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AQUEARIUM ストーリー2

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hanptidanpti

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AQUEARIUM ストーリー2



三角地帯編2


+ ...
帝国軍と黒髑髏との戦いが終局に向かうにつれ、三角地帯に変化が訪れ始めていた。
三角地帯はかつてのような無法地帯ではなく、帝国軍の管理下に置かれるようになっていった。
皮肉なことに、黒髑髏という秩序を乱す敵の存在が、
帝国に大兵力の投入を決断させ、秩序を取り戻させたのだ。
またそれは、帝国が国力を回復する中での、必然の流れだった。
だが、アドリアの表情は暗い。秩序が戻り、三角地帯周辺にも帝国の目が行き届くようになれば、正体を隠して潜伏するのが難しくなる。
何かと便宜を図ってくれたアラルも、間もなく本国に戻ることが決まっている。
アドリアは、紅い海の女王の解散を真剣に考え、ティレニアにだけ本心を明かす。

アドリア「ここいらが潮時ね……元々、今日まで無事でいられたこと自体、幸運に過ぎたのよ。後はMUにでも逃げて、ひっそりと農業やりながら暮らすってのもいいかもね……」
ティレニア「船長が……アドリアがそれを望むなら、私はどこまでも付いていくわ」

次のミッションを最後に、アドリアはロッソ団を解散すると心に決める。
帝国軍による、黒髑髏の最終殲滅作戦。
本国から新たに贈られた増援と、腕利きの海族団が一同に会し、黒髑髏を完膚なきまでに叩き潰す。
勝利が確定している上、参加するだけで莫大な報酬を受け取れる。MUに行く資金を稼ぐためにも、これに乗らない手は無かった。

戦いは、質・量共に勝る帝国軍が黒髑髏を蹂躙する一方的なものだった。
だが、アドリアは戦闘の最中、言い知れぬ不安を覚える。そして、その予感は的中する。
ついに帝国軍は、ブラック・マックイーン号を撃沈する。
だがそれはハリボテに近い代物で、黒髑髏の用意したダミーだった。
そして最終決戦にもかかわらず、遅れて出現するシャチのFFことオルカ。
今までは全て遊びと言わんばかりに牙を剥いたオルカは、驚異的な操縦技術で帝国・海族両軍FFを撃墜していく。そして、初めて外に向けて声を発する。

ソロモン「時は来た!! 奈落(アビス)の蓋をあけ、この退屈な世界を、蒼く蒼く染め上げようじゃないか!!」

この声に反応したのはジョーズだった。

ジョーズ「ソロモン……!?ソロモン・ブルーウォォォォォタァァァァァァァッ!!!」

それと同時に、黒髑髏の船や、戦場の各地に埋め込まれていたアクアパールが発光。
巨大な霊響陣(エコー・サークル)を描き出す。
彼らは目撃する……地を突き破り、天へと上る巨大な渦巻を……
それは紛れも無く、10年前の悪夢……大渦(メイルシュトローム)の再現だった。

渦によって出来た大穴に、周囲にいた船は問答無用で吸い込まれる。ロブスター号も例外ではなく、彼女らは深層(アビス)へと引きずり込まれてしまう。
だが、ソロモンの乗るシャチのFF・グランジャチだけは、海流に飲まれることも無く、そのまま逃げおおせてしまう。

深界魚の密集地帯である深層はまさに地獄。襲い来る無数の深界魚によって、帝国軍と海族団は次々に命を散らしていく。
死力を尽くして戦うロブスター号の命運も、風前の灯と思われたその時、ジョーズが覚醒。
白い髪は水色に発光し、JAWSまでもが青く輝く。
驚異的なスピードとパワーを発揮し、次々と深界魚を喰い破っていった。
しかし、結局は多勢に無勢。全滅は時間の問題と思われた。

