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ホムンクルス… その言葉を聞いた瞬間… 何かが脳裏を過ぎった… 「…何の事だ?」 『……本当に自分が何なのかも忘れているみたいね』 「……俺の仕事の邪魔をした礼はさせてもらうぞ?」 俺は相打ちを覚悟で彼女の心臓を狙った… そして… 彼女も同じだった… 「…う」 『これで終わりだ…』 互いの胸に鮮血が飛び散り… 腕を伝って下へと落ちていく… 再生能力の無いあの女が失血死するのは時間の問題だった… だが、再生能力が無いなど初めから確信していた俺も愚かだった… 考えても見ればあの暗闇で俺の動きを察知し追ってきたのだ… それなりの勝算がなければ追うことなど考えない筈だ… 互いの腕が引き抜かれたとき… 真っ先に倒れたのは俺の方だった… 彼女は穴の空いた場所を抑えながら俺を見ていた… そこで意識が途切れていった… そして次に目覚めた時… 俺が居たのは生活感のある部屋だった… 「ここは…」 フローリングの床に観葉植物が飾られ… わずかな収納家具とシングルベッドの置かれたシンプルな部屋… ベッドに寝かされていた私は体を動かし起き上がる… 装備一式は近くの棚に置かれていた… 無用心にも程がある… 部屋のドアを開け… 玄関と繋がる廊下を進むとリビングに出た… そこに彼女が居た… プレートタイプのディスプレイからの映像を見ており… それはあの襲撃についてだった… 彼女はそれを悪意を秘めた笑みを浮かべつつ食事を取っていた… 「…あんな場所に証拠を隠しているからよ」 『…貴様、どういうつもりだ?』 「起きたんだ…怪我も治ったみたいだし…後、装備には一切手を触れてないから安心して…まあ…服を直すのにちょっと弄ったけど…」 『敵である俺を助けて何の得がある…』 「あったよ…」 『何?』 「貴方を雇っていた奴ら国際共通の指名手配されている暗殺集団…貴方のお目当ての相手と一緒に今朝お縄に付いてもらったわ…」 『……あれから何日経った?』 「かれこれ三日だね…怪我と一緒に妙な病気も治療させてもらったわ…」 『…!』 「それにしても全身が石になる病気なんて…呪術でもなかったから驚いたけど…」 『……俺をどうするつもりだ?』 「自由…どこにでも行っていいよ」 『…』 「貴方はもう自由だから…誰にも縛られずに…どこにでも…ただ…」 『何だ…』 「貴方を治す時にどうしてもこれだけは避けられなかった…」 『何だ…これは?』 彼女に手渡されたのは小刀…鞘に収まれたのは結晶の刃だった… 「恥ずかしいと思うけど…それを持って…テックセッターって言って」 『何故、そのようなこと…』 「いいから…」 『テックセッター』 妙な刃物を持ちそして言葉を言えと言われ… 仕方がなく言霊を紡ぐ… 一瞬まばゆい閃光が目処前を覆う… 気づいた時には装甲をまとっていた… 『な、何だこれは!?』 「私の血液はあらゆる病や怪我に効くの…ただ…そんな能力を与えてしまうけど…」 『血を与えたのか…俺に…』 「うん…」 『…そうか』 「迷惑だと思った…」 『…』 「だけど…私は…」 『……偽善者だな』 「…」 『それでも助けたいと願う気持ちは本当だったのだろう?』 「…」 『それに俺はお前に救われた身だ…』 「…」 『俺にはもう行き場もない…ならば、お前に仕えさせてくれ…』 「えっ…?」 『それがお前が俺を助けた罪滅しだ…お前が俺を活かせ…』 それが俺と彼女の出逢いと契約だった… =終=
ホムンクルス… その言葉を聞いた瞬間… 何かが脳裏を過ぎった… 「…何の事だ?」 『……本当に自分が何なのかも忘れているみたいね』 「……俺の仕事の邪魔をした礼はさせてもらうぞ?」 