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あの事件の後、シベリアにだけは本当のことを話した
シベリアの記憶は薄れ掛けてはいたが、VIPの話を聞いている間にハッキリ思い出したらしい
どうやら記憶が簡単に消えるのは事件に係わっていない人間に限られるようだ
半信半疑に聞いていたシベリアはこんな嘘みたいな話を信じてくれた
いや、実際に怪我をしているVIPを前にしているのだから信じて当然なのかもしれないが



その翌日、夏休みを利用して昼までダラダラ寝ていようと思っていたのだが、運悪く朝から携帯が鳴った
「おはよ、まだ寝てた?」
「ん・・・んー・・・大丈夫」
「昨日の赤い粉の話なんだよ」
少し声を潜めるシベリアにVIPの頭は急に覚醒する
今までの眠気が吹き飛ぶような感覚に襲われてVIPは電話に飛びついた
「何かわかったのか!?」
「落ち着け、近所に科学さんっていう先輩がいるんだけど、その人にその赤いのを分析してもらわないか?」
「・・・、まって。待てよ?」
VIPは自分のポーチの中をがさがさを漁るが赤い粉は見当たらない
「何処にやったんだ・・・?」
「オカルトの家は?」
「・・・そうかも」
オカルトの母親との戦いで気絶したんだっけ?自分の記憶も曖昧すぎて確信がもてない
とにかくじっとしているのは性に合わない、できるだけ動きたい
「オカルトの家、もう一度行ってみるか?」
「・・・行くなら武器になるものを持ってきてくれ、銃刀法違反なんかにならないのを」
「解った」
電話を切るとVIPは急いでリボルバー式のガス銃に弾とガスを込めて銃をウエストポーチに入れる
VIPは急いで階段を下りる
「おいすー」
「おはようお兄ちゃん」
父親のN速と天国が朝飯を食べているのをみてクロワッサンを手に取ると玄関に急ぐ
「おはよう!俺、ちょっと出かけるから!」
走って出て行くVIPにN速と天国は二人で首をかしげるだけだった
玄関から出ると丁度誰かが家に入ってくるところだった
「あ、どこかに行くの?」
ラウンジだ
背中にウエストポーチがあるということは特殊警棒は持ち歩いているらしい
「別に・・・」
「その顔は行く・・・んだね?」
「・・・赤い粉を取りに行く、オカルトの家に」
VIPはそういうと少し早歩きで歩き出した
ラウンジはVIPの隣を駆け足で歩きながらVIPの顔を真剣に睨む
「いまさら、怖気づいたんじゃないんでしょうね?」
「何が?」
「私が!死んだら呪うって!言ったでしょ!?」
VIPは足を止めてラウンジを睨みつける
「何でだよ!俺は、お前をこれ以上巻き込みたくないんだよ!」
大声で叫んだVIPにラウンジは驚いた顔をする
「お前を俺が守れるかよ!?自分のことで精一杯で!泣きそうな位怖いのに!」
「・・・ごめんなさい・・・」
「だから、俺に係わらなかったら記憶は消えるんだ」
ラウンジにはそれが、永遠の別れを言われたような気がして目の奥が熱くなるのを感じた
どうしていいのか、どう言い返せばいいのかわからない
ただ、VIPともう会えない気がして怖かった
「待って!!」
「なんだよ」
VIPは振り返らずにラウンジに言った
ラウンジはそれでも引き下がろうとはしない
「誰が、アンタなんかに守って欲しいなんていったの?」
振り返ろうとしたVIPの顔面をグーで殴り、ラウンジはVIPの顔を睨みつける
「私が居ないと何も出来ないくせに、かっこつけないでよ!」
「・・・」
何も言わないVIPにラウンジは強気な態度で睨みつける
風がより一層強く吹いた気がした、ラウンジの髪が風で靡く
「私に気を使わないで、確かに怖いけど、目の前であんなの見て黙っていられないでしょ」
