彼女は両親に呼ばれ滞在する海外に向かった…
無論、私も一緒に行くこととなった…
空輸される際に入ったケージは狭かったが…
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彼女の両親が勤める研究所に着くと彼女は両親に私を紹介した…
新しい家族を迎えたのだと…
両親は私の頭を摩り宜しくと語った…
ただその時…
奇妙な気配を感じたのだ…
父親は人であるにも関わらず我々と同じ魔の気配を帯びていた…
母親は逆に東洋の霊的な聖なる気配を漂わせていた…
恐らく当人達はそれに気づいていないだろうと推測した…
では、彼女から何の気配を感じられなかったのは…
二つの異なる気配によって相殺されてしまったからだろうと推測した…
そして悲劇は…
静かに忍び寄っていた…
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彼女の両親が発見した新種の植物が披露された直後…
その植物は暴走したのだ…
植物は人の埋まったホールを囲い…
更に巨大化し人々を飲み込んでいった…
彼女達も例外ではなかった…
私の仮の名を叫び…
早く逃げてとずっと叫んで植物に取り込まれたのだ…
私は人の声を発する事が出来ずに虚しくただ獣の声で吠えるしかなかった…
そして安全な隙間を見つけそこへ逃げ込んだ…
彼女が人でありながら異質な存在を受け入れる様を見届けることになってしまった…
人が一人ずつ繭に閉じ込められ…
あるものは余りの恐怖に奇声を上げ死に…
あるものは苦痛の声を上げ死んでいった…
その様子に彼女は怯えて眼と耳を塞ぎ震えていた…
そして…
一人また一人と死んで行き…
最後は彼女と母親だけが生き残った…
父親の姿は無く…
恐らく溶けて骨と化し死んだのだろうと…
無数の屍の山を見て思った…
そして母親も死に…
彼女だけが残った…
繭の中で体を丸くし誰もいなくなったこの場所でその啜り泣く声だけが響いた…
私は彼女に獣の声で悲しい遠吠えを上げた…
彼女はそれに気がついたのか顔を上げて私の姿を見た…
「良かった…無事だったんだね…」
自身の身が危険にも関わらず無理に顔を笑わせ私を安心させようとした…
私はそれに応える様に遠吠えを上げた…
「…二人だけになっちゃったね」
そして…
植物は彼女に最後の苦しみを与えた…
「いやっ!?死にたくない!…誰か助け…て!!」
彼女は奥で成長した植物が取り込み姿を消した…
何度も何度も私は叫んだ…
力を失っていなければ助けられたかもしれない…
何度も後悔し…
その最後を見届けることしか出来なかった…
=続=