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『嘘つきなボクともっと嘘つきなボク』 

○白い家・室内
部屋の中、手錠で両手足腰を拘束されている学生の久瀬(十八歳)の姿。
天井、壁、床など壁一面にゲームのルールが血でおどろおどろしく書かれている。
①ゲームのルールは七つのみ
②ゲームのプレイヤーは一つのゲームが終わると勝敗に関わらず死ぬ
③ゲームに負けるとその時に地球に存在する人類は死に地球も消滅する
④ゲームが24時間以内に勝敗が付かない場合も地球に存在する人類は死に地球も消滅する
⑤ゲーム以外でプレイヤーが死ぬ場合、プレイヤー以外に殺された場合は次のプレイヤーが選出される
⑥ゲームに勝つと次のゲームまで一時間の有余が与えられる
⑦ゲームがはじまるまでは、他のプレイヤーは他のプレイヤーの邪魔が出来ないように拘束される
⑧ゲームに最後まで勝ち続けると……
久瀬を拘束していた手錠が突然解除される。一歩踏み出すたびに床に散乱した嘔吐物や血がびちゃびちゃと音を立てる
久瀬「俺の順番か……」
モノローグ『プレイヤーは百人の子供。ゲームの内容は相手プレイヤーを殺すだけ。それが彼らの地球と人類が生き残る事が出来る唯一の手段』
無意識にため息を吐き出す久瀬。視点が定まらないまま部屋を出る。

○白い家・廊下
壁に血で書かれた文字が次々とあらわになる。
血で名前と、その下に「死にたくない」とかすれた字で書かれている。
モノローグ『最初は他人が選ばれる度に、心の裏では安堵をいだいていた。しかし、その感情は次第に矛盾へと変わってゆく。既に人の命に重さなんて無く、生と死は等価値だった』
窓の一つも無い廊下を道なりに進む。呼吸は徐々に荒さを増した。
カサカサの手で九十九番目のプレイヤーらしき人物の手から血痕の付着したピストルをゆっくり抜き取る。
マガジンの弾数を確認する久瀬。
久瀬「一発か……」
舌唇を噛む。廊下の突き当たりの戸を握り締めゆっくり開けた。