「・・・ごめん・・・なんか俺、誰かが怪我するのが怖いんだよ」
暫く沈黙が続き、VIPはもう一度口を開いた
「次は目だけじゃない、死んだら・・・治せないんだ」
「それはVIPだって同じでしょ、VIPが死んだら、少なくても私は悲しいから」
VIPはそのラウンジの言葉に顔を上げる
「さっさと解決しちゃえば、危ないことなんかないんだから」
「把握した」
ラウンジが少し笑うのを見てVIPは殴られた頬を擦りながら苦笑いした
マジでいてぇ・・・ちょっと泣きそうだ
シベリアに待ち合わせ場所の変更をメールで教えるとVIPは駅前のファーストフード店に入った
よく見るとカウンターに居るのはクラスメイトのメンヘルで、どうやらバイトをしているようだ
スマイル0円というメニューまであるというのにメンヘルは目つきが何処か可笑しくぶっ飛んでる
VIPはメンヘルのレジとは違うレジに行き、注文を終わらせた
「とりあえず、俺とシベリアとでオカルトの家に行ってみようと思う」
「あれから一回も行ってないよね・・・どうなってるんだろ?」
オカルトの家族自体が消えたというのに何の噂も立たないというのはどういうことなんだ?
まるで、誰かが全員の記憶を―削除―しているように思える
――削除されたくなかたら、言うとおりにしろ――
消えかけていた記憶が急に掘り出される
黒いローブが言っていた言葉、『削除』という言葉が特に印象に残っている
いや、印象に残っているんじゃない、思い出さなければ完全に忘れてしまう所だったんだ
あいつが、記憶を、消しているんじゃないか?



「おーっす、VIP?どうした?」
シベリアが来たのに気が付いたのは暫くしてからだった
「こんなのしか無かったんだ、ちょっと戦力にならないかな」
木で出来たバットを持ちながらシベリアは苦笑いをする
「もし死んでも恨むなよ」
「恨まないよ、俺が役立たずだったってだけだろ」
クスクスと笑うシベリアにVIPとラウンジは苦笑いをしてお互いの顔を見る



店を出るとやはり蒸し暑い、その蒸し暑い空気に溜息を付きながら3人は歩き出した
ラウンジの麦藁帽子が涼しげなのに、男二人はどう見ても野球した後みたいに見える
ふぅふぅ言いながらオカルトの家まであと少しだと思ったとき、オカルトの家の辺りに何かが見えた
「・・・?あれは・・・」
家の解体業者の車だ!
3人は走ってオカルトの家の前に着く、そこには半分以上壊されたオカルトの家があった
バキバキという音を立てながら家はバラバラに解体されていく
まるでその場所に存在したことすら許されないかのようにバラバラに、解体じゃない、破壊だ
呆然と3人が見つめている間に解体業者はまったく動きを止めることも無い
「・・・オカルトの家だよな・・・?」
シベリアが呟くのと同時にVIPは無我夢中で走り出していた
せっかく近くに現れた手がかりをこんな簡単に、こんな、嫌だ
「ちょっと!!まって!!」
「何だね?君は」
「お、俺、この家に忘れ物したんです!ちょっとだけ、待ってもらえませんか?」
VIPは解体業者の男に近寄ると息を切らしながら大声で叫ぶ
だが解体業者の男は頷くことは無い
「残念ですが、ここの立ち入りは禁止されています」
「・・・お願いします」
「今日中に全部片付けるぞ!!」
VIPの前で解体業者の男はそう叫ぶと、オカルトの家は本当に簡単に潰されていった
街のみんなの記憶を消すのと同じように、オカルトが生きたという事実すらも消されていった
全ての思い出も、存在も、時間も、全部が無に消え失せた
3人は解体業者が居なくなるまでずっと見ていることしか出来なかった
その場から、オカルトの存在が周りの人間から消えていくのを見ていることしかできない
どうして、こんなに無力なんだろう?不思議だった
