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異店

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hayate

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アレはいつだっただろう…

そう…

私がまだ42の頃の話だ…


=異店=


「侑子さん~」

私が今の家族を持って間もない頃…
私は時折侑子さんの店に行く事があった…
時には願い、時には依頼、交互に対価を支払いながら…

「あら、久しぶりね…随分と遭っていない様な言い方だけど…」

店の縁側に座り、いつもの着流し姿で酒を飲む侑子…
その横に座り寛ぐ…


「私の居た世界では丁度3年経ちましたから…」
「そう…」
「でも…ここでは3週間しか時間が過ぎていない…」

「どう?あっちでの生活は?」
「二十数年も立てば慣れますよ…それに新しい家族も出来ました」
「今度はどんな家族?」
「あっちの世界の数万年前に創られたホムンクルスの兄弟です…」
「前に出遭った忍のホムンクルスとは違うの?」
「その兄弟です、一番上の双子のお兄さんと一番下の弟…」
「ふうん…つまりそっち側のあの兄弟に出会ったのね…」
「はい…これも侑子さん曰く必然と思います…」

紅色の酒と花弁の入ったグラスを取り一口飲む…

「夜月薔薇の酒ですね…」
「ええ…丁度咲き頃だったから…」
「月に2度目の満月の日で夜露を帯びた薔薇から創られる…でしたね?」
「そう…雨童子に聞いて四月一日に取りに行かせたのよ…」
「滅多に創れないからですか?」
「それもあるけど……先の事だけど飲めそうに無いから…」
「……この酒に免じて聞かなかった事にします」
「ありがとう……」
「侑子さん……私にもいつか滅びが来るのでしょうか?」
「……私にも解らない、でもいつか貴方にはそれ以上に大きな波がやってくるわ…」
「……大きな波?」
「ええ……」
「……私はその波を受け入れられるのでしょうか?」
「解らないわ…それは貴方が決めて貴方が導く事だから……」
「そうですか……」

薔薇酒の甘い香りに揺られながら私はこの言葉の意味を…
何処かで悟っていた…
いつか来ると…

****

「長い眠りだったわね…」
「母様……」
「どうしたの?」
「夢を見ました…」
「…夢?」
「とても懐かしい…薔薇酒の思い出です…」

=終=
 

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