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*2004年 冬木 「黒いセイバー、キャスター共に消滅しました。……私達の勝利、なのでしょうか?」 「う~ん……」 何とも答え辛いマリアは、オルガマリーの助け船を期待したが、彼女は何やらブツブツと言って、こちらの言葉は耳にすら入っていない。 「冠位指定(グランドオーダー)……あのサーヴァントがどうしてその呼称を……?」 「所長? どうしたんですか?」 「え……あぁ、そうね。よくやったわ。あなた達」 どうにも様子がおかしかったが、オルガマリーの「ここでミッションは終了とします」の一言で纏められてしまった。 納得はしてないが、この場で一番立場が上なのはオルガマリーだ。 変に勘ぐって機嫌を損なうには後々のことを考えるとリスクが高い。 「そ、そうだ、マシュ。あなたのその宝具の名前は何だったの?」 「い、いえ、それが私にもまだよくわかりません」 「なら、私が今、考えてあげるわ……そうねぇ、うん、人理の礎(ロード・カルデアス)ってのはどう? あなたにピッタリだと思うわ」 「は、はい。ありがとうございます」 戸惑いながらもマシュは受け入れた。デミ・サーヴァントでも宝具に名前がないとどうにも使い辛いという心境からだろう。 「っ! マスター! あそこに人が」 突然、そんなことを言ったのはアルテラだった。その場にいた全員がアルテラが向いている方へと目を映す。 すると、そこに確かに人はいた。そして、それは良く知る人物だった。 「レフ・・・・・」 感極まったオルガマリーが声を思わず漏らす。 レフ・ライノール。 彼もまた、あの爆発に巻き込まれてた人だった。 そんな彼の手には“聖杯”らしき結晶がある。 今頃現れたタイミングといい、明らかに異常だ。 そんな異常な状態なのに、オルガマリーは、マリアやマシュの制止の声も聞かずにレフに駆け寄っていく。 「いやぁ、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。やぁ、オルガ、君も大変だったようだね」 「そうなの! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし! 予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった! でもいいの、あなたが生きていて……あなたがいれば何とかなるわよね?」 「あぁ、もちろんだとも。本当に予想外の事ばかりで頭にくる。その中で最も予想外なのが君だよ、オルガ」 「え?」 オルガマリーが制止はした。レフの言葉に畏怖を感じ始めたのだ。 「爆弾は君の足元に設置したのに、まさか生きているなんて」 オルガマリーの目が見開いた。明確に動揺して始めている。 「レ、レフ? そ、それはどういう、意味?」 「いや、生きている、というのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。ここにいる君はただの残留思念とうところか? だが、君にとってはめでたいのかもしれないね。生前の君は、レイシフト適性がなかっただろう? 肉体があったままでは転移できない」 今のオルガマリーに所長としての威厳はない。幼子のように怯え、震えている一人の女性の姿だけだ。 「わかるかな? 君は死んだことで初めて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ」 だからカルデアにも戻れない。カルデアに戻った時点で、オルガマリーの意識は消滅する。 レフの言葉はナイフというより、叩きつけて粉々にするハンマーの如くオルガマリーを砕いていく。 「そんな、嘘よ・・・・・消滅? 私、カルデアに、戻れない?」 「そうだとも。だが、それではあまりにも哀れだ」 残酷な真実を告げつつもレフの表情は変わらない。 「生涯をカルデアに捧げた君に、せめて今がどうなっているか見せてあげよう」 レフが持っている聖杯が突如として輝いたかと思うと、次の瞬間には、彼の背後に異形な光景が現れた。 『カルデアス』 オルガマリーが呟く様に言った。 