俺は相打ちを覚悟で彼女の心臓を狙った… そして… 彼女も同じだった… 「…う」 『これで終わりだ…』 互いの胸に鮮血が飛び散り… 腕を伝って下へと落ちていく… 再生能力の無いあの女が失血死するのは時間の問題だった… だが、再生能力が無いなど初めから確信していた俺も愚かだった… 考えても見ればあの暗闇で俺の動きを察知し追ってきたのだ… それなりの勝算がなければ追うことなど考えない筈だ… 互いの腕が引き抜かれたとき… 真っ先に倒れたのは俺の方だった… 彼女は穴の空いた場所を抑えながら俺を見ていた… そこで意識が途切れていった… そして次に目覚めた時… 俺が居たのは生活感のある部屋だった… 「ここは…」 フローリングの床に観葉植物が飾られ… わずかな収納家具とソファに折り畳み式の簡易ベッドの置かれた部屋… 恐らく客間か書斎… ベッドに寝かされていた私は体を動かし起き上がる… 装備一式は近くの棚に置かれていた… 無用心にも程がある… 部屋を見渡すといくつかの写真が飾られアルバムらしき本が数本と分厚い古書が本棚を埋めていた… そのほとんどが見慣れぬ言語で書かれていた… わずかに読める言語で「異界現語録」や「幻想獣図鑑」に「グリム童話」などがある… しかし、興味を惹いたのは飾られた写真… 彼女と友人… そして多くの仲間と取った写真だろう… 「異界の戦友」と記入された額縁に飾られていた… その写真の一部に眼の終点が収まった… 自分の顔にそっくりな人物がいたからだ… おそらく双子だろう同じ顔の人物が二人と… その下で寄り添うように多分恋人の女性と写っている青年… 一緒に撮られている事は兄弟が何かだろうと思った… だが、何故俺は兄弟だと思ったのだろう… 写真を見続けているうちに頭の中で記憶がふと蘇った… 草木の満ちる庭園で多くの仲間と兄弟と語らう自分の姿を… 「兄さん」と呼ぶあの弟の顔を… 「アーベント…ヴォール…トレーネ……」 俺は生き別れた兄弟と義妹の名を紡ぎ… 失った全てを思い出した… 俺の名は「ナハト・マイオス」… 無様に生き残ったホムンクルスだと… 部屋のドアを開け… 玄関と繋がる廊下を進むとリビングに出た… そこに彼女が居た… プレートタイプのディスプレイからの映像を見ており… それはあの襲撃についてだった… 彼女はそれを悪意を秘めた笑みを浮かべつつ食事を取っていた… 「…あんな場所に証拠を隠しているからよ」 『…貴様、どういうつもりだ?』 「起きたんだ…怪我も治ったみたいだし…後、装備には一切手を触れてないから安心して…まあ…服を直すのにちょっと弄ったけど…」 『俺を助けて何の得がある…』 「あったよ…」 『何?』 「貴方を雇っていた奴ら国際共通の指名手配されている暗殺集団…貴方のお目当ての相手と一緒に今朝お縄に付いてもらったわ…」 『……あれから何日経った?』 「かれこれ三日だね…怪我と一緒に妙な病気も治療させてもらったわ…」 『…!』 「それにしても全身が石になる病気なんて…呪術でもなかったから驚いたけど…」 『……俺をどうするつもりだ?』 「自由…どこにでも行っていいよ」 『…』 「貴方はもう自由だから…誰にも縛られずに…どこにでも…ただ…」 『何だ…』 「貴方を治す時にどうしてもこれだけは避けられなかった…」 『何だ…これは?』 彼女に手渡されたのは小刀…鞘に収まれたのは結晶の刃だった… 「恥ずかしいと思うけど…それを持って…テックセッターって言って」 『何故、そのようなこと…』 「いいから…」 『テックセッター』 妙な刃物を持ちそして言葉を言えと言われ… 仕方がなく言霊を紡ぐ… 一瞬まばゆい閃光が目処前を覆う… 気づいた時には装甲をまとっていた… 『な、何だこれは!?』 「私の血液はあらゆる病や怪我に効くの…ただ…そんな能力を与えてしまうけど…」 『血を与えたのか…俺に…』 「うん…」 『…そうか』 「迷惑だと思った…」 『…』 「だけど…私は…」 『……偽善者だな』 「…」 『それでも助けたいと願う気持ちは本当だったのだろう?』 「…」 『それに俺はお前に救われた身だ…』 「…」 『俺にはもう行き場もない…ならば、お前に仕えさせてくれ…』 「えっ…?」 『それがお前が俺を助けた罪滅しだ…お前が俺を活かせ…』 「…貴方の名前は?」 『ナハト・マイオス…それが俺の名だ…』 「思い出したの?」 『ああ…』 「私は藤岡皐月…」 『華の名か…』 それが俺と彼女の出逢いと契約だった… =終=

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