周りには変な力を持った奴がたくさん居るのに、3人はどう考えても無力だった
「・・・どう・・・する?」
「どうしようもないだろ・・・」
3人にほとんど会話は無かった、ただ虚しさだけが目の前にあった
自分達も死んだ瞬間から全員の記憶から消されてしまうんだ
葬式すら行われない、誰も悲しまない、自分が居なくなっても誰も気が付かない
その恐怖に3人がはその場から動けずに居た
「・・・あっ、あれ・・・」
ラウンジはただの空き地になった場所の瓦礫が集められているところを指差す
そこには乱暴に投げ捨てられている赤い粉が残されているように見えた
「そうか・・・解体業者にとってはタダのゴミだもんな!」
VIPは一人で門を飛び越えると瓦礫へと急いで駆け寄る
遠くから見たときは見えたのに近寄ってみると何処に行ったか解らなくなる
きょろきょろとしている間にラウンジが来て手袋をはめると新しい袋を5枚ほど重ねてその中に赤い粉の入った袋を入れた
「手がかり・・・やった・・・」
ガッツポーズをするVIPとそれを大切にしまうラウンジ、シベリアは警戒するように辺りを見渡している
「早く逃げよう!!」
シベリアが言うことにしたがってVIPとラウンジは急いでその場から離れ、全速力でオカルトの家から遠く離れた
肩で息をしながら3人は笑い合う、これでやっと手がかりが手に入ったんだ
3人は息を荒くしながらシベリアの家に向かう
絶望的な状態から見つけ出せるなんて思っていなかった
「・・・これ以上、係わるなと言わなかったか?」
声が聞こえた瞬間にはVIPの体は家の塀に叩きつけられ声にならない悲鳴を上げている
二人は驚いたまままったく動くことが出来なかった
気が付かなかった、虫の声が聞こえなくなっていることに
「う・・・オカルトの記憶・・・なんで消した・・・?」
「世間に知られるわけにいかない、これはお前達が係わっていい問題じゃない」
「だったら!!なんで俺達の記憶を消さない!?」
「消して欲しいなら今すぐ消してやろう、存在ごと」
黒ローブはVIPの首を掴むと壁に押し付けて持ち上げる
バタバタと足を動かして首を爪で引っかくVIPの姿にシベリアは我に返りバットを両手で握り締めた
「放せ化け物!!」
VIPを掴んでいる腕に向かってバットを振り下ろすが黒ローブはVIPから手を離しそれを避けた
地面に糸の切れた人形のように崩れ落ちるVIPにラウンジは駆け寄って片手で特殊警棒を構える
VIPはゲホゲホと苦しそうに咳をしながら口から血を吐く
「VIP・・・何処までもお前は邪魔をするな」
黒ローブは何も言わずにその場から消えるとシベリアの前に現れて胸に向かって拳を突き上げる
シベリアの両足が地面から離れ、地面に両足が付く頃には意識が薄れバットで体を支える
「ラウンジ、赤い粉を渡せ」
「絶対に、渡さないわよ」
「この二人がこの場で死んでも・・・か?」
刀が太陽の光で赤く輝いて見えた
その刀がシベリアの首に突きつけられ、ラウンジは両手を強く握り締める
「さて、どうする?」
ここでどうするかと聞いてくるこいつは、相当性格が悪い
この状況で選択肢があるわけがない
ラウンジは自分のポーチにゆっくりと手を伸ばそうとする・・・
「良い子だ」
無表情、いや、表情は見えないが多分無表情だろう
銀色の髪がフードから覗いて見える、ラウンジは赤い粉を手に取ると差し出された手に赤い粉を乗せた
「・・・これ以上係わるな、この事件のことを忘れろ」
強い風が吹いてフードが捲くれて銀色の髪と・・・目は無かった
本来目がある場所には目の形をしたタトゥが何十というほど掘り込まれている
一瞬、ラウンジは息を呑んだ
まさに、人間の形をした化け物・・・どうやって喋った事も無い人間の名前を当てたんだろうか?