それは、まるで太陽だった。それを中心としていくつもの黒いリングが囲っている。 それが“何かは知らないもの”でも一同に底知れぬ畏怖を感じさせた。 「次元を繋げることなど、聖杯があれば容易な事なんだよ」 レフが言うなりオルガマリーの身体がふわっと浮いて、徐々に太陽みたいな球体へと引きつけられている。 「所長!」 無駄だとわかりつつも手を伸ばそうとしたマリアをマシュが制した。 「先輩、危険です!」 「そうだ。いわばこれはブラックホールのようなもの。下手に動けば君も、そこのサーヴァントもこれに吸い込まれてしまう。さぁ、アニムスフィアの末裔。これがお前達の愚行の末路だ」 「ちょっと、何を!」 「最後に君の宝物とやらに触れるがいい。人間が触れれば、分子レベルで分解される。生きたまま無限の死を味わいたまえ」 そこから先はマリアも思わず目をそらし、耳を塞いでしまった。 オルガマリーの悲痛な叫びは、耳を塞いだマリアにも響いていた。 「なんでこんな……私、まだ誰にも褒めてすらもらえなかったのに! いやぁぁぁぁぁ!!」 死にゆく叫びは、すぐに止んだ。 所長が、オルガマリーが死んだという事実が確認されたということだ。 「さて、改めて自己紹介しようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類を処理するために遣わされた2016年担当者だ」 人間ではなく、むしろ人類の敵。 そんな者が、つい先ほどまでカルデア側にいたということにさらに驚かされる。 「本当ならそこのマスターも今この場で排除しておきたいところだが……サーヴァントが二人もいてはこちらに分が悪い。だが、オルガマリーの死を見届けられないほどの脆弱なマスターだ。大した障害にはならんだろう。 なにより次の仕事があるのでね。君達の末路を愉しむのはここまでにしておこう」 突如として起こる地震。 どうやらここの特異点が消滅したことで、歴史そのものが改変されようとしている。 「このまま時空の歪みに呑みこまれるがいい。私も鬼じゃあない。最後の祈りぐらいは許容しよう」 レフはそう言い残して2004年の冬木から消えた。 § 頬がくすぐったさに、マリアは目覚めた。 「フォウ!」 それがフォウの仕業とわかり、マリアは少し笑った。 そして、自分がいつの間にかカルデアの自室に戻っている事に気づく。 「あ、先輩。気づきましたか?」 部屋に入って来たマシュの姿はサーヴァントではなく、元の白衣姿だ。 「マシュちゃん……私、あの後、どうなったの?」 レフ教授が現れ、オルガマリー所長が殺されたといった記憶は残っている。 だが、その先の記憶は靄が掛かっているというより、白紙のようになにもない。 「先輩はあの後、自身の魔力切れを起こして気を失ったんです。ずっと気を張り詰めていたようですし」 「魔力切れ……」 確かに自分の魔力量はまだまだ未熟。アルテラも魔力の供給量不足で全力が出せないまま冬木のセイバーと戦っていた。 だが、気を失うほどの魔力を消費するとは考えにくかった。 所長の死にショックを受けたのが原因かもと考えた。 「弱気なマスター」 そんな言葉が脳裏に過ぎった。レフ教授の言う通りだ。 強くなろう。人類のためにというのもあるが、何より目の前の後輩や自分の相棒(サーヴァント)であるアルテラのた めに。 「いいね~。その目! 強い決意した主人公の目だよ!」 重苦しい空気を吹き飛ばすかのような明るい声にマリアとマシュは思わずその声の主の方へと向いた。 そこにはDrロマンがおり、その隣に見慣れない女性がいた。 およそ、カルデアの職員とは思えないその女性は高らかに名乗った。 「私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。あ、私の事はダヴィンチちゃんでいいよ♪」 その名を聞いた時、マリアは思わずポカンとしてしまった。 かの、有名な芸術家が目の前に突然現れてこんなことを言ってしまうのだから無理もない。 「とりあえず、みんな。おかえり、カルデアに」 Drロマンの言葉に安らぎを感じる。 「ただいま戻りました!」 その時のマリアの表情は笑顔でいっぱいだった。 &bold(){}特異点F 完。