セレベス「む、無理だ……深層から生還できたのは、あのエーゲ航爵ただ一人。私のような未熟者が、ここから生きて還るなんて……」
アラル「諦めんな!!俺は絶対諦めねぇぞ。本国じゃ女房子供が俺の帰りを待ってるんだ。こんなところで死ねるかよ!!」

だが、ロッソ団の霊響士(ロケーショナー)、サルデーニャ・クラインの霊響感応(エコーロケーション)が、地上に向かう上昇海流の発生するポイントを突き止める。一縷の望みをかけて、必死にそこへ向かうロブスター号。
この時点で、アラル、セレベスらを収容したロブスター号以外に、残っている船は無かった。
一方、ひたすら荒れ狂うジョーズを止めたのは、彼女を敵視していた汐だった。

汐「お主のことはやはり気に食わん!!だが、お主が死んでしまっては、我が殿や同志たちが悲しまれる。それだけは絶対にまかりならん!!」

一時正気を取り戻すジョーズ。二人でロブスター号に戻ろうとするが、そこに、深界魚の親玉である深界龍(リヴァイアサン)・エラスモヒュドラが出現。
海流を引き起こし、ジョーズと汐を吹き飛ばしてしまう。
絶望に凍るロブスター号のクルー達。だが、時間の猶予はもはやない。
ロブスター号は上昇海流に飛び込み、一気にこの地獄を切り抜けるのだった……

深層は、各地の海や湖に繋がっている。地上に出たロブスター号は、帝国軍に保護される。

アラル「深層(アビス)ってのは、奈落だの、地獄だのって意味もあるんだってな。ああ、全くその通り。ありゃ本物の地獄だ。俺達弱っちい人間なんぞが、立ち入っていい場所じゃねぇんだよ……」

一方、ジョーズと汐を失ったアドリアは、ティレニアの胸の中で泣き崩れる。

アドリア「もう……やだ……私はもう二度と、二度と失いたくなかったのに……!!」

アドリアが、海族団の規模を最小限に留めていた理由……
それは、仲間を失うことを嫌い、自分の眼の届く範囲の仲間を守れるようにするためだった。
だが、運命は、彼女に泣いている暇も与えなかった。彼女の下を訪れたアラルは、申し訳なさそうに告げる。

アラル「俺や俺の部下がこうして生きて還れたのも、お前さん達のお陰だ。だから、こんなことを言うのは心苦しいが……アドリアーナ・デル・カンパネルラ。ハンス・ベーリング宰相閣下は、お前に会いたがっている。帝都まで来てもらうぜ」

ベーリングは、とうにアドリアの正体に気づき、アラルにそれとなく彼女を監視するよう命じていたのだ。





帝国編


+ ...
セカンド・シュトロームから数日……もはや、世界から安息の場所は失われつつあった。
深界魚の異常発生は、世界各地に甚大なる被害を出し、各国は場所を問わず出没するようになった深界魚に、頭を悩ませることとなった。
一方、帝都に護送されたアドリアらロッソ団は、ベーリングの宰相府で、数日間軟禁状態に置かれていた。
だが、ある日アドリアだけが、ハンス・ベーリングとの謁見を許される。
ついに年貢の収め時かと、平静を装いつつも内心恐怖するアドリア。
だが、ベーリングはアドリアに対し、屈託のない笑顔で応対すると、予想だにしない提案をする。

「私の駒となって、帝国のために働かないかね?」
絶句するアドリア。
彼は言う。

ベーリング「私の知る限り、あの深層から生還したのは、エーゲ航爵以外では君達だけだ。運でも実力でもいい。確かなことは、君達がこの時代における極上の人材だということだ。そんな宝を捨てたり腐らせたりなど、出来るはずがなかろう」

今は帝国始まって以来の、最初のメイルシュトロームにも匹敵、それ以上の国難。優れた人材は、可能な限り手元に置いておきたい。更に、秘密裏に監視させていたアラルの報告を聞く限り、アドリアの精神構造は、自分のそれに近い。彼女なら、自分の後継者になれるかもしれない、とも。