○久瀬の記憶の中・中学校の某教室内
深く閉じた目をゆっくりと開ける。息を呑む久瀬。
そして、そこに立って居るもう一人の久瀬の存在。
もう一人の久瀬「やぁ、やはり僕が最後のプレイヤーだったんだね」
もう一人の久瀬に銃口を向ける。もう一人の久瀬は教壇の上で両手を挙げた。
もう一人の久瀬「参ったな。聞く耳持たずか……」
不気味に微笑むもう一人の久瀬。瞬き一つせずにじっともう一人の久瀬を見つめている。膠着する二人。
もう一人の久瀬「では、一つだけいい事教えよう。このゲームから誰も殺さずに抜け出す方法がある。無論プレイヤーも死なない」
視線を左右に振って罠が無いか確認する久瀬。
もう一人の久瀬「君は気づいてないのか? このゲームのルールには矛盾がある事を」
挙げた両手をゆっくり下ろし、右手でかけていた黒縁眼鏡の両端を親指と小指で挟むと少し持ち上げ、かける位置を若干ずらした。
もう一人の久瀬「ルールの三番と四番、どちらもゲームに負けるとその時点で地球と人類は消滅するというものだ。おかしいと思わないのか? このルールは、プレイヤー全員に等しく与えられているルールだ」
何かに気づく久瀬。
久瀬「どうゆう事だ? 僕らはとっくに死んでいたはず……」
もう一人の久瀬「それは簡単な答えだよ。ルールは確かに絶対だ。だが、君や僕は死んでいない。それが意味する所は、相手の居た地球も人類も確かに消滅しているって事。つまり、この世界を構成する理論には平行する空間が多数存在するという事になる」
久瀬の表情が複雑な表情へと変化した。
もう一人の久瀬「妄想かどうかは分からない。ただ、それでしか説明がつかないし、つけられない。でもそれは、同時にこのゲームの抜け道を提示してくれる事になるんだ。助かるためのね。ただ、それには君の協力が必要だ」
あまりに唐突な展開に動揺を隠せない久瀬。
久瀬「話だけ聞こう、ただし僕との距離はそれ以上つめない事。武器は机の上に置く事」
久瀬自信も相互の信頼のために銃口を下げた
もう一人の久瀬「武器なんか持って無い、それに距離も詰めない。ただ、チョークだけは持たせてもらうよ、聴覚的情報よりも視覚的情報の方が理解しやすい」
背を向けつつ黒板に手をかぶせた。教室内に入った時は天高かった陽の光も姿を消し、教室内に蛍光灯の光が新たにともる。黒板から音を立てていたチョークの音が途絶えた。
もう一人の久瀬「膨大に膨れ上がった宇宙は収縮現象を始めている。宇宙にはもともと決められた質量を満たされた空間でその量は基本的に変化しない。しかし、宇宙の収縮現象に伴い新しい宇宙は新たな宇宙誕生へのプレリュードを奏でている。それに伴う優秀な次元を補完のするための広い意味で次元の淘汰がこのゲームの目的だ。」
もう一人の久瀬は表情を強張らせ少し口調を強めた。
もう一人の久瀬「つまり僕ら100人が勝ち進む事で次元の淘汰が実行されているという事になるのであれば、元々次元は6.338253×10の29乗が存在する事になる。生き残れる次元は一つだけ、でもみんな生き残りたい。プレイヤーの中にはどうでも良いと考えている者も居た。しかし、それを人類の総意と言えるものでは無いだろう。僕の考えているトゥルーエンドとはすべての次元のプレイヤーを含めるすべての人間が生き残る事にある」
久瀬「それは無理だ。人類が生き残り地球を救う方法ぐらいなら僕にも考えはあるが、ルールの矛盾がこの次元にどのようなダメージを与えるか判らない。」
もう一人の久瀬は不気味な微笑を浮かべてその案を訪ねてきた
久瀬はため息をはいた。ピストルを机に置き、椅子に座る。
久瀬「勝ちも負けも判定が付かなかった場合のケースだ。お互いの敵を殺した上で判定に持ち込む…つまり引き分け。お互いのプレイヤー同士が同時に殺した場合ルールに矛盾が生じる。ルールでは負けさえしなければ地球も人類も死なずに済む。プレイヤーのみで犠牲を最小限にとどめる事が可能なはずだ」
もう一人の久瀬は指を鳴らした。
もう一人の久瀬「さすが僕だ。その方法ならプレイヤー百人の犠牲で次元を保つことが可能だ。しかし、僕はそのプレイヤーも助けたいと考えている。そこでエーテル宇宙論だ。」
モノローグ『エーテル宇宙論とは物質が移動していると考えは実は間違っていて物質自体は移動して居なくて、本当は物質を構成する情報のみが移動していているという考え方をだった』
久瀬「まさか人間を複製するのか? でも、魂や記憶という概念まで複製できるのか?」
もう一人の久瀬「おそらく肉体的な複製はここに来る時に利用した一種の転送装置を利用すれば出来るが、魂や記憶は物質と違い精神的な物は質量を持たないから複製はおそらく無理だろう。だが、それは僕らにとっては好都合なんだ」
久瀬「で、僕に何をしろと?」
もう一人の久瀬「結論から言うと負けて欲しいんだ。ルールの八番に勝者には願いが叶えられるとうものなのだが、僕はそのルールを利用してゲームのやり直しをずっとしている。そうして別の次元の僕らにこの事実を伝えてはわざと負けてもらっている。実はあと少しですべての次元の僕らにこの事を伝え終わる」
久瀬は笑い始めた。硬かった表情がくしゃくしゃになった。
久瀬「つまり僕に殺されろと?」
もう一人の久瀬「残念ながら僕は武器を持ってきて無い。君の武器を奪って殺しても良いが、君が別の次元の僕であるならある程度のプライドがあるはず」
天井を向いて目を閉じる。
久瀬「確かに、誰かの手にかかるぐらいなら自決を選ぶだろうな。僕は君の願いを聞き入れよう。だが、一つだけ僕の願いも聞き入れてくれ。僕は死ぬ時の姿を誰かに見られて死ぬのは嫌だ、だから僕が死ぬまでの間後ろを向いていてくれないか?」
もう一人の久瀬「判った。じゃあ後ろを向いているよ」
もう一人の久瀬は黒板の方を向いた。久瀬は持ってきた銃口を再び頭に向けた。
パン。銃声が静寂だった空間に響きわたる。何の躊躇も無く打ち出された弾丸は確実に脳を貫通した。
血は噴水のように噴出し、その血は黒板を赤く染めた。久瀬は黒板にもつれながら床に倒れた。
久瀬「君の話はとても興味深かったよ。小学生に聞かせるネタ話としては最高だ。しかし、君が本物のバカで助かったよ。」
もう一人の久瀬の高笑いが教室に響き渡る
久瀬「正直者のウサギと嘘つきのウサギの話を知っているかい? 嘘つきのウサギは正直者のウサギを騙して悪戯しようとするんだ。でも、実際騙されたのは嘘つきだったのさ。騙された嘘つきウザキはニンゲンに食われた。」
久瀬の前に光の扉が開かれた
久瀬「久瀬……これが唯一のトゥルーエンドだ」
  

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