2004年 冬木


八神マリアの初めてのレイシフト(霊子跳躍)は、イレギュラーの連続だった。
まずは、カルデアの中枢管制室で謎の爆発が起きた。
マリアは、運よくというよりフォウと呼ばれる小動物に通信端末を奪われ、それを取り返すために奔走していたためオルガマリー・アニムスフィアが招集していた時間に間に合わなかった。
お陰で、とは言わないが、マリアはその爆発に巻き込まれることはなかった。
しかし、マシュや他のマスターは、瀕死の重傷を負ってしまった。
そんな悲惨な光景を見てからの記憶は少し曖昧だ。

次に気づけば自分が2004年の冬木にレイシフトしていた。
本来ならコフィンに入ってからではないと出来ないことだが、マリア自身がコフィンに入った記憶はない。
何より、重症のマシュを見た途端、助けるのに必死だった。

最後には、マシュが普段の白衣の姿ではなく、黒い衣装を身に纏い、十字型の盾を持った姿に変わっていたからだ。
レイシフトしてからすぐに剣や槍、はたまた弓を持ったガイコツに襲われたが、マシュ、そして、アルテラによって何とか撃退できた。

ピピーピピーと、通信端末の音が鳴る。

『ああ、やっと繋がった! もしもし、こちらカルデア管制室だ、聞こえるかい?』

端末からホログラフとして現れたのは、Drロマンだった。
マリアは、自分のことを名乗り、無事を報告する。それから様々な疑問をぶつけるも、返って来たのは「わからない」の一言だった。
ただ、一つわかったことは、マシュがサーヴァントとなって、マリアと契約した状態になっているということだ。
マシュの話によると、自分が瀕死の際、名前もわからないサーヴァントが現れて融合したことで、命を取り留めたそうだ。

「英霊としての能力と宝具を譲り渡す代わりに、この特異点の原因を排除してほしいと言ってました」
『英霊と人間の融合……デミ・サーヴァントか。ともかく、今はキミ達だけがこの冬木の特異点を解決できることしか

できない。急なことですまないが頼めるかい?』

その頼みは断る理由はなかった。Drロマンとの通信を切ると、アルテラが静かに警戒を促す。

「マスター、何かがくる」

え? と、思うなり夜空に閃光が走った。そして、すぐにそれはこちらに来るとわかった。
アルテラが剣でそれを弾き、マシュが盾でマリアの前に出た。
弾かれた閃光が地面に刺さる。

「矢……?」

それは、先程までのガイコツ達のような粗悪なものとは違い、矢と言うよりは、剣の形に近かった。
明らかに今までの敵とは違う。

「もしかして、サーヴァント!?」

それは直感であり、当たっていた。
それまでビルの屋上にいた人影がアルテラに向かって飛びこんだ。
弓矢が消え、両手に短剣が二振り顕現する。
剣のサーヴァント、セイバーたるアルテラに近接勝負を挑んだのだ。

「アーチャーのサーヴァントじゃないの!?」

マスターの眼で見るも、敵がアーチャーで間違いないようだが、わざわざ近接戦に持ち込む理由がわからなかった。
飛んできたサーヴァントの剣を迎え撃ったアルテラだが、予想に反してそれは互角だった。

「そんな! アルテラさん!」
「安心しろマスター。少々、魔力不足で全力とはいかないが、弓兵には遅れをとらん」

頼もしい言葉であったが、アーチャ―が不敵に笑った。

「それはどうかな?」

アーチャーの短剣がアルテラの剣を弾いた。
マリアは驚きを隠せなかったが、すぐにそんな場合ではないと感じた。
二刀で弾いたとはいえ、短剣の方がすぐに次の攻撃に入りやすい。
アーチャーは、弾いた後、すぐにアルテラに向けて短剣を見舞った。
危ない! そんなことを思ってたマリアだが、思わぬ展開となった。
突如として、アーチャ―が持っていた短剣が破裂したのだ。
互いに予期せぬことが起きたが、アルテラにとっては幸運だった。即座にアーチャ―から離れて、距離を取る。

「苦戦しているようだなぁ。手を貸すぜ」

新たなサーヴァントを確認した。
青い衣装に杖。見た目だけで言えば、ほぼキャスターであろう。

「お前は・・・・・何者だ? 何故、私達を助けようとする?」

アルテラが問う。キャスターと思わしき男が笑う。

「お前さんだって、全力どころから半分の力も出せてねぇだろ? それに、そいつとはちょっと因縁があってね」

言うなり男は、その場で何らかの術式を指で描いた。
すると、アーチャ―の周囲を炎が包んだ。

「あんたがマスターかい? とりあえず今のところはここで逃げておこうぜ」

その提案にマリアは全力で同意した。