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夏休みに入って1日目だというのにVIPは家でダラダラと過ごしていた
特に予定はない、まちまちにしか入っていない自分の遊びの予定をカレンダーに書きながら扇風機の前に座る
何をしようかな、そう思っていても暑さで勉強なんかしたくない
特にノートが腕に引っ付いたりするのはなんとも我慢できない
「お兄ちゃーん!電話だよ!」
「あーい」
天国の声が聞こえてVIPはのろのろと電話を手にとって受話器を耳に当てた
「おいすー」
「あ、すみません・・・オカルトの母です」
オカルトの母親・・・その声を聴いた瞬間今まで鳴っていた虫の声がいっせいに鳴り止んだ気がした
こんなに蒸し暑い日だというのに頭から氷水をぶっ掛けられたような気分だった
受話器が震えて今にも切りたい衝動に駆られる
「息子の・・・死について・・・お聞きしたいんです」
聞いてもいないのにオカルトの母親は何故ここに電話をかけたのかという経緯を話した
学校側の発表に納得がいかない、警察側もまともな死因を割り出してないという事らしい
あんなに大きな事件だったのに新聞にもテレビにすら出ていない
それはVIPも不思議に思っていたが、あの黒いローブの男に出会ってから記憶が薄れてきていた
実際にクラスのほとんどがあの事件を覚えているかも疑わしい
二人の先生に供えてあった花も今はもう供えられていない
「・・・何でもいいんです」
「俺にも、よくわからないんです」
「見せたいものがあるんです、できれば・・・ラウンジさんも一緒に来てもらえませんか?」
「・・・はい」
ここでこう返事をすることが良かったのか解らないが、こちらも知りたいことが多い
VIPは受話器を置くとふうっとため息を付き自分の携帯でラウンジに電話をかけた
「・・・おはよ」
「・・・おいす」
二人はいつもの通学路で待ち合わせをすると二人はいつもと少し違う服装に苦笑いする
ラウンジは薄めのブラウスに少しゆったりとしたパンツという格好で涼しげに見える
VIPは下はジーパンに上はユニクロで買った安物のTシャツにスウェットを羽織っている
「本当にいくの?」
「うん」
「・・・後悔しない?」
「多分、しない」
「絶対に後悔しないでね」
ラウンジの言葉にVIPは強く頷く、だがVIPは今から既に緊張しているようで顔が引き攣っていた
まさか丸腰で行くような馬鹿な事はしないが、準備できるのはガス銃程度だ
どれだけ役に立つかわからないが、とりあえず応急処置が出来るように包帯と消毒液とは持ってきた
だがVIPには応急処置ができるような知識は無い
「私、一応持ってきたから」
ラウンジは背中にあるウエストポーチから特殊警棒を取り出す
「軽い気持ちで買っちゃった」
「こえぇ・・・」
オカルトの家は洋風な家で、少し不気味な雰囲気を漂わせていた
まるで遊園地にあるお化け屋敷のようだが、この家に人が住んでいること自体が驚きだ
―ピンポン―
インターフォンを押すとすぐ近くで待って居たのか本当にすぐドアが開いた
オカルトの母親は少しやつれている様で、目の下にクマが出来ている
今までまともに寝ていることもできなかったんだろう
自分の息子が殺されたのかも解らないのに、普通に暮らしてられるような雰囲気ではない母親だ
「いらっしゃい。無理を言ってごめんなさいね」
「いえ、俺達も知りたいことが多あるんで」
「上がってください」
オカルトの母親が扉をあけ、ラウンジが先に中に入りVIPは周りを警戒しながら中へ入った
家の扉が重たい音を立ててゆっくりと閉まる
「粗末なものしかなくてごめんなさい」
「いえ、お構いなく」
オカルトの母親にラウンジが出来るだけ笑顔を作って答えると母親は少しだけ緊張が解れたようだ
紅茶にケーキを出されてVIPは警戒心をほとんど見せずに早速ケーキを食べ始める
その光景にラウンジは呆れた様な表情をしながら紅茶の匂いを味わっているようだ
「・・・息子の部屋から、こういうものが出てきたんです」
母親は小さな袋に入れられた赤色の粉末のようなものをテーブルの上に乗せる
「薬・・・ですか?」
「わかりません。ただ、こういうものをあの子が使う筈がありません!」
「・・・これ、この色・・・」
頭の中にあの時の映像が瞬間的に蘇ってくる
電話機の上に落ちてくる、赤、赤、赤・・・
口から溢れる赤色の液体