だがあの顔を見て思い浮かべずに入られなかった
「削除・・・削除人・・・?」
「忘れろ」
そう言い残して削除人は消えた
シベリアの家に何とかたどり着いたときには空は暗くなりつつあって、幸いシベリアの家に両親は不在だった
シベリアもVIPもまともに立つことすら出来ず、家に着くなりシベリアの部屋で横になった
VIPの為に布団を敷き、VIPをそこに寝かせるとラウンジは涙をボロボロ流し始めた
「ごめ・・・ごめんなさい・・・」
「泣くなって・・・ちょっと休めば平気・・・」
VIPは軽い脳震盪を起こしているのか視点が合わずに何かを探しているように見えた
シベリアの方は枕に顔を押し当てたまま胸の辺りを押さえている
「赤い粉・・・渡しちゃった・・」
「いいよ・・・気にするな」
「生きてんだから・・・儲けもんだな」
VIPの言葉に便乗するようにシベリアが呟く、その言葉で何故かラウンジが声を上げて泣き出した
二人はどうしていいのかわからず苦笑いをする
「ひっく・・・よかった・・・怖かった・・・うぅ・・・」
「もう泣くなって、みんな無事なんだから・・・粉のことは・・・後で考えよう・・・」
「うん・・・っ」
ラウンジが酷く子供っぽく見えてVIPは苦笑いをした
二人が動けるようになった頃にはもう外は暗く9時を回っていた
これ以上ラウンジを置いておくわけにいかない、VIPとシベリアは二人で送って行く事にした
流石にバットを持った人とウエストポーチにガス銃を入れてる人の二人に護衛されるのだから怖いものは無い
少し赤く腫れた目をしたラウンジを玄関の前まで送る
「俺が適当に説明するよ」
「ううん、大丈夫」
「そんな顔で帰ったら変に勘違いされるぞ」
VIPの言い分はもっともだった、ラウンジは少し嬉しそうに頷くとVIPはラウンジの家のインターホンを押した
出てきたのは妹のクラウンで、両親はまだ帰ってきてないらしい
「ありゃ?処女失踪?」
「ちげーよ、ちょっと不良に絡まれて色々あったから遅くなったんで送ってきた」
「不良に!?そういえばVIPお兄ちゃん顔に痣が・・・」
「そ、そうなんだよね・・・」
ラウンジに殴られた痣だなんて言える訳が無く、ラウンジを無事家に送り届けた
真っ暗になった夜道で、二人は溜息を付く
「お前等・・・ほんとすげーよ・・・」
「なにが?」
「何がって・・・なんだろうな、あんなに痛い思いしても、まだやるんだろ?」
シベリアの言いたいことは良くわかる
これ以上係わることは本当にやめた方がいいんだろう、それはわかっている
ラウンジにもVIPにもシベリアにも確実に死が近づいているのが今日見えた
削除人・・・それは都市伝説で有名な殺し屋の名前だった
削除人の組織は4人の何かが仕切っていて、削除要請、削除整理、削除議論、削除知恵袋というらしい
削除というとおりその人の存在そのものを消滅させる存在
VIPは深い溜息をつく
「だけど、やめるわけにいかない、オカルトが言ってたんだよ」
―だ・・・だずげて・・・―
「助けてって、苦しいって言ってた」
「・・・そう・・・だよな」
シベリアは静かにそういうと二人の間に沈黙が流れる
その沈黙を破ったのはVIPだった
「俺は、人の為にやるんじゃない。自分の為にやりたいんだ」
「何だそれ」
「もうあんな化け物みたくないからさ、自分の為に解決しようと思って」
他人なんか信じれねぇ!っと照れたような笑いを零すVIPにシベリアはちょっとだけ嬉しそうに笑った
「世界の平和のためとか言うんじゃないかと思ってビビッたw」
「ねーよwwwwwww」
夏の夜なのに少し肌寒い夜だった
虫の鳴き声が遠くから、ずっと追いかけてくるかのように鳴いている気がした
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