*2004年 冬木 「黒いセイバー、キャスター共に消滅しました。……私達の勝利、なのでしょうか?」 「う~ん……」 何とも答え辛いマリアは、オルガマリーの助け船を期待したが、彼女は何やらブツブツと言って、こちらの言葉は耳にすら入っていない。 「冠位指定(グランドオーダー)……あのサーヴァントがどうしてその呼称を……?」 「所長? どうしたんですか?」 「え……あぁ、そうね。よくやったわ。あなた達」 どうにも様子がおかしかったが、オルガマリーの「ここでミッションは終了とします」の一言で纏められてしまった。 納得はしてないが、この場で一番立場が上なのはオルガマリーだ。 変に勘ぐって機嫌を損なうには後々のことを考えるとリスクが高い。 「そ、そうだ、マシュ。あなたのその宝具の名前は何だったの?」 「い、いえ、それが私にもまだよくわかりません」 「なら、私が今、考えてあげるわ……そうねぇ、うん、人理の礎(ロード・カルデアス)ってのはどう? あなたにピッタリだと思うわ」 「は、はい。ありがとうございます」 戸惑いながらもマシュは受け入れた。デミ・サーヴァントでも宝具に名前がないとどうにも使い辛いという心境からだろう。 「っ! マスター! あそこに人が」 突然、そんなことを言ったのはアルテラだった。その場にいた全員がアルテラが向いている方へと目を映す。 すると、そこに確かに人はいた。そして、それは良く知る人物だった。 「レフ・・・・・」 感極まったオルガマリーが声を思わず漏らす。 レフ・ライノール。 彼もまた、あの爆発に巻き込まれてた人だった。 そんな彼の手には“聖杯”らしき結晶がある。 今頃現れたタイミングといい、明らかに異常だ。 そんな異常な状態なのに、オルガマリーは、マリアやマシュの制止の声も聞かずにレフに駆け寄っていく。 「いやぁ、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。やぁ、オルガ、君も大変だったようだね」 「そうなの! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし! 予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった! でもいいの、あなたが生きていて……あなたがいれば何とかなるわよね?」 「あぁ、もちろんだとも。本当に予想外の事ばかりで頭にくる。その中で最も予想外なのが君だよ、オルガ」 「え?」 オルガマリーが制止はした。レフの言葉に畏怖を感じ始めたのだ。 「爆弾は君の足元に設置したのに、まさか生きているなんて」 オルガマリーの目が見開いた。明確に動揺して始めている。 「レ、レフ? そ、それはどういう、意味?」 「いや、生きている、というのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。ここにいる君はただの残留思念とうところか? だが、君にとってはめでたいのかもしれないね。生前の君は、レイシフト適性がなかっただろう? 肉体があったままでは転移できない」 今のオルガマリーに所長としての威厳はない。幼子のように怯え、震えている一人の女性の姿だけだ。 「わかるかな? 君は死んだことで初めて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ」 だからカルデアにも戻れない。カルデアに戻った時点で、オルガマリーの意識は消滅する。 レフの言葉はナイフというより、叩きつけて粉々にするハンマーの如くオルガマリーを砕いていく。 「そんな、嘘よ・・・・・消滅? 私、カルデアに、戻れない?」 「そうだとも。だが、それではあまりにも哀れだ」 残酷な真実を告げつつもレフの表情は変わらない。 「生涯をカルデアに捧げた君に、せめて今がどうなっているか見せてあげよう」 レフが持っている聖杯が突如として輝いたかと思うと、次の瞬間には、彼の背後に異形な光景が現れた。 『カルデアス』 オルガマリーが呟く様に言った。 それは、まるで太陽だった。それを中心としていくつもの黒いリングが囲っている。 