第五次聖杯戦争から1年後…
その戦いの地となった場所の名は冬木…
その地にとある宗教集団が根を降ろしていた…
一般からは『先見会』と呼ばれており…
未来を見通す事の出来ると言われる『先見の巫女』と呼ばれる少女を祭り上げていた…
彼女の予言は外れたことがなく的中…
その為、設立からわずか数ヶ月の内に信者を増やしていた…
そして海が満ちる満月の夜…
冬木の先見会本部の地下で…
新たな規律と共に新生した聖杯を求め…
サーヴァントが召喚されようとしていた…
=???=
数千メートルの地下に設えられた巨大な儀式の間…
巨大な鏡の上に東洋の霊術言語で書かれた円陣…
それは格の高い巫女の灰燼を混ぜた墨で刻まれていた…
そしてその中央には菱形の結晶で作られた華の簪…
少女は円陣を崩さぬようにそれを置くと事静かに口ずさむ…
「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ…」
凛とした声は広間に響きわたる…
最初の降霊術の詠唱を終えると…
最後の詠唱を始める…
「告げる!」
「汝の身は我が下に!」
「我が命運は汝の剣に!」
「新たなる聖杯の寄るべに従い!」
「この意、この理に従うのならば応えよ!」
「誓いを此処に―――」
「我は常世の総ての善と成る者!」
「我は常世の総ての悪を敷く者!」
「汝創生の言霊を纏う新生せし三天!」
「抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!」
巨大な光のうねりが広間を振動させ…
それが静まると円陣の中央に一人の存在が存在していた…
その存在は言葉を紡ぐ…
「問う、アヴェンジャーのサーヴァントたる私を現界させたマスターは貴方か?」
「そうよ」
「名を教えて頂きたい…」
「私は奏、奏野奏よ」
「奏…貴方の願いは」
「私の願い…私の願いは記憶を取り戻して自由になる事よ!」
「…」
「私には記憶がないし何も覚えてないの…巫女として崇められるだけの毎日なんてもううんざりよ!」
「分かった…私は貴方の願いを必ず叶えよう…我がマスターよ…」
その存在が契約の了承すると…
少女の手には令呪が浮かび上がっていた…
それは三つの三日月が重なった形をしていた…
=続=