めるなのは。 「寂しくない?」 「別に、ちっとも寂しくないよ。ユーノ君やキラ君と一緒だし。一人ぼっちでも結構平気。  ちっちゃい頃はよく一人だったから」 「え? どうして……?」 キラはその言葉に疑問を覚えた。 あの優しい高町家の人達がなのはを一人にしておくことなどあるわけがないと思ったのだ。 そしてなのはの口から語られる過去。 なのはの幼少時に、仕事で大怪我をした士郎、翠屋の経営に追われる桃子と恭也、士郎の看病をする美由希。 だから、家には一人でいることがほとんどだったという。 「そう、だったんだ……ごめんね、なのはちゃん」 「ふぇ? キラ君が謝ることないよ~」 「でも……」 申し訳なさそうな表情のキラ。そこで話題を変えるべくなのはが口を開く。 「そういえば私、ユーノ君やキラ君の家族の事とかってほとんど知らないね」 「ああ、僕は元々一人だったから……」 「え? そうなの?」 「両親はいなかったんだけど、部族のみんなに育ててもらったから、だからスクライアの一族みんなが僕の家族なんだ」 「僕は……父さんと母さんの三人家族かな」 「え? キラ君って一人っ子だったんだ」 「うん。だから両親が仕事でいない時は僕も結構一人でいることが多かったかな」 「そっか……」 サクッとクッキーを食べるキラ。 「……色々片付いたら、もっとたくさん色んなお話したいね」 「うん、そうだね」 微笑みを交わす三人。その中、キラはある事を考えていた。 ――事件が終わって、C.E.の世界が見つかったら……僕は……僕達は―― ふとそんな考えが頭をよぎる。が、今は忘れることにしてクッキーを口へと運ぶキラ。 刹那。 鳴り響く警報。 「「「!!!」」」 柱のディスプレイには紅く『Emergency』と表示され点滅している。 『操作区域の海上にて大型の魔力反応を感知!!』 スピーカーから流れるそれを聞いた三人はすぐに駆け出していた。 海鳴市・海上。 海の上に浮かぶ巨大な魔方陣。 フェイトはその中心で詠唱を始める。 「……アルカス・クルタス・エイギアス……煌めきたる天神よ。今導きのもと、降りきたれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」 ピシャアンッ!! 魔方陣から海へと目掛けて放たれる幾つもの雷。 天候もそれに応じ、雲から雨が降りそそぐ。 (ジュエルシードは多分海の中、だから海に電気の魔力を叩き込んで強制発動させて位置を特定する。  そのプランは間違ってないけど……フェイト……!!) 「撃つは雷、響くは轟雷。アルカス・クルタス・エイギアス……!」 フェイトの頭上に浮かび上がる複数の光の玉。 それらが共鳴し合い、反応するように電流が迸る。 「はああああああああっ!!!!」 バルディッシュを掲げ、海へと振り下ろし魔方陣が作動する。 頭上の玉から海へと打ち込まれる複数の電撃。先程とは違い、かなり高出力の魔力が叩き込まれる。 そして、 「!!」 その魔力で発動するジュエルシード。光の柱が海から天へと駆け上るように突き上がる。 その数は……4つ。 「はぁ、はぁ、はぁ……見つけた……」 (こんだけの魔力を打ち込んで、さらに全てを封印して……こんなのフェイトの魔力でも絶対に限界越えだ!) アルフがそう考えているとフェイトが振り返りこちらを見る。 「アルフ、空間結界のサポートをお願い」 「ああ、任せといて!」 (だから、誰が来ようが何が起ころうが、あたしが絶対に護ってやる!!) そして、発動したジュエルシードが光の柱に海水を巻き込み、竜巻のように暴れ始める。 「行くよ、バルディッシュ……頑張ろう」 自分の相棒を構え、4つの竜巻へと向かっていくフェイト。 アースラ・ブリッジ。 ディスプレイに映る海の様子はまるで台風が来た時のように荒れていた。 「なんともあきれた無茶をする子だわ!」 不安そうな表情で見つめるリンディ。 「無謀ですね。間違いなく自滅します。あれは、個人の成せる魔力の限界を超えている!」 同じ様にディスプレイを見つめるクロノ。だが、こちらは冷静に判断している。 「フェイトちゃん!!」 ブリッジへ飛び込んでくるなのはとキラ。 「あの、私急いで現場に!」 「その必要はないよ、放っておけばあの子は自滅する」 「「!!」」 クロノの言葉に動きが止まる二人。 「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たした所を叩けばいい」 「でも……」「そんな……」 「今の内に捕獲の準備を」 「了解」 「しかし、残るジュエルシードは6つ、あの子が発動させたのが4つ、残り2つはどこに……?」 「……あれ?」 なのはと同じようにディスプレイを見つめていたキラが疑問を感じた。 「どうしたの?キラ君」 「……アスランがいない」 「そういえば……」 おかしい。状況的に不利な今の彼女を見捨てるような彼じゃない。 だとしたら……なぜ…………まさか……! キラは階段を駆け下り、クロノへと駆け寄る。 「クロノ!ここ以外の魔力反応は!?」 「な、なんだ突然!?」 「いいから早く!!」 「わ、わかった!」 キラの突然の行動と言動に押されたクロノは局員にコンソールを打ち込ませる。 「……!! 反応あり!湖にて魔力感知!今画面に出します!!」 パッと複数あるディスプレイの内の一つが切り替わる。 その画面に映るのは、一面に広がる湖。そしてその中央に浮かぶ一つの影。 「……アスラン!」 紅いバリアジャケットに身を包んだアスラン・ザラがはっきりと映っていた。 そしてそのかざした右手には魔力が集まっており、次の瞬間。 魔力は湖へと放たれた。

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