それが“何かは知らないもの”でも一同に底知れぬ畏怖を感じさせた。 「次元を繋げることなど、聖杯があれば容易な事なんだよ」 レフが言うなりオルガマリーの身体がふわっと浮いて、徐々に太陽みたいな球体へと引きつけられている。 「所長!」 無駄だとわかりつつも手を伸ばそうとしたマリアをマシュが制した。 「先輩、危険です!」 「そうだ。いわばこれはブラックホールのようなもの。下手に動けば君も、そこのサーヴァントもこれに吸い込まれてしまう。さぁ、アニムスフィアの末裔。これがお前達の愚行の末路だ」 「ちょっと、何を!」 「最後に君の宝物とやらに触れるがいい。人間が触れれば、分子レベルで分解される。生きたまま無限の死を味わいたまえ」 そこから先はマリアも思わず目をそらし、耳を塞いでしまった。 オルガマリーの悲痛な叫びは、耳を塞いだマリアにも響いていた。 「なんでこんな……私、まだ誰にも褒めてすらもらえなかったのに! いやぁぁぁぁぁ!!」 死にゆく叫びは、すぐに止んだ。 所長が、オルガマリーが死んだという事実が確認されたということだ。 「さて、改めて自己紹介しようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類を処理するために遣わされた2016年担当者だ」 人間ではなく、むしろ人類の敵。 そんな者が、つい先ほどまでカルデア側にいたということにさらに驚かされる。 「本当ならそこのマスターも今この場で排除しておきたいところだが……サーヴァントが二人もいてはこちらに分が悪い。だが、オルガマリーの死を見届けられないほどの脆弱なマスターだ。大した障害にはならんだろう。 なにより次の仕事があるのでね。君達の末路を愉しむのはここまでにしておこう」 突如として起こる地震。 どうやらここの特異点が消滅したことで、歴史そのものが改変されようとしている。 「このまま時空の歪みに呑みこまれるがいい。私も鬼じゃあない。最後の祈りぐらいは許容しよう」 レフはそう言い残して2004年の冬木から消えた。 § 頬がくすぐったさに、マリアは目覚めた。 「フォウ!」 それがフォウの仕業とわかり、マリアは少し笑った。 そして、自分がいつの間にかカルデアの自室に戻っている事に気づく。 「あ、先輩。気づきましたか?」 部屋に入って来たマシュの姿はサーヴァントではなく、元の白衣姿だ。 「マシュちゃん……私、あの後、どうなったの?」 レフ教授が現れ、オルガマリー所長が殺されたといった記憶は残っている。 だが、その先の記憶は靄が掛かっているというより、白紙のようになにもない。 「先輩はあの後、自身の魔力切れを起こして気を失ったんです。ずっと気を張り詰めていたようですし」 「魔力切れ……」 確かに自分の魔力量はまだまだ未熟。アルテラも魔力の供給量不足で全力が出せないまま冬木のセイバーと戦っていた。 だが、気を失うほどの魔力を消費するとは考えにくかった。 所長の死にショックを受けたのが原因かもと考えた。 「弱気なマスター」 そんな言葉が脳裏に過ぎった。レフ教授の言う通りだ。 強くなろう。人類のためにというのもあるが、何より目の前の後輩や自分の相棒(サーヴァント)であるアルテラのた めに。 「いいね~。その目! 強い決意した主人公の目だよ!」 重苦しい空気を吹き飛ばすかのような明るい声にマリアとマシュは思わずその声の主の方へと向いた。 そこにはDrロマンがおり、その隣に見慣れない女性がいた。 およそ、カルデアの職員とは思えないその女性は高らかに名乗った。 「私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。あ、私の事はダヴィンチちゃんでいいよ♪」 その名を聞いた時、マリアは思わずポカンとしてしまった。 かの、有名な芸術家が目の前に突然現れてこんなことを言ってしまうのだから無理もない。 「とりあえず、みんな。おかえり、カルデアに」 Drロマンの言葉に安らぎを感じる。 「ただいま戻りました!」 その時のマリアの表情は笑顔でいっぱいだった。 &bold(){特異点F 完}

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