―だ・・・だずげて・・・―



「う・・・う・・・」
口元を押さえてVIPは体が急に冷えるのを感じた
これが原因だ
根拠はない、ただ、この赤色があの口や目や鼻から流れていた液を連想させる
あれは血じゃなかったのか?あれは・・・あれはなんだ?
震えが止まらないVIPにラウンジは背中をさする
「何か・・・わかるんですか?」
「・・・オカルトは・・・オカルトは化け物になって死んだ!!」
「ちょっと!VIP!?」
オカルトの母親の雰囲気が変わる
「化け物?どんな?」
VIPは少し落ち着きを取り戻すと、あったことを全てオカルトの母親に聞かせた
オカルトの母親は話を聞いて信じられないという顔はしない
ただ、無表情で、何も言わなかった
しばらく沈黙の後、オカルトの母親の顔がゆっくりと笑顔に変わる
「キヒヒ・・・ソレハ・・・コンナ化ケ物ォォ?」
オカルトの母親の頭がゴキゴキと音を立てて体の中に少しずつ吸い込まれる
―バキ―
骨が砕けたような鈍い音が部屋に響く
―ゴキ、ゴキ、グギ―
オカルトの母親の両手と両足が巨大化し紅茶とケーキが置いてあった机を押しつぶし四足歩行になる
体が硬い殻のようなものに包まれ、顔が背中をまるで突き破るかのように飛び出す
「ギヒィィィィ!」
その顔のからあのオカルトと同じ鳴き声が発せられる
「怖くない怖くない・・・」
ラウンジが椅子から飛びのいて特殊警棒を両手で構えながらぶつぶつと唱えているのが聞こえる
外で煩かった虫の声はひとつも聞こえない、ただ目の前にある化け物が呼吸をする音だけが響く
―キヒィ・・・キヒィ・・・―
鳴き声じゃない・・・これは呼吸の音?ニヤニヤと笑った顔のままオカルトの母親はVIPに飛び掛る
「お前達がぁぁぁ!!ころしたぁぁぁぁ!!!」
震えながらガス銃を手に持つが飛び掛ってくるオカルトの母親の腕を避けることはできない
VIPの体が壁に叩きつけられ、先ほど食べたものを吐き出す
「VIP!!この化け物!」
ラウンジが戸棚の上に置いてあった物を投げつけると母親はラウンジの方を見た
「ヒヒヒ・・・お前もスぐニオカルトと同ジ場所に送ってあげルカラね」
口からごぽごぽと赤い液体が溢れる
―ボタボタボタボタ―
恐怖で引き攣るラウンジに母親は赤い液体を飛ばしながらゲラゲラと笑う
「・・・ちょうし、のんなよ・・・池沼・・・」
「キヒヒ!オカルトと向こうで仲良くしテネ!」
母親が腕を振り上げるとVIPは体を屈めて何とか避けようとラウンジが居る方に走る
だが、オカルトよりも小柄な母親の化け物の腕はVIPの足をえぐった
VIPの血が壁にかかり、落書きでも書いたかのような跡が壁に付けられる
「いっ!」
片足の力が抜けVIPの体が床に倒れた
痛い・・・血があふれ出して床が赤に染まる
「ヒヒ・・・さようなら」
「終わるのは・・・お前だバーヤ!!」
手を振り上げた瞬間顔の守りが一番薄くなる
ガス銃をすぐに撃たなかったのはガスを手のひらで暖める必要があったからだ
オカルトの母親の顔に向かって銃を構えるが手が震えて狙いが定まらない
今にも手が振り下ろされそうなのに・・・諦めたくない・・・!
無駄に改造したわけじゃない、本気で当たればコンクリートを破壊できる程にパーツを入れたんだ
一撃で・・・一撃なのに・・・怖くない怖くない・・・
いくらそう思っても手の震えは止まらない
向こう側でオカルトの母親がニヤニヤと笑いながら目と鼻から赤い液体を溢れさせている
「死にたくないぃぃ!!!」
必死にそう叫ぶ自分が情けなかった
震えは止まらない、ここで死んだらラウンジだって殺されてしまう
「VIP!狙い、定めて!!」
震えが止まった
違う、VIPの手がラウンジの手に支えられて銃を確りと握っている
ラウンジの足はガクガクと震えているのに、そこから逃げようともしてない
なのに自分は・・・
「市ねぇぇぇええ!!!」
一瞬自分の手が震えなくなった
オカルトの母親の動きが一瞬止まる
だが、次の瞬間には腕をまた振り下ろし始めていた
外れた・・・弾が外れたんだ・・・
何も考えずにVIPはラウンジを守るように抱きしめていた
振り下ろされた腕がVIPの肩を掠って床に落ちる
それに続いてオカルトの母親の体はバタバタと暴れながらまるで踊っているかのようにも見えた
オカルトの母親の眼球が打ち抜かれ、頭の後ろは完全に吹き飛び脳が飛び散っている
バタバタと暴れるオカルトの母親は次第に両手両足がバラバラに崩れ落ち最後は体と頭だけになった
「ギャァァァァァァァァアッァァァァアァ!!!!」
耳を塞ぎたくなるような断末魔が響き、オカルトの母親が闇の中に吸い込まれるように縮んで弾けた
肉片がボトボトと床に落ちる中でVIPとラウンジは気を失った
ただ、自分が生きていることだけは確信しながら
いきなり病院に入院はいやだと思っていたのに、怪我は本当に大した事がなかった
ただ服はもう着れない位にボロボロになってしまったが
あの後、気が付いたときには病院に運ばれて治療を受けていた
警察からの事情聴取は一切無し
オカルトの母親が死んだことさえ、噂にすらなっていないのだ
VIPとラウンジは通り魔に襲われた・・・ということになっているようだ
看護士がそう言っていたから間違いないだろう



ラウンジは幸いかすり傷以外は負っていない
「VIP、もう足は平気?」
「大丈夫、お前こそ大丈夫かよ」
「流石に・・・2回目でも怖いのは抜けないわね」
通学路で待ち合わせをした二人は顔をあわせて言葉を呟くように言い合う
あの喧嘩していたころのほうが余程幸せだったと言っても嘘にはならないと思う
今すぐこの世界から逃げ出したい・・・それは二人とも思っているだろう
「ね、何で私達なんだろ?」
「さぁ・・・?わかんね」
「私が死んだら呪ってやる」
「俺だってお前を呪ってやる」
虫の声が聞こえる、まだ夏休みは始まったばかりだ
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