アドリアは困惑しながらも問う。自分を仇と狙う娘を手元に置いてよいのかと。
ベーリングはあっさりと、アドリアが復讐を諦めていることを看破する。
そして、自らが滅ぼしたカンパネルラ家には何の恨みも妬みも無かったと言い放つ。

「なら、どうして裏切ったの!?」

アドリアの詰問に、ベーリングは一切動じずに答える。
あのままカンパネルラ家と敵対貴族が互角のまま小競り合いを続けていれば、戦いはいつまでも終わらず、国は疲弊する一方だった。ならばいっそ、いずれかの頭を潰してパワーバランスを崩し、全面衝突に持ち込ませ、有利な側の圧勝で戦いを終わらせた方が、早期に内乱を沈め、国力の回復に専念できるのではと考えた。
それを実行できる情報(チャンス)が自分にはあった。だから、敵対貴族に情報を流し、アドリアの父を殺させた。戦争を終わらせるために。
また彼は、自分が権力の頂きに立ち、甘い汁を啜りたいという欲も否定しなかった。しかし、権力の基盤と国家の安寧は不可分であり、荒れた国のトップに立っても意味がない。
国のために、引いては自分のために。アドリアの両親を含め、障害となる者は全て消し去る。ハンス・ベーリングとは、そういう生き物だ。

ベーリングの語る人生哲学にアドリアは圧倒されていた。
彼女の中に生まれた感情は、怒りや憎しみではなく、ベーリングの合理的思考への理解。あまつさえ、共感している自分がいた。
ベーリングは、自分の出す任務を達成すれば、莫大な報酬と、帝国内での確たる地位を約束すると言う。
取っ掛かりさえ出来れば、かつてのカンパネルラ家に匹敵する富や権力を手に入れられる、と。
アドリアが、リスクが高いが、見返りも大きい海族稼業に手を染めていたのは、金を蓄え、悲劇を無かったことにしたいという思いがあったからだ。

そんな中、帝都に緊急警報が鳴り響く。正体不明の一団が、防衛線を突破して帝都に乗り込んできたと言うのだ。
敵は、セカンド・シュトロームを引き起こした、ソロモン・ブルーウォーターのグランジャチ。
しかも、グランジャチが率いていたのは、あろうことか深界魚の群れだった。

ソロモン「やぁ!今日はいわゆる、宣戦布告のためにやって来たよ!!」

ソロモンは、多数の幼生深界魚を意のままにコントロールしていた。たちまち帝都は大パニックとなる。

ベーリングはアドリアに、あの敵を迎撃することに協力すれば、ひとまず自由だけは保証する。どこへなりと逃げても構わないと言う。だが、もし自分の配下になる気があるならば……

たちまち帝国のFF部隊に取り囲まれるソロモン。しかし、彼は全く動じず、グランジャチのあるシステムを起動させる。
ストリーム・コントロール。周囲の海流を操作する、成体深界魚と同じ能力に、FF部隊は近づくことすら許されず、次々に撃墜されてしまう。
だが、ソロモンの快進撃も長くは続かなかった。

エーゲ「大帝陛下のおわすこの帝都で、これ以上の狼藉は許さぬ!!覚悟ぉぉぉぉぉっ!!!」

ディミトリオス・エーゲ。帝国最強騎士と呼ばれる彼だけは、海流操作を受けながらも、その超人的な能力でグランジャチと互角以上に渡り合う。
最後は生身で空中に飛び出し、グランジャチに手傷を負わせる。

一方クリムゾン・ロブスター号のクルーと共に外に出たアドリアは、アラルにセレベスと旧知の者と協力して深界魚を殲滅する。
やはり、まだまだ帝都の壁は厚い。それが分かっただけでも収穫だ。そう言い残し、ソロモンは驚異的なスピードで撤退していった。

ひとまずの危難は去った。だが、アドリアは依然、人生の選択肢を突き付けられたままだった。彼女の取